コミュニケーションは大事
新規のブックマーク、ありがとうございます。
読み続けて下さっている方々に感謝します。
アルマが新たに獲得した【精霊魔法】スキルだが、今のところ使役できるのは地属性で下級の精霊だけみたいだ。
熟練度を上げるか、新たに別の属性の精霊と契約すればスキルレベルが上がって他の属性の精霊も使役できるようになるようだが、今はまず地属性の精霊を使いこなすことから試してみる。
ダンジョンに潜った次の日に、いつもの訓練場で精霊魔法を試してみてもらったが、あの三角帽子が使役していた時より精霊の動きが少し鈍い気がする。
≪使役する回数を重ねないと、精霊から軽視されて十全の力を発揮してもらえない場合がある≫
…要するに、契約したばかりだから舐められてると?
≪おおよそ、その認識で正しいと推測≫
ほーう、そうか。
「ち、ちゃんと指示通りに動いてほしい。魔力は多めにあげたから」
〈えー、だるいー〉
〈たったこれっぽっちかよー、もっとよこせよー〉
〈もうかえってもいいんだぜー〉
動きの鈍い精霊たちに、アルマが困った表情で指示を出している。それに対して精霊たちからはやる気が感じられない。
因みに、アルマは別に魔力をケチったりはしていない。むしろ魔力操作で割り増ししているくらいだ。少なくとも三角帽子が消費していた量よりはずっと多い。
うーむ、まあ彼らだって奴隷じゃないし、ちょっとずつ信頼関係を築いていくしかないのかな。
〈ねえちゃん、あっちのおっさんのかのじょなのー? やめとけよあんなの〉
〈そうそう、あんなこえーおっさんのどこがいいんだよー〉
〈なんならよさそうなおとこさがしてやるぜー。そのためにもまりょくよこせー〉
言いたい放題だな。ちょっと注意するべきか?
…ん?な、なんかアルマからすごい威圧感が…。
ズドォンッ!!
と、轟音が鳴り響いた後、地面に直径3メートルくらいのクレーターができた。
アルマが地面に向かって強化したファイアーボールを叩きつけたからだ。
ち、ちょっとアルマさん?
「…無駄口叩いてる暇があったらちゃんと指示通り動いて。いつまでも優しい対応してると思わないで」
〈〈〈い、いえす、まむっ!!〉〉〉
そう言うと、これまで鈍い動きしかしていなかったのが嘘みたいに、アルマの指示に対してキビキビ動くようになった。
…俺が最初に脅したところを見てたからあんな方法とったのか、それとも精霊たちの発言にイラついたのか、あるいは両方か。
さすがあのお二人の娘だな、怒るとめっちゃ怖い…。
「因みに、ヒカルが怒るともっと怖いから、悪く言うのはやめて」
〈〈〈しってます〉〉〉
「君たちね…」
〈むちゃなことさせないでくれっていったのに…〉
「それは真面目に働いてくれたらの話。さっきまで明らかに不真面目だった。何か文句ある?」
〈まじすいませんでした!〉
結局力ずくで屈服させちまったな…。
まあ舐められてまともに働かない死にスキルになるよかいいか。
精霊魔法のテストもひとまず一区切り。
スキルが低レベルだと本来簡単な地形操作くらいしかできないらしいが、魔力を追加することで地面や壁から岩の槍を突き出したり、大穴を開けて落とし穴を作ったりすることができるようになった。
村の騒動の時にこの魔法があればなぁ。なんか大きな騒動の直後にばかりその時欲しかった能力が手に入っている気がする。
この魔法も使い方次第じゃ強力な武器になりそうだ。契約させて良かった。
で、再び日を改めて、ただいまダンジョン探索中。
第四階層でアイテムと経験値欲しさに魔獣を虐殺もとい討伐しながら、宝箱なんかを探しているところです。
うむ、やはり装備品の類はある程度いいものが手に入るみたいだな。俺の装備も少しはマシな物に換えることができた。
具体的には鉄剣から鋼鉄の剣(ATK+45)に、安全靴から仕込み刃付きのブーツ〈ATK+15、DEF+15〉に装備が変わった。
ブーツの方はブーツのボタンを押すと仕込み刃を出し入れできる謎ギミックが組み込まれている。まぁないよりまし程度のもんだな。
アルマの装備はほぼ変わりなし。強いて言うなら魔法を使う時に、こないだの三角帽子が使ってた水晶の杖を使うようになったくらいか。
なんだか最近、少し剣より魔法主体になってるような…。パラディンの強みは魔法剣だけじゃなくて、剣と魔法両方を使うところにもあると思うんだがなぁ。
剣と杖をそれぞれ両手に持てるみたいだからそれほど偏りはしないだろうが、重くないかそれ?
