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ホラー作品の怪物役みたいな

多数のブックマーク、評価、誤字報告ありがとうございます。

特に2400件以上もの誤字報告をして下さった方には頭の下がる思いです。いったい何時間かかったのかと申し訳ない気持ちと感謝の気持ちで胸いっぱい、そして胃が重いですorz

数が数ですのでいっぺんに適用ができないのですが、少しずつ適用させて頂きます。ありがとうございました!

「あ、見つけたっす! アルマさーん!」


「うわ?!」


「っ!? ………レイナ?」



 建物の影の中から、いきなりレイナがとび出てきた。

 少し、いやかなりビックリした。ギルマスも思わず悲鳴を上げている。



「な、なにそれ? 影の中からいきなりニュッて出てきたんだけど…」


「ふっふっふ、成人して見習い忍者になってから使えるようになった【忍術】スキルっす。物に干渉されずに影の中をすごいスピードで移動できるんすよ、すごいっしょー」



 得意げな顔でスキルのことを説明するレイナ。

 正直まだニンジャっていうのがどんな職業なのかイメージできないけど、とても珍しい職業だっていうのは分かる。



「…君たちを見ていると、常識っていうものがガラガラと崩れていく音が聞こえるようだよ…」


「失礼っすね、カジカワさんなんかこんなレベルじゃないっすよ。スキルもなく魔族をズッガーンて粉々にして地面のシミに変えてたくらいっすから…」


「いや意味分からん! 君たちホントになんなの!? 脳が理解することを拒んで頭痛がしてきたんだけど!」



 …修業の時にハイケイブベアの頭を弾き飛ばしてたアレを使ったのかな。

 正直どんな技なのか説明を聞いてもイマイチ理解できなかったけど、仮にやり方が分かっても使える気がしない。



「そういえば、ヒカルは?」


「最初は一緒にこちらに向かうつもりだったみたいっすけど、『野暮用ができた、すぐ戻る』って言ってどっか飛んでっちゃったっす」


「…野暮用?」



 一人で飛んでいって、無茶した挙句撃墜されて怪我したばかりなのに、また単独行動してる。

 …帰ってきたら、ちょっと『お話』をしよう。



「ひぃっ!? あ、アルマちゃんの背後に夜叉がおるぅ!?」


「じ、自分の目には鬼が見えるっす! アルマさん落ち着いて! きっとトイレかなんかっすよ!」



 頭の中に魔力を集中して、周りの魔力の反応を探ってヒカルを探してみる。

 ヒカルに習った技だけど、使っているあいだ頭が熱くなってきてズキズキと痛くなってくるから長時間は使えない。

 ヒカルは平気な顔して使っているけど、何が違うんだろう…?


 …? ヒカル、凄いスピードで飛んでる?

