閑話 ボッチ勇者
新規のブックマーク、誤字報告ありがとうございます。
誤字がないか投稿前に一応見てはいるんですがなかなか無くならないですorz
一つ一つ手間をかけて丁寧に訂正して下さり、ありがとうございます!
お読み下さっている方々に感謝します。
今回は勇者視点の閑話です。
今日も今日とて一人で魔獣狩り。どうも、勇者です。
魔王とか魔族とかとやり合えるようになるためには、まずレベル上げをして地力をつけなければなりません。RPGの基本中の基本。もはや説明不要。
一人で魔獣を狩るのは経験値を誰とも分け合うことがないので多く入るし気楽だ。…まあ長い目で見たら効率悪いし寂しいけどさ。
誰かパーティ組んでくれないかなぁ………。
魔獣を狩って経験値を稼ぐついでに路銀を手に入れるために、冒険者ギルドに寄って登録をする際に受付のお姉さんがオレが勇者だってことに気付いて大声で驚いていた。
はいはい勇者ですよ。まだLv1だからなんもできないけどね。
で、大声出したもんだから周りの冒険者の視線を集めるハメに。
勇者だからとちやほやされるのはなんというかむず痒い気分になる。オレ自身はたいした人間じゃないのに『勇者』って御立派な肩書きのせいで、皆にとって注目の的になるのは仕方ないけど、なんだかなぁ。
しかも誰かパーティ組んでくれませんかって言っても、もうパーティ組んでるから、とかもう少しレベルが上がってからね、とか言って誰も組んでくれなかった。……まあお荷物が増えるのは嫌だろうけどさ。
≪というか『勇者』とパーティを組んだりしたら、嫌でも魔王討伐の旅に同行することになりますからねー。地元に残りたい人や自由気ままに生活したい人からすると面倒なんじゃないですか≫
だよなあ。オレが同じ立場でも躊躇するわ。
英雄願望がある人とかなら快く同行してくれそうだが、冒険者ってわりにみんな意外と保守的みたいだ。それでいいのか冒険者。
冒険者っていうのは色んなところに足を運んでまだ見ぬ秘境を求めて世界をさすらう自由人ってイメージがあるけど、実際そんな生活望んでいる人はほとんどいないようだ。
お金と経験値がある程度溜まったら他の街に行ってみよう。そこでパーティを組むことができたら、一人で黙々と魔獣を狩る生活ともおさらばだ。
≪寂しいならワタシが話し相手になりますよー!≫
ごめん、正直テキスト相手に話すのはもう前世だけでお腹いっぱいなんだわ。ネットの掲示板とか。
≪ガッデム! もっとコミュニケーションしましょうよ! 放置プレイは嫌ですよー!≫
…まあ本音を言うとメニューがついてるおかげで寂しさが紛れているのは事実だけどな。
≪そうでしょう!? ワタシ役に立ってますよね!≫
枯れ木も山の賑わいと言うし。
≪その言い方はいかがなものかと! もっといい例えがあるでしょう!?≫
だって、お前ちょっとかまうとすぐ調子に乗るから鬱陶しいもん。
はぁ、神様にこっちに送られた時は異世界での生活にワクワクしてたけど、実際始まってみると孤独で寂しいもんだな。
ちなみにせっかく金髪イケショタになってもまだ童貞のままです。
……いや、機会がなかったわけじゃないよ?むしろ年下好きっぽい美人のお姉さん方に何度も『今夜どう?』とか誘われたよ?
でもみんな目つきが肉食獣のそれだったし、状態表示に魅了(大)(性欲)とか書かれているのを見ると恐怖がこみあげてきて、とてもじゃないが童貞卒業する気分にはなれなかった。
誘いに乗ってたら多分トラウマものの体験をしていただろうな……。この世界の女性怖すぎでしょ。
≪女性からだけならともかく、男性からもお誘いがありましたよね…しかもツルッパゲでムキムキの≫
思い出させんな! あの時のこと考えただけでも吐き気がするわ!
≪『オレは男だぞ』って言ったら『それでもいい!』とか言ってましたね。キモいです≫
はい、この話やめやめ! もう勘弁してくれ!
オエッ……思い出したら軽くえずきそうになった。あの筋肉ハゲ男のキモさと言ったらもうね…。
神様、こんな男か女か分からない見た目じゃなくてもうちょっと男らしい外見にしてほしかったです。いやあの筋肉男みたいになるよかマシだけどさ。
…さて、今日だけで魔獣をもう10体は倒したけど、普通の人に比べてペースが速いか遅いか分からんな。
≪ソロで同レベル帯の魔獣を狩る数は、職業にもよりますけど大体一日4~6体くらいが平均ですね。単純に考えて倍近いペースで狩ることができていることになります≫
意外と少ないんだな。これだけ狩ってもまだMPもSPも大丈夫だぞ?
