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ヤベーやつらを捕獲せよ



 空間の裂け目から、なんだかどっかで見たようなバケモノたちがこちらに接近していたので、蹴っ飛ばしてからお帰り願った。

 一帯を焼き払いーとか生贄にしてやるーとか物騒なこと言ってたし、まあアレで対応には問題なかったと思う。うん。



「ただいまー」


「ヒカル、お疲れ。怪我はない?」


「ああ、全然。雑魚ばっかだったから」


「……雑魚? さっきのめちゃめちゃヤバそうなバケモノたちが? 軽くLv80~90の魔獣くらい強そうだったんだけど……」


「はい、ちょっと魔力で作った足で蹴っただけで退散していきました」


「いや退散したっていうか単に蹴られた勢いで吹っ飛んでいっただけなんじゃ……もういいや……」



 アイナさんが顔を引き攣らせながら諦めたように呟く。

 アイナさんも一般人から見ればとんでもない超人には違いないけど、この中じゃ一番レベルが低いからね。



「にしても、あんなものが突然発生するなんて、この世界も案外危険なところなんだね」


「いや、オレもあんなの初めて見たんですけど。少なくとも日本に住んでたころは怪現象なんかに出くわしたりとかはしてなかったんだけどなぁ……」


「俺もだ。……まさか、俺たちがここにいるからああいうのを呼び寄せてるとかじゃないよな……」



 しかも、あんなものが見えたにもかかわらず誰も気に留めた様子がない。

 裂け目が発生した直後は大騒ぎになっていたが、今は何事もなかったかのように皆普通に過ごしている。

 ……どういうことだ?


 ≪空気中に一定の記憶に干渉する薬物を感知。『先ほどの現象に関する記憶』を消去するための措置を何者かが実行した模様≫


 んー、もしかしてさっきから俺たちを監視してるっぽい誰かさんの仕業かな?


 ≪肯定≫


 ま、証拠隠滅してくれるならありがたい。

 ……あれ? なんで俺たちにはその薬物の影響がないんだ?


