青年から学ぶ事
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スキルを獲得した後、まだもう少し時間があるのでせっかくだし銀髪青年(カグルアータという名前らしい)の魔法の訓練の見学をさせてもらうことに。
魔法を使う魔獣とか魔族とかがどんな攻撃してくるかの対策のためのと、アルマのアレンジ魔法の参考になるかもしれないからじっくり見せてもらおう。
「見学するのは別にいいんだが、危ないから離れていてくれよ」
「はーいっす」
アルマ以外の魔法を見るのはダンジョンで遭遇した三角帽子以来だな。
スタンピードでも後衛職の人間が使ってたけど、みんなLv20以下の人ばっかりだったし、言っちゃ悪いが参考にするにはレベルがちと低い。
三角帽子もホーミング火球と炎の槍、あと精霊魔法による地形操作くらいしか使ってこなかったし。あと補助魔法もか。
もっとじっくり使わせても良かったかなー。特に精霊魔法のレベルは2あったし、他の属性の精霊も召喚させて捕まえておけば良かった。
まあいい、過ぎたことは置いておこう。精霊魔法はロリマス辺りに頼めば契約できるだろうし。
青年の基礎レベルは30。かなり高いな、ギルドランクはC~Bってところかな?
職業は魔術士。魔法使いの一つ上の職業のようだ。ふむふむ、攻撃魔法以外にも補助魔法とか獲得してるな。
見習いを卒業した後、次のジョブチェンジをするために必要なレベルって大体25くらいだったっけ。となるとアルマは現在Lv23だから、あと2ほど基礎レベルを上げればジョブチェンジできるのかな。
そうなるとアルマがさらに強くなって嬉しい反面、その強さについていけるか不安だ。こっちがちょっと強くなれたと思ったらアルマも物凄い勢いで成長してたりするしな。陰の努力の差がでてるなー…。
おっといけない、それより銀髪青年の魔法を見学しないと。
ボココココッ ズガァンッ!!
おお、石の壁を囲むように四つも地面から突き出して、囲んだ中心に向かって上空から雷を落とした。
敵があの場に居たら身動きをとることができなくなって、雷の直撃を受けていただろう。
なるほど、一つの属性を強化するだけじゃなくて、複数の魔法を組み合わせて使うっていう発想もあるのか。魔力操作が使えない普通の人からしたらむしろこういった発想の方が自然なのかもな。
……ん? でもアルマ曰く同じ系統のスキルを同時に発動することはできないって言ってなかったっけ? 剣術スキルとか。
≪同時に発動したのではなく、地魔法ストーンウォールを四つ連続で一つずつ発動した後に雷魔法ライトニングストライクを発動した模様。ストーンウォールは発動後も石壁が残るので、他の魔法との連携が可能≫
なるほどねぇ、魔法を使う流れがとてもスムーズだったから同時に使ってるように見えたけど、実際は複数の魔法を一つずつ使ってたのか。
もしも敵がこんなの使ってきたら咄嗟に対応できるか不安だ。他にも魔法の連携でどんなことができるか見せてもらおうか。
他にも弾速が遅い複数の石弾を発射した直後に超高速の雷の弾を当てて着弾に時間差を加えて攻撃したり、大きな炎の弾を飛ばした後、風魔法で竜巻を起こして広範囲を燃やしたりと複数の魔法を組み合わせた技を見せてもらった。
発想に感心するなぁ。派手で見ていて飽きないし、見学させてもらって良かった。
「すごいっす! 壁が地面から突き出てきたと思ったらこう雷がどっかーんて! あと炎の竜巻なんか初めて見たっすよ!」
「はは、君も魔法使いを目指しているのならこれくらいいつかできるようになるさ。真面目に努力すればきっとね」
レイナがなりたいのは魔法使いじゃないんだけどな。
というかあの職業になんで攻撃魔法スキルが必要なのか理由が分からん。
「いつも一つの属性の魔法ばかり使ってたけど、組み合わせることであんな使い方もできるのかって驚いた。正直脱帽」
「相手があんな魔法を使ってきたらと思うと肝が冷えますね。パーティを組んでいらっしゃるならさぞ頼りにされているんじゃないでしょうか」
そう言うと、青年の表情が少し暗くなった。
あっやべ、なんか地雷踏んだっぽい。
「…頼りにされていたかどうかはともかく、それなりに頑張っていたつもりだったんだけどね。先日、組んでいたパーティから抜けるように言われてしまって、今はソロで活動してるんだ」
「え、あんなに魔法を上手く使えるのにっすか!? なんで!?」
