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今度は俺が救う番

 どうも、やっとスキルが使えるかもと舞い上がった直後にやっぱり俺には使えないと判明してテンション急降下くらった俺です。

 ふふふ、心のどこかではなんとなく分かってたけどね、俺には無理だって。いいもん、魔力操作と生命力操作が使えるからいいもーん。…ちくせう。



「ヒカル、スライム倒してからなんだか元気ないみたいだけどどうしたの?」


「いや、大したことじゃないから気にしなくていいよ。ちょっと気分を上げて落とされただけだから」


「…?」



 心配そうな顔をしながら気を使ってくれるアルマ。

 勝手に喜んで勝手に落ち込んでるだけだからそっとしといたげてください。




 しばらく先に進むと、コウモリ型の魔獣の群れ数十匹に出くわしたが狭い通路に居たのが運の尽き。

 アルマの精霊魔法で天井を地形操作で崩落させまとめてペシャンコに。無慈悲。

 一匹ごとのレベルは大したことないが、群れで吸血されたりすると結構深刻なダメージを負う危険があるが、こうなると関係ないな。

 本当に地属性の精霊魔法を覚えてもらって良かった。洞窟みたいに狭くて地に囲まれている場所なら大抵の相手には無敵に近い。

 地面、壁、天井、その全てが凶器になって襲い掛かってくる。そう考えるとホント恐ろしいわ。


 まだMPも体力的にも大分余裕があるが、この洞窟では初めての探索だし今日はこれぐらいで帰ろうかと思った時に、ふと気になる生命反応を感知した。

 魔獣の魔力反応や生命反応は、何というかトゲトゲしてるというか、少し不快感を覚える反応だ。

 対して人の反応は丸っこくてふわふわしてるイメージ。人によって個体差はあるが、例えばアルマの反応は感じ取ってるだけで落ち着くような、安らぐような感じだ。…我ながらちょっと変態っぽいからこれ以上はよそう。

 で、奥の方で結構強い魔獣が、複数の、5人くらいの人と思われる存在と衝突しているような、そんな反応を感知した。

 多分、他の冒険者パーティが魔獣と交戦中っぽいな。


 …大丈夫かこれ? 大体の目安になるけど人のパーティっぽい反応は生命力と魔力の大きさから一人頭Lv15前後くらいだと思う。

 しかも一人だけすごく弱い反応が混じっている。この人Lv1くらい、いやもしかしたら成人前の子供か? なんでこんな所に一緒に来てるのやら。

 対して相手の魔獣は四足獣タイプで大体Lv20後半、下手したら30いってるかもしれない。このパーティで倒せるかというと、正直勝ち目は薄いように思えるんだが。

 あ、徐々に距離をとって逃げようとしてるっぽい。賢明な判断だけど、相手のレベルの高さ的に逃げるのも難しいんじゃないのか?移動するスピードも相手の方が数段上だし。

 おいおい、弱めの反応の人明らかに遅れてるけど、これヤバくない? どんどんパーティから離れていってる。このままじゃ魔獣の餌食になるのも時間の問題だぞ。

 あー、これアレだ。弱い人を囮にして他の人たち逃げようとしてるな。薄情な、というよりもしかして最初からそのつもりで連れてきてたのか…?

 さて、どうしようか。あ、こっちに逃げたパーティが近付いて来てる。このままだともうすぐかち合うな。

 奥の方から複数の人の足音が近付いてくるのが聞こえてくる。

 薄暗くて見え辛いが四人組の若い男女のパーティの姿が見えた。皆大なり小なり傷を負っているが、致命傷ではなさそうだ。




「はぁ、はぁ、くそっ!こんな浅い所であんな奴とかち合うなんて運がねぇぜ!」


「待って! あ、あれは何!? もしかして他の冒険者!?」


「お、おい!お前らも逃げろ! 奥からハイケイブベアが俺たちを追いかけてきてるんだ!」



 向こうもこちらに気付いたようだ。

 ハイケイブベア? 魔獣の名前か?



