再びダンジョンへ虐殺もとい探索へ
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目が覚めると、少し懐かしくも感じる知ってる天井。
あー、この天井を見るとダイジェルの宿に戻ってきたんだなぁと実感するわー。
さて、顔洗って朝飯作るか。今日はハムエッグと味噌汁とアロライスでいいかな。
キッチンでジュウジュウとハムエッグを焼いていると、アルマが入ってきた。
「おはよう。…なんだか眠そうだな」
「おはよう……あれから月が気になってよく眠れなかった…」
「二つの満月、魔王誕生と勇者の召喚の合図だったな。…勇者はともかく、魔王ってそんなにヤバい存在なのか?」
「あくまで記録だけど、魔王が誕生して勇者に倒されるまで、何百万人もの人が魔王やその配下が原因で死んだこともあるって」
「なっ、何百万?…規模がデカすぎて逆に現実味がないな…」
「でも、実際大破壊の跡とかが残ってるのをお母さんやお父さんと一緒に見たことがある。直径1キロぐらいのクレーターとか、建物が全部廃墟になってる大都市のなれの果てとか」
「うわぁ…今になってようやくヤバさが分かってきたわ」
「だから、反応が薄いって言ってた」
アルマはちょっと不機嫌そうに言葉を返した後、キッチンの隣の部屋のテーブルに座った。
…だってしょうがないやん。俺この世界の人間じゃないし、急に魔王とか言われてもパッと想像できないもん。
精々RPGのラスボスぐらいしかイメージできません。世界の半分プレゼント的な。いらんわ。
てかあれだ、規模はケタ違いだけど要は異世界版のテロリストだと思えばいいのか? あるいは誰彼構わずあらゆる国に戦争吹っ掛ける独裁国家とか。
…そう考えるとリアルにヤバさが実感できる気がする。どっかに避難した方がいいのかな?
≪魔王が誕生した時点で、全ての大陸に魔王関連の拠点が出現するので、安住の地は実質皆無≫
あ、逃げ場無いんですね。ふざけんな。
なんちゅーはた迷惑な。魔王さん人類に対する殺意強すぎない?
魔王の拠点って、あれか? 魔王の下の四天王的な幹部がいる城みたいな。
≪おおよそ、そのイメージで合っていると推測≫
そうか。できれば極力関わりたくないけど、それは向こう次第だしなぁ。
争うことになって負けてしまったら、多分死ぬ。絶対に勝たなければ。
そのためにも地力をしっかりつけないとな。というわけでまずはメシだ。考えているうちにハムエッグ完成したし。味噌汁もそろそろいい具合だな。
腹が減っては戦はできぬ。ではいただきますかね。
パーティ組む前は個室でそれぞれ食べてたけど、いつの間にか最近は一緒のテーブルで食べるのが当たり前になっている。
その方が味の感想とか聞けるし、何故か一人で食うよりずっと美味く感じるしな。うーむ、一人暮らししてたころは一人飯が当たり前だったのになぁ。
朝食が終わって、しばらくまったりしてから街の様子を買い物がてら見ていると、時々住民の口から『魔王』やら『勇者』とかいうワードがちらほら聞こえてくる。
皆、やっぱり昨晩に見えた二つの満月のことが気になっているみたいだな。不安そうにしている人も少なくない。
俺とアルマも、基礎レベルアップはもちろんスキルレベルアップに装備品のグレードアップ、魔力操作や生命力操作の訓練なんかをして対策をとっておくか。
ジェットボアの素材もちょっと前に装備屋に預けたし、新しい防具ができるのももうすぐだ。そのうちアイツをソロで楽に倒せるくらいに強くなりたいもんだな。
さて、となるとやっぱダンジョンでのレベル上げをまた再開した方がよさそうかな。
現状受けられる依頼をざっと確認してみたけど、魔獣討伐の類はほとんどなかったからレベル上げには不向きなものばかりだ。
魔王関連対策に力をつけておきたい今は、金銭面より戦闘力向上を優先するべきだろう。
というわけで、またホブゴブリンやハイコボルトを虐殺する仕事が始まるお…。
あと宝箱からもそろそろレアドロップとか出ないかな。バニソイ豆でもいいぞ。
やれやれ、美味しいもの食べたりしながら楽しく生きる、というのは単純そうに見えて思った以上に達成するのが難しい目標なのかもしれないね。
主に魔王のせいで。おのれ魔王、いつか成敗されるがいい。勇者に。俺は無理。
…仮に世界のコトワリが魔王誕生の原因だと考えたら、何のためにそんなもん産み出したんだろうな。
人類に殺意を向けてるってことは、普通に考えたら人々を滅ぼすためだろうけど、絶滅には今まで至っていない。
当たり前のことのようだけど、それは勇者が召喚されてそれを防いできたからだろう。
もしかして、人類の人口をある程度減らしてから勇者に倒されるまでを含めて魔王の使命なのかもしれない。
人口爆発による資源の枯渇を防ぐためとか。いや、ただの妄想だけどさ。
≪…≫
ん?メニューさん今一瞬なんか表示した?
