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地獄初日終了



『コケェェエエッ!!』



 ニワトリ魔獣の群れが、五人の囚人たちに襲いかかる。

 一匹一匹が囚人たちと互角か、それ以上のレベルを誇っている。


 中でも、一匹だけ混じっているミスリルコッコはLv67。どう考えても挑んでいいレベルじゃない。

 アルマの強化魔法と強力な装備がなければ自殺行為もいいところだが、さて。



「お、おい! どうすんだよ!」


「おいおい、アイツってミスリルコッコじゃねぇか! Sランクに片脚突っ込んでるようなバケモンだぞ!?」


「……その一番厄介そうなのを俺が押さえる。その間に他のニワトリどもを殲滅してくれ」


「ほ、他のって、簡単に言ってくれてるけどいくらなんでも多勢に無勢でしょ!? 無謀にもほどがあるわよ! このままじゃ袋叩きじゃないの!」


「み、皆サン! 私の近くニ!」



 あわやリンチになりかかったところで、ルルベルが盾を地面に突き刺してからスキル技能を発動させた。

 『円魔盾壁』という盾術スキルのようで、術者を中心にドーム状のバリアーを発生させる技能のようだ。


 本来ならルルベルがスキル技能を使ったところですぐに破られるだけだろうが、アルマの強化魔法でステータスが強化されているうえに装備している盾の補正値が高いため、なんとかニワトリたちの攻撃を防ぎきれているようだ。

 あー、なんか半年前の狩猟祭を思い出すなー。確かヒューイットとかいう盾使いの人がニワトリたちの攻撃を防いでくれたっけ。

 あの時、一緒に戦ってくれた人たちは元気だろうか。また会ってメシでも食いながら談話でも楽しみたいもんだが。



「私ガ防いでいる間ニ、障壁の内側から遠当てや伸魔刃で攻撃シテ数を減らしてくだサイ! ミスリルコッコの攻撃サエこなければ、しばらくは大丈夫だと思いマス!」


「わ、分かった。ミスリルコッコの相手をしてる間、他のニワトリがメイバールにちょっかい出さないように守るぞ!」


『コケェッ! コケェエエッ!!』


「ああもう、うるっさいわね! 纏わりつかないでよ!」



 障壁からメイバールが単騎で飛び出して、ミスリルコッコに向かって突進。

 それを囲んで叩こうとするニワトリたちを、他のメンバーが防壁の中から遠当てや伸魔刃で迎撃。


 要はメイバールにヘイトが向いて隙だらけのニワトリたちを後ろから刺す戦法だな。卑劣ぅー。

 だが案外理に適ってはいる。ちとメイバールにかかるリスクが高すぎる気もするが。




『コケッ……!』


「……はっ……」



 そのメイバールだが、遥か格上のミスリルコッコにまるで臆さず立ち向かっている、というかむしろミスリルコッコのほうが怯んでねーか?

 ただ黙々と槍を振るっていて、一見気迫もなにもないように見えるがそれが逆に怖い。



『コッコケッ! コケェッ!』


「っ……はぁっ……!」


『コ、ケェッ!?』



 おいおいおい死ぬわアイツ、と一瞬本気で焦りそうになった。

 魔力の刃を複数同時に展開して攻撃する技能『魔爪分閃』をミスリルコッコが放ったのを見て、あろうことか刃と刃の間をすり抜けて突っ込みおった。


 一歩、いや半歩間違えば頭から股にかけて身体が裂けかねない、紙一重の回避と突進。

 それを、こともなげにやってのける胆力に感心すべきか、あるいはなんて命知らずなんだと呆れるべきか。


 アルマの御両親とかが同じことをしても『達人だからできて当たり前』というだけで済むが、正直メイバールの実力でこんなことをするのは無謀でしかない。

 どうにも自分の命に頓着がない様子。ちょっと今日の訓練が終わったら、彼のこれまでの経緯をもう少し詳しく聞いてみよう。



『コッ……コケェ……!』


「……終わりだ」



 そんな命知らずな突進の甲斐あって、槍をミスリルコッコの胴体に突き刺すことに成功した。

 正確に心臓を貫いたようで、すぐにミスリルコッコは動かなくなり、息絶えた。



 んー、正直あんまりよろしくない。

 もう少し時間をかけてもいいから、もっと慎重な戦いかたをするべきだったと思います。



「……ちっ……」



 だって、さっきの『魔爪分閃』で義足が壊されちまってるし。

 このまま戦闘を続行するのはちと厳しいぞ、さぁどうする?