≪ハイケイブベア:洞窟などに生息するLv30以上の熊型の魔獣。四足獣、爪術、牙術等、多彩なスキルを使いこなす上にステータスも高水準の強力な魔獣≫



 Lv30以上の魔獣は初めてだな。まともにやりあったらちとキツそうだ。

 多分こないだのジェットボアより強いんじゃないかそれ。



「警告ありがとうございます。ところで一つ、お聞きしてもよろしいですか?」


「なんだこんな時に! 急いでるのが分からないのか!」


「この洞窟には、あなたたちだけで入ったのですか? 他に誰か同行者はいらっしゃいませんでしたか?」



 そう言うと、相手のパーティの青年はわずかに顔を顰めながら答えた。



「…いや、一人荷物持ちにスラムのガキを連れてたんだが」

「ちょっと!! そんなことより早く逃げないと!!」



 答えようとしている途中で同行者の女性が遮って、青年の腕を引っ張って出口に向かって逃げるように促し、一緒に走っていった。

 女性の方は一人見殺しにしたのがバレたらまずい、とでも思ったのだろうか。そこまで聞いたらバレバレですよ。

 青年の方は少し申し訳なさそうな表情をしつつ、わずかに会釈しながら逃げていった。

 もしかしたら青年の方は見殺しにしたくなかったけど、他のメンバーに流されるカタチで逃げてしまったのかな。

 まぁいいや。急がないといけないのはこちらも同じだ。彼らにかまっている暇はない。



「アルマ、この奥に一人置き去りにされている人がいるみたいだ。危険な魔獣に襲われていて、このまま放っておけばほぼ確実に死ぬ」


「なら、助ける。すぐに行かないと」



 即答したな。打算とか微塵も考えていない表情で返してきた。

 この真っ直ぐな優しさに、俺も救われたんだ。その俺が強い魔獣がいるからって見殺しにしてちゃ道理に合わん。

 …正直怖いが、助けに行きますか。最悪アルマとその人を抱えて縮地モドキで逃げればなんとかなるだろ。

 一応、仕留める算段もできてはいるんだが、えげつない方法の上に上手くいくかもまだ分からないからあまりあてにはしない方が無難だな。


 アルマを抱えて縮地モドキで生命反応の方へ移動。

 反応を感じとる限り、まだ大きな怪我なんかは負っていないようだが魔獣の距離が近い。

 このままじゃいつ襲われるか分からないな。間に合え。


 ようやく姿が見えるところまで来た。

 人の反応の方は……よかった、まだ無事みたいだ。

 よく見えんが、体格からして10代前半の子供ってとこか? いやステータスを見ると成人前くらいか。着てる服がやたらボロい。

 スラムの子供って言ってたし、あの子で間違いなさそうだ。

 で、その近くにいる魔獣の方だが予想通り強力だな。見た目はデカい熊で、立ち上がったら4mはあるんじゃないかこいつ。





 魔獣:ハイケイブベア


 Lv32


 状態:正常



【能力値】


 HP(生命力) :632/632

 MP(魔力)  :214/214

 SP(スタミナ):317/415


 STR(筋力) :423

 ATK(攻撃力):423

 DEF(防御力):374

 AGI(素早さ):273

 INT(知能) :98

 DEX(器用さ):87

 PER(感知) :299

 RES(抵抗値):87

 LUK(幸運値):47



【スキル】


 魔獣Lv4 四足獣Lv5 体術Lv5 爪術Lv5 牙術Lv4




 うわぁつっよ。まともにやったらまず勝てんな。

 レベルもステータスもジェットボアより明らかに格上だ。こんな奴がゴロゴロしてるのかよこの洞窟。まさに魔窟だな。

 ってヤバい、あの子走って逃げてるけどこのままじゃ追いつかれる。むしろいままでよく逃げられたもんだ。

 アルマを一旦降ろして、全速力で魔獣に足から突進!



 ギュンッ!



 まるでドロップキックをするかのように足の裏を魔獣にブチ当て、インパクトの瞬間にさらに魔力パイル発動!



 ズダァンッ!!


『グジャアアアア!!?』



 かなり距離の離れた場所から攻撃したから、感知できずに避け切れなかったみたいだな。

 直撃を受けて、軽く10mくらい吹っ飛んだ。



「あ、あれ…? え…?」



 追いかけられていた子供が目を丸くして吹っ飛ぶ魔獣を見ている。

 そりゃ急にいままで追いかけてきてた奴がぶっ飛んだらビックリするよな。


 ぶっ飛んだ魔獣は多少のダメージは負ったものの致命傷には至っていない。

 まともに当ててこの程度のダメージか。やっぱ正攻法じゃきつそうだな。

 さてさて、アルマに作戦を伝えておいたけど、上手くいくかな?


お読み頂きありがとうございます。

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