冒険者として
「にしても……前はベクトがいてギリギリ勝てたゴブリンがこうもあっさり……。何回倒しても実感がないな……」
テイマーだった頃の自分では考えられないほど、今の自分のステータスは強化されている。
それもそうだろう。魔物を倒すたびにスキルが手に入るなんて、普通ではありえないことだから。
「経験値でいったらゴブリン一匹なんてほとんどなんの足しにもならないんだろうけど……」
基本的に冒険者は魔物を倒したり今までにない経験を経ることで経験値という形で自身のステータスが強化される。
ただこれは普通に身体を鍛える延長のようなものだ。
一方【ネクロマンス】は殺した相手がどんなに弱くても相手の能力の一定数自分のものにできる。そして何より、相手が持っている【スキル】を自分のものにできる。
成長という点でここまで便利なスキルは他にないと断言できる性能だった。
おそらくもう、一般的なBランク冒険者相当の力はすでにあるのではないかという自負すらあるほどだ。
「まずはこうしてゴブリンあたりでポイントを稼がないと、いつまでもランクが上がらないんだよな」
俺はベクトたちのためにヴィルトへ復讐を果たすことを目的とする一方、シールとの約束もある。
「勇者になるには、ランクをあげなきゃな」
自分だけが強くなっても仕方ない。
まだ今の俺はFランクの駆け出しでしかない。
一歩ずつ、確実に進めていこう。
「帰るか」
帰り道に薬草や木の実も摘んでギルドへ戻る。
こういう地道な稼ぎが正直、今の俺にとっては依頼の達成報酬よりも大きかったりした。
シールに甘えていたペットショップはもうない。
何人かのお客さんにはまたやってくれと頼まれたが、はやくシールのところにいきたい。
丁重に断って全ての時間をこうして冒険者の活動に当てていた。
「いらっしゃ……あ! ライルさん。おかえりなさい!」
「ありがと。ミレイさん」
出迎えてくれるのはいつもの受付嬢、ミレイさん。
三編みを一つにまとめたおっとりした美人の人気受付嬢だった。なぜか俺の担当という形になってくれている。
「良かったです。今日もご無事で」
「ゴブリンくらいでは死なないって……」
「いえいえ! 油断は駄目ですよ! なんと言ってもライルさんはテイマー、しかもなぜか使い魔なしの状態なんですから……あれ? どうやってゴブリン倒してるんですか?」
「剣で切ったり石を投げたり魔法を使ったりだな」
「またまたぁ。そんなテイマー聞いたことないですよ」
まあいまはもうテイマーじゃなくネクロマンサーってやつなんだけど……。
あれからしっかり調べたところ、ネクロマンサーという職業や【ネクロマンス】というスキルはあまり公にするべきでないことはわかった。
幻の存在だからということもあるが、このスキルを駆使したものが最もどこで活躍しているかと言うと、やはり魔王軍だったからだ。
歴代四天王に16名、魔王本人もネクロマンサーだったケースまでいくつか見受けられているわけだから、多分公にしないほうが良いだろうことはわかる。
するならそれこそ、魔王軍幹部の首でも持ってきて信用を勝ち取る必要がある話だと判断していた。
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