ロリマス面談
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「とりあえず座って。長くはならないけど、立ち話もなんだろう?」
「はぁ」
「…」
ツインテエルフ少女に勧められるまま席に座る俺とアルマ。
現在、門の受付の奥にある応接室に案内されたところです。
受付にいた銀髪女性は怪訝そうな顔で、というか俺に対しては警戒心バリバリといった表情で案内してくれた。そりゃあんなステータス見せられたら怪しいだろうけど、そんな露骨に敵意見せんでも。
「さて、まずは自己紹介をしようか。初めまして、この街ヴィンフィートの冒険者ギルドのギルドマスターをしているイヴランミィといいます。今後ともよろしく」
ぎ、ギルドマスター!? こんなに幼いのに!?
いや、エルフだがら見かけ通りの年齢とは限らないか。もしかしたらこんな見た目でも俺より年上かもしれない。
「Eランク冒険者の梶川光流と申します。まだまだ駆け出しの未熟者ですが、よろしくお願いします」
「ヒカルとパーティを組んでいるアルマティナです。よろしくお願いします」
「うむうむ、二人とも礼儀正しくて好感持てるね。人間から見るとエルフは若く見えるから、初見だと子供扱いして舐めた態度とる子たちが多いんだよねー。こちとらヴェルガより年上だってのに」
ああ、やっぱ年上か……ってギルマスより? マジで?
ギルマス、確かフィルスダイム鑑定師と同い年くらいだったと思うけど、この人少なくとも60超えてるのか?
となるとあれか、この人は俗にいうロリババアというやつか。…さすがに本人の前でそんなこと言えんけど。
「あ、でも露骨に年寄り扱いするのもそれはそれでイラつくから、大人の女性くらいに思ってくれると嬉しいなぁ」
「そ、そうですか」
いや、歳食ってると分かっていても正直見た目は10歳前後の女の子にしか見えないんだよなぁ。
へそ曲げられると面倒だから御希望通りに対応するけどさ。
やっぱ年齢相応にスキルなんかも育ってたりするのかな。勝手に確認するの悪いから控えるけどさ。
≪エルフは寿命が人間に比べて長い分基礎レベルやスキルレベルが上がりにくい種族であり、寿命は人間の3~4倍程度でレベルアップに必要な経験値やスキル熟練度もおおよそ同じ程度の数値が必要≫
寿命が長い分、成長もしにくいってことね。
それでもギルドマスターになれるくらいだし、この人のスペックは見た目よりずっと高いんだろうな。
「じゃあ自己紹介も済んだことだし本題に入るね、カジカワ君。いや飛行士君と呼んだ方がいいかな?」
やっぱ正体知ってるなこの人。
受付から案内される時も口パクで『ひこうし』君って言ってたし。
「…ダイジェルのギルドマスターからお聞きになったのですか?」
「うん。どうも私も含めて信用できる相手にだけは君のことをあらかじめ伝えてあるみたいなんだよねー。でないと他の街に君が入る時に余計なトラブルが生じてしまう可能性があるからだろうね。さっきの受付みたいに」
ギルマス、グッジョブ。マジ助かりました。
先見の明というやつか。いや年の功かな。
「スキルが一切使えない代わりに、魔力の直接操作っていうものを使うんだっけ?」
「はい。スキルが無くとも空を飛んだり、魔法を使ったり、戦闘の際にも色々と応用が利く技術です。しかしこの技術が広まってしまうと、生産職の人間でも戦闘職の人間ほどでないにしろある程度の戦闘能力を獲得してしまう恐れがあって、職業のバランスが少し崩れてしまったりする危険性があるのでなるべく秘密にしておきたいのです」
「確かにねー。例えば生産職でも知能の値が高い人も割と多いし、そういう人たちが魔法を使えるようになったら魔法使いの立場無くなっちゃうよねー。伸びしろは戦闘職ほどじゃないだろうけど」
フィルスダイムの爺さんとかがいい例だな。
あの人何気に俺やアルマよりINTの数値高かったし。
「さらに戦闘職の人間がこの技術を使えるようになると、極端な話上級スキルを駆け出しの人間が使えるようになる可能性すらあり得ると思います」
「あー、もしかしてスキルの強化や改良なんかもできるのかい? うわぁ思ったよりずっとやばそうじゃんその技術。君はスキルは使えないはずだから、そっちのアルマティナちゃんが使えるのかな?」
苦笑いを浮かべながらアルマの方を向く合法ロリエルフギルマス。
…長いしもうロリマスでいいや。
「はい。一応、使えます。ヒカルほど細かい操作はできないけど」
「それでもカジカワ君が教えれば使えるようにはなるんだね。これまでそんなことできる人なんか見たことも聞いたこともなかったのに。まあそもそもスキルがあればそんなことしようとする前にスキルを鍛える方に夢中になるだろうし当然か」
