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反則チートルール違反

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。




「『クトゥグア』! 魔族たちを焼き尽くしなさい!」



上級精霊魔法で召喚された炎の巨人が、魔族たちの身体を次々と灰に変えていく。

味方まで燃やさないように慎重に運用しないと、魔族より先に私が街を滅ぼしかねないわね。



「ふぅっ! はっ! ぜいぁああっ!!」



デュークも珍しく全力で魔族たちと戦っている。

集団戦に適応できるように、短剣と普段使いの剣を使った双剣での戦い。


あれを見るのは、いつぶりかしらね。

一対一だと剣一本のほうが戦いやすいらしいから、魔王相手にも見せたことがなかったっけ。

昔はあの戦いかたでよく魔獣の群れに突っ込んでいってたわねぇ。なんだか懐かしいわぁ。




「くたばれ人類! 『魔刃豪雨』!!」


「『割山斬撃』!!」



剣を持った魔族たちも負けじとマスタースキルらしき技を繰り出してくる。

魔力の剣が雨あられと降り注ぐのと同時に、巨大な斬撃が襲いかかってきた。

並の戦闘職なら、これだけでひとたまりもないでしょうね。


なんて、雑な戦いかたかしら。



「甘い」


「な!?」


「にぃっ!?」



降り注ぐ魔力の剣を掻い潜りながら、迫りくる巨大な斬撃を双剣で切り裂いてかき消した。

こちらに隙が生じているならともかく、万全の状態ならあれくらい朝飯前ね。

その光景に驚いたまま固まっている魔族の喉に短剣を投擲して突き刺し、もう片方の胸に剣を突き刺した。



「かっ……! ばか、な……!」


「派手な技を習得したからといって、考えなしにぶっ放すのは三流以下だ。何事も基礎基本の積み重ねこそが大事だぞ、魔族殿」



もう動かなくなった魔族の身体から剣を引き抜き、次に備えている。

……私も派手な精霊魔法を使ったりしてるけど、考えなしじゃないからセーフ。



「ぐっ……! この二人だけに、もう何体やられたんだ……!?」


「落ち着け! これだけの数を相手にいつまでも戦い続けられるはずがない! 奴らが力尽きるまで攻撃の手を緩めるな!」



仲間がいくらやられようとも、執拗に襲いかかってくる。

……確かに、特級職クラスの集団とずっと戦っているせいか、少し汗が滲んできたわね。



「デューク、大丈夫?」


「いやぁ、正直言ってなかなかしんどいな。魔王との戦いに比べればまだマシだが」


「その魔王相手に、可愛い娘が頑張ってるのよね……」


「きっと、いや絶対に大丈夫だ。私たちの娘なんだからな」


「頼りになるお婿さんもいることだしね、うふふ」


「……私はまだ認めていないぞ。娘がほしければ、私に勝ってからでないとな」


「もうとっくに私たちを超えているでしょうけどねー」



帰ってきたら、まず『おかえり』って言ってあげなきゃ。

きっとヘトヘトになっているでしょうし、温かいご飯も用意してあげなきゃね。

そのためにも、疲れたなんて弱音吐いてられないわ。



「かかれぇぇぇえっ!!」



数百体もの魔族たちが、私たちに向かって侵攻してくる。

私たちでなければ、こんなもの立ち向かえるはずがないでしょうね。

……果たして、どれだけもつかしら。



「さぁ人間ども、この数相手にどれだけもつかな!?」


「ルナティ、あとどれくらいもちそうだ? 私は半月くらい不眠不休でいけそうだが」


「駄目ね。あと丸一週間くらいしか戦い続けられる気がしないわ。ああ、魔王が倒れるまで持ちこたえられるかしら、不安だわぁ」


「……は?」



私たちの呟きを聞いた魔族たちがたじろいだ。

『こいつらはなにを言ってるんだ』って、顔に書いてあるようだわ。



