出費が痛い 将来に期待
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遅くなって申し訳ありません。
街に戻って、まず真っ先に向かったのは銭湯。
テリトリーでの戦闘でひと汗かいたのもあるが、お日様の下に出ると言っちゃ悪いがレイナの全身の汚れ具合がよく見えて、これじゃちとアカンということで連行しました。
一人頭500エン程度で済むから一度入るくらいならさほど痛い出費じゃない。…いややっぱちょっと痛いかな。軽く膝擦りむいたくらい痛い。
本当なら毎日湯船に入りたいくらいだが、経済的に厳しいので普段は宿の簡易シャワーで我慢している。でもレイナを一度さっぱりさせるにはシャワー程度じゃちょっと心もとないくらい汚れてるからやむを得ない。
風呂付きの一戸建てでも買えたら毎日風呂に入れるのになぁ。でもどこかに腰を落ち着けるような状況じゃないし、お金もそんなに余裕が無いしなー……。
俺は男湯、アルマとレイナは女湯に分かれてそれぞれ一風呂入った。
うむ、やっぱ湯船に入ると疲れがとれるなぁ。心なしか身体が軽くなったような気さえする。
風呂から上がった後のレイナを見ると一瞬誰だと思った。
ボサボサだった髪もサラサラと艶やかな金髪になり、全身の汚れが落ちて綺麗な肌に大変身。着てるものがボロじゃなかったらスラム暮らしの子供には見えないほどの美少女になっていた。
なんてもったいない。この外見なら飲食店のウェイトレスにでもなればいい客引きになっただろうに。……それ以前にスラムじゃ別の商売の対象になりそうだからあえて汚くしてたのかもしれないが。
風呂から上がった後、「結構なモノをお持ちだったッス……」と遠い目をして自分の胸にペタペタ手を当てながらアルマの方を見ていた。…ま、まだ成長の余地は十分あるから、な?
そっから今度はレイナの服を購入するため服屋に。
いつまでもボロのままじゃ可哀そうだし、せっかく綺麗になったんだからそれ相応の服を着せてあげたい。
それにアルマの服も見ておきたいしな。いつも食い物とか装備屋とか華のないトコばっか連れて歩いてるからなぁ。
女の子なんだし、オシャレはさせてあげるべきだろう。…それに俺には女性物の服の選び方なんか分からないし、服のチョイスはアルマに任せてしまおう。
で、十分くらい経って店から二人が出てきたが、これまた見違えるような変身ぶりだった。
レイナの方はフリル付きで肘までの長さがある赤めのブラウスにクリーム色のスカート、白黒縞々のハイソックスに赤いブーツを履いて、後ろ髪を大きなリボンで結んでいる。
うんうん、よく似合っているんじゃないか。着る物一つでこんなに印象が変わるんだなぁ。
アルマの方はシンプルで涼し気な黒いワンピースにこれまた黒いストッキング、そして前髪に花形のヘアピンを着けている。
うわっほい。思わず変な声が出そうになった。
いやこれ似合ってるんだけどちょっとセクシーすぎへん? 特に黒いストッキングが。ぶっちゃけ扇情的ですらあるんですが。ま、まあ本人が気に入ってる様子だからいいけどさ。…悪い虫がつかないか心配だ、とかアルマパパなら言いそうだな。
そして、これらの購入費用で軽く4万ほど財布からお金が消えました。……必要経費とはいえやっぱ痛い。勢いよくコケて地面と顔面キッスするくらい痛い。
「こ、こんな綺麗な服買ってもらっていいんスか? 自分にはもったいないっすよ、今からでも返品した方が…」
「そんなことない、よく似合ってる」
「遠慮せず着ておきなさい。そのうち服ぐらい好きなだけ買えるくらいに稼げるように鍛えてやるから」
「き、鍛えるッスか?……自分のステータスじゃ、鍛えたところで限界があると思うッスけど」
「そのへんの相談も一段落したらするつもりだよ。いいから今は買い物を楽しんどけ」
「は、はぁ……」
服一つ買っただけでこの反応。どんだけ自分に自信がないのやら。
急に綺麗な服を買ってもらってどこか不安そうにしているが、それでもどこか嬉しそうにも見える。
鍛えると言われた時に少し怪訝そうな顔をしていたが、レイナの可能性は本人が思っているよりもずっとすごいものだと思うぞ?
「アルマもとても似合っているよ。……少し大胆にも見えるが」
「? どこか変なところでもあるの?」
「変じゃないが、ちょっと魅力的すぎるというか……」
「ぶっちゃけちょっとえっちぃッス」
「…!?」
「ちょっ…」
レイナ、言い方がストレートすぎるわ!
アルマがレイナの感想を聞いてから、恥ずかしそうに顔を赤らめて身体の前を手で隠すようにしてるけどそのせいでますます色っぽさが増してる。どうすんだこれ、もはやフェロモン兵器と化してるんですが。
無意識の仕草でこの色気はやばいな、でも着替えさせるにはもったいないくらい綺麗だ。…アカン、俺も魅了されかかってる。
状態もなんの冗談か【魅了(小)】(対象:アルマティナ)とか表示されてるし……ってマジで魅了されてるじゃん! やべぇなこの子!