≪『まだいける、はもう危ない』という冒険者の標語がありまして、不測の事態に備えてある程度余力を残した状態で狩りを終えるべきだという考えが冒険者たちの中での常識なんですよ≫
なにそのローグライクゲームの格言みたいなのは。
…まあ、確かに死んでもやり直せるオレと違って、死んだらそこで終わる普通の人からするとそれぐらい慎重にならないと生きていくのは難しいか。
かれこれもうひと月近くほとんど毎日のように魔獣を狩っているけど、本当に成長してるのかね?
≪とても順調ですよー。よかったらステータス見てみます?≫
ん、頼む。
ネオライフ
Lv8
年齢:15
種族:人間
職業:勇者
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :267/294
MP(魔力) :56/152
SP(スタミナ):39/107
STR(筋力) :257
ATK(攻撃力):257(+45)(+17)
DEF(防御力):239(+50)(+20)
AGI(素早さ):242
INT(知能) :248
DEX(器用さ):204
PER(感知) :201
LES(抵抗値):174
LUK(幸運値):63
【スキル】
剣術Lv2 槍術Lv1 斧術Lv1 棍術Lv1 弓術Lv1 盾術Lv1 体術Lv2 投擲Lv1 拳法Lv2 隠密Lv1 攻撃魔法Lv2 補助魔法Lv1 回復魔法Lv1 他、任意で表示
装備
鋼鉄の剣
ATK+45
人狼革の胸当て
DEF+50
火蜥蜴のブーツ
ATK+17 DEF+20
ひと月の間にステータスが倍近くまで上がって、スキルもいくつかレベルが上がっている。
正直、スキルの方は何から優先して上げればいいのか分からないから、とりあえず戦闘に慣れるまでの間は使いたいスキルだけを積極的に使ってスキルレベルを上げて、器用貧乏になるのを防止しておくことに。
≪うーわー、すっごい強さですね、むしろエグい。Lv10にも達していないのにほとんどのステータスが200を超えてて、スキルも複数レベルが上がっていますね。能力値だけ見たら並みの人間のLv20くらい、いやそれ以上ですよ。ホントチートですねー≫
比較対象がいないから強いかどうか分かり辛いけどな。つーかエグいってなんだよ…。
今日帰ったら、ギルドに居た他の冒険者のステータスを見て比べてみよう。
…ちなみに、こっちに来てる日本人のLv8の時点でのステータスってどれくらいだったか分かるか?
≪あら? 気になります? 関わりたくないとか言っておいて、なんだかんだ意識してたりします?≫
…うん、まあ、正直ちょっと気になる。
≪んー、Lv8で大体の能力値が35強ってところだったみたいですねー≫
うわ、ひっく!? いや弱すぎだろ! それでどうやって魔獣倒してるんだよその人!?
≪さぁ…? よっぽど強力な装備でも手に入れたか、誰かに協力してもらってパワーレベリングでもしてたんじゃ≫
【余計なアクセスを確認 情報を遮断】
!?
≪!?≫
…え? お、おい、なんだ今の突然出てきた警告画面みたいなのは。
≪……どうやら【向こう側】のメニュー機能が、こちらからのアクセスを遮断して、もう一人の日本人の情報をこれ以上開示できないようにしたようです≫
は? え、えーと、その日本人のことを調べようとしたのが向こうにばれて、何見てんだコラって感じでアク禁くらった感じか?
≪大体その認識で合っていますね。その日本人の方には自分の情報が私たちに知られているなんて分からなかったでしょうが、その人が使用しているメニュー機能が自動的に情報にプロテクトかけたっぽいです。デフォルトのメニュー機能には人格もないはずなのに、随分と過保護ですねー≫
その人もメニュー機能使えるのかよ。メニュー機能って、勇者だけの特権と言うより、地球からこっちに来た人間のための機能ってわけなのか。
≪ですね。もっとも神様から人格を与えられたのはワタシだけですけどね。オンリーワンですよ、ユニーク機能ですよー!≫
……せやな。
≪なんですかそのもうリアクションとるのすらめんどくさいみたいな対応は!?≫
いや実際その通りだし。
さっきの警告画面を見る限り、向こうのメニュー機能は必要最低限のことしか言わないけど、自動でサポートするべき時はキッチリ仕事をこなすタイプみたいに見えた。
…あれ?あっちの方が優秀じゃね? 正直羨ましいんですけど。
≪待ってくださいー! デフォルトの機能はそっけない対応ばっかで、常時ボッチ状態のネオラさんには向いてないです!≫
やかましいわ!
Lv10までいったら他の街に行って今度こそパーティ組む予定だから見てろ!
お読み頂きありがとうございます。
勇者の外見はほとんど神様の趣味だったり。男の娘に見えかねないレベルで中性的です。
次回から本編再開します。