「ミスリルコッコを仕留めたはいいけど……アイツ、義足が壊されてるわ!」


「ちっ、オレが援護する! オッサンとミラームは周りの雑魚を頼む!」



 義足が壊れてまともに動けなくなったメイバールを障壁の中に戻らせるため、ジルド君がメイバールの傍まで駆け寄っていく。

 ……判断自体は悪くないけど、向かう人間の選別に問題あり。



『コケェッ!』


『ゴゲェェエッ!』


「くそ、ワラワラ纏わりついてきやがって!」



 ジルド君の扱う武器は片手用の手鎌。草刈り用の鎌の刃渡りを少し長くしたような武器で、リーチが短く攻撃範囲が狭い。

 伸魔刃を使って薙ぎ払おうにも、複数体いる高レベルのニワトリ相手だと鎌を振るい切る前に止められてしまうようだ。


 鎌術は単体で使っても、複数相手にはどうしても不利なようだ。

 攻撃力こそ低いがミラームの鞭術ならリーチも長いし広範囲を一気に攻撃できるだろうに。人選ミスですねこれは。


 人選ミスといえば、そもそも俺たちに囚人の育成をさせること自体がなんかおかしい気もする。今更か。

 こうなったら徹底的に鍛え上げて度肝抜いたるわ。



『コッケェッ!!』


「あっ!?」



 おおっと、ジルド君の鎌がプラチナムコッコの攻撃で弾き飛ばされてしまった。

 ミスリルコッコにばかり目がいってたが、まだまだ高レベルのニワトリが大勢残っている。油断は禁物だぞ。



「や、やべっ……!」


「もう、なにしてんのよ! せぇいっ!!」


『コケェッ! ……コケッ!?』



 おおー、弾き飛ばされた手鎌をミラームが鞭で掴み、そのまま振り回してニワトリどもを次々切り裂いていってる。

 鞭術は攻撃範囲こそ広いが、他の武器に比べて攻撃力がちょっと弱いのが玉に瑕。

 しかし、ジルド君の手鎌を鞭の先で掴んで振り回すことで、攻撃範囲をそのままにしたうえで威力の高い攻撃を繰り出している。


 むむ、むむむ、なんか今のを見てビビっときたぞ。

 メニューさん、今思い付いたの実戦で使えそう?



≪……過去の勇者の中に、鎌術に対して同じ結論に至った者が一名ほど存在。スキルの相性もよく、応用が利く戦術だったと記録にあり。ただし、難易度は高い≫



 ふむ、となると近いうちに必要なスキルを習得させるとするか。

 上手くいけば、ジルド君はタイマンだろうが集団戦だろうが近距離だろうが遠距離だろうがなんでもござれの万能選手になれるかもしれない。

 ……失敗すれば、余計なスキルを覚えた器用貧乏になりかねないが、さて。







「はぁ、はぁ、はぁ……! お前で、最後だぁっ!!」


『コギャァッ!!』



 その後もしばらくニワトリたちとの戦いは続いたが、一時間後にようやく最後のニワトリの首が泣き別れとなり、討伐が完了した。

 そのころには全員疲労困憊で、まともに立っている者は一人もいなかった。




「う、うぅ……死ぬかと、思いまシタ」


「つ、疲れたなんてもんじゃないわ。たった一時間だったのに、すごく長く感じたわね……」


「……もう、しばらくニワトリは見たくもねぇ……」


『コケッ!』


「ごふぁっ!?」



 失礼なことを愚痴ったギルカンダ(クソ親父)をヒヨ子が殴り飛ばした。

 おいおい、回復の手間が増えるからやめなさい。 



「んんー、思ったより早く終わったな。レベルもそこそこ上がったし、称号のほうも全員『命知らず』が追加されてる。これで今後のレベリングのペースは飛躍的に上がることだろう」