≪否。単なるメンテナンス時のテストメッセージ≫
そうですか。色々便利な機能ばかりだが時々メンテも必要みたいだな。自動でやってくれるのはありがたい。
妄想考察タイムも一旦やめにして、ダンジョンに行く準備をしますか。
あんまり深層まで行くのは危険だけど、ジェットボアを倒した実績もあるし、今日はいつもよりもう一つ下の階層を目指してみるか。
…これくらいならフラグにならないといいが。
さてさて、やってきましたいつものダンジョン。
村の依頼をこなしている間ずっと来てなかったけど、内部の構造が入る度に変わってるから懐かしいかと言われるとちょっと微妙。
階層を進むごとに出現する魔獣が段々強くなっていくけど、第三階層くらいまでは出現する魔獣はLv10以下のザコが主で、時々ホブゴブリンやハイコボルトが混じってるくらいだ。
今の俺とアルマなら素手でもゴブリンくらいなら楽に倒せるし、武器を使えばスキルや魔力操作なしでもホブゴブリンやハイコボルトも普通に倒せる。
第四階層から、Lv10以上の魔獣がザコ感覚で出始めるらしいので今日は第四階層攻略を目標に進んでみることに。
第三階層までの脱出ポータルをスルーして、第四階層まで到着。
さて、ここまでほとんどMPを消費せずに進むことができたが、第四階層からはそうもいかないだろう。
強くなるためとはいえ、過度の無茶は禁物だ。それで命を落としたら本末転倒もいいとこだしな。
ひとまずポータルを探して、発見したらそこを拠点として魔獣狩りや宝探しといきますかね。
お、早速第1村人ならぬ第1魔獣発見。いや4体いるから第1って言い方で正しいか分からんが。
ハイコボルト3体に混じって、なんか強そうな魔力が…ってウェアウルフか、スタンピード以来だな。
数が多く、このまま正面からやりあうのはちときついので、アルマは例の強化ストーンバレットで、俺は縮地モドキ+魔力パイルバンカーで奇襲を仕掛けることに。
では、3・2・1、GO!
ドンッとアルマからストーンバレットがハイコボルトに射出されるのと同時に、低空高速飛行こと縮地モドキで他のハイコボルトに急接近。
掌底を当てるのと同時にパイルを…ってやべ、タイミングミスッ
ドスゥッとモロにハイコボルトの胸部に掌底が当たって、数メートルほど吹っ飛んだ。
パイルは不発。なんか思った以上に魔力飛行の速度が上がっていてタイミングがずれちまった。
…あれ? 死んでる? いやまあ、あんだけ速いスピードでぶつかればそこそこのダメージにはなるだろうけど、まさかあれだけで死ぬとは。ちょっと拍子抜け。
他のハイコボルトもアルマの魔法で胴体に風穴が空いて、そのまま死亡。
村でのラッシュボア狩りの時も思ったけど、アルマの遠距離攻撃の命中率すごいな。
≪投擲スキルの遠距離攻撃命中率上昇補正効果が要因の一つと推測≫
あ、投擲スキルって魔法の命中率にも影響あるのか。いわゆるスキルのコンボ的な。
それを狙って投擲スキルを獲得したとすれば、なかなか考えて修業してたんだな。やっぱこの子優秀だわ。
さーて、あとはウェアウルフか。前みたいに俺が拘束してる間にアルマにトドメを刺してもらう流れでいいかな。
ギュンッとウェアウルフに急接近して、両手を掴んで拘束。
…あれ? 気のせいか前に戦ったウェアウルフより腕力弱くね? いやステータスを見る限りむしろ少し強いくらいのはずだが。
あ、そうか、俺もレベルアップして能力値上がってるからその分余裕があるのか。あんだけ恐ろしく感じたウェアウルフが今じゃあまり脅威にならないとは。戦闘力のインフレって残酷。
で、アルマにさっくりトドメを刺してもらって決着。魔法剣を使うまでもなかったみたいだ。
「思ったより楽に倒せたな。レベルが上がって、少しは強くなってきたのかな」
「でも油断は禁物。ジェットボアぐらい強いのが来たら、さすがに厳しい」
「だな。早めにポータル見つけて、安全を確保しないと」
さすがにあんなのとはしばらく戦いたくない。かなりギリギリの戦いだったし。
とりあえず罠に気を付けつつ探索を再開しますか。
で、しばらく第四階層をうろつているが、やっぱりこの階層から全体的にレベルが上がっているな。
例えば宝箱のドロップ品は第三階層までと比べると少しグレードが良くなってる。
ポーションの類は中級のものが手に入ったし、装備品も鉄剣やボロの装備ばかりではなく、鋼鉄製の物が主だ。
これなら金銭面も心配しなくて済みそうだな。冒険者がより深層に挑戦したくなる気持ちが分かる。
まあ、調子に乗り過ぎて自滅しないように気を付けよう。
お、脱出ポータル発見。
今日はまだあまりまともに戦ってないし、帰るのはもう少し探索してからに……?
ん? ポータルの隣の部屋からかなり強めの魔力を感じる。
ちょっと覗いて様子を見てみると、なにやら怪し気な三角帽子被った人型のナニカが宙に浮いてますね。
ステータス確認。
魔獣:スピリットマジシャン
Lv24
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :320/320
MP(魔力) :375/375
SP(スタミナ):171/192
STR(筋力) :100(+15)
ATK(攻撃力):100
DEF(防御力):183
AGI(素早さ):152
INT(知能) :267(+40)
DEX(器用さ):149
PER(感知) :154
RES(抵抗値):194
LUK(幸運値):47
【スキル】
魔獣Lv3 杖術Lv3 攻撃魔法Lv6 精霊魔法Lv2 補助魔法Lv2
装備
水晶の杖
ATK+15 INT+40
おお、魔法特化タイプの魔獣か。
これまで肉弾戦仕掛けてくる奴ばっかで、こういうタイプは初めてだな。ブレイドウィングはあんまり強い魔法使ってこなかったし。
魔法タイプ相手の戦闘というと、やっぱ近接戦闘で魔法を使わせないようにするのがいいかな。いや、至近距離でストーンバレットとか使われたら回避が困難か。
敵によって戦術を考えるのって面倒なようで結構楽しいな。さてどうしたもんかね。
お読み頂きありがとうございます。