「さぁて、続けるとしようか。ふふふ」


「まだまだウォーミングアップにもならないわよ、あなたたち。うふふ、うふふふふふ……」


「ひ、ひ、怯むなぁ! やれぇぇええっ!!」



アルマちゃんが帰ってくる場所を、壊させはしないわ。

これから立派なお嫁さんとして、いっぱいいっぱい幸せになってもらうんだから。

それに―――



「む、ルナティ、腹をおさえているが負傷したのか?」


「……いいえ、むしろとっても気分が良いわ。うふふふっ」


「……?」









近いうちに、お姉ちゃんにもなるんだしね。













~~~~~勇者と化したカジカワ視点~~~~~













魔王のボディに押し当てた刀を大槌でぶっ叩いて、鋭さと重さを兼ねた一撃を叩きつけた。

普通の刀ならへし折れちまうだろうが、破壊不能効果があるから問題ない。


硬さと柔軟さを両立させた魔王の身体に対抗するための攻撃だが、深い切り傷ができているあたりそこそこ有効みたいだ。

斬られた腕をダランと力なくぶら下げているが、その顔は余裕を崩していない。



『刀と大槌を同時に振り回す者など、お前くらいであろうな』


「次は右腕をもらうぞ」



いきなり弱点の頭部を狙おうとしても難しいので、まずは四肢を潰す作戦に出た。

左腕一本潰すのにアイザワ君たちの気力強化の半分を消耗することになるとはな。


だが、このペースでいけば自前の気力強化で弱点を破壊することくらいはできそうだ。

魔力のほうも、アルマの装備していた剣の魔力吸収効果が勇者の刀に融合付与されているようで、ほとんど消費していない。

生命力は、攻撃を喰らわないように細心の注意を払っているおかげかほぼ無傷。


……いや、気のせいか魔王の攻めが少し手緩い気がする。

手加減しているのか、それとも様子見しているだけか?

でも、左腕が使い物にならなくなるまで様子見なんかしてる余裕なんかあるか?


……不気味だ。

こいつはいったい、なにを狙っている。



「シィぁあっ!!」


『……ふむ』



先ほどと同じように刀を大槌でぶっ叩き、さらに爆発機関を連続で起爆し一気に刀身をめり込ませた。

今度は右腕を斬り落とし、これで両腕が使用不可能になった。

それでもなお、魔王は仏頂面を崩さない。



……っ。

今の攻撃で、アイザワ君たちによる気力強化が切れた。

即座に自前の気力で強化し直し、今度は魔王の脚を狙う。



『ふっ!』


「ぬぉぉおっ!!」



魔王が震脚で踏み込み、衝撃波と砕けた床の礫が襲いかかってくる。

よく魔王城壊れないなコレ。とか思ってたら、いつの間にか魔王の間がとんでもなく広くなってやがる!?


部屋の構造そのものが変わっているようで、外から見た魔王城と比べても明らかに広い。

空間魔法かなんかかな。これならどれだけ暴れても城は崩れませんってか。



礫を魔力の鎧で防ぎつつ、土煙に紛れて右脚に爆裂ハンマー投げをブチ当てた。

強烈な膝カックン。人間相手にこんなもんブチ当てたら膝から下が無くなるレベルだ。



『……!』


「もらったぁぁああっ!!」



そのまま一気に顔面まで接近して、一斉攻撃!

例のブロッキング対策に、大槌と刀だけでなくパイルバンカーも連続で叩き込む!

いくら魔王のブロッキング精度が高かろうと、これだけ高密度の連続攻撃をノーミスで捌き切るのはできないはずだ!



「死ねぇぇええええっ!!!」


『……ふ』



攻撃が眼前に迫っているというのに、魔王は穏やかな表情で微笑んでいる。

……諦めたのか? それとも、まさかわざと倒されようとでもしてるのか――――





『気は済んだか?』




……え?




魔王の顔にパイルを叩きこもうとする寸前で、なにかが攻撃を遮った。

遮られたなにかに大槌も刀もパイルも全て弾かれた。