「…アルマ、すごく申し訳ないが元の服装に着替えてきてくれるか? 服は買ったままでいいから」
「う、うん……やっぱり、慣れないお洒落するべきじゃなかったのかな……」
「いや違う。滅茶苦茶綺麗過ぎて俺のステータスの状態に【魅了】って表示されてるぐらいなんだ。このままその辺を歩いたりしたら冗談抜きで街中の男たちが寄ってきかねない」
「そ、そうなの…?」
「まあ無理もないッスねー。女の自分から見てもめっちゃ綺麗ッスもん。むしろカジカワさんが今すぐ襲い掛からないか心配なくらいッス」
「!」
「さすがにそこまで理性弱くないから安心しろ。…アルマもこっちガン見してないで着替えてきなよ」
その後、元の冒険者スタイルの服装に着替え直してきたがやっぱりちょっと残念そうだな。…たまのオシャレすら満足にできないなら当然か。襲わないからそんなこっち見ないでくれ。
次に服屋に行く時はもう少しゆっくり服を選ぶ時間をあげるべきかな。…あの服装も本当に似合ってたんだが。
次に調味料なんかを扱っている店に向かった。
コンソメスープっぽいものを煮詰めて作った粉を売ってたが、200gで4000エン。カレー粉ほど高くないがこれも痛い出費だ。タンスの角に小指ぶつけたくらい痛い。
あと乳製品を売っている店でバターと牛乳、生鮮食品関係の店でロックオニオンとジャガイモやニンジンに似た野菜、鶏肉に鮭っぽい魚の切り身を購入。
…そろそろ今日の買い物だけで宿屋1週間分くらいの出費なんですが。これ大丈夫? もう村の依頼の報酬分のお金が尽きそうだ…。
で、次はギルドに魔獣討伐の報酬を受け取りに。
もしも討伐報酬がしょぼかったらどうしよう。もう薬草採取の仕事は嫌だ。経験値入らないし、受付嬢に過負荷かけて嫌われそうだし…。
受付場の赤髪ロングお姉さんの立ってるカウンターに足を進め、討伐結果の確認をしてもらう。
「ただいま戻りました。確認をお願いします」
「お疲れ様です。ぺプルスライム2体に、……ドレインバットが37体? え、は、ハイケイブベアが1体、ですか……あなた方のステータスでは少々厳しい相手ばかりな気がするのですが、初日から随分無茶をされていますね」
「ほとんどはアルマが仕留めて、私は荷物持ちぐらいしかしていないんですけどね」
「いやあのおっきな熊盛大に蹴っ飛ばしてたじゃないッスか…」
「あれはあまり効いてなかったよ。正攻法じゃまだ厳しいし、なんなりと頭を使わないと」
実際、縮地とパイルの合わせ技でもHPが2割も削れていなかったのはちょっとショックだった。アルマの精霊魔法で作った落とし穴のお陰で苦労せずに討伐できたけど。
でも、魔族が攻めてきた時に同じ手が通じるとは限らない。
人間と同じくらいの知能があるらしいし、罠の一つや二つ看破してきてもおかしくない。
レベルアップだけじゃなくて、新たな技の開発とかもしないと火力不足でやられてしまうかもしれない。
レイナを鍛えるかたわら、俺とアルマの修業も並行して進めるか。
「……合計で、63000エンになります」
「ず、随分報酬が多めですね。そんなにあの魔獣たちって討伐報酬が高いんですか?」
「一匹当たりの討伐報酬金額がぺプルスライムが3000エン、ドレインバットが1000エン、ハイケイブベアが20000エンとなっております。それらの素材を売りに出せば、さらに大きな収入になりますよ」
わぁお。これだけで今日の買い物分のお金全部賄えるやん。…いや宿代ともう一軒寄るところがあるから黒字かどうかは怪しいが。
「あと、今回の討伐でお二人のギルドランクがDに昇格となります。ハイケイブベアの討伐は本来Bランクの仕事ですので、それで実績ポイントが一気に溜まったのが要因ですね」
「え、アルマはともかく私もですか?」
「討伐履歴にカジカワさんとアルマさんが互いに協力し合ってハイケイブベアを討伐した形跡がありますので、どちらかだけがランクが上がるということはありません」
俺、熊公蹴っ飛ばして藁と燃えた薪投げ込んだだけなんだけどなー、ボロいわー。
「…自分も鍛えてもらったら、こんな風に稼げるようになるんスかね」
「ああ。努力を怠らなければすぐになれるんじゃないか」
「成人してないからレベルが上がるまでは厳しいと思うけど、あなた成人するまであとどれくらいの期間があるの?」
「あとちょうどひと月ッス。それまでに職業を決めないといけないんスけど、今持ってるスキルじゃあんまり強くなれそうにないッス……」
まあ、このスキル構成に攻撃魔法加えたら新職業が解放されると思う人は少ないだろうなぁ。
自分でも今ある職業の選択肢はどれも微妙だと思っているみたいだし、あの職業をオススメするのは案外楽にできるかもしれない。
そのためにも、次は魔道具屋に向かいますかね。…お金足りるかな。
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