「い、命知らずって、確かレベルが30以上離れてる魔獣を討伐したらもらえる称号だろ? そんなのと戦ってたのかよ、オレたち……」


「ほとんどメイバールが単騎で倒してたが、サポートに回ってたからか全員取得してるな。さて、そのままだと動けないだろうからポーションを飲んで回復しなさーい」


「これも結構高級なポーションだろ? そんな易々と使っていいのかよ?」


「いいのいいの、気にせず使いなー」



 黄金色に輝くポーションを眺め、ちょっと躊躇しながらも全員が中身を飲み干した。

 今飲ませたのはHP・MP・SPを一度に回復させる高級ポーションで、一本なんと50万エンもする。

 ……本当は複数のポーションを飲ませたほうが安上がりだけど、お腹タプタプになっちゃうからね仕方ないね。



「すげぇなコレ、疲れが一気に吹っ飛んじまった」


「うんうん、よく効いたようでなにより。あ、あとメイバールの義足を直すからちょっとこっちにこい」


「? 直せるのか?」


「まあね」



 適当に分解修理しているふりをしながら、一瞬だけアイテム画面に放り込んで修復画面で修理。

 なんの問題もなく元通りに直ってしまった義足を訝し気に眺めつつも、特になにも言わず装着しなおした。




 さて、全員の回復も済んだことだし、次だな。











「はい、じゃあ第2ラウンド開始ね」


「え?」


「は?」


「?」


「あ?」


「え、ええ? それは、いっタイ……?」



「全員、耳を塞げ。じゃあヒヨ子、どうぞ」







『スウゥゥ…………コッケェェェェェエエエエエエエエッ!!!!』





 一時間前のように、再びヒヨ子が大絶叫を上げた。

 それを聞いて、困惑顔だった囚人たちの顔がみるみる青白く染まっていく。






「オイ待てふざけんな! 今の声ってもしかして―――」





『コッケェェ!!』


『コケッ!』


『コケェ! コケェッ!!』




 再び四方八方からニワトリ魔獣たちが囚人たちに向かって襲いかかってきた。

 んー、一回目よりも数が増えてるな、しばらく魔獣草原で見られるニワトリの数が減りそうだなーこりゃ。




「はい、じゃあガンバッテー」



「くっそがぁぁぁぁあああああっ!!!」


「もうイヤこんな修業! このままじゃ本当に死んじゃうわよぉ!!」


「……はぁ……」


「テメェマジで覚えてやがれっ!!」


「うふふあははモフモフデスネ」



 だからルルベルは正気に戻れ。お前がバリアー張らなきゃすぐ全滅するぞ。













「うぅああぁぁ……」


「……もうやだ……」


「……」


「……しぬ……」


「……い……生きテルって……素晴らシイ……デス……」




 そして再び一時間後、全員地面に突っ伏しながら半死人の様相で転がっている光景が広がっていた。

 どうにか二度目の地獄も無事に乗り越えられたようだ。すごいぞ君たちぃ。


 その結果、全員のレベルがこんな具合に。




 メイバール(槍)  Lv34 → Lv49


 ジフルガンド(鎌) Lv18 → Lv43


 ミラカラーム(鞭) Lv25 → Lv45


 ギルカンダ(短剣) Lv29 → Lv44


 ルルベル(盾)   Lv28 → Lv48




 うむ、全員上級職一歩手前まで鍛え上げられてるな。順調順調。

 初日はこんなもんかな。あんまり同じ場所で魔獣を狩ってると環境破壊になりかねないし、明日は他のところでレベリングするか。



 なんかミラームが『こんな地獄、絶対逃げだしてやる』とか呟いてたけど。もう君たち全員マーキングしてあるのでどう足掻いても逃げられません。諦めろ。

 あと一ヶ月の間、どれだけ鍛えられるか楽しみだ。








21階層 現在6■探索中

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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