職業の選択肢
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「お、出口が見えたな。進んだ時よりも帰る時の方が早く帰れたな」
「来た道を覚えてたの?」
「あー、あれだ、メニュー」
「そう」
「い、今の会話、正直なんのこと話してるのかさっぱり分からないんすけど…」
困惑した表情で声を発するスラムっ子ことレイナ。
詳しい事情はまだ話せません。パーティに入れるくらいの信頼関係が築けたら、話してもいいが。
あれから、埋もれたハイケイブベアの死体を回収し、新しいメニュー機能を頼りに洞窟から脱出したところだ。
新しい機能、その名も【マップ画面】。そのまんま地図の役割を持っている機能だ。
訪れた場所、あるいは視界に入る範囲を地図化し、画面に表示してくれるので、こういった入り組んだ洞窟やダンジョンなんかではこの上なく便利な機能だろう。
しかも自分の周囲の存在の反応、例えば俺の1m右にアルマが居るとか、ちょっと後ろをレイナがついてきてるとかはもちろん、マップに表示される範囲の魔獣やアイテムの位置なんかも正確に表示してくれるので、安全に脱出することができた。
メニューさん最高や! スキルなんかいらなかったんや!……いや、正直やっぱ欲しいけどさ。
あと街や魔獣のテリトリーなんかのロケーションの場所も表示してくれてるけど、これってどんな基準で表示されるようになるのやら。
さすがに地面に落書き書いたぐらいじゃロケーションとして登録はされないみたいだが、不可解な場所もいくつか登録されている。ケルナ村の近くにあったでっかい岩とか。なんの意味があるの?
で、ようやく出口まで辿り着いたところで、別のルートから4つほど人の反応が出口に向かっているのが見えた。
ふむ、彼らの方が先に出口に向かっていたはずだが、どうやら迷っていたらしいな。俺たちとほぼ同時とは。
「はぁ、はぁ、や、やっと出口が見えた…」
「よ、良かった、迷った時には死んだかと思ったわよ…」
「…あのガキは、もう死んじまったのかな……。悪いことしちまった……」
レイナと同行していたパーティたちが、疲労困憊といった様子で出口に向かっているのが見えた。
やっぱあの青年はレイナを置き去りにしたことを悔いていたみたいだな。…まぁ命がかかっている状況じゃ責める気にはなれんが。
「え、あれ!? あ、あんたら先に戻ってたのか!?」
「し、しかもあの子も連れているわよ!?」
向こうもこちらに気付いたようだ。
そりゃ先に脱出した筈なのにこっちが出口で待ち構えてれば驚くわな。
「……無事だったのか。すまない、わが身可愛さに置き去りにしちまった……」
本当に申し訳なさそうな顔をして、青年がレイナに謝罪している。
「気にしてないっすよー。こうして無事に助けてもらって怪我も無くて済んだんすから。あ、そうだ預かってた荷物返すっす、どうぞ」
それに対し、レイナはあっけらかんとした様子で応えたあと荷物を手渡した。軽いなオイ。
まぁ内心思うところはあるかもしれないが、それを本人が表に出さないのなら俺から言うことはないかな。
「あんたらも、すまない。本来連れてきた俺たちが助けるべきだったのに…」
「ち、ちょっと、なに私たちが悪者みたいな言い方してるのよ。自分の身は自分で守るようにって、契約してたじゃない」
「うるせえ。ガキ一人守れず逃げ出してんのにこれ以上恥かかせんな。もう俺たちが何言っても保身にしか聞こえねえよ」
「っ……」
こちらにも頭を下げた青年に同じパーティの女性が食ってかかるが、自分たちのしたことがいかに情けないかを言われると押し黙ってしまった。
「この子が気にしていないなら、私たちは構いませんよ。あの熊の経験値もなかなか多くていい収穫でしたし」
「そ、そうか……って、あ、あんたらハイケイブベアを倒したのか!?」
「う、嘘でしょ? 二人だけで、しかも無傷で?」
「まぁちょっとえげつない手を使って、ですがね」
「そ、そうか…詳しくは聞かない方がよさそうだな……」
しまった、さっさと逃げたことにしておけばよかったのに余計なことを口走ってしまった。
詳細を聞かれると面倒なので、笑顔で適当に誤魔化しておこう。…なんか余計に顔が引きつっている気がするけど。
それから、今晩くらいは宿に泊めてやるとレイナに言ってきたが、こちらの世話になることが決まっているからいいと言ったらあっさり引き下がった。
まぁ宿代も結構バカにならんしな。…三人分だとひと月180000エンにもなるんだよな。マジで気合入れて稼がないと。
そういえば、レベルアップしたのにステータスの確認していなかったな。
まずは俺から見ていくか。
梶川 光流
Lv20
年齢:25
種族:人間
職業:ERROR(判定不能)
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :310/310
MP(魔力) :215/215
SP(スタミナ):0/90
STR(筋力) :215
ATK(攻撃力):215(+45)(+15)
DEF(防御力):215(+70)(+15)
AGI(素早さ):212