 ≪抵抗値が高すぎるため、無効化されている≫


 ふむ、アイナさんも無効化できてるあたりそんなに強力な薬ってわけでもなさそうだな。


 ≪ちなみに、今の現象に関する情報データを削除する効果を持つ未知の電磁波を確認。SNSやスマートフォンなどの情報フォルダからも削除されている模様≫


 抜かりないなぁ、手慣れていますねこれは。

 あれか、一般人にこういった怪奇現象を知られないための組織かなんかがあったりするのかな。

 情報が少なすぎてなんとも言えんが、こちらに危害を加える気が無いなら放置でいいか。


 それより、早くスポーツセンターで軽く腹ごなしでもしながら楽しむとしますか。

 スマホの情報によると、この近くのスポーツセンターにクッソ速いピッチングマシンがあるバッティング場があるらしいんだよね。

 確か最高で時速230Kmくらいの。当たったら死にそう。

 異世界で鍛えた動体視力がどれだけ通用するか、試してみますか。






 で、バッティング場に入ったはいいけどやっぱいきなり230Kmは怖いので、始めは軽く120Kmから。

 普通に考えて120Kmも充分速いと思うけど、まあ肩慣らしということで。



「ここ、なにするところなの?」


「えーと、野球っていうスポーツの練習場みたいな場所かな。飛んでくる球をバットで打ち返す設備が揃ってるんだ」


「遠距離攻撃のカウンター訓練みたいな感じ?」


「……まあ、大体そんな感じ」



 野球のルールから説明するのはさすがに面倒なので、簡単な説明だけ済ませておく。

 さーて、いらないけど規則なのでヘルメットとプロテクターを着けて、コインを投入。

 すぐにピッチングマシンが作動し、第一球を放った。



 ……。


 ……。


 ……。



 え、おっそ。



 バットを振ると、カキィン と小気味いい音を立てながら飛んでいき、ホームラン判定の的に直撃した。



「え、遅くない? あんなんじゃ見習いか駆け出しの訓練にしかならないでしょ」


「あれじゃ、自分が投げるシュリケンやクナイのほうがずっと速いっすよ」



 後ろのほうからヤジが飛んできてる。

 はたから聞いてると素人が好き放題言ってるように聞こえるかもしれないけど、事実だという恐怖。……ちょっとビビりすぎてたかなー。

 ピッチングマシンからここにボールが届くまで、軽く10回はバットを振れそうなんですがそれは。


 これじゃ腹ごなしにもならん。さっさと230Kmのほうへ行こう。

 でももったいないし、残りの9球も全てホームランの的に直撃させてからにしとこう。





「はい、ホームランの景品だよ」


「アッハイ、どうも」


「1セットのうち一球当てても全部当てても景品の数は変わらないから、そこは勘弁しとくれよ。にしてもよく当ててたねぇ」


「いえ、まぐれですよ」



 受付のおばちゃんから景品のお菓子を受け取りつつ応対する。

 ……1セット200円だよな? お菓子の代金で赤字になったりしないか心配なんですが。



 戻ったころには、皆それぞれの打席に立って打ち始めていた。



「うわ、おっそ」


「カッキーンッ! ってね。いやー、打つときの感触が癖になりそうだねコレ」



 次々とホームランの的に、あるいはそれすら超えて球が次々と打ち上がっていく。

 ……ぱっと見細身の美少女たちが、豪速球をバカスカ打っていく様は実にシュールだ。



「あ、あわわわわ……なに? あの子たち、プロのソフトボール選手かなんかなのかい……?」


「いえ、その……なんかゴメンナサイ」



 景品用の棚からお菓子やらなにやら降ろそうとしていたおばちゃんが、打席で打ちまくってる子たちを見て白目剥いてる。

 ……あんまりやりすぎるとマジで破産しかねないからほどほどにしてあげて。



「おりゃー!」



「う、うわぁ……全部ヒットしてるよ……」


「おいおい、すげーなあの金髪の子。外国人っぽいけど、プロ志望の学生かなんかか?」



 中でも特にレイナが目立っている。

 230Kmの球を見た目小学生にも見えるようなちっさい子が軽々と打ってるんだからそりゃ目立つわ。



「ふっ、はっ、たぁっ」


「お、おい! 君! 危ないぞ!」


「アルマ、真正面から球を迎え打つのはやめようか……」



 訓練のつもりなのか、バッターボックスから外れて正面から球を打つアルマを見て、他の客から注意を受けてたりする。

 なんだか個性的な遊びかたをしてるけど、はたから見てると危険行為だからね?

 まあ仮に直撃したとしても全然痛くないだろうけど。


 うーむ、異世界でチート能力もらって俺TUEEEな物語の逆バージョンを見てる気分だ。

 『異世界で鍛えまくったステータスで現代無双』みたいな。……ホントにこんなタイトルの小説があったらどうしよう。てか普通にありそうで困る。

 そういった小説もいくつかあるみたいだけど、実際にその光景を見てみるとなんというか……。



 結局、全員3セットほどやって退場。

 景品棚が空になってしまったと受付のおばちゃんが悲鳴上げてた。……マジすまぬ。

 お菓子はともかく、おもちゃのバットとかもらっても仕方ないんだけどなー。まあこれもお土産ってことで。



「君! 是非うちのチームに入ってほしいんだが!」


「外国人みたいだが、留学生かね!? どこの学校通っているのか教えてくれないか!」


「カジカワさーん、なんか変な人たちに言い寄られてるんすけどー……」



 レイナがどっかのスポーツクラブの監督っぽい人たちにスカウトされそうになってる。目立ち過ぎだ。

 どうしたもんかと思ったところで、勇者君が言い寄ってくる人たちに向かって魔法を……っておい!



