次の街へ 次の出会いを求めて
あれから一晩考えてみたが、結局のところ今は地道な努力が必要という結論しか出てこなかった。
パラディンになるためにはスキルレベルの成長が必須。
現状、剣術と攻撃魔法は両方Lv3。これでも充分高いほうだが魔法剣の獲得にはあと一歩足りない。
しかし、あの魔族みたいに強力な相手への対抗手段が早急に必要なのもまた事実。
焦っても仕方がないとは言ったが、ダラダラと現状に甘えていていいわけでもない。
「つってもねー、レベルを上げてステータスを鍛える以外に強くなる方法って言ったら……ドーピングとか?」
「ドーピングって、どんなだよ?」
「ステータスを上昇させるポーションとか?」
「そりゃ一時的にはいいかもしれねぇけど、そういうのは奥の手であってもうちょっと恒常的にだな……」
「あとは装備とか? ユーブの使ってる剣と胴当て、こないだの魔族相手にやり合った後にボロボロになってたでしょ? 丁度いいからもっと質のいい剣に買い替えようよ」
「それもそうだな……」
剣身がヒビ割れて歪んでしまっている剣を眺めながら、同意の声を漏らした。
コイツもアダマンタイト製の丈夫な剣なんだが、魔族相手じゃ数十合打ち合っただけでこの有様だ。
俺自身が鍛えられるわけじゃないが、確かに装備の新調は重要そうだ。
この際、しばらく買い替えなくてもいいくらい質のいい剣を買うとするか。
というわけでヴィンフィートの装備屋や鍛冶屋なんかを回ってみたが、正直言って可もなく不可もなくといった様子だった。
商業都市というだけあって種類自体は豊富なんだが、一定以上の業物となるとなかなか扱う店がないようだ。
一日中探し回っても結局しっくりくるものがなかったので、次の日にギルドに顔を出してチビマスに相談してみたんだが、反応は芳しくなかった。
「んー、ぶっちゃけ君の手に合う剣となると半端なモンじゃダメだろうねー。最低でもヒヒイロカネかオリハルコン、できれば固有魔獣の素材を使ったユニーク装備がほしいところだけど……」
「どこにもそんなもん売ってなかったぞ」
「だろうねー。このあたりの魔獣はそれほど強くないし、それに見合った装備しかないのも仕方ないんだよ」
「チビ……ギルマスはそういうの手に入れるコネとか知らねぇか?」
「んんん、十五年前なら丁度いいユニーク装備があったんだけど、あれはアルマちゃんにプレゼントしちゃったしなー。……あと今チビマスとか言いかけただろ。ぶっ飛ばすぞ」
母さんの剣かぁ、あれも固有魔獣から作られた装備だっけ?
それも成長しきった完成品だとか。
普段、倉庫の肥やしになってるのを一度鞘から抜いて見ようとしたけど、とんでもない威圧感が放たれたかと思ったら剣がひとりでに動き出しやがったんだよな。
宙に浮いて怒ったように暴れ出しながら俺に切りかかってきて、もうダメだと思ったところで母さんがすごい勢いで飛んできて止めてくれたっけ。
怒り狂うように暴れてた剣をブチ折る勢いで殴りつけ、その後はプルプルと怖がるように震えていた剣を見た時は、恐怖を覚えた反面ちょっと同情した。
そのあと俺の頭にも拳骨を落とされたのは苦い思い出だ。超痛かった。
固有魔獣装備とかあの『カタナ』とかいう物騒な剣は正直苦手意識があるから、あんまり使いたくねぇんだよな……。
「まあ当てがないわけじゃないけどね」
「お、なんかいい心当たりがあんのか?」
「ヴィンフィートから直通便の獣車が出てる工業都市に、腕のいい職人がいっぱいいるんだよ。君たちの強さで装備を整えるならそこへ向かってみるといいと思うよ」
「工業都市かー……ま、他に当てもないし、行ってみるのもいいんじゃないの。……私としてはもっとこう、色んな魔獣と戯れることができる森とか草原とかに行きたいんだけどなぁ」
「近くに魔獣山脈があるから、そこで適当な魔獣でもとっ捕まえたら? ウシとかヘビとかヤマネコとか割と色んなのが生息してるって話だよ」
「よーし! 行こうユーブ! すぐ行こう! ヤマネコちゃんが待ってるぜー!!」
「いだだだだ!? 分かった、行くから耳引っ張りながら無理やり連れてこうとすんなテメェ! マジでいてぇって!」
「……山脈の頂上には近付くなよー。やべーバケモンが2体ばかし定期的に暴れまわってるから」
イツナに引っ張られている耳の痛さに悶絶していて、出ていく途中でチビマスが何か言っているのをよく聞き取れなかった。
後になって『ああ、これのことか……』と思う事態に出くわすのは馬車が工業都市へ到着した次の日の夜のことだった。
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「ふっははは!! ごきげんよう、ゲダガン殿!! 息災そうで何よりだ!!」
「うるせぇな! もうちっと声のボリューム落とせテメェ!」
「いや失礼。しかし、相変わらずこの街は鉄を打つ音で賑やかだな。実に心地よくて、またここに住みたいくらいだよ」
「王都で店出してるテメェが言うと嫌味に聞こえるぜ。にしても久しぶりだな」
「ヒグロイマ殿も元気そうだな。ううむ、顔つきも職人然としたものになったではないか」
「まだ自立したてのひよっこだろ、あんまお世辞言って甘やかすな」
「誰がひよっこだクソジジイ!!」
「テメェのことだこのバカ弟子が!!」
「ふはは、我のことを言えた義理ではない賑やかさだな!」
「ああクソ、それで? 今日はわざわざ顔見せにでも来たのかよ? それとも旅行かなんかか?」
「どちらも正解だが、メインの用事は違う。まあちょっとスランプ解消のためというかなんというか……」
「……スランプ? お前がか? 資金繰りに困りでもしてんのか?」
「それかとうとう変態武器のアイデアが尽きたか、無理もねぇ」
「いや武器のアイデア自体は毎日浮かんでいるし、資金も問題ない。ただ、マイ・カスタマーのように武器とそれを扱う人間が渾然一体となるような、あの感覚を久しく味わっていなくてね」
「そりゃちと難しいだろ。あのバケモンだからこそお前のバカみてぇな武器を扱えたんだろ」
「一応、最近は一般の冒険者でも扱えるように調整した芸術武器を作ったりして、一定の評価を受けてはいるのだが……持ち手に忖度した武器ばかりになってしまって正直個人的につまらないのだ」
「カジカワが使ってたあの大槌みてぇな武器を扱えるのは特級職くらいなもんだろ。だが特級職なら変なギミックに頼る必要もねぇしなぁ」
「ううむ、悩ましいものだ。できることならもう一度、あの感動を味わいたいものだ……!」
「つまり、旅行がてら自分の変態武器に合うヤツを探してる最中ってわけか。いったい誰が犠牲者になるのやら……」




