(7) 宇宙へ
……〈星の王子さまはね、宇宙を飛んで、色んな星に行くのよ。そして、最後の星で、本当の友達を見つけるの。〉
〈星の王子さまはロボットなの?〉
〈どうして?違うよ。〉
〈だって、宇宙を旅しているのに、窒息しないから。〉
〈うふふっ、これ、本当のことじゃないのよ。お話だよ。〉
〈お話?〉
〈そう、空想ってこと。〉
〈何のためにするの?〉
〈空想?うん、楽しいからよ。〉
〈どうして楽しいの?〉
〈だって空想なら、宇宙を旅することだって簡単にできちゃうでしょ。〉------------
……ハテナは目を開けました。そこは、真っ暗な闇と、無数の星が散りばめられた世界でした。
ハテナは、宇宙に来たのです。空想ではない、空気も音もない本当の宇宙です。
どうやって来たのか……それは、こういう方法でした。
ハテナは、BIRDを手に入れた晩、すぐにトアルを離れて、内海を渡ること1500㎞の、シラン領内に入りました。
シランでは、その日、新型の気象衛星の打ち上げが予定されていました。
発射準備は夜明けから進められ、カウントダウンも定刻通りに始められました。数値がゼロを切ると、轟音とともにロケットの噴射口から飴色の炎と大量の白煙が噴き出します。
その時、発射台から、奇妙なものが飛び出して、ロケットの側面に取り付きました。それは、青い翼のある、人間のような姿をしていました。
ロケットはすでに地上を離れ始めていたので、打ち上げを中止することはできませんでした。
まっ白な軌跡を描いて、ロケットは青空の彼方までぐんぐんと上昇して行きました……。
今、ハテナは、ロケットから離脱して、宇宙空間を、BIRDと一緒に漂っていました。
打ち上げ中、耐熱シートで、全身を覆っていましたが、圧力と衝撃から、コンピューターの機能を回復するのに、少し時間がかかっていました。
ハテナは、視界に映るいくつかの星を、細い光の線で結びはじめました。それは、宇宙空間で、自分の位置を知るための機能でしたが、ハテナは、文から見せてもらった、星座図の通りに、その星々を、結んで行きました。
自分のまわりに、たくさんの星座を描き終えると、ハテナはこう思いました。
「僕は青い鳥と一緒に宇宙を飛んでる星なんだ。そして、僕は星座の一部になって……。」
ハテナは、それ以上考えられませんでした。いいえ、頭の中で、自分ではない誰かが話しているような気がしたのです。
全身の機能が正常だと確認できると、ハテナはBIRDを操って軌道を修正し、目的のスペースデブリ回収船と、いずれ接触できる高度まで移動しました。