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アジト探索



 アイナさんを拉致しようと囲んできた連中を弾き飛ばしたら、俺とアルマまで一緒に転移してしまい、その結果三人まとめて拉致された件。

 転移した先は、どこかの建物の中だった。



「ど、どこ、ここ……?」


「……変な場所。なんというか、まとまりがない」



 アイナさんが困惑した表情で辺りを見回している。

 妙な建物だ。アルマが言うみたいに、えらくカオスな印象を受ける。

 どこかの会社の通路のような間取りから、急に石造りの遺跡のような部屋があったり、逆に近未来をイメージさせるデスクや画面が設置されているところもある。

 まるで例の21階層のような無秩序さだ。……どこだここは。


≪21階層同様、異なる次元に繋がる特異点である模様。マップ画面が使用不可能のため、ファストトラベルによる移動および呼び出しは不可能。よって、自力で脱出する以外に日本へ帰る方法はないと推測≫


 げ、ファストトラベルが使えないってのはちょっとマズい。

 やれやれ、思った以上に面倒な状況かもしれないなこれは。



「どうやら21階層みたいに、色んな異世界やら異空間に繋がってるところみたいだ。ファストトラベルで脱出はできないらしいから、自力で帰るしかないってメニューが言ってる」


「21階層……あのお父さんたちが『何度も死ぬかと思った』って言うくらい危険な場所? ここ、相当危ない場所じゃないの?」


「えーと……帰れるのかな?」


「さっきの連中の仲間がいれば、十中八九帰ることはできると思います。ここから日本に直接転移する方法があるからこそ、俺たちの目の前に現れることができたんでしょうから」


「そっかー、よかったー。いやーごめんねー、アタシがヘマしたせいで君たちまで巻き込んじゃって」


「アイナさん一人が攫われるような事態にならなくてよかったですよ」


「うんうん、他の子ならなんとか切り抜けられるかもしれないけど、アタシが一番弱いからねー。やれやれ、足手纏いになるのはいつ以来だろうか」


「いえ、そういうつもりで言ったわけでは……」


「あはは、分かってるよー」



 俺たちの中で一番か弱いアイナさんも常人からすれば十二分に超人ではある。足手纏いだなんて誰も思っていないだろう。

 つーかパラレシアの戦闘職は大体こっちの人間よりも身体能力が高い。ましてや特級職なら地球人が何百人がかりでも敵いっこないくらいだ。


 それでもこういう対応しきれない不測の事態は往々にしてあるわけで。

 基本的に厄介事を呼び込みやすい俺と勇者君が一緒に行動してれば、絶対になんらかのトラブルが起きるって予想はできていたんだけどね。



「それにしても、ここがアタシたちを攫った連中のアジトだとしたらよくこんな混沌としたところを拠点にしようと思ったもんだよねー」


「むしろこういう場所だからこそ、かもしれません」


「? どういうこと?」


「俺たちは地球からしてみれば異世界から紛れ込んだ異物です。もしもそういった異世界関連の研究をする組織があるとすれば、これ以上に適した場所はありませんからね」



 ファミレスで飯食ってるあたりから誰かが俺たちを見張ってるような気配があったし、もしかしたら異世界からの異物や異常存在を監視して捕獲する組織のようなものが存在するのかもしれない。

 異常存在に関する記憶やデータを人為的に消去したりして、一般人の目に入らないように管理しているなにかが。



「例えば、俺たちのように異世界の『ステータス』っていうものを身に宿せるようになれば、超人的な力を手に入れることができます。少なくとも、普通の地球人より遥かに強い力をね」


