表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハテナ  作者: Kobito
10/13

(10) 笑顔

 BASE-9の船内では、モニターに映し出されたハテナと、テッペン大佐達のやり取りを、乗員達が、かたずを飲んで見守っていました。エンジンを点火して、この場を逃れようとする事もできましたが、ハテナの正確な射撃が、すぐに船体の急所を打ち抜く事は分かっていたので、うかつに行動することができなかったのです。

 その時、為す術なくたたずむ船長の元に、副船長が歩み寄って耳打ちしました。

「五番のビーム砲は、砲筒の一部を破壊されただけです。ビーム径を絞れば、十分に標的を狙えます。」

 モニターを見ると、ハテナは、地上との通信に集中しているらしく、動きを止めて、何事かつぶやいているようでした。

 船長は、テッペン大佐から、ハテナを破壊せよという命令を受けていました。ですから、テッペン大佐がハテナの注意を引き付けているうちに、攻撃しなければならない、と思いました。

 そこで、船長は命じました。

「奴がビーム砲の照準を本艦から外した時を狙え。一撃で仕留めるんだ。」


 ハテナは、文から名前を呼ばれたとき、自分の中に、今まで気が付かなかった小さな場所がある事を知りました。それは、大切にしないと、簡単に壊れてしまいそうなほど、繊細で、柔らかな光を放っていました。ハテナは、文の声が、その光に、触れたような気がしました。だから、ビーム砲の照準をBASE-9から外して、こう言いました。

「文、僕ね------」

 その時、BASE-9の砲台から、鮮やかな光の線が、ハテナに向かって放たれました。

 ハテナが光に包まれながらのけ反ったので、文は小さな悲鳴を上げて、モニターの前で目をつぶりました。

 恐る恐る、画面を確かめると、ハテナはのけ反った体勢から、くるりと宙返りして、BIRDのビーム砲を構えると、素早くBASE-9の砲台に発射しました。

 砲台は音もなくばらばらに砕けて、宇宙空間に飛び散りました。

 文は、胸をドキドキさせながら、あらためてハテナを見ました。

 そして、びっくりしました。

 ハテナが、笑っていたのです。

 文の方を見つめて、本当に嬉しそうに……。

 ハテナの笑顔を、文は初めて見ました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