真っ赤なトマトになっちゃいな
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あっぶねぇぇぇ!
スキル欄の項目に催眠スキルがあるからそれにばかり目がいって、テイムスキルのほうの警戒を怠っていた。
まさかレベルが自分より低い相手を問答無用で操れる技能があるなんて。てっきり飼いならした魔獣かなんかを襲わせてくるためのスキルかと思ったのに。
多分、これで身動きとれない状態にしてから催眠スキルで洗脳するつもりだったんだろう。ナニ同人みたいに! ナニ同人みたいに! 誰得だよ。
操られている間、身体は一切動かせなかったけど魔力や気力なんかは動かせた。でなけりゃ詰んでただろうな。
最初は操っている糸を魔力操作でハッキングとかできたら面白そうじゃね? とか思ったけど肝心のやり方がイマイチ分からんかったので無理でした。
魔力装甲をパワードスーツみたいに全身に纏って無理やり身体を動かすのを試そうかと思ったが、それでもかなりぎこちない動きしかできそうにない。
で、もうめんどくさいし自分の身体を動かすより俺を操ってる指の方をなんとかした方がよくね? と思って魔力の遠隔操作で奴の指をへし折って操れなくするゴリ押し戦法を実行。
何本か指を折るとスキルによる影響が和らいできたので、魔力装甲を纏って体を動かし奴に接近。
そうすることで『俺を操ろうとしても無理。むしろどんどん指が折れていくからすぐにスキルを解除しなければ』と思わせる作戦だったが上手くいったようだ。
解除した直後、スパークウルフの角を使ってこちらの目を眩ませようとしたようだが、そんなもんこちとら何度も使ってるから目をガードするのは容易い。メニューさんが警告出してくれたしな。
逃げようとした魔族の前に空から降りて逃走阻止。で、今に至る。
お仕置きの前にちょっと聞いておきたいことがあるのでちょっと質問タイム。
「いくつか質問に答えろ。…お前、今回の騒ぎで誰か殺したか?」
「な、何を言って――」
「質問に答える以外の回答をした時点で殺す。嘘を吐いたと判断しても殺す。殺してくれと懇願するような目に遭わせたうえでな」
「ひぃっ…! ひ、一人だけだ! スラムの浮浪者を操って、スライム兵器の封印を解かせて最初の餌にした以外は誰も殺していない!」
…んー、やっぱこいつ魔族だわー。
浮浪者だろうが一人だけだろうが、自分たちの勝手な都合で人を殺した時点で俺としてはアウトなんだよなー。
「今回の首謀者はお前か?」
「そ、そうだ。同胞のラナウグルとフルバータム、結界作成のために命を張ったナグムフゥリを従え、私がこの街を潰す担当に選ばれたのだ」
担当? え、魔族の中でココの街潰すのお前なー、とかそういった会議でも行われた結果の行動なの?
てか他の街を潰す担当の魔族とかもいるのか?
≪各地の魔族の拠点にて、魔王幹部以下大勢の魔族による人類に対する殺戮計画を練り随時実行している模様。今回はヴィンフィートの街の壊滅を4名で担当させられたと推測≫
街一つ潰すのに4人でなんとかしろとか無理ゲーだろ。多分大して期待されてなかったんじゃないか? さっきの赤魔族もそんなに強くなかったし。
こいつらよくそんな無茶振りを達成寸前までもってこられたな。その行動力をもっと別の形で活かせよ。
「…分かった。聞きたいことはまあそんなところだな」
「たっ、頼む! い、命だけは、とらないでくれっ!」
「はぁ?」
脂汗を顔に浮かべて命乞いをする魔族。
その様子に、なんかもう怒りを通り越して呆れすら感じるわ。
「お前さぁ、人間殺そうとした時に同じセリフを言われたら殺さないで許すの? いいや許さないよな? バケモノ解放するために平気で一人殺してるし、街一つ潰そうとしてるくらいだし、人の命なんか価値が無いと思ってるだろ」
「う…うあ…あ…」
「けど、それはお前が悪いわけじゃないよな?」
「……え?」
俺の言葉に困惑したような表情になる魔族。
なるべく穏やかな声で、優しく語り掛けるように意識する。
「魔族っていうのは人を殺すことを楽しいと感じるようにできている。生まれながらに持った習性に責任を求めるのは酷な話だ」
「……な、なにを………?」
「お前は悪くない、魔族としての本能が悪い。また周りの魔族も人間なんか死んで当然だ、生きている価値なんかないって言ってるような環境で育ったならそれが正しい考え方だって思うのは当たり前だ。だからお前を責めるつもりはないよ」
「……た、助けてくれるのか?」
「ああ、だから」
なにかを期待するような表情になった魔族に向かって縮地モドキで距離を詰め、気力操作と魔力装甲で強化した腕で魔族の服の首後ろ部分を掴む。
「お前に、生きているっていうことの素晴らしさを教えてやる」
「い、いったい何を……!?」
そして、そのまま魔族を持ち上げ魔力飛行で急上昇。
「うわああああああああああ!!!?」
「さっき俺さぁ、撃墜された時に死ぬかと思ったんだよなー。で、その時に『死にたくない』って感情をすごく強く感じたんだ。だから」
叫ぶ魔族に、笑顔で、優しく告げる。
「お前も、死にかけてみれば命の尊さが少しは分かるんじゃね?」
ギュンッ!!
