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不遇な少女、もっと不遇なオッサン。

あ、なんか期間頂くとか言ってましたが1話分書きあがったので投稿いたします。

次の話は投稿まで少々お時間を頂くことになると思います

 

 はい、こんにちは。

【ダイジェル】の街に無事入場することができまして、現在アルマにギルドまで案内してもらっております。

 街並みは異世界って感じより、むしろテレビ番組なんかで見る海外の美しい街並みに近い印象だ。

 いやむしろ箒に乗った少女の宅急便的な…これ以上はやめとこう。


 異世界って感じの街並みってなんだろうね。あちこち蛍光色で光ってて住民が空飛んでたりとか? いや、なんか違うだろそれ。


 とか考えながら街を眺めて歩いていると、冒険者ギルドの看板が掛けてある建物の前に着いた。

 思ったよりでかいな。学校の体育館くらいか?

 お、入り口が西部劇の酒場っぽいやつだ。ウエスタンドアだっけ? 人が出入りするたびにキコキコ音を立てている。



「ここが冒険者ギルド。私もここで依頼を受けて、魔獣を討伐しに森に向かってた」


「へえぇ、ここがギルドか」



 冒険者ギルドっていうと、漫画やラノベのイメージだと掲示板に大小様々な依頼の紙がビッシリ貼ってあって、美人の受付嬢がいて、初めて入った時にガラの悪い奴に絡まれたりするイメージがあるな。

 …前2つはともかく最後は勘弁してもらいたい。



 キコキコと音を立てながら中に入ると、大体想像通りの内装だった。

 掲示板には依頼書らしき紙が貼られているが、無造作に貼られているわけではなく、魔獣討伐や遺跡の調査、薬草なんかのアイテムの採取などジャンルごとに分けられている。

 まぁ、そうじゃないと判別しづらいし当然といえば当然か。こう綺麗に整理されて貼られていると、仕事のチェックリストとか思い出してワクワク感は半減してるが。


 ギルドの中は様々な人で賑わっている。

 老若男女、職業、使っている武器など、一人一人見てるだけでも個性がある。


 受付のカウンター前まで行き、アルマが受付嬢に話し始めた。



「戻った。履歴の確認をお願い」


 そう言って受注依頼のカードを手渡した。


「はいはいー。…コボルトが2体に、ゴブリンが6体ですねー。お疲れ様ですー」



 受付嬢のお姉さん、金髪碧眼美人でおっとりした雰囲気だな。討伐履歴が見れるってことは鑑定持ちか。

 確認が終わった後、お金をレジから取り出し手渡してくる。



「コボルトが2体で1400エン、ゴブリンが6体で3000エン、合計4400エンになりますー。お確かめをー」


「ありがとう。それと、ギルドに入会させてほしい人が居る。手続きをお願い」


「はい?アルマさんが誰かを紹介するなんて珍しい、というか初めてですね。普段依頼もソロなのに」


「うん。行くあてがなくて、困っているから、お願い」



 そう言って、俺に視線を向ける。



「あ、あの、梶川光流と申します。ステータスを確認していただければ分かると思いますが、職に困っておりまして」


「えぇ? すみませんが少々確認させて頂きますねー………え? 職業判定不能? 能力値、2ばっかり? スキルが取得不可…あれ? でもコボルト1体、ゴブリン2体討伐!? こ、これ、どうなっているんですかー??」



 困惑しながら言う受付嬢。あたふたしてる姿がちょっと可愛い…じゃなくて。



「少し変わった生まれらしくて、ステータスは御覧の有様です。これでは働こうにもどこにも雇っていただけないので、ギルドの依頼の中で、比較的安全なものを受けて生計を立てていこうかと」


「そ、そうですか。なにやら複雑な事情があるようで。どうやったのか、魔獣を討伐した実績もあるようですし自衛はできるとみてよろしいですかー?」


「まあ、一体ずつくらいならなんとか」


「因みに私の目の前で、ゴブリンから棍棒を奪った後、そのまま2体も殴り倒してた」



 アルマ、フォローは有難いけどちょっと言い方が…。



「えええ…。わ、分かりましたー。では、こちらの登録用紙にサインをー…」



 受付嬢、もう理解することが面倒になったのかさっさと登録だけ済ませようとしてるな。ややこしい奴ですみません。



「依頼の内容によっては、失敗した時に罰金が発生する場合がありますので、受注の際はご注意をー」


「すみません。ところで、早速依頼を受けてみたいのですが、なるべく安全な依頼でおすすめなものってありますか?」


「そうですねー。初心者の方なら、やっぱり薬草の採取ですねー」



 そう言いながら、なにやらカウンターの下からヨモギに似た草を取り出した。普段からそこに準備してあるのか?

