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後には退けない

感想、ブックマークありがとうございます。

お読み下さる方々に感謝。

 あの後酔っ払いオヤジを憲兵の詰め所に連行して、一旦牢にぶち込んでもらうことに。

 執拗に急所を蹴られて不能になってしまったのか、意識が戻ってからもほとんど暴れたりはしなかった。

 詰め所で『自分はレイナの父親だ、その黒髪二人から娘を取り戻しに来ただけだ』とかほざいていたが、その娘を売りに出そうとしたことを口にしていたりレイナを殴ったりしていたのを目撃していた人が何人もいたし、レイナ本人が父に対して激しく嫌悪感をあらわにしているのでこちらの言い分が通ったのは当然だろう。

 まあ、正当防衛にしてもやり過ぎだと憲兵にレイナが少し注意されていたが、それ以外は特に問題なく事を済ませることができた。

 酔っ払いはしばらく監禁されることになった。レイナに腹パンした以外にも色々余罪があったらしく、内容次第では数年ほど牢で暮らすこともあり得るとか。

 重いような、軽いようなどうもはっきりしない罰だが、まああんまりこんな奴にかまってても時間の無駄だしもういいか。


 宿にも戻り夕食を済ませてから、一旦俺の部屋にアルマとレイナを呼んで今後の相談をすることに。

 部屋に二人を入れる時に他の客からジロジロ見られていたけど無視。別にいかがわしいことしてるわけじゃないし。



「二人とも座りなよ。立ったままじゃだるいだろ」


「うん」


「……はいっす」



 アルマとレイナがベッドに座る。

 …いや、ホントにいかがわしいことするわけじゃないからね?



「まずレイナ、あれでよかったのか? あんなのでも一応、父親なんだろ?」


「……はい、もういいっす。父親『だった』人ですけど、今はもう姿を見るのも嫌っす。和解? 冗談じゃないっす。片手を失ってからこれまであいつがしてきたことは、思い出したくもないくらい酷かったんすよ。憎しみは山ほど残ってるっすけど、関わらないでいてくれるならもうそれで充分っす」


「……そうか」



 やっぱヘヴィだわー。話が重い、重すぎる。

 この話題あんまり引っ張っても気分が重くなるだけだし、さっさと本題入るか。

 ってアルマ? レイナを抱きしめて何してるの?



「…辛かったら、遠慮せずに言っていい。なんでもかんでも自分一人で抱え込むことない」


「あ、アルマさん……」


「なんでも一人で解決しようとすると、ヒカルみたいに無茶を繰り返すようになるから、頼る時は頼って」


「……ありがとうっす」



 涙目になってアルマを抱き返すレイナ。尊い……。俺がさりげなくディスられてるのはともかく。



「あー、で、本題入るけどいいか?」


「は、はいっす」



 ちょっと気まずいけど無理やり話を本筋に戻す。

 だってあのままだといつまでもあの状態のままでいそうだったし、あんまり長引くと明日に響くし。



「あの時はああ言ったが、俺から聞いたことや強化されたことなんかを全部忘れて、他言しないと誓うなら別にレイナを縛り付けるつもりはない。前にも言ったと思うが、君の将来は君のものだ。まだ今なら引き返せるぞ、どうする?」


「……」



 レイナは黙ったままこちらを見ている。

 んー、さすがに即決するのは難しいか。



「なにも今すぐ答える必要はない。成人するまで時間はあるし、答えを出すのはもう少し育ってからでも」

「誓えないっす」



 話している途中で、レイナが口を開いた。



「もしも、お二人から離れたら会う人会う人全員にカジカワさんがスキルを使えないこと、なのに魔獣を軽々倒したり他の人のステータスを強化できることを言いふらすっす」


「ちょ、れ、レイナ…?」


「だから、雑用でもなんでもするっすから、お二人のパーティに入れてほしいっす。でないと面倒なことになるっすよー?」



 …あろうことかこちらを脅迫してきおったよこの子。いやおふざけ半分だろうけど。思った以上にたくましいなオイ。



「カジカワさんはすごく優しいっすから、自分の将来のことを真剣に考えてくれてるっす。でも自分の気持ちをもう少し知ってほしいっす。自分にとって一番進みたい道は、お二人と一緒に冒険することっす」


「君、俺たちの目的知ってる? 全然立派な目標なんか持ってないぞ?」


「色んなとこに足を運んで、美味しいもの食べたりしながら楽しく生きる、っすよね? 最高じゃないっすか。これ以上の目標なんか自分には思いつかないっすよ。自分もそれがいいっす。だから、お願いっす。一緒に連れていってほしいっす」



 こんなアタマ悪そうな目標に全力で賛同しちゃうかー。いいのかそれで。

 おまけに魔王や魔族が各地で派手に暴れ始めてるから達成するのが無駄に難しい目標なのに。おのれ魔王肋骨折れろ。



「……もう後には退けないぞ。それでもいいか?」


「望むところっす」


「じゃ、10日後に成人した時にパーティメンバー登録に行くか。改めて、よろしくなレイナ」


「は、はいっす! よろしくお願いしますっす!」


「さて、そうと決まれば色々話しておくことと、これから君がしなければならないことを話そうかフフフ」


「ひっ、な、なんか顔が怖いっすよ!?」


「ヒカル、無駄に怖い顔するのやめて」



 コワクナイヨー。ホントホントシンジテイイヨー。

 さて、冗談はともかくレイナがパーティに加入すると決まったらこちらも洗いざらい話すとしますか。

 後に退けないのは俺も一緒だな。覚悟決めろよー俺ー仮に裏切られたりしたら面倒なこと山の如しだぞー。

お読み頂きありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[気になる点] レイナの父親のことは、どうでも良いけど、母親はどのようにして生活費を稼いでいるのだろうかと心配ですね。
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