INT(知能) :215
DEX(器用さ):219
PER(感知) :223
RES(抵抗値):209
LUK(幸運値):209
【スキル】
※取得不可※
EXP(トータル経験値) :15741
NEXT(次のレベルに必要な値):20000
鋼鉄の剣
ATK+45
赤猪の胸当て
DEF+70
仕込み刃付きブーツ
ATK+15 DEF+15
うむ、我ながらなかなか強くなってきたな。
今ならウェアウルフとも魔力操作なしでやりあえるんじゃなかろうか。いや、ステータスとは別に元の肉体のスペックもプラスされてるから、もしかしたら今なら単騎でジェットボアも倒せるかもしれない。さすがに魔力操作なしじゃきつそうだが。
魔力と言えば、MPの方はケルナ村の依頼を受けてる間、昼夜を問わず侵入してくる魔獣に対応するために魔力を枯渇させるわけにはいかなかったからそんなに上がってないな。
今後また地道に増やしていくとしよう。
アルマの方も見ておくか。
アルマティナ
Lv21
年齢:16
種族:人間
職業:パラディン
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :380/380
MP(魔力) :278/278
SP(スタミナ):124/180
STR(筋力) :202
ATK(攻撃力):202(+80)(+15)
DEF(防御力):190(+70)(+15)
AGI(素早さ):195(+30)
INT(知能) :212(+10)(+40)
DEX(器用さ):147
PER(感知) :208
RES(抵抗値):163
LUK(幸運値):98
【スキル】
剣術Lv5 体術Lv5 投擲Lv2 魔法剣Lv2 攻撃魔法Lv6 精霊魔法Lv1
EXP(トータル経験値) :23784
NEXT(次のレベルに必要な値):25500
装備
鋼鉄の剣(ミスリル刃)
ATK+80 INT+10
水晶の杖
ATK+15 INT+40
赤猪の胴当て
DEF+70
疾風のブーツ
DEF+15 AGI+30
こちらも順調に成長してるな。
ていうか能力値の数値だけならアルマより強くなってたのか俺。少なくとも足手まといは卒業できたかな。
ってスキルの方もレベルが上がってるのがちらほらあるな。魔法剣と精霊魔法以外、前に確認した時より上がってるやん。陰でかなり頑張ってるみたいだなこりゃ。やっぱりこの子真面目だわー。
最後にレイナの方のステータスも念のため見ておくか。
ちょっとプライバシー的にどうかと自分でも思うが。
レイナミウレ
年齢:14
種族:人間
職業:未成年
状態:空腹
【能力値】
HP(生命力) :30/30
MP(魔力) :30/30
SP(スタミナ):10/30
STR(筋力) :47
ATK(攻撃力):47
DEF(防御力):40
AGI(素早さ):70
INT(知能) :48
DEX(器用さ):75
PER(感知) :68
RES(抵抗値):18
LUK(幸運値):43
【スキル】
短剣術Lv1 体術Lv1 隠密Lv2
おお、この子未成年なのにスキルが三つも、それに一つLv2のスキル持ってるやん。
スラム暮らしだと息を潜めなきゃならん場面も多いのか、隠密のスキルが育っている。
短剣術は元々持ってたスキルなのかね。あんま強そうなイメージないけど。
このまま成長して成人になったら、どんな職業になるのかな。
≪このスキル構成の場合、成人時に選択肢として挙がるのは【見習い短剣使い】【見習いアサシン】【見習いシーフ】の三つ≫
≪見習い短剣使い:短剣術の扱いに特化した職業。リーチが短いが、素早さの能力値が特に上がりやすい≫
≪見習いアサシン:隠密スキルのスキルレベルが上がりやすく、能力値が上がりにくいので搦め手で立ち回ることに特化している≫
≪見習いシーフ:短剣術のスキルレベルが若干上がりやすいが、能力値が全体的に低い。その代わり開錠や罠解除のスキルを取得することができる≫
…どれもイマイチパッとしないな。
このまま冒険者になったとしても、正直あまり強い戦力にはならなそうだ。
唯一スキルが有用そうなシーフも罠はメニューがあれば対処できるし、鍵開けは魔力を固めたカギを作ればいくらでもできそうだしなぁ。
これらのスキルに加えて、なにかスキルを取得して強力そうな職業になれたりしないのかな。
≪スキル構成類似の職業を検索…………1件ヒット。攻撃魔法スキルを取得することで新たに選択肢が追加≫
これらのスキルに、攻撃魔法? 想像つかないな。
パラディンの短剣版とか?いやそれでもアルマの劣化版にしかならないと思うんだけど。
≪新たに追加される職業は……である。極めて希少な職業であり、過去にわずかにその職業を選んだ例がある以外は記録が無いが、将来的に強力な存在になる可能性が高い≫
……………
それでいこう。
この子が成人する前に攻撃魔法スキルを覚えさせて、その職業にジョブチェンジさせよう。是非!
勝手に決めるようでなんだか悪い気もするが、その職業を知ったら他の職業が霞んで見えるだろうし、説得してみるか。
お読み頂きありがとうございます。