 しかも魔族らしき禍々しい反応と一緒に。何をしているの?










 ~~~~~少し時はさかのぼり、とある魔族視点~~~~~








「ふむ、失敗したか。やれやれ、最近の人間は非常識な者が多いようだ」



 この街で一番大きな塔から人間の街を見下ろすと、虫けらのように蠢く人間どもが見える。

 あのバケモノが予定通りに暴れて食い散らかしていれば、こんな鬱陶しいゴミどもの姿など見ずに済んだだろうに、まったく忌々しい。

 結局、今回は封印を解かせた人間以外殺すことができなかった。

 …まあいい、封印を解く合言葉は既に分かっている。いずれ機会がきたら再び適当な人間に言わせて封印を解くとしよう。

 それに、面白い手駒になりそうな人間も何体か発見できた。思わぬ収穫といったところか。

 剣と魔法両方を専門職と遜色ないほどの、いやむしろそれ以上に強力な運用ができる女剣士。

 影に溶け込み、瞬く間に長距離を移動する少女。

 そして空を自由に高速で飛び、一撃でラナウグルを粉々にするほどの実力を持つ、仮面を被ったイレギュラー。

 どれも我が道具として不足のない、優秀な手駒の候補だ。



「いずれ、貴様らも私の操り人形にしてやろう。楽しみにしているがいい」


「お断りだ馬鹿野郎」



 !!?

 独り言を呟いていると、後方から男の声が聞こえ思わず振り向くと、そこには件のイレギュラーが不機嫌そうに立っていた。



「なっ、い、いつの間に背後に…!? 誰も近付いてくる気配などなかったはずだ!」


「さっきの赤魔族を倒してからすぐだ。空を飛べるんなら音を立てずに死角から接近するぐらいわけないだろうが」


「…どうやって、私のいる場所が分かったのだ」


「答えてやる義理はない。敵に手の内を明かすほど自己顕示欲は強くないんでな」



 …不気味だ、不気味すぎる。

 こいつが今この場にいる、それだけで疑問が軽く2、3個は浮かんでくる。



「…なら、なぜわざわざ声をかけた。不意打ちでラナウグルを倒した一撃を当てればそれで勝負はついたはずだ」


「ただお前を殺すだけならそれで事足りただろうがな」



 仮面で顔の上半分は見えないが、露出している口元は幻惑効果があろうともある程度の表情は分かる。

 その口元が、禍々しい笑みを浮かべている。まるで獲物を見つけた魔獣のようだ。



「今回の騒ぎを起こした奴はただじゃおかん、と再封印する前に決めていたんでな。…楽に死ねると思うなクソ魔族」



 恐ろしい。人間をそう感じるのはいつ以来だろうか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、このような者が生まれるほど人間は進化したというのか。

 …欲しい、是非欲しい。その力が、その恐ろしい存在感を放つ貴様が。



「素晴らしい。………古代のスライム兵器なんぞより、貴様を見つけることができたのが私にとってはなによりの収穫だったようだ」



 会話をしながら、指の先から【テイム】スキル技能【傀儡乃糸】で生成した糸を仮面の男に向かって射出。

 目に見えないほど細い糸だが、生物に接続することができればその時点で相手の運動神経を操ることができる。

 自分より基礎レベルの低い相手にしか効果が無い技能で、一体しか対象を選ぶことができないうえにあまり長時間効果は持続しない。

 しかし、スキルの影響下にあるうちは対象者の意志に関わらず行動の操作が可能だ。

 簡易鑑定レンズで確認したこいつのレベルは24、私は35。操るには充分条件を満たしている。



「っ!」


「気が付いたか? だが、もう遅い。既に貴様の身体は貴様の意志では動かせまい」



 親指と小指を開くと、同じように仮面の男が万歳でもするように手を広げた。滑稽だな。

 テイム完了。あとは催眠スキルで心の底からじっくりと私に忠誠心を抱くように洗脳するだけで、優秀な手駒のできあがりだ。



「ラナウグルを秒殺するほどの実力があろうとも、相性の悪い相手にハマればこの有様だ。ああそう悲観しなくともいい。すぐに私に仕えること以外考えることもその必要もなくなる」



 洗脳が完了したら、まずはこいつの仲間と思しき小娘たちと戦わせてみるか。

 変わり果てた仲間と殺し合うことになった時に、あの小娘たちがどんな顔をするか今から楽しみだ。

 上手くいけば戦っている最中に小娘たちをテイムし、さらに手駒を増やせるだろう。その後にスライム兵器を解放すれば全て上手くいったことになる。

 ラナウグルとフルバータムを失ったことを差し引いてもお釣りがくる。怪我の功名とはこのことだな。



「さて、まずはカードを渡してもらおうか。アレは貴様らの手に余るもので」



 ボキィッ と何かが折れるような音と共に、右手の小指に激痛が走った。



「ぎぃいっ!!? っっがあああああああっ!!?」



 なんだ!? なにが起きた!

 痛む小指を見ると指が内側ではなく外側に折れて、赤黒く変色している。

 いったい、なぜ




 ボキッ ベキィッ!



「はぐぅぁぁあああああぎゃああああああっっ!!!」



 さらに左手の人差し指、右手の中指も同じように折れ、凄まじい痛みが襲いかかってきた。

 何者かの、呪術による攻撃を疑ったが、違う。私は誰の呪いも受けていないと鑑定レンズに表示されている。

 だとすれば、原因は、まさか。

 目の前の仮面の男を見ると、自分の意志では一切動かせないはずの身体でこちらに歩み寄ってきている。

 ぎこちない動きで、スキルの影響を受けていることは明らかだが確かに自分の力で歩いている。

 なんなんだこいつは。

 確かに傀儡乃糸に操られているのに、なぜ、動けるんだ。

 なぜ、操っているはずの私の指が折れていくのだ。


 駄目だ。


 こいつは駄目だ。


 文字通り手に余る。


 操るどころの騒ぎではない!


 逃げなければ。


 逃げなければ。


 逃げないと、こいつに、ころされ、る



 傀儡乃糸を解除し、恐怖で発狂しかけた脳細胞と無事な指を総動員しスパークウルフの角の粉末を着火した。


 シュボッと粉末が燃焼する音とともに、眩い閃光が辺りに満ちる。奴の目はこれで眩んだだろう。


 今のうちにできるだけ遠くに逃げなければ!

 塔の出口に向かって全力で走り、脱出をしようとしたが


 仮面の男は迷いなく私の目の前に空から舞い降りてきた。

 目も眩んではいないようだ。まさか、あの一瞬で閃光防御をしたというのか。



「き、きさまは、何者、だ!?」


「答える義理も義務もない。さて、もう抵抗は終いか?」



 再び、あの恐ろしい、悍ましい笑みを浮かべながら仮面の男が口を開く。

 それと同時に、確信に似た予感が私の頭によぎった。



「なら、今度はこちらの番だな。人の命をなんとも思っていないお前に、生きているということの素晴らしさを教えてやる」



 私は、今日、惨たらしく苦しんで、死ぬ。


お読み頂きありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[良い点] 前文にある2400件以上もの誤字報告は凄いですね。まさか個人で? (特別に)愛される作品になってきているということでしょう。 大きく支持されることおめでとうございます。 [一言] 私は感想…
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