死ね
今回始めはレイナ視点です。
『ゴォォォオオッ!! ……ガヴァギャッ!!?』
『コッ……コケ?』
ヒヨコちゃんと殴り合っていたデカブツの上半身が、急に粉々になって弾け飛んだ。
あー……このパターンももう見慣れてきた感じがあるっすねー。
「お待たせ。……早速だが、これどういう状況だ?」
「遅いっすよ、カジカワさん」
『コケェ』
『た、対象、大部分が破壊され、消失……』
『おい、近付いてきた超強力な反応って、もしかしてレイナちゃんのお仲間なのか?』
「あ、はいっす。ちょっと前に拉致された三人のうちの一人っすよ」
『救出に向かった部隊はまだ帰還していないんだが……まさか自力で戻ってきたっていうのか?』
ネオラさんが助けにいったのに、結局自分でなんとかしたっぽいっすね。ネオラさん骨折り損っす。
「……あれ? そういえば、アルマさんとアイナさんは?」
「あー、マップを見る限りじゃアイナさんはネオラ君と合流したっぽいからそのうち戻ってくると思うぞ。アルマは俺と一緒に帰ってきてるけど、今ちょっと動ける状態じゃないから安全な場所で休ませてる」
「え、アルマさん、怪我でもしたんすか!?」
「いや、そうじゃないんだが……まあちょっと腰とかに負担がかかってるだけだから、少し休めば大丈夫だよ」
腰に負担って、いったいなにやってたんすかね? 肉体労働とか?
……てか、ただでさえバケモノじみてるカジカワさんの存在感が、軽く五倍くらい大きくなってるのは気のせいっすかね……?
『ゴォォオオオ……!』
『グギャァァアアッ……!!』
「しかし、デカいのが随分いるな。……んー、『怪獣型ユニット』? こいつら、戦略シミュレーションゲームの駒みたいなもんなのか?」
「言ってる意味がよく分かんないんすけど、自分とヒヨコちゃんが協力している組織の人たちが言うには、生き物じゃないらしいっす」
「みたいだな。魔力で作られた人造生物ってところか。……ところで、レイナたちが協力してるのはセーフティなんとかって組織だったりする?」
「え、あ、はいっす。そんなかんじの名前だったっす」
「ふーん……吉良さんが捕まりそうになったってのはその組織のことか……」
あれ、カジカワさん、この人たちのこと知ってる?
なんかブツブツ言ってるけど、キラって誰のことっすかね。
『レイナちゃん、そのゴジ〇どもを操ってると思われるパルスの発信源が特定できた!』
『渡した端末に座標を送るから、発信源へ向かってそいつらを操作している原因を叩いて止めてくれ!』
「おっと、了解っす。ところで、このデカブツたちはカジカワさんにおまかせしてもいいんすか?」
「いいよー。というわけで、死ぬがよい」
『ギ、ギャァアッ!? ゴヴェハッ!!』
目にも留まらない速さでデカブツたちに向かって飛んでいき、体当たりしただけで次々とデカブツたちが砕けて消えていく。
……このデカブツたち、巨大化したヒヨコちゃんの攻撃に耐えるくらい頑丈なんすけど、まるでクッキーでも割るかのように容易く砕いていってるっす。
「……ちっ、ぶっ倒しても消えちまうんじゃ肉が採れないな……」
いや、採れたら食べる気なんすか……?
自分も食い意地張ってる自覚はあるけど、この人には負けるっすわー。
「まあいいや、ストレス解消にちょっと遊ぶとしますか。よし、じゃあボーリングやろうぜ! 俺が投手やるからお前らボールとピンの役な!」
『ギ!?』
『ゴギャア!?』
なんかもう放っておいても大丈夫な気がしてきたけど、一応自分も仕事しとかないと気まずいからさっさと原因をなんとかしに行くとしましょうかね。
……うわ、デカブツをぶん投げて他のデカブツを薙ぎ倒していってるっす。
その度に海岸に大波が発生してるんすけど。……デカブツたちよりむしろカジカワさんのせいで被害が出そうな気が。
さっさと『影潜り』で元凶を止めにいかないと、デカブツたちより先にカジカワさんがニホンを滅ぼしかねないっす……。
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「くそ! くそ、くそぉっ!! なんなんだよ! いきなり変なのが出てきたと思ったら、怪獣型ユニットが潰されていく!!」
冗談じゃない! やっと、やっとこのクソみたいな世界に復讐してやれるって思ったのに、こんなところで終わってたまるか!