「あー、もしかしてそういった力や技術を一般人の目に触れないようにしつつ研究を進めて、その力を自分たちだけで独占しようとしてる連中がいるってこと?」


「推論でしかありませんが、今の状況を見るとそんな感じかなーと」


「私たちが転移させられたのは、その研究対象として捕まえるため?」


「多分な。……とりあえずこの周辺を探索しよう。幸い、さほど危険なものは今のところなさそうだし」



 21階層から持ち帰った物品も使いかたによっては凄まじい効果を発揮していたし、もしも異世界にアクセスできるのならそれを利用しない手はない。

 まあそれ相応のリスクはあるだろうけどな。21階層でも何度か死にかけたし。




 この混沌とした建物の中にはやはり混沌としたものが納められているようだ。

 昔の漫画かなんかに登場してそうな宇宙人を思わせるタコのみたいな謎生物の死骸とか、宙に浮いている光る水晶玉みたいなナニカとか。

 見た感じ、持ち帰ったはいいけど使いかたが分からず放置してあるように見える。

 まあそう簡単に実用までもっていけるわけがないか。



 いくつか部屋を巡っていると、液晶画面が何十枚もずらりと並んでいる部屋を見つけた。

 監視カメラの映像でも映しているのかと思ったが、よく見ると画面に映っている光景がおかしなものばかりだ。



「おお? この部屋、動く絵がいっぱいあるね」


「……『観測室』って書いてありますけど、ここは異世界の映像を見ることができる部屋ってことでしょうか」


「すごい。見たことないようなものばかり映ってる」



 誰がどうやって撮影しているのかも定かではないが、明らかに地球上の映像じゃないようなものを映しているものもちらほら見える。

 赤い月が空に浮かんでいて赤い海がどこまでも広がっている映像だったり、多分ヒトのものと思われる脳が詰め込まれた透明な容器が繋いである機械が数えきれないくらい闊歩している光景だったり。

 あるいは、星に寄生するように超巨大な樹木が根を張って成長を続けているものまで様々だ。

 非現実的な映像なのに、解像度の高さがそれが合成や編集で作られたものではない現実のものだということを示している。

 ……見ているだけで頭がおかしくなりそうだ。SAN値がガリガリ削れていく。




「お、おお? おおお!?」



 その画面の一つにアイナさんが食い入るように顔を近づけて凝視している。

 アカン、なんか変な映像でも見て発狂したか!?



「ふふ、うふふふふ……!」


「あ、アイナさん、どうしたんですか!? 落ち着いて!」


「いったい、なにを見ているの……?」


「待って! もうちょい! もうちょい見せて!」



 アルマと二人で画面に張り付いているアイナさんを引き剥がそうとするが、激しく抵抗されている。

 す、すげぇ力だ! 能力値の差を感じさせないくらい強い力で張り付いてる!

 いや、ホントになに見てるんだ……!?



「あうぅ、今いいところなのにー!」



 アイナさんを画面から無理やり離した。

 その際に、画面の映像が俺の目にも映ってしまった。

 見るだけで発狂するようなヤバい映像が映っているもんかと思ったが、そこには――――




 ……なんか、シャワールームっぽい場所で、銀髪の女の子が、小さな金髪の男の子の顔に胸を押し当てている映像が見えたんですが。しかも二人とも全裸。




「ヒカル! 見ちゃダメ!」


「あ゛ー!! もっとじっくり見たかったのにー!!」



 顔を赤くしながらアルマが画面を叩き割った。

 アイナさんが張り付いて見てたの今の映像かよ! アホか! 



「……アイナさん?」


「あははー、いやーあんな卑猥な状況を覗き見し放題なんてうらやまゲフンッ けしからん場所だねここは。許しがたいなー度し難いなー」


「度し難いのはアイナさんだと思う」



 ……このスケベエルフめ。さすがロリマスの実姉なだけあるわー。

 つーか今の映像なんだよ。21階層でもそうだったけど、異世界でおねショタブームでも到来してんのか? なんだその地獄は。

 んー……それにしても、今の銀髪の女の子どっかで見たような……気のせいか?



