飯食う事が強くなるキッカケとかおかしい気が(ry
フライパン目当てで大食い大会に参加したのはいいんですが、正直今ちょっと後悔してます。
だって俺以外の参加者、明らかに体格からして大食いっぽいもん。
良いガタイしてたりあのデブ貴族よろしく太ってたりする中、標準体型の俺一人が浮いてる気がする。
いやまあ日本の大食いキャラの人とか普通の体型しててもキロ単位で滅茶苦茶食ったりしてるけどさ。あの体のどこにあんなに入るのやら。
参加者は俺含めて10名ほど。番号札が参加者ごとに配られていて、俺は10番。
料理スキルを持っていない人も何人かいるけど、単に大食い目当てで参加したのか景品の転売目的かのどっちかかな。
観客も結構な人数がいるな。こんな催しでも貴重な娯楽なんだろうなー。
「おうニイちゃん、随分痩せてんな! 肉くえ肉!」
「ちゃんと飯食ってんのか? まぁ無理すんなよ! どうせ優勝はオレだろうしな!」
「あ? お前俺の腹見てもそんなこと言えんのか? 寝言は寝て言えや!」
…なんでこんなテンション高い人ばっかなの。
もう今からでも辞退したいと思い始めたが、料理が運ばれ始めたのでもう遅い。今辞退したらまるで料理が不味そうで降りたみたいで店の人に失礼だし。
仕方ない、フライパンのために気合入れて食おう。無心で食おう。
「はーい! では今から大食い対決を開始致します! ルールはいたってシンプルで1時間以内により多く食べた方が優勝です! 妨害行為等した方は即失格! 正々堂々食いまくれぇ! 優勝は果たして誰の手に渡るのでしょうか!? では、レディ~~~GO!!」
実況の人もテンション高いな。
まあ小さい声で実況されてもこっちの気が滅入るし、あれでいいのか。
さて、最初は魚料理か。白身魚のバターソテーにバジルっぽいソースがかかっていて見てるだけで食欲が湧いてくるな。うむ美味い。レシピが欲しいな。
他の参加者の人たちは味なんて二の次と言わんばかりにほとんど咀嚼せずに飲み込んでいる。もっと味わって食えばいいのに。
「1番、速い! 最初の皿をわずか5秒で空にしました!」
ちゃんと噛んで食えよ。消化に悪いぞ?
1時間もあるんだから、1皿食うのに一分ぐらいかけても60皿くらい食えるのに。いやそんなに入らないだろうからもっとゆっくり食ってもいいくらいだ。
ああでも噛むと食欲中枢が刺激されて満腹感が増加するんだっけ?…まぁいいや。周りを気にせず自分のペースで食おう。優勝狙ってはいるけど、料理の味を楽しむのも大事だしな。
「10番、とってもマイペースですね! 他の方はもう二皿目を終えようとしてるのがほとんどですよ!」
うっさい、飯くらいゆっくり食わせてくれよ。
あ、でも二皿目のエビの煮込みっぽいのも美味そうだな。
「ありゃ、やっぱ10番だけおっせぇな」
「仕方ないよ、他の人たちでっかい人ばっかだし。むしろあんななりでよく参加する気になったもんだと根性は認めてあげようよ」
「10番頑張れー! 食い過ぎて体壊すなよー!」
応援ありがとう。でも恥ずいから勘弁してくれ。
しばらく食い続けて、5皿目に手を付けた時に体中にナニカが満ちてくるのを感じとった。
……来た。きたきたきた!……いや別に辛い料理食ったからでもヤバいクスリキメてるわけでもないからな?
