それぞれの修業 …修業?
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レイナの修業、と言うよりスキルの熟練度稼ぎ開始から一週間が経過した。
スキルを獲得するまで本当に熟練度が上がっているのか分からないが、メニュー曰くこのペースならレイナが成人するまでに充分間に合うとのこと。
アルマの魔法剣スキルはちょっと魔法剣もどきを使っただけで獲得できたのに、今回なんだかえらく時間かかってるな。いや魔法剣の仕様が特殊なだけで、本来スキルの獲得にはこれぐらいかかるのが普通なのかね?
≪魔法剣スキルLv1の獲得に必要な熟練度はほぼ0に近い。本来の獲得条件が見習いパラディンが攻撃魔法スキルと剣術スキルをそれぞれLv4まで上げることで、それ以外の方法を想定しておらず、必要な熟練度数値を設定していなかったのだと推測≫
熟練度の設定ってのは、やっぱ世界のコトワリってやつがしてるのかね。ヘイヘイコトワリーデバッグ甘いよー。
「フフフ…今日もまた、穴の中のナニカに向かって魔法を撃つ修業が始まるっす……」
死んだ魚のような目で呟くレイナ。……反応が面白いからとちょっとからかい過ぎたかな。単純作業ばっかで修業が上手くいってるのかよく分からない不安もあるかもしれないが。
レイナの修業は大体3日に2回くらいのペースで行っている。
本当は毎日でもやっておきたいところだが、生活費なんかを稼ぐのにどうしてもレイナの修業ばっかやってるわけにはいかないからだ。
穴の中の熊公も何日も放置してたら死ぬだろうから定期的に中身を交換する必要があるしな。役目を終えた熊公は経験値も素材も報酬もおいしく頂くことができるし、一石二鳥だ。…なんか我ながらかなり酷い言い草に聞こえる。
レイナばっか修業させて自分たちの修業がおろそかになるのも良くないということで、討伐依頼をこなすついでに実戦形式で修業をしていくことに。
アルマは魔法のアレンジは大体要領を掴むことができたようなので、今度は剣術スキルのアレンジを試しているようだ。
例えば剣術スキルLv1【魔刃】は剣に纏わせた魔力の刃を高周波ブレードのように高速で振動させて切れ味を強化する技能で、魔力操作で魔力を追加すると刃の振動数が増加し、より攻撃力が増す。
Lv2は【魔刃引き】と言って、剣に魔力を纏わせ、あえて切れないようにするいわゆる非殺傷用の技能だが、アレンジすると相手の攻撃を防ぐ際に衝撃とかを大幅にカットしてくれる盾代わりに使えるようだ。
Lv3は【伸魔刃】剣の先から魔力の刃を伸ばしてリーチを強化する技能。より長く刃を伸ばしたり、伸ばした刃の形を変形させたりできる。時々縮れたような変な形にしたりしてるけどあれは遊びでやってるんだろうか…。
Lv4は【魔刃・遠当て】魔力の刃を遠距離に飛ばす、いわゆる真空切りに近い技能。魔力操作で通常より大きな刃を飛ばしたと思ったら、途中で分裂させて複数の対象を斬り付けたりしてる。器用だなぁ、威力も風魔法のエアブレイドに比べてかなり高いみたいだ。
Lv5は最近習得した【魔刃・疾風】剣身から魔力を勢いよく放出し、その反動を利用して高速で剣を振るうことができる技能。この技能のアレンジにはかなり苦労したようで、魔力を籠め過ぎて制御不能なほどの勢いで魔力が噴き出して手から剣がすっぽ抜けたりしてた。危ないなオイ。
剣を振りぬいた直後の硬直をキャンセルして次の攻撃を繰り出したり、鍔迫り合いになった時に一気に押し切ったりと中々応用の利きそうな技だな。高レベルになるにつれ強力な技能も段々増えてきたようだ。
しかもこれらの技能は他のスキルと併用することができるから恐ろしい。特に魔法剣と組み合わせると近接戦闘じゃ凄まじい強さを発揮できるだろう。
まあ複数の剣術スキル技能を同時に発動することは今のところできないようだが。
因みに攻撃魔法もLvが上がっていて、新たに【闇】属性の魔法を使えるようになったようだ。このまま全属性コンプしそうだなこの子。
闇って言われるとなんか厨二臭くて強力そうではあるけど、具体的にどんな攻撃なのか分かり辛いイメージがあるな。本来暗い場所とか光が無いことを意味するわけだし。
この世界の闇属性の攻撃は、大きく分けて二つの攻撃手段を持つらしい。
一つは物理的な攻撃。打撃や斬撃など、不定形の魔力を様々な形に変化させて干渉することができる。これだけなら他の属性でも似たようなことができるから特筆するほどのことじゃない。
問題は闇属性ならではの特性の方だが、これがかなりヤバい。触れるだけなら害は無いが、闇属性の魔力に侵食された物体は侵食された部分が徐々に分解されていき、固体や液体としての形を失うことになるらしい。なにそれこわい超怖い。
