おかんといっしょ
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修業を始めて半月経過、未だにレイナは攻撃魔法スキルを獲得できていないが、メニュー曰くあとほんのわずかに魔法を使えばスキルを獲得できるとのこと。
一応、知能の数値が2ほど上がってはいるが、それ以外は特にステータスに変化はない。
MPを枯渇させてから再補給して最大値を上げる方法も試してみたが、成人前の子供はその方法ではMPの最大値を増加させることができないらしい。
多分、最大MPを増やすために何度も長期間意識を失うことで発育に悪影響を及ぼすのを防ぐためにこんな仕様があるんじゃないかと考えられる。まあそうでもしないと心無い人間が誰かを子供の頃からMP枯渇させまくって魔力タンクとして運用したりとかしかねんしな。…我ながら物凄くエグいことを考えてしまった。
いや待てよ? それを言ったら成人した後なら同じことができるんじゃね? 俺やアルマみたいに。……これ以上この話題について考えるのはやめとこう。なんかすごく不安で不快な気分になる。
今日は修業の息抜きに街を歩いて買い物と食べ歩きをすることに。
俺とアルマはともかく、単純作業の修業ばっかさせてるとレイナの精神衛生上良くないし。
「イヤベツニタイシタコトナイッスヨーハハハ」
白目で乾いた笑いを放ちながら答えるレイナ。うん、もう大分限界っぽい。今日は思いっきり楽しむがいい。
成果の見えない単純作業を繰り返すのは拷問に近いらしいし、思ったより精神に負担がかかってたみたいだな…。
ヴィンフィートの街は今日も賑やかな様子だ。
並ぶ店や屋台を見ているだけでも飽きない。商いだけにゲフンゲフン。
レイナは初日に買った服を着せているが、こうして見るとやっぱかなりの美少女だよなあ。あの時はアルマの方にばっかり目がいってたからよく見てなかったようだ。
怪しい男とかに話しかけられないか心配だったので、知らない人についていったりしないように事前によく注意をしておいたがそれでも不安だ。
「なんかこうして注意されてると、なんというか……」
「…なんだ? お父さんみたいってか?」
「いやおかんみたいっす」
「おかん!?」
「分かる」
「アルマ!?」
…もう親戚のおっさんとかおじいさんでもいいからせめて男に例えてほしかった。
俺、知らないうちにおかん化しつつあったのか? まあ最近料理作ったりするのが趣味の一環になりつつあるけどさ。…もういいや。
さて、気を取り直して街を散策しますか。
まず装備屋。いや息抜きの始めが装備屋ってのもおかしい気がするが、後に回すのも面倒だし先に仕事関連の用件は済ませておきたいし。
ドアを開け中に入ると、赤髪ロングの女店主が声をかけてきた。
「いらっしゃーい! あ、カジカワさんか、頼まれてた装備出来上がってるよー」
「はい、そろそろかと思って受け取りに来ました」
「はいはい、それじゃ試着しましょうねー」
「は、はいっす」
そう言って、レイナを連れて試着室に連れていく店主さん。
前にこの店でもアルマがこの場で着替えようとしたから最初っから誘導してるな…。
因みにその時に熊公の毛皮から作った革を使った装備を作ってもらった。
毎回作ってもらう装備が俺は胸当てでアルマは胴当てだけど、胸当ての方が急所を守れるからいいんじゃないかって言ってみたが、アルマ曰くすぐにサイズが合わなくなってしまうから胴当てにしているとのこと。
……未だに成長中ですか。まあアルマママのサイズを見る限りさらに成長してもおかしくないけどさ。……あんまそう言ったこと考えると脳内ゴーストがセクハラ判定して五月蠅いから一旦止めよう…。
試着が終わって出てきたが、うん大体想像通りの装備だな。…肩とか太ももとか一部露出してるのが気になるが。
全身軽装の黒装束だが、内側に熊公の革を仕込んであるので防御力は折り紙付きだ。