あの地獄みたいな場所からやっと日本に戻ってこれたんだ! ボクを見下してきた奴らを見返せなきゃ、嘘だろう!
30代半ばまで働かなくてなにが悪い! ボクは悪くない! 性欲にまかせてボクを産んだ親が悪い!
いい歳して実家暮らしがなんだ! 産んだなら、死ぬまで面倒見るのが親の役目だろ!
それを、それをっ……! あのババアとジジイめ……!!
ボクは太ってなんかない! ボクは臭くなんかない! ボクは、ボクはゴミなんかじゃない!
なんでみんなボクをバカにする! なんでみんなボクの話を聞かない!?
お前らがボクを見下してるのは、自分より劣ってるヤツがいないと自分を保てないからだろうが! ゴミはお前たちのほうだ!
誰にも迷惑がかからないように、誰にもバカにされないように、誰にも関わらないようにずっと自分の部屋から出ないようにしてきたのに、目が覚めたらあの扉だらけの地獄にいた。
扉の先は、どの扉もいわゆる『異世界』に繋がっているようだった。
最初は、不覚にもテンションが上がった。
異世界転移なんてネット小説の中だけの話だと思ってたのに、まさか自分が体験することになるなんて、って。
小説の主人公みたいにチート能力に目覚めて、可愛い女の子キャラを侍らせて、雑魚どもを一蹴して、なんて妄想を、何度したか分からない。
現実は、そんなに甘くなかったけれど。
扉を開くと、確かに異世界に繋がってはいたけれどボクが望んだような剣と魔法の支配するゲームのような世界にはたどり着けなかった。
ホラーゲームのような、ミステリーゾーンばかりで、ちっともワクワクしない。何度も死にかけた。
どこの扉を開いても死ぬような目に遭って、それでも日本に帰るために扉を開き続けて、とある世界への扉を開いた時に『戦略ユニット作成』という能力に目覚めた。
やっと手に入れたチート能力だけど、ボク自身が強くなるような能力じゃなかった。
戦略シミュレーションゲームのような能力で、『ポイント』を消費して『ユニット』と呼ばれる手駒を召喚して、ボクの思い通りに動かすことができる能力だった。
ちょっと思ってた能力と違ったけど、これはこれで悪くない。
能力を手に入れた後に脱出して、すぐ次の扉を開いたら日本へ帰ることができた。
やっと帰ることができた。
いったい何日彷徨っていたか分からないけど、ようやく無事に帰ることができたんだ。
きっと、お母さんとお父さんにも心配かけてしまったに違いないと思いながら家に帰ると――――
『なんで戻ってきてるんだ?』
『……え』
『もう面倒見切れないから追い出そうとしたところで、タイミングよく家出してくれて助かったと思ってたのに』
『お、父さん、なにを言って……』
『アンタの帰る場所はもうここじゃないよ。ほら、さっさと出てけ!』
『……母さん、まで……』
家で待っていたのは、心配した両親との感動の再会ではなく、ボクを蔑んできた連中そっくりの目で睨んでくる、血の繋がった赤の他人だった。
なんで、なんで、そんなこと、言うんだ?