「ヒカル、今のは忘れるべき。思い出しちゃダメ」


「お、おう?」


「いいから、忘れて!」


「は、はいっ!」


「んふふ、カジカワ君に他の女の子の裸を見られるのが嫌なんだねー。可愛いなー」


「アイナさんも変なもの見てないで真面目に探索して」



 そんな心配しなくても、アルマ以外の女性にはもう異性としての興味はないんだがな。

 いやまあ今の銀髪の子アルマほどじゃないにしろスタイルがよかったし見られたくない気持ちは分かるがアッハイスミマセン忘れます忘れますから涙目で睨んでくるのやめて。

 ……これ以上は新婚生活にヒビが入りかねない。さっさと探索を再開しますか。




 しばらく通路を進んでいると、一際大きな部屋に出た。

 ここは、体育館か? えらく広いが。



「んー? なにあの網みたいなの。全部破れてるし、そもそもなんであんなふうに設置してあるの?」


「あー、あれバスケット用のゴールですね。スポーツのための設備ですのであまり気にしなくていいです」


「? ここ、ヒカルが知ってる場所?」


「いや、体育館っていうのは大体こんな感じだからな」


「タイイクカンってなに?」


「えーと、……! 悪いが、教えるのは後でな」




 和やかに話している最中に、向かい側の通路から複数人の足音が聞こえてきた。

 ……ようやくお出迎えですか。


 向かい側の出入り口から、アサルトライフルみたいな武器を構えた連中がざっと30人近く現れた。

 コンバットスーツにフルフェイスのヘルメットを着用していて、身のこなしも悪くない。

 ぱっと見、どこぞの軍隊みたいに見えるが、俺たちを襲ってきた連中の仲間かな。



「フリーズ! 手を上げろ!」


「貴様らは完全に包囲されている! 少しでもおかしな真似をすれば銃殺する!」


「大人しくしていろ!」



 なんか強盗かなんかに対して言うようなセリフだが、拉致ったのはお前らのほうだからな?

 つーか、今までなにしてたんだこいつら。くるのおせーよ。



「えーと、大人しくしてたら日本に帰してくれますか?」


「余計な口を利くな!」


「ここはどこ? あなたたちは、何者?」


「聞こえないのか! 黙って手を上げろ!」


「……話をしようにも、聞く耳持たないって感じだねー」



 とりあえず穏便に話を進められないか試してみたが、こっちの言うことを聞く気は無いようだ。

 まあ、かえってそのほうがシンプルにことを進められそうでもあるが。



「こちらの指示に従う意思無しと判断する! 総員、斉射!」


「撃てぇっ!!」



 いやいや、話を聞く気がないのはお前らのほうだろ。

 ってか、まずい。さすがに銃弾なんか受けたことないからどれくらいの威力なのか分からんぞ。

 まともに喰らったらヤバいかもしれんし、とりあえず魔力で盾を作って防ぐか。



 ドガガガガガ と耳を劈く発砲音が体育館に響く。

 室内だからか、とにかく反響がひどい。銃弾そのものよりも音のほうが耳に痛い。



「ふん、大人しくしていれば死ぬこともなかっただろうに……なっ……!?」


「む、無傷、だと……!?」



 魔力の盾で防いだから、俺たちには掠りもしていない。

 銃を撃っても効果がないということを分かってもらっただろうし、もう一回話しかけてみるか。



「気は済みましたか? なら今からでも、落ち着いて話し合いましょう」


「お、おのれバケモノどもめ! なら、これでどうだ!」



 隊長っぽいヤツが、対物ライフルと思しきものをこちらに向かって構えた。

 いやいや、どっからそんなもん出した。



「くたばれっ!!」



 バスッ とデカいわりに小さな発砲音を鳴らし、こちらに銃弾が放たれた。

 魔力の盾を貫通し、俺の頭に銃弾が命中した。


 命中した弾丸は、俺の額の皮一枚のところで止まって、そのまま砕けてポロポロと崩れ落ちた。



「……は?」


「あのー、だから効かないのでとりあえず話を―――」


「話なんかしなくていい。全滅させる」



 間の抜けた声を上げて呆然としている隊長っぽい奴を再度説得しようと試みたところで、ものっすごい低い声でアルマが割り込んできた。

 ……うわ、顔がまともに見られないくらいの怒気が発せられてるんですが。



「あ、アルマちゃん、目が据わってるよ? ちょっと?」


「先に手を出してきたのはそっち。しかもヒカルを殺そうとしてきた。絶対に許さない」



 待て待て、気持ちは嬉しいがちょっと待ちなさい。

 あ、ちょ、ホントに待って! 攻撃魔法一斉射撃の準備しないで!



「ひっ、ま、まずいぞ!」


「総員、退避ぃぃいいい!!」


「一人たりとも逃がさない」


「あーあーあー……ご愁傷様」




 アイナさんの憐れみに満ちた声が聞こえてから一秒後、体育館に爆発音と連中の叫び声が響き渡った。

 ……もう最初っからこうやっとけばよかったかな。



 お読みいただきありがとうございます。

 週一更新で進めてきたのに、先週はスミマセンorz

 

 途中で出てきたおねショタは次回作『ロナ ~廃棄物少女の成り上がり~』にて(露骨な宣伝)

 https://ncode.syosetu.com/n9804gu/

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] 超常や異常なモノを捕獲、収容、保護する団体かと思ったけど、なにやら違う様子。
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