俺の攻撃を遮ったそれは、先ほど斬り落としたはずの、魔王の右腕だった。

な、なんで、魔王の右手が生えてやがんだ……!?




『はぁっ!!』


「ぐがぁっ!!?」



一瞬狼狽えてしまったところで、魔王の拳が俺の身体に命中した。

右手じゃなくて、左手による攻撃だ。

両腕が、元通りに治ってやがる……!!


魔王にぶっ飛ばされ壁に叩きつけられて、HPが激減したのが感じとれた。



『知っているか? 歴代の魔王は、勇者が何度も死に戻り、再び挑むたびに弱くなっていくのだ』


「な、にを……!?」


『何故かというと、魔王は本来回復手段をもたないのだ。回復魔法スキルを有しておらぬしポーションを飲んだとしても効果はない。つまり、HPが減ったまま勇者と再戦していくうちにいずれ倒される、といった具合なのでな。……ただ―――』



さっきの膝カックンで砕けた脚まで、淡く光ったかと思うとすぐに治っていく。

あれは、まさか……。



『余は勇者の転生体。相馬竜太は回復魔法スキルを欠損すら修復できるレベルまで鍛えていた。それを余はそのまま扱うことができる。故に、手足がもげようとなんの意味もない』


「なん、だって……」


『本来なら、それほど強力な回復魔法を連続で使えばすぐに魔力が枯渇してしまうだろうが、『魔王』の称号をもつ者は魔力を消費しない』




そこまで聞いたところで、黒竜の言っていた言葉を思い出した。



【いくら大きな力で対抗しようにも、『無限』には勝てぬ】



『無限』ってのは、HPが即座に回復するうえにMPとSPを消耗しないってことなのかよ……!!





『さて、随分と消耗したようだな。では、本腰を入れて始末させてもらおう』


「こ、の、クソチート魔王がぁっ!!」



ふざけんな! こんなもんどうやって勝てっつーんだ!

ラスボスが全回復魔法使ってくるとかソレ一番やっちゃダメな、……いや、そういうラスボスもいるにはいるけどさ。某有名RPGの2作目とか。

いきなり弱点を狙おうとしても防がれるし、手足を潰してもすぐに再生される。


しかも、もうこっちの気力は残り少ない。

HPもさっきの攻撃で激減しちまった。残ったポーションだけじゃどうにもならない。


どうする、どうやって、どうすればこの反則魔王を倒せる……!?


内心焦りながら必死に勝つための方法を考えていると、黒竜がもう一つ遺した言葉が頭の中に響いた。




【『無限』は決して『無敵』とは限らぬ。案外、なんてことないことが魔王の弱点かもしれぬぞ】



クソ曖昧なアドバイス残しやがって! 絶対適当ぶっこいてるだろクソトカゲが!

お読みいただきありがとうございます。



>見落とし…ウチの娘と合体だとぉ~と叫びながら迫ってくるご両親のことかな?―――


アルマママはあらあらウフフ的な感じで、アルマパパは発狂しながら斬りかかってきそう。


>火の鳥投げた辺りで一瞬「上手に焼けましたー♪」みたいな展開になるかと思いました。


実際は生焼け肉な模様。というか火傷すら負ってません。魔王丈夫過ぎんよー。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 負けイベ仕様かぁ こういう場合、勝つ手段として仕様の穴をつくのが基本だよな バグ技ともいうけど、正攻法だと絶対に勝てないからこそ負けイベ仕様な訳だし・・・ 可能性があるとすれば過剰回復…
[一言] 無限だろうがなんだろうが死ぬまで殴って切って貫いて削ってやれば死ぬんだよ(脳死脳筋戦術)
[一言]  お久し振りです、最近忙しくて読めてなくてやっと時間が取れたので読みに来ました、とても面白かったです。  病気にならないように頑張りましょう!
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