「でしょうね。私もスキルが最初から使えればこんなもの編み出さなかったと思います」
「まあ、そのお陰で空飛んだり色々できるようになったんだし、むしろスキルが無くて良かったことの方が多いんじゃないの? さっき言った問題があるから大っぴらにはまだ使えないだろうけどさ」
「そう、ですね」
「うん」
あの森でアルマに会えたのは、俺にスキルが無くて戦う能力がないと思い込んで必死で助けを求め、それにアルマが気付いて助けてくれたからだ。
情けない話だが、そう考えるとスキルが無かったのは決して不都合なことばかりじゃなかったと思う。
それに、魔法剣もどきなんかを教えたりしてるうちに本当の魔法剣をアルマが習得して、パラディンになれたしな。
もしも、今ならスキルありで最初からやり直せると言われたとしても、俺はスキル無しでアルマと出会う方を選ぶだろう。
「おやおや~? もしかしてその技術がきっかけで深い仲になったとか? いやー若いなー」
「ち、ちょっと何言って」
「うん。ヒカルには、魔力操作の指導はもちろん、色々と助けられた」
「いやいや、むしろ助けられたのは俺の方だって。アルマが居なかったら俺、魔獣に食われてたかもしれないし。感謝するべきなのは俺の方だよ」
「あーはいはい。煽った私が言うのもなんだけど、惚気るのはその辺で一旦ストップー。……はぁ、若いっていいねぇ……」
ノロケって。歳の差考えてほしいんですが。
…はたから聞いてるとノロケと思われるのも無理はないか。
なんか哀愁漂う雰囲気で溜め息吐いてるけど、もしかして独り身なの? いやその見た目ならまだ独身で当たり前だと思うんですが。
「話を戻そうか。で、その魔力操作を使って戦えるのはいいけど、万が一その技術の情報が洩れたらまずいんだよね。ばれないように何か工夫してる?」
「一応、アルマ以外の人が居るところではなるべく戦わないように、戦う場合でも極端に怪しまれるような戦い方はしないように心掛けているつもりです。空を飛ぶ必要がある時は、ダイジェルのマスターから頂いたステータス隠蔽効果のある仮面を身に着けるようにしています」
この街の近くまで移動する時も念のため着けていたが、ぶっちゃけあの仮面あんまり好きじゃないんだよなー……。
「ああ、そういえば飛行士って変な仮面付けてるって噂だったね。普段からは着けないの?」
「……あれを常時着けっぱなしというのは、正直ちょっと……」
「うん、まあ嫌だよねー。まあばれないようになんなりと工夫してるならいいよ。極端に常軌を逸したことでもしない限り、万が一怪しまれても誤魔化しがきくだろうし。…いや、空飛んでるのも十分常軌を逸してるかー……」
ですよねー。
「さて、あんまり話が長くなると怪しまれるし、そろそろ切り上げようか。最後にこの街の冒険者ギルドとおすすめの宿の場所に、危険だから近付かない方がいい所だけ教えておくよ」
「ありがとうございます。でも、そこまでしていただいていいのですか?」
「いいのいいの。見えないし聞こえないだろうけど、私の周りの精霊たちも君たちには恩を売っておけって言ってるしねー」
ロリマスの周囲に魔力の反応が複数あるが、これのことか?
空気の中に居るってことは風の精霊かなんかかな。ロリマスも精霊魔法が使えるのか。
〈そうそう、ちのせいれいたちもこいつやばいからてきにまわすのはやめとけっていってたし、みかたにつけておいてそんはないとおもうよー〉
〈きれたらとなりのねえちゃんもこわいらしいしなー。こう、まほうをどっかーんって〉
「こいつやばいって、どんな噂流してるんですか君たち…」
「あははー、この子たちちょっとでも面白そうな話題とかすぐに言いふらすからねー……って聞こえるの?」
「ええ、普通に聞こえますが」
「ふ、普通は契約して精霊魔法を獲得しないと聞こえないはずなのに……やっぱ君おかしいね、うん」
顔を引きつらせながらどこか納得したような表情のロリマス。
え、なに? 普通は聞こえないもんなの?
≪推測:メニュー機能の一つ、異世界言語翻訳機能が精霊たちの言葉にも適用されている模様≫
そうなの? 地の精霊の言葉も普通に聞こえてたからてっきりそれが当たり前かと思ってた。
…人前でボロを出さないようにしようにも、この世界の常識でまだ分かってないことが多いから難しいな。
まだまだ勉強しなければいけないことはたくさんありそうだなぁ、めんどくさ。
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