 メニュー確認。



【ヒルカの草(根無し)】


≪HP回復ポーションの素材となる薬草。葉と茎の部分だけでなく、根の部分にも回復効果があるため、採取は根から掘り返すのが望ましい≫



 サンプル、根が無いんだけど。



「これは先程、他の初心者の方が採取してきたものですー。この薬草は需要が高く、常に採取の依頼を受け付けておりますー。()()()()()()()()()は一本100エンで買い取りますー」



 …サンプルが適切じゃないんですが、それは。

 まあ、初心者が採取したものって言ってたからこれが適切な状態とは限らないってヒントはくれてるけど、ちょっと意地悪だな。

 まあ、簡単な依頼でも下準備や事前の情報収集は怠るな、と言いたいんだろう。


「では、薬草採取の依頼を受注します」


「かしこまりましたー。では受注カードをどうぞー」


「どうも。あの、薬草採取の際に何か注意点などはありませんか?」


「そうですねー。この薬草に似た植物が近くに生えていることもあるので、間違えないようにご注意をー」


「そうですか、他には?」


「ええーと、この町の近くでこの薬草がよく生えている所は、北側の草原などが該当しますー。魔獣はほとんど出てきませんけどそれでも辺りの警戒は怠らないようにーですかねー」


 …肝心なことを話す気は無いみたいだな。

 採取方法は自分で調べろってか。


「分かりました、ありがとうございます。初めての依頼ですので、気合を入れてできるだけたくさん()()()()()()()()


「あ、はい。そ、それではお気をつけてー」



 採取方法知ってたのか、と言いたげな雰囲気で言いながら見送られた。

 俺もちょっと意地悪だったかな。



 ギルドから出て、とりあえず今日泊まる宿に向かうことにした。

 素泊まりで、食事は無いが簡単に体を洗う設備があり、一泊1000エン程度というとても安い木賃宿に向かっている。

 アルマもそこで普段寝泊まりしているらしく、値段の割に結構快適だとか。



「普段から宿とってるってことは、成人してからすぐに自立してるのか? すごいな」


「うん。職業が決まってから、なんとなく家に居づらくなっちゃったから…」


「え? そりゃなんで?」


「それは…」



「あら、アルマ。男を連れてるなんて珍しいじゃない。お金に困って身売りでも始めたの?」



 アルマと会話している最中に、後ろからとてもゲスいこと言ってくる声が聞こえた。


 後ろを振り返ると、アルマより少し背の高い女の子が3人こちらを見ている。

 お友達…って雰囲気でもないな。なんか、いじめっ子のテンプレみたいな子たちなんだけど。



「そんな冴えないオッサンに売るほど切羽詰まってるの? かわいそうだわぁ。なんなら私がお金貸してあげましょうか? 貴女みたいな半端者でも助けてあげないことはないわよぉ?ふふ」