さすがにどんなものも問答無用で侵食・分解できるというわけではなく、防御力が高い人とか頑丈な物体なんかは侵食されにくいらしいが、それでも凶悪な効果を持った属性には変わりない。
まあ光属性や火属性、あと雷属性なんかの強い光を放つ属性には滅法弱いらしいが、その他の属性には大体圧し勝てるそうな。使いどころをちゃんと考えれば強大な力になるだろう。
アルマの修業は大体そんな感じの内容。
短期間に色々工夫してスキルのアレンジをしてるが、今のところ一番強力なのはやっぱ精霊魔法かな。
落とし穴作って落として塞げば大抵の相手に勝てるしな。精霊魔法マジチート。
…他の属性や上位の精霊を使役できるようになったらもう手が付けられないほど強くなりそうだな。不遇職と呼ばれたころの面影はもはや微塵も残ってない。不遇どころかもうチートや、チーターや。
で、俺の方の修業ですが切り札となる高火力の技を編み出すことを目標に行うことに。
目標としてはハイケイブベアにまともにダメージを与えられるくらいの技を作りたかった。縮地モドキとパイルの合わせ技が今のところ実戦で使える最高火力の技なのに、あまり効いてなかったからこのままじゃ決め手に欠けるし。
魔力の大半を費やして【着火】を使えば文字通りそこそこ高火力になるかもしれんが、燃費が悪すぎる。実戦で使うにはもっと低燃費じゃないとすぐ息切れしてしまう。
で、色々考えていくつか技を作って試してみたけど、実用性がありそうなのは二つぐらいしか開発できませんでした。しかもどっちも魔力パイルバンカーの応用だし。我ながら発想力が貧弱すぎませんかね。
詳細は省くが一つは攻撃というか防御というか、攻防一体の技だけど相手の攻撃に合わせる必要があるから使いどころが難しい。ミスったら相手の攻撃をまともに受けることになりかねんからリスクがでかい。上手くいけば無効化したうえでカウンター気味にダメージ入るけど。
もう一つはとにかく高火力の技。その分反動もでかいけど。撃った後に不具合が生じるとかじゃなくて主に物理的に。試しに使ってみた時には腕がもげるかと思った…。改良して反動は大分抑えられるようになったが発動まで少し溜めがいるのが難点か。
因みに使った相手はハイケイブベア。頭に上手く当てられたのはいいけど頭部が丸々弾け飛んで、グロいの通り越して粉々になってた。牙とかの素材が…。ま、まあ火力不足は解消したかな。
「…火力不足どころかむしろ火力過剰な気がする…」
「いやいや、こんな洞窟の魔獣にすらまともにダメージ与えられないようじゃ明らかに火力不足だよ。アルマなら魔法剣とか剣術スキルを使えば正攻法でも十分戦えるだろうけど、あのままじゃどう考えてもまずかった」
「そもそもレベルが一回り以上高い魔獣を仕留めるのを目標にしてる時点でおかしい…」
「確かにそうかもしれない。でももしも魔族が襲ってきて、そいつのレベルが格上で逃げられない状況だったら、格上にも通用する技がなければ即、死が待ってるだろ?」
「!……そうだね」
新たに開発した技のお披露目をしたら案の定いつものように顔を引きつらせていたが、もしも魔族が襲ってきた時のことを話したら引きつった顔から一変、真剣な表情に顔を変えた。
なんか修業やレベリングの度に魔族対策をーって言ってる気がするが、俺にとっては未知の相手だし準備は入念にやっておいて過ぎるということはないだろう。
正直この新技も通用するかどうかも保証が無いし、最悪通じそうになかったら飛行士の正体がばれるの覚悟でアルマとレイナ抱えて逃げよう。
「うん、私も魔法剣と剣術の組み合わせをもう少し試してみる」
「ああ、頑張って」
さっきの俺の言葉を聞いて危機感を覚えたのか、修業のモチベーションが上がったようだ。
火炎剣を発動し、さらに剣術スキルを使うのを試すようだ。
火炎剣が魔力操作で強化され、白から青に炎の色が変わる。その状態でも充分な火力があるがさらにどうする気だろうか。
ブンッ すぽっ
「あ」
あ
ドスゥッ! ジュウゥゥゥッ……
…【魔刃・疾風】を火炎剣と組み合わせようとしたらしいが、強化した火炎剣と連動して魔刃・疾風も出力が上がっていたらしく、制御しきれず手から剣がすっぽ抜けた。だから危ないってその技。
飛んでった剣は壁に刺さり、刺さった部分が高熱で溶けた。手に持った状態じゃなくてもすごい高熱だな。
「…失敗した」
「…ドンマイ」
少し恥ずかしそうな顔で呟くアルマ。
まあ最初っから上手くいくとは限らないし、実戦でこうならなかっただけ良いとしよう。
「次はちゃんと離さない」
いや、別の組み合わせ試そうよ。こっちに飛んできたらと思うと怖いんですけど。
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