頭の方も布を被って綺麗な金髪が隠れてしまっていてちょっともったいないが、そもそも目立たないようにする衣装だしな。
…まあ街中でこんな格好で歩いていたらかえって目立つだろうけどな。
「注文通り作ると、ちっと中が蒸れそうだったから一部スリット入れたりしたけど、これはこれで色気があるねぇ」
「い、色気っすか? あれっすか、大人の魅力ってやつっすか?」
「お、おう」
嬉しそうにしてるとこ悪いが、確かに色気がなくはないけどレイナの子供体型じゃ大人の魅力って言うにはちょっと無理がある気がする。
いや、こないだのアルマが着てた黒ワンピースストッキングスタイルと比べるのは酷だけどさ。
「あと、ハイケイブベアの牙から作った短刀だね。いやーとにかく硬くて研ぐのが大変だったよ本当に」
「え、あのおっきな熊の牙から作ったんすか!? いやこれ絶対高いでしょ! ホントにもらってもいいんすか!?」
「成人前の子供に持たせるにはオーバースペック気味だが、まあ成人して成長すればすぐに装備に見合った実力を身に着けられるよ。いいからもらっておきなさい」
「は、はい。……こんなに色々もらって、返しきれるか心配っす」
「合計で110000エンになりまーす、まいどありー」
「たっか! やっぱたっかいっすよ!」
確かに高いが、熊公の討伐報酬と素材を売ったお金がそこそこ溜まってるので払うのには問題ない。
ひと月の宿代の3分の2弱の値段だが、今の稼ぎの状況ならすぐに取り戻せるだろう。
…金銭感覚が麻痺してきてるのは自覚してるつもりだが、6ケタ超えてる買い物を躊躇なくするのは我ながらちょっと思うところはあるが。
普段着に着替えさせてから店を出て、次は食べ物を売ってる屋台を回ってみることに。
前から気になってはいたが、中々食い歩きの機会が無かったんだよなー。洞窟の討伐依頼をこなすといつもへとへとで回る気力が湧かなかったし。
「お、あのターキーレッグって肉美味そうだな、二人はどうだ?」
「……食べてみたい」
「お肉ならいつでもどこでも大歓迎っす!……って一本1500エンするんすけど、お金大丈夫っすか? いやこれでも安い方っすけど」
「今日回る時のお金の一人頭の上限は一応決めてあるから、それを大きく超えなきゃいいよ。すいませーん、3本下さーい」
「ヘイ! まいどあり!」
上限は大体一人20000エンくらいを見ている。え? 高すぎ? いやだってこの世界の料理の値段やばいくらいに高いんだもん。
この店で売ってるちっさいリアルマンガ肉みたいなのだって、お祭り価格とかじゃなくて普段からこの値段だし。
あ、でもうっっめぇ。なにこの肉、表面カリカリで中はとってもジューシーで塩加減もベスト。香草の香りも肉の味を引き立てる程度に抑えられててしつこさを感じさせない。
久々に他人の作った料理を食ったけど、やっぱ美味いわー。売ってるおっちゃんの料理スキルのレベルをちょっと覗いてみると、Lv7だった。これって大体どんくらいの腕なの?
≪Lv7ならば高級レストランの料理人として充分働けるレベルであるとされている≫
すげーなこのおっちゃん。なんでこんな小さな屋台で売ってるのやら。
料理店にでも行けば引く手数多だろうに。いやまあ手軽に自分の作ったものを食べてもらいたいからかも知れないけど。
「美味しい……!」
「めっちゃ美味しいっす! 今まで眺めるしか出来なかったものがこんなに美味しかったなんて!」
アルマとレイナも感激した様子で食べている。うんうん分かるぞ、美味いよな。もう一本食いたいぐらいだがここで腹いっぱいになるのは後に響くし、我慢しとくか。
これで1500エンならむしろ安いかもしれないと思うくらいだ。
最初の店でこんだけ美味けりゃ、後の店にも期待が持てるな。さーて、次は何食おうかなー。
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