メニュー、俺のステータスのSPの数値を表示。
梶川 光流
Lv22
SP(スタミナ):2/102
思った通り、SPの数値が増加したようだ。
こんだけ食ってようやくSPの数値が増えるのかよ。こりゃ4人前どころじゃ足りないかもしれんな。
食いながらSP、スタミナを操作できないか試してみてるが思った通り、いやむしろ魔力や生命力と比べても今までで一番操作しやすいくらいスムーズに操ることができた。
スタミナの直接操作って、なんか言い方に違和感あるな。スタミナは別名気力とも言うらしいし、気力操作でいいか。……やっぱ安直だな。
気力を腕の筋肉に集中するイメージで動かしてみると、手に持っているフォークがまるで紙でできているかのように軽くなった気がした。いや元々軽いもんだから変化が分かり辛いけどな。
目に集中すると遠くの景色が鮮明に見えるし、耳に集中すると
「ああーっとぉっ!!! 3番ここでダウゥゥーンッッ!!!」
うるせええええぇ!!! あばばばば……!! 思った通り聴力が強化されたけどその間に実況の大音量がもろに耳に刺さった…! あー、耳の奥がキンキンする…。
う、うむ。どうやら気力操作は体の機能の強化、というより能力値の底上げができるようになるらしい。
使いどころを誤ると、今みたいにかえってダメージを負うことにもなりかねんから注意しないとな。……耳痛ぇ。
つーか三番って対決始まる前に腹見せながらイキッてた人じゃん。もうギブなの? あ、状態表示に過剰満腹って表示されてる。頼むからここでリバースするなよ。
気力操作の検証はひとまずこれくらいにしとくか。あんまSP消費してもなんか卑怯な気がするし。外付けのステータスなんか持ってるのにそんなこと言っても今更感はあるが。
「お、おい、あの10番食うペースがまるで落ちてねぇぞ?」
「最初はゆっくり食ってるように見えたのに、他の奴らのペースが落ちてきて今じゃ一番速いペースで食ってる…」
「バケモンだ、バケモンがおる…」
さらに食い続けて数十分。
空にした皿は既に30皿は超えてる。いやいやいやどんだけ入るんだよ俺の腹は。質量保存の法則はどうした。
これ満腹感が麻痺してて、実は既に胃腸が破裂寸前とかじゃないよね? 怖いんですけど。
「あ、あんた何モンだ……? うっぷ…」
「その細身のどこにそんな量の飯が入るんだよ…」
「じ、10番、未だペース衰えず! 既に限界を迎えている選手がほとんどの中、一人黙々と涼しい顔で食べ続けています!! どうなってんだこの人の腹は!?」
実況がやや引き気味に俺のこと言ってるけど、こっちが聞きたいわ。
まあさすがにSPもそろそろ満タン近くなってきてるし、あと2、3皿も食えば最大値に到達するだろう。
他の人たちは大体多くて20皿くらいか? いやあんたらもよくそんなに食えるな。
最初はそんなに量が入ってなかったのに、徐々に一皿ごとの量が増えていってるから後半になるほどきつくなってくる。
この皿の上の特大ハンバーグなんか開始時に5秒で食うことなんかどうやっても無理だろ。この企画運営してる人ホント外道。
ピピーーーッ!!
で、ハンバーグを食い終わったところで終わりを告げる笛の音が鳴り響いた。御馳走様。
「けっかはっぴょーーーっ!!! てか見りゃ分かるでしょうが、10番の方の優勝ですっ!! まるで底なし沼のような胃の容量! まさに圧倒的勝利っ!! いやホント大丈夫? 腹破れそうじゃない? 医者呼ぼうか?」
後半素で心配するのやめーや。
随分食ったのに、腹が出てないのがホント意味分からん。もしかしてアイテム画面みたいにどこか別の所に食ったものが保管されてたりするんだろうか。なにそれこわい。
「景品の、焦げ付かないアダマンメッキ処理済みのフライパンを進呈しますっ!! 皆さま拍手ー!!」
アダマン? アダマンタイトとかアダマンチウム的な? いやそれ調理器具に使っていいもんなの?
焦げ付かないならなんでもいいけどさ。
「ま、負けたぜ……ゴフッ……」
「ふ、ふふふ……思わぬライバルが、現れやがっ、うっぷ……!」
無理して話そうとすんな。吐くならトイレにでも行け。
景品のフライパンを受け取り、さっさと店から退場。
観客が道を譲ってくれてるけど、こっちを見て逃げてるようにも見える。食べたりしないからそう露骨に距離とらんでも。
「お、お疲れ様っす。……カジカワさんの腹ってどうなってんすか?」
「…メニュー、使った?」
「使ってないよ。出された料理は全部ちゃんと食べた。ズルしてまで欲しいもんでもないし」
「そ、そう……」
なんか二人まで引いてる気がする。あんなに食いまくったところ見せたことないし、無理もないか…。
「さて、いいフライパンも手に入ったし、晩御飯の材料買って帰りますか」
「まだなんか腹に入るんすか!? おかしいっすよ絶対!」
「ヒカル、今日は無理に晩御飯食べなくてもいいんだよ…?」
いや、晩御飯までまだ大分時間あるから。今すぐ食うわけじゃないのにそんな反応しなくても。
スタミナの補給と気力操作の習得ができたのはいい収穫だった。
気力操作はもっと早く試しておけば良かった気もするが、まあ今更過ぎたことをどうこう言っても仕方ないし、後はもう少し操作に慣れるまで色々試してみますか。
さーて今日の晩御飯何にしようかなー。これ以上バカスカ食うのも気が引けるし、軽めのものにしておくか。
お読み頂きありがとうございます。