これまで、お父さんとお母さんだけはどんなことがあってもボクの味方だったじゃないか。
『30過ぎても働かず食っちゃ寝してる穀潰しを養ってきて、ずっと外へ出て働くように言ってきたのに、結局いつまでもなにもしなかっただろうが!』
『もう顔も見たくない! 二度と帰ってくるなっ!!』
お父さんと、お母さんにまで見捨てられたら、ボクは、この世界に、味方が、いない。
ボクが、ボクが間違っていたのか? 違う。間違ってるのは、この、ボクを認めない、この世界のほうだ。
世界が僕を認めないなら、ボクもこんな世界認めない。
『ポイント消費、戦闘ユニット召喚。……目の前の対象二体を、排除しろ』
『な、なんだこれはっ……ぎゃあっ!?』
『ひ、ひいぃっ!?』
『戦略ユニット作成』で人型戦闘ユニットを召喚して、両親だった奴らを殴り倒した。
罪悪感も、なんの感慨も湧かない。
もうこんな奴らなんてどうでもいい。
こんな世界、滅んじまえ。
こんなクソッタレな世界、ぶっ壊れちまえ……!!
ポイント、即ち『生命エネルギー』を消費して巨大な怪獣型戦闘ユニットを百体召喚。
寿命が残り十年まで縮んだけど、もうどうでもいい。
どうせ死ぬんだ、この世界も道連れにしてみんなぶっ壊してやる……!!
そう思って進軍させたのに、邪魔者が入りやがった。
怪獣型ユニットの視界を通してみると、空を飛ぶ何者かが怪獣たちを容易く蹴散らしてやがる。
このままだと、ボクは世界に復讐することができなくなっちまう……!
……落ち着け。幸い、まだ使えるユニットは残っている。
切り札にとっておいた、最悪の手駒。
怪獣ユニットの数百倍もの大きさを誇るその超大質量は、海上で召喚された時点で大津波を引き起こすだろう。
そうなれば、少なくとも日本は終わる。
そいつが討伐されるまでの間に、地球の大部分は破壊されて人類はほぼ滅亡することだろう。
これを召喚すれば、残ったポイント全部消費してしまって僕の寿命は尽きる。
どのみち死ぬんだ、なら、もうこの手しかない!
「みんな、死んじまえっ!!!」
そう叫びながら、ユニット作成の決定キーを押そうとしたところで、ユニット作成画面が消失した。
それと同時に、これまで召喚した怪獣ユニットたちも消えてなくなったのが分かった。
ボクの意志とは関係なく、勝手に能力が解除されたんだ。
「な、なんで、なにが起きたんだっ……!!?」
「死ぬのはテメェだよ、クズニート」
そう聞こえたのと同時に、ボクの頭に衝撃と激痛が走った。
……っ!? ……誰かに、殴られた……!!?
あまりの衝撃に床に倒れ込んで、さらに頭を踏みつけられたのが分かった。
「やっぱ異世界帰りのチート持ちなんてクズばっかだな。お前も、あの空飛んで怪獣と戦ってるヒーロー気取りも、生きる価値無しのゴミクズだ」
「がっ……ああぁぁっ……!!!」
頭に乗っている足を腕でどかして、声の主に向き直ると、ボクの頭に向かってバットを振りかぶっている男の姿が見えた。
その目は、これまで見てきたどんな蔑み混じりの視線よりも、冷たく、黒く、暗いものだった。
「さっさと死んどけクズ。……ちっ、余計なやつまで嗅ぎつけてきやがったか」
そう聞こえたのと同時に、ボクのあたまにバットがあたって、それ、で―――――――
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「あれ、ゴジ〇もどきどもが消えた。レイナが元凶を叩いたのか?」
≪否定。未知の外的要因により、強制的にユニット操作能力が解除された模様≫
「俺たちの他にも、この怪獣を操っているヤツを止めようとした人がいたってことか?」
≪その推測に同意。……元凶の位置にレイナミウレが到達≫
「一足遅かった、というかその未知の外的要因ってのが一足先に仕事したってかんじかな。働き者だねぇ」
≪!! ……レイナミウレの生命反応、消失≫
「……は?」
≪『ステータスの喪失』により、レイナミウレの生命活動が停止したことを確認。肉体の損傷こそしていないが、レイナミウレは現在をもって死亡した模様≫
お読みいただきありがとうございます。