「お、おぅぅ……」


「な、なんだか、眠く……ぐぅ……」


「あー日頃の疲れが溜まってるのか寝ちゃいましたねーやれやれー」


「すっごい白々しいっす」



 いきなり魔法を放ったからビックリしたけど、どうやら睡眠魔法かなんかだったようで、レイナに言い寄ってくる人たちが急に眠り始めた。

 床に放置するのもアレだし、観客用のベンチにでも寝かせておくか。

 ……他の施設を利用するのが怖いなー。





「思ったよりも退屈だったわね。もっと速い球を打ち返すものかと思ったのに、なにあれ」


「遅すぎて、外すほうが難しいくらいだったねー」



 そりゃアンタらのステータスがおかしいからだよ。俺も他人のこと言えないけどさ。

 さーて、次はどれで遊ぶかな。やっぱここはボーリングかな? あれならステータスが高くても高得点をとるのは難しいし、退屈しないだろう。

 とか暢気なことを考えてたら、急にメニュー画面が目の前に表示された。





 ≪警告:接敵。臨戦態勢へ入ることを推奨≫




 !





「確保ぉぉお!!」


「一人も逃がすなぁ!」



 画面が表示された直後、青白い光とともに妙な連中が目の前に現れた。

 映画なんかで見る特殊部隊が着けるようなサバイバルスーツと、フルフェイスのマスク。

 目に見える範囲で50人近い大人数が、有無を言わさずこちらに向かって突っ込んできた。

 速い。少なくとも、普通の人間の速さじゃない。まるで中堅職以上の戦闘職みたいだ。



「なんだ、お前ら!?」


「きゅ、急に目の前に現れたっす!」


「抵抗するな、大人しくしろっ!!」



 そう言いながら、警棒を振りかざして殴りかかってきた。


 ≪注意:警棒に電流を確認。命中すれば、感電の危険性あり≫


 スタンガン、いやスタンロッドってやつか!



「その警棒は受けるな! 電気が流れてる! 避けろ!」


「うわっと!? あ、危ないわね!」


「んー、こいつら自体は雑魚っぽいけど、装備はなかなか厄介そうだねー」



 ああもう、こっちは平和な旅行を楽しみたいだけだっていうのに、どうしてこうなるんだか。

 まあいい、さっさとこいつらぶちのめして誰の差し金か聞き出すとしよう。



「とう! せいっ!」


「遅いわよ!」


「この、抵抗するなと言っているだろうが!」


「やめてください、撃ちますよ!」


「おぐはぁ!?」


「いや撃ってる! オリヴィエちゃんもう撃ってるじゃん!」



 こんなところで武器を取り出すわけにもいかず、素手で交戦している。

 格闘術や攻撃魔法だけでも余裕すぎる。一般人相手ならこれでも相当脅威だろうけどね。


 軽く20人くらい叩きのめしたけど、まるで怯まず立ち向かってくる。

 なかなか根性あるなー。つーかなにが目的で襲いかかってきてるのやら。



「くそぉ! こいつら強すぎる!」


「こうなれば、一人だけでもいい! 捕獲せよ!」


「え、う、うわぁっ!?」


「っ! アイナさん!」



 床に倒れている奴らの何人かが急に起き上がり、アイナさんを囲み始めた。

 完全に気絶していたはずなのに、急に起き上がりやがった!?

 いや、状態表示は今も『気絶』のままだ。それに加え『強制駆動』って表示を確認。

 誰かが、気絶した奴らを無理やり操っているのか?



「確保! 転移プロセス、起動!」


「え、ちょ、ま、待ってよ!」



 アイナさんを囲っている奴らの身体が青白く光っている。

 まずい、また転移しやがる気か! そうはいくかっての!



「やめろテメェらぁっ!!」


「アイナさんを、離して」



 瞬間的に俺とアルマが、アイナさんを囲っている連中を弾き飛ばした。

 その直後、青白い光が俺たち三人を包んだかと思ったら、あたりの景色が急変したのが分かった。


 ……どっかの建物の中みたいだが、どうやら転移を中断することはできず、巻き込まれたっぽいなこりゃ。

 どうしてこうなった。てかどこだここは。


お読みいただきありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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