そう言った直後に全速力で魔力飛行で街を飛び回ることを開始した。
「ぎゃあああああああああああああっ!!!!」
「怖いか? それは生きてる証だ。もっと怖がっていいんだぞー」
「や、や、やめろおおおおおおおおっ!!!」
絶叫しまくる魔族。ジェットコースターに乗ったことは? え? ない? ですよねー。
まあブレイドウィングを撃墜したころよりずっと速いスピードで飛べるようになった今の魔力飛行のスピードはジェットコースターどころじゃないけど。
時々街の建物に当たりそうになるスレスレを飛んでみたり、逆さまになったり、バックで飛んだり飽きないように工夫してみる。俺ってエンターテイナーだなー。
「やべろおおおおおおおお!!!」
「なんで命令口調なの? ばかなの? 死ぬの?」
「や、やめ、やめてくれええええええええええええ!!!」
「なんでタメ口なの? アホなの? 手ぇ離すよ?」
「お、お願いしますぅっ!! 後生ですからっ!! これ以上はやめてええええええ!!!」
「あー風の音がうるさくてよく聞こえないわーゴメンネー」
「嫌だあああああああああああああああっ!!!」
涙と鼻水を垂らしながら懇願する魔族。きたない。
ガンッ!
「いぎぎゃあああああああっっ!!?」
途中で変な音が聞こえたから魔族の方を見てみると、右足がおかしな方向に曲がってる。
あー、ちょっとギリギリを攻め過ぎたか。街灯かなんかにぶつけたっぽいな。メンゴメンゴ。俺ってうっかりだなーハハハ。ジェットコースターと違って安全性は保証されてません。
おおっとちょっと狭い路地に出たな。ぶつからずに通り抜けられるかなー自信ないなー。
ゴンッ! ガスッ!! ガリガリガリッ!!!
「うぶっ!? ガァッ!? うばああああああっあがががっがががががが!!!?」
あらら、案の定あちこちぶつけちゃってるし、今も顔面が建物の壁でもみじおろしされちゃってるやん。かわいそ。
「ひぃっ……ひぐぅっ……もう……ゆるして……」
手足があちこち曲がっちゃいけない方向に向いてるうえに、顔の皮膚がえらいことになってる魔族が息も絶え絶えといった様子で声を漏らす。
まあそろそろ解放してやってもいいかな。
「そうだな、もうお前も命の尊さが充分分かったころだと思うしな。そうだろ?」
「は……はい……もう……」
「だから、な?」
話しながら高度を上げる。地面までは200mくらいかな?
この高さだと、ヴィンフィートの街全体がよく見える。
「最後にこの街の美しさを見せながら離してやるよ。じゃあね、魔族のムルガブイオさん」
「え……?」
魔族を掴んでいた、手を離した。
それは、魔族が地面に落下する障害がなくなったことを意味する。
「ひっ、ひぃあああああああああああああっ!!!!」
本日何度目かの絶叫。その中でも一番の叫び声だった。
地面に激突する直前、魔族に纏わせておいた魔力を遠隔操作し、ストップ。
あのままだったらトマトみたいに潰れていただろうが、さすがにそれは気が引けた。わけではなく今回の騒ぎの魔族側の証人として一応まだ生かしておく価値があるかもしれないからだ。
白目をむき、口から泡吹きながら気絶している魔族。生きてるって素晴らしいよな?
まあ報復はもう充分だろ。どうせ魔族だし必要な情報を聞き出したらすぐに処刑されるだろうし、別に俺が殺さなくてもいい。ちょっと経験値がもったいないが。
≪魔族討伐の際の取得経験値は魔獣に比べ高い。レベリングを意識するならば殺害を推奨≫
いや、いいよ。もうめんどくさいわ。
気のせいか、メニューさん魔族に対する殺意高くない? 怖いわ。
さーて、あとはアルマとレイナと合流するだけだ。
…勝手に単独行動とったことをアルマに叱られそうだが。さっきの魔族よろしくガクブルするハメにならなきゃいいが……。
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