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冒険のなぞり始め

 今回短いです。すみません。



「やぁ、ようこそ冒険者ギルド本部へ。はるばる遠くからご苦労。まずはお茶でもどうぞ~」


「あ、どうも……」


「んんー、反応がウブで可愛いねぇ。……あの二人の子たちっていうからもうちょっと無茶苦茶な感じを想像してたけど」


「いやぁ、あんなヤベェ両親と比べられても困るんですけどーはははー」


「だよねースマンスマンあっははー」



 第1大陸の冒険者ギルド本部。

 その総本部長室にて、ギルドのグランドマスターと対面する俺とイツナ。

 ……まだ会って挨拶しただけなのに、イツナと波長が合うのが分かる。なんというか、ノリが似てる。



「はい、それじゃあ改めまして。冒険者ギルドのグランドマスターを務めているパラレルドラルシアと申します。よしなに」


「イツクティナでーす、よろしくお願いしまーす」


「……ユーブレイブです」


「うんうん、イツナちゃんはともかく、ユーブ君はちょっと緊張してるみたいだねぇ。もっとリラックスリラックスー」


「はぁ」



 そりゃ緊張もするだろ。

 アンタ、冒険者ギルドで一番偉い人なんだろ?

 なんで成人したての俺たちがこんな重要人物の前に案内されてんだろうなぁ……。




 ニホン旅行から帰った後にすぐ、俺とイツナはここへ赴くように言われた。

 理由としては、成人した冒険者として正式な登録をするため、そして特待生として鍛えてもらうためだ。

 いや、鍛えるというよりもむしろさっさと冒険者としてのランクを上げて、余計なトラブルに巻き込まれないようにするための地位を得るためというべきか。


 俺たちが家を出た日、送り出した親父と母さんは泣いていた。

 特に親父。あまりの号泣ぶりにこっちはちょっと引いちまって泣くどころじゃなかった。……すげぇ顔してたな、親父。

 それでも最後には『元気でな』『二人の無事を祈っているわ』と言ってくれて、旅立った後に自分の家のものとは違う寝室で眠ろうとした時に、その言葉を思い出して少しこみ上げてしまった。


 ちなみに、船や馬車を乗り継いできたわけでなく、親父にファストなんとかでこの街まで送ってもらった。

 ……過保護だなぁ。もう自立するんだからここまでしなくてもいいのに。





「ということで、君たちはこれから約一年ほどかけてSランクに達するまでひたすら指名依頼をこなし続けることになります」


「何が『ということで』なのかはともかく、そういう話になってますねー」


「つっても、休みなしで働けーってわけじゃないよ。依頼はハードな内容が多いだろうけど、君たちならまあ普通にこなせるだろうね。『ステータス』のレベルが上がればさらに楽になってくるだろうさ」


「そ、そっすか……」



 一年かぁ……。長いと見るべきか、それとも短いと見るべきか。

 思ったより窮屈な待遇だが、一年我慢すれば自由に冒険できるんだ。学校の延長みたいなもんだと思って頑張るか。




「……ところで、いつごろから依頼をこなしていけばいいんでしょうか?」


「んー? 今日からだよ?」


「は?」


「……え、今日から!? 早くない!?」


「何言ってんの。ほら、転移魔法で送ってあげるからはよ現場行ってきて。スタンピードの迎撃依頼だけど、君たちからすりゃヌルゲーもいいとこだから安心していいよ。じゃあいってらー!」

 

「ちょ、待っ……!!」





 そう言った直後、青白い光とともに周りの景色が一瞬にして変わり、気が付いたら見慣れない部屋の中にいた。

 ……どうやら、グランドマスターの魔法で転移させられたみたいだが、もうちょっとこう、心の準備とか……。



「うわ!? ここ、どこ!? つーか、スタンピードの迎撃とか言ってたけど、説明が雑過ぎて全然状況が分からないんですけど!」



 イツナが混乱しながら喚いている。同感だ。

 訳も分からないまましばらく待っていると、外から誰かが俺たちのいる部屋へ近付いてくる足音が聞こえてきた。

 だ、誰だ……? 2~3人分くらいの足音だが……一人は杖を突いているようで、時々硬質な音が聞こえる。



 部屋の扉が開くと、杖を突いた目つきの鋭い爺さんと、金髪で優し気な顔つきの中年女性が入ってきた。

 ……いや、この爺さん顔怖ぇなオイ。



「……よく来たな。いきなりこんなトコまで連れてこられて混乱してるだろうが、今はゆっくり説明できるほど余裕がある状況じゃねぇ。手短に話をしようか」


「あ、え、ええと……?」


「マスター、急いでいるのは分かりますが、さすがに自己紹介くらいはしておくべきではー……?」


「……そうだな、済まん」



 疲れたような顔でそう言う爺さんを、金髪の女性がどこかおっとりしたような口調で諫めた。

 気まずそうに咳払いをした後に、マスターと呼ばれた爺さんと金髪の女性が再び口を開いて、告げた。







「俺はダイジェル担当のギルドマスターやってるヴェルガランドだ。よろしく頼む」


「秘書を務めています、ネイアリスと申しますー。よろしくお願いいたしますねー」




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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[良い点] 1週間ぐらいで一気に読みました!大変面白かったです!
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