「より高いレベルの魔術士の人がパーティに入りたいと言ってきて、他のメンバーがそれを承諾したんだが、そうなると職業が被ってバランスが悪くなるから出ていってほしいと言われてね。僕は新たに入ってきた人の下位互換で、足手まといになるんだってさ」
「……酷い……!」
いやいやいやなんっだそりゃ。他のメンバー最低じゃねーか。
人のことをレベルや性能でしか見てないのか? あんな魔法の使い方できる人そうそういないと思うんだが。
「そんなのおかしいっすよ! これまで一緒に頑張ってきたのにもっと強い人が入ってきたからってそんなあっさり追い出すっすか普通!?」
「…正直納得しかねている気持ちも大きいが、僕の方にも問題が無かったわけじゃない。パーティの連携やそれぞれの役割について意見を出し合う場で、いつも少し強く言い過ぎていたから、という理由もあったんじゃないかと思う」
「例えば?」
「依頼をこなす前日や依頼中は酒を控えろ、でないと体調不良で失敗する恐れがあるぞと注意したり、戦闘中に前衛は魔物を引き付けることを意識しつつ、後衛の攻撃が当たらないように退くときはちゃんと退け、でないと魔法や弓が上手く使えず後衛の人間の役割が十全に果たせず前衛ばかりに負担がかかることになるぞと言ったりしてた」
「……それ、言って当然のことじゃないですか? むしろ注意しない方がダメでしょそれ」
「何度も何十回も同じことを言っていたんだが、うるさい、お前に注意される筋合いはないこの若造とか言ってまともに相手されなかったよ。注意する度に僕に対して腹を立てていて改善するつもりはなかったようだった」
「…いやもうそれかえってパーティ抜けて正解だったんじゃないっすか? 他のメンバーダメダメじゃないっすか」
「それでもこれまで辛うじてだが上手くやってこれてたんだ。少しずつでも悪い所を直していって、いつかちゃんとしたパーティになれると信じていたんだが、この有様だよ…。まあもう過ぎたことだし、彼らが悪い、と思うよりも自分が彼らと付き合うのに向いていなかったと思うことにして、自分を見つめ直すのも兼ねてソロで活動しているというわけさ」
顔には出さないが、悲し気な感情を含んだ声で銀髪青年はこれまでの経緯とこれからの自分のことを語ってくれた。
…冒険者にも色々あるんだな。そりゃそうか、人間だもの。み〇を。
「すまない、つまらない自分語りなんかを聞かせてしまって、無駄に暗い雰囲気にしてしまったね」
「いえ、そんなことはないですよ。魔法の使い方だけではなく、パーティを組んでいるとそういったことを経験することもある、ということを学ばせて頂きました」
「カグルアータさん、どうか元気出してほしいっす。あんなにすごい魔法を使えるなら、どこのパーティに売り込んでも即戦力っすよ! 追い出したパーティがろくでなしばっかりだっただけっす!」
「…気を使ってくれてありがとう。君も、立派な大人になれるといいな」
「もちろんっす。すぐに強くてナイスバディな大人の魅力溢れる女になるっすよー」
「……………………そうだね」
「なんすかその間は!?」
察しろ。涙拭けよ。
…もしも、アルマよりも剣も魔法も使える人がパーティに入りたいと言ってきて、アルマがそいつの下位互換になるようなことになったら、俺はアルマに出ていけと言ったりするんだろうか。あるいはその逆は? 俺より料理も戦闘もこなせる人が入ってきたらアルマはそんなこと言うか?……いや、そりゃないわ。
パーティメンバーが強いに越したことはないけど、それより一緒にいて楽しいかどうかの方が俺にとってはよっぽど大事だ。効率ばかり気にしてると本当に大事な物を見失う危険性もあるしな。
…でも、愛想尽かされるような行動ばっかとってると、そういうこともあり得るか。そうならないようパーティメンバーは大事にしよう。もちろん一緒に行動してるレイナのことも。
甘やかしすぎるのもそれはそれで問題ありそうだが。
「カジカワさんもなに遠い目してるんすか! そんなに自分は子供っぽいんすか!?」
「そんなことはない! 近いうちに君はとっても素敵な女性になれるさ! 絶対に!」
「言ってることはとっても嬉しいことなんすけど真顔無表情のままで言われると逆になんかすっごく腹立つっすー!!」
でもこうやってたまにからかうぐらいはいいだろう。
レイナの反応見てるだけで楽しいしなハハハ。
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