(2) 文とおばあちゃん
キャンプから帰った数日後、文は学校で、ハテナに尋ねました。
「ハテナは、写真から、この前のような立体的な姿を写し出すことができる?」
この前とは、キャンプの夜の事です。文はハテナが、キャンプファイヤーを囲んで踊る生徒達の立体映像を、林の中で、目を光らせながら写し出している様子を見たのです。
ハテナが、「できるよ。」と答えたので、文は「明日、写真を持って来るから、それを立体的に見せてくれないかな。」と頼みました。ハテナは、「いいよ。」と答えました。
次の日の放課後、文は公園で、ハテナに一枚の写真を手渡しました。そこには、エプロン姿の年配の女性が写っていました。
「これ、私のおばあちゃんなの。おばあちゃん、去年の冬、死んじゃったの。お酒を飲んだ人がね、車でおばあちゃんをはねちゃったの。」
文は、そう言って、口をつぐみました。
ハテナは、写真をじっと見つめて、分析が終わると、「少し離れて。」と言いました。文が後ろへ下がると、ハテナの目が光って、文の目の前に、ぼんやりと人影が浮かび上がりました。それは、生前と少しも変わらない、明るくて元気そうなお祖母さんの姿でした。
「ふみ。」
お祖母さんが、口を開いて、名前を呼んだので、文は「おばあちゃん!」と叫んで、抱きつこうとしました。でも、お祖母さんは煙のように消えてしまって、文はそこにへたり込んでしまいました。
文が激しく泣きじゃくり始めたので、ハテナは、「文、どこか痛いの?」と聞きました。
文は、返事もできずに、いつまでもいつまでも泣き続けていました……。