魔法剣を使う時はさすがに杖をしまうみたいだけど。
レベルの方はこないだのダンジョン探索でまた上がって、現在俺がLv18、アルマがLv19。
もう少しでスタンピード時点でのバレドやラスフィーンに並ぶ。
…彼らは確か18歳くらいだった。つまり成人してから3年はレベルアップするための期間があったはずだが、それにわずか2カ月くらいで追いつきそうって、どういうことだろう。
天空の竜(笑)の連中と違って、彼らの度胸と根性ならもっとハイペースでレベル上げをしてるイメージがあるんだがなぁ。
≪戦闘職の冒険者希望の者は、レベル上げの前にまず生き残るための基礎基本を成人後に一定期間教わるのが一般的。成人前はスキルやステータスを鍛えることに重点を置いている。また、序盤のレベル上げはステータスが低いため長期間にわたってゆっくりと安全に行われるケースが多い。高レベルの者に協力してもらってパワーレベリングするケースもあるが、自力で鍛えた者に対して実戦経験において明らかに差が出るため推奨されていない≫
ふむ。でもそれにしたってちょっと遅い気がするなぁ。ウェアウルフ倒した時点でバレドもラスフィーンもレベル上がってたけど。
≪むしろ一般的に見て梶川光流とアルマティナのペースが異常と思われる。≫
それギルドでネイアさんにも言われたけど、そんなに異常かねぇ?
俺たちみたいにダンジョンに通ってりゃレベルなんてすぐ上がるだろうに。
≪ダンジョンは場合によっては低層でも命の危険があるトラップにかかる可能性もゼロではないので、よほど腕に自信のある者ぐらいしか入りたがらない傾向が強い。≫
んー、まあこないだの三人娘も転移の罠と魔獣の待ち伏せのコンボに引っかかって危うく薄い本行きになるとこだったし、それなら罠がない分理不尽な死に方をしにくい魔獣のテリトリーでレベリングした方が安全っちゃ安全か。
…あれ?じゃあアルマがダンジョンに誘ったのって俺らなら大丈夫って判断したからなの? ちょっと無謀過ぎませんかね。一カ月近く探索しといて今更だけどさ。
ま、まあ結果論だが、短期間で大幅にレベルアップできたことは事実だし、良しとしよう。うん。
お、ポータル発見。
もう大体の部屋は回ったし、今日はもう帰ろうか。MPはまだ8割近く残ってるけど、これは修業用にでも使うとしよう。
「ポータルも見つかったし、今日はここまでにしようか。まだ大分余裕があるけど、無理は禁物だしな」
「分かった。じゃあ戻ろう」
で、二人でポータルを踏もうとする直前、目の前に急にメニュー画面が開いた。
≪警告:これは脱出ポータルではない≫
な、なんだって?
≪脱出ポータルに見せかけた転移陣。罠の一種と思われる≫
あ、危ねぇ!もうちょっと警告が遅かったら踏んでたところだ!
「アルマ、ストップだ!」
「! な、なに?」
「これ、脱出ポータルじゃなくて転移の罠らしい。踏んだら別の場所に飛ばされるみたいだ」
「そ、そうなの?…もう少しで引っかかるところだった」
「まだ探索していない所もあったし、脱出ポータルを探しなおそうか」
「うん。……ダンジョンで恐ろしいのは、魔獣よりもむしろこういう罠なんだけど、ヒカルが居てくれると問題ないね。すごく、心強い。ありがとう」
「礼ならメニューに言ってくれ。俺は罠の見分けなんかつかないよ」
「え、ええと……ありがとうメニュー?」
お礼言われてますよ、メニューさん。
≪梶川光流及びその仲間のアルマティナのサポートは現状メニュー機能の存在意義の一つ。礼は不要≫
ツンデレかな? いやクーデレ?
こういったやりとりを繰り返していけば、そのうちメニューさんにも人格とか芽生えないかな。
≪今代勇者のメニュー機能と違って、梶川光流用のメニュー機能に模擬人格は搭載されていない≫
なぬ、勇者もメニュー持ちだと? 俺だけじゃなかったのか。
いや、むしろ勇者のために作られた機能を俺が勝手に使ってるって考えるのが自然か。異世界から来た存在には自動で使えるようになってるのかねぇ。
≪……因みに今代勇者は搭載されている模擬人格に対して辟易している模様≫
…俺はメニューさんで良かったよホント。
≪重畳≫
お読み頂きありがとうございます。
因みに主人公が冒険者講習受けてないのは最初薬草採取メインでって話だったのにいつの間にかホブゴブリンやらブレイドウィングやら自力で倒してるから必要なくね?というギルドと本人の判断からだったり。
その他必要な心得はアルマから随時教わっていたりします。書いてないけど。




