六人目の囚人
更新再開するとかぬかしておきながら半月放置するというアレっぷり。
王都にさしたる被害もなく、スタンピード討伐は完了した。
いやー、誰も死んでないし無事に終わってよかったー。
「梶川さん、第3大陸の被害がエグいことになってるんだが。誰も死んじゃいないけど、大部分の地形が変わっちまってるぞ……」
顔を引きつらせながらネオラ君がなんか言ってるけど無視。全部あのドッペル野郎が悪い。
テリトリーのコアを吸収する際にも滅茶苦茶に暴れまわってたし。
まあ、そのおかげで魔獣のテリトリーと化していた範囲も人類の生活圏として利用できる準備が整ったわけなんだが。
元から魔族たちに滅ぼされた状態だったし、被害がデカいといっても人様に迷惑かけたわけじゃないからセーフ。
ちなみに、ネオラ君にもアルマと同様、第3大陸で待機してもらっておいた。
緊急時の加勢要員としてでもあるが、ネオラ君にはもっと重要な役目があったためだ。
というのも、元々はネオラ君が倒す手筈だったボスを俺やアルマが倒したことが知られたら、悪目立ちして面倒なことになりかねないからだ。
「というわけで、ドッペルゲンガーを倒したのはネオラ君ということにしておいてくれ」
「いや、待てよ! なんでだよ!?」
「頼むわー。ただでさえ侵攻してくる魔獣たち相手に派手にやらかしてたのに、ボスまで俺らが倒したことがバレたら何言われるか分かったもんじゃないんだわー」
「えー……今回、全然役に立ってないのに、ヒトの功績被るのなんか嫌なんだけど……」
なら、なおさらだろ。
俺らは悪目立ちせずに済んで、ネオラ君たちはボスを無事に討伐したってことで評価落とさずに済んで、win-winだろ。
はい、ということでいいね? いいよね? いいと言え。
では撤収ー。
~~~~~鎖鎌使いの囚人・ジフルガンド視点~~~~~
オレたちの担当したスタンピードは無事に収束した。
誰も大きな怪我もせず、ボス討伐へ向かったメイバールも生きて帰ってきた。
気のせいか、ボスの討伐へ向かうまでは死んだ魚のような目をしていたのに、なんだか覇気のある顔になったように見える。
「……色々あってな。過去に囚われてウジウジするのはもう止めにしたんだ」
そう言うメイバールはどこか寂し気にも見えた。けど、吹っ切れたような今までで一番明るい印象を覚えた。
なにがあったのか知らねぇけど、きっと悪いことじゃなかったんだと思う。
オレたち五人は全員無事だったけど、ボス討伐に同行していたメンバーが何人か負傷しているようだ。
ポーションを飲んである程度回復はしているみたいだけど、そんなに苦戦するような魔獣と戦ってたのか? メイバール、よく無事だったな。
あと、参加していた囚人たちのうち何人かが瀕死の重傷を負って運ばれていったのが見えた。
よく見ると、初日にカジカワ教官のところから他の教官へ乗り換えた連中がほとんどみたいだ。
……あの様子だと、あれからあんまり成長してないっぽいな。自業自得だ。
そのカジカワ教官たちは大丈夫なんだろうか。
さっきまで、発生源がどこなのかも分からない地響きや大気の揺れが何度も何度も届いてきてたけど、まさかアレ教官たちが原因じゃねぇだろうな。
……いや、さすがにそりゃないか。教官たちの担当は他の大陸って話だったし。
とか思いながらしばらく休んでいると、どこからともなく教官たちが帰ってきた。
転移魔法か? 急に現れるとちょっとビックリするんだけどなぁ……。
「ただいまーっす。んー、皆も大丈夫そうっすね。お疲れっすー」
「お疲れ、教官。……ところで、ちょっと前までドンドンって変な揺れが響いてたけど、アレがなんなのか知ってるか?」
「あー……ぶっちゃけもう予想ついてると思うけど、アレはカジカワさんっすよ」
「やっぱりな」
「納得だわ」
「だろうな」
「ですヨネ」
「他にいねぇだろ」
納得の言葉をそれぞれ述べているけど、まあそうだろうなという感想しか出てこねぇ。
「つーか、他の大陸でスタンピードの対応してたんだろ? こんなトコまで揺れが届くくらいに暴れてたってのか?」
「今回のボスは相手の強さをそっくりそのままコピーしてくる魔獣だったらしいっすから、珍しく苦戦してたみたいっす」
「うわ、じゃあカジカワ教官同士の戦いが勃発してたみたいなもんってことか? 王都近くのスタンピードだったって話だけど、王都がぶっ壊されたりしなかったのか?」
「途中で第3大陸に移動してたっすから、第1大陸は無事っす。……第3大陸がどうなったかは知らないっすけど。アルマさんは見てたんすよね?」
「……今はあまり人がいないから誰かが巻き込まれたりはしなかったけど、大陸中が滅茶苦茶になってた」
都市壊滅どころか大陸規模で破壊活動してたのかよ。やっぱあの教官おかしいわ。
……って、あれ?
「そういや、そのカジカワ教官はどこいったんだ? まだ帰ってきてねぇのか?」
「……ヒカルは少しの間、お休みする。その間は私たちが鍛錬を続ける」
「え、お休みって……どこか怪我でもしたのか?」
「いや、怪我したっていうか、怪我させたっていうか……」
気まずそうにアルマ教官とレイナ教官が顔を逸らした。
なにやらかしたんだ、と聞こうとしたところで、レイナ教官が口を開いた。
「スタンピード騒ぎが終わった後に、なんか難癖付けてきたおバカな大臣を殴り飛ばして、そのまま逮捕されて連れていかれちゃったっす……」
……は?
~~~~~六人目の囚人もといカジカワ視点~~~~~
牢の中からコンニチハ。
どうも、国家の重要人物(笑)を殴り飛ばしてブタ箱に放り込まれた僕です。
うん、まあ、なんだ。
いつも感情任せにぶん殴って事態をややこしくしてるし、今回もそうなんじゃないかと思われるかもしれないがそうじゃない。
俺は至って冷静に考えて判断した結果、ぶん殴って牢に放り込まれるのが長い目で見れば最適解だと思ったんだ。
決して考えなしに暴れたわけではない。断じてない。
ファストトラベルを使えば自由に出入りできるけど、今はあえて大人しく捕まったまま、しばらくのんびりしていよう。
さて、はたしてどれくらいで音を上げるかな?
楽しみだなーケケケ。
スタンピードの後になにがあったかは、また次回に。