 真ん中の赤毛ツインテールの剣士の子が、言葉を続ける。



「あ、もちろん3日以内に倍にして返せよ? できなきゃ訴えて牢屋に放り込んでやっから」


 後ろの青毛ポニーテールの弓使いの子がニヤニヤしながら続けて言う。


「ち、ちょっと、やめようよ二人共。かわいそうだよ」


 銀髪ロングの魔法使いの子が少し引き気味に言う。



 うわぁ。

 なにこの子たち。

 銀髪の子はともかく、他二人は明らかにこちらを馬鹿にした雰囲気で話しかけてきているんですけど。


 やだなー。何が楽しくてこんな絡み方してくるんだか。女子のいじめ怖いわー。

 てか誰がオッサンだ。そりゃ四捨五入したら30だが。



「お金には困ってない。今日、泊まる宿に案内してるだけ。身売りじゃない」


「宿って、あのボロ宿でしょ? あんなところで寝泊まりしてる時点で、お金に困ってないなんてよく言えるわね」


「ま、()()()の半端ものにはお似合いだけどな」


「ふ、二人共…」



 そう言われて、アルマの表情がわずかに曇る。

 悔しい、そんな気持ちがほんの少しだけ変わった表情から強く感じられる。


 ……ヤバい、キレそう。


 自分が言われるより、アルマが馬鹿にされるのがこんなに腹が立つとは。

 思わず、口が開いた。



「ああ、すみません。不遇職の半端もので。それに比べ、アルマティナさんは私のようなものでも手を差し伸べてくれるとても親切な人ですよね」


「あ?何だオッサン?」


「いやー、私のステータスがとてもショボいことを一目でわかるとは。一人前の方は違いますねぇ。あ、因みにこれが一覧です」


 鑑定紙を3人娘に見せつける。

 どうだ! 本当に不遇な奴ってのは俺みたいな奴のことを言うのだ! 泣きたい。



「え、ちょ、これ半端者とかそういうレベルじゃ・・・」

「お、オッサン今までどうやって生きてきたんだ?」

「か、かわいそう…しかもこれフィルスダイム鑑定師が写したものみたいだから、間違いとかじゃない…?」



 3人娘がドン引きしている。

 まあ、そりゃこういう反応になるわな。



「それに比べて、こんな私を命の危機から救い、行くあてがないことを知るとギルドに仕事を紹介してくれたうえ、宿まで案内してくださる、とても素晴らしい方ですよね。まるで天使だ! そう思いませんか!? ねぇ!」



 勢いで何か変なこと口走ってしまってる気がするけど、もうヤケクソだ。



「わ、分かったわ。分かったから近寄らないで。…アルマ、知り合いは選んだほうがいいわよ。じゃあね」



 そう言って、足早に去っていった。

 去り際に銀髪の子が「おじさん、頑張って」とか言ってた気がするけど、かえって傷付くからやめてくれ。


 3人娘が去った後、アルマが何か言いたげな顔でこちらを見ている。


「あー、ごめん。変なこと言って。迷惑だったなら謝る。一緒に歩くのが嫌になったなら距離を離してくれても―――」


「ごめん」



 俯きながら、アルマが口を開いた。


「私をかばって、あんなことさせてしまって、ごめん。本当は、他人にそのステータスを見せたくないはずなのに」


「まぁ、確かに褒められたステータスじゃないけどな。でもまあ、ゴブリンの群れ相手に一人で相手するよかまだ気が楽だよ。そうだろ?」


「……ごめん」


「いいって。それより宿に向かおう。今日は夜明け前からずっと歩きっぱなしだったからクタクタだ」


「……うん」



 そう言って、再び宿に向かって歩き始めた。

 あー、俺の黒歴史がまた一つ増えた気分だ。

 でも、あのままアルマに向かって言いたい放題されてるのを放っておく方が、もっと嫌だったしなぁ。

 自分が馬鹿にされることにはもうすっかり慣れちまったってのに。



 そういえば、アルマが不遇職って言ってたけど、どゆこと?


 職業【見習いパラディン】

≪剣術スキルと攻撃魔法スキルの両方を所有する者に与えられる職業。見習い剣士と見習い魔法使い両方の特徴を合わせ持つが、レベルアップによる能力値アップの値が低く、スキルの成長も遅いため、器用貧乏な職業と認識されている。また、基礎レベルが10に達した時点で、剣士、魔法使い、■■■■■のうちどれかにジョブチェンジが可能。ジョブチェンジした時点で成長速度に差はなくなるが、見習いの時点での能力値やスキルの成長分、地力に少し差がついてしまう。また、剣士を選べば攻撃魔法スキルが消滅、魔法使いを選べば剣術スキルが消滅してしまう≫



 な、長い。要は剣や魔法に特化した職業に比べて器用貧乏なわけね。

 しかもジョブチェンジ? 職業のランクアップをすると剣か魔法かどっちかしか使えなくなると。

 不遇って言われてる理由はこれか。うーむ。

 で、ジョブチェンジの3番目の■■■■■って何だ? 普通に考えてパラディンだろうけど。


≪前例がないので詳細不明。ジョブチェンジに必要な条件を満たしたものは今まで一人も居ない≫


 条件? ジョブチェンジに条件ってあるの?



≪例を挙げると剣士へのジョブチェンジには剣術スキルを取得して、基礎レベルが10以上に達することが条件≫



 要するにその職業ならではのスキルを持ったうえで、一定のレベルに到達する必要がある、と。


 パラディンだと仮定して、必要なスキルってなんだろうか?



お読み頂きありがとうございます。

3人娘の名前とステは機会があったらそのうち書きます(絶対書くとは言ってない

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
「あら、アルマ。男を連れてるなんて珍しいじゃない。お金に困って身売りでも始めたの?」  アルマと会話している最中に、後ろからとてもゲスいこと言ってくる声が聞こえた。  ライン越えに近いセリフだから…
[良い点] ナビ子さんの情報開示性能に恐怖を感じる 主人公はこの必勝攻略本まがいのチート機能に気づいてるんだろうか 聞けば何から何まで裏設定暴露してくれそうだけど
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