魔王とバケモノ
新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。
お読みくださっている方々に感謝します。
攻めろ! 攻めろ! 攻めて攻めて攻めまくれ!
「がぁぁあああっっ!! だるぁぁああああっっ!!!」
「ふっ……!」
叩きつけろ! ぶん殴れ! 一発でも多く攻撃しろ!
受けに回るな! 相手の攻撃はパイルで弾け! 避けろ! 当たっても怯まず攻めろ! 動きを止めるな!
攻勢を維持しろ、相手にペースを握られたらそのまま一気に勝負が決まりかねないぞ。
「どぉりゃぁぁあっ!!!」
「はぁっ!」
魔王の剣と俺の大槌が鍔迫り合いのような状態になる。
すげぇ力だ……! こちとら腕力に気力集中させてるってのに、互角以上に押し返してきやがる!
「ぐぎぎぎぎぎぃぃいい……!!!」
「……やはりお前は危険だ。九尾と戦った時よりも、遥かに強くなっているとは」
「テメェ、ほどじゃねぇよっ!!」
「!」
鍔迫り合いの最中、魔力パイルで突き飛ばす。
それに合わせて魔王が受け身の体勢になり、パイルを防御した。
くそ、まともにブチ当てたのにアザすらできてねぇ。
当たった瞬間に火花みたいなエフェクトが出てたけど、なんかのスキル技能か?
≪格闘術スキルLv10【パニッシュ・ブロック】 発動させてから0.1秒ほどの間だけ、あらゆる攻撃を無効化する技能。連続で使用することにより無敵時間を継続可能≫
ふざけんな! なんだその格ゲーのブロッキングみたいな技能は!? れっつごーじゃすてぃーん。
極端に言うとその技能を常に発動しっぱなしにしとけば、もう誰も勝てないってことじゃねーか!
≪発動中は硬直するため、攻撃等の動作ができない。魔力消費も激しく有効なタイミングがシビアなため、熟練者でなければ運用は困難≫
≪しかし魔王は相馬竜太の戦闘経験を引き継いでいるため、極めて精度の高い運用が可能な模様。また、称号【魔王】の効果により魔力・スタミナを消費しないため無制限に使用可能≫
いやちょっと待て、今さりげなくとんでもないこと言わなかったか。
魔力とスタミナ消費しないって、おま。消耗しない相手にどうやって勝てと。
となると、長期戦は本当ならやっぱ不利か。本来なら急所狙いの一撃必殺を狙うしか勝ち目がなさそうだ。
でも今は時間を稼ぎたい状況なわけで。……つーかいつまで待たせんねん。
「メニューからの忠告は済んだか?」
「……ああ。ったく、なんだその魔王とかいうクソチートな称号は。魔力とスタミナ減らないとかふざけんな」
「魔王の特権というやつだ。……お前なら取得していても不思議ではないがな」
「やかましいわ!」
魔王本人にまで魔王呼ばわりされるとか心外にもほどがある。キズつくわームカつくわー。
つーかやっぱ向こうからもメニューの画面が見えるんだな。鏡文字になってても問題なく解読できてるし。
「長期戦は不利だということくらいは理解しているだろう。……いつ打って出てきてもいいのだぞ」
「そりゃどう、も!」
そう言われて馬鹿正直に特攻なんか仕掛けますかっての。それこそブロックされて終わりだろ。
再び大槌で殴りかかるが、再びブロックされてダメージを与えられない。
ならパイルで追撃! 連打連打ァっ!
「オラオラオラァッ!!」
「手緩い、軟な攻めだな」
……すまし顔で全弾ブロックしおった。
ディレイかけて微妙にタイミングをずらしたりしたのに、的確に弾きやがったよこいつ。音ゲーとか上手そう。
そんでヤワな攻めとか言われとるし。……ならもっとヤワにしたるわ!
「ちぇぇぇりやぁあっ!!」
「またパイルバンカーか、馬鹿の一つ覚えだな」
全身からパイルを突き出しながら殴りかかるのを、当然のように涼しい顔でブロックする魔王。
さっきとなにひとつ変わらない対応だ。
「……そりゃテメェだよ」
「っ!」
ブロックしたパイルの感触がいくつかおかしなことに気付いたのか、顔を顰めている。
それもそのはず、今繰り出した半分は熱したキャラメルみたいに柔らかい粘度の魔力で作った、パイルもどきだ。
そしてそれは攻撃とは言えないくらい脆弱なもので、ブロックしようがしまいが関係ない。ただ、纏わりついて取れないだけだ。
どうだ、柔な攻めだろ?
纏わりつかせた魔力を電気エネルギーに変換! まあいつものパターンですね。しびれろー。
「くっ……!」
「ぜぇいっ!!」
「はっ!」
電撃を浴びせている最中に大槌を爆発させながら魔王に向かって叩きつけようとしたが、剣で防がれた。
魔族の幹部くらいなら容易に黒焦げにできるくらいの電撃なんだが、多少顔を顰めただけでまるで動きに鈍りがない。
抵抗値がアホみたいに高いからさすがに麻痺はしないか。ちょっとピリッとしたくらいにしか感じてなさそうだなこりゃ。
だが、まだまだこんなもんじゃない。
こちとら日々どんな戦術をされたら嫌だろうかとか日常の中で考えまくってる身だ。……妄想ばっかしてるとも言う。
せいぜい性格悪い手を使いまくってやるぜケケケ。
「シッ!」
「おおっと!」
魔王が斬りかかってきた剣を、あえて魔刃改で受ける。
魔王も魔刃を発動していて、手刀と剣がかち合うたびに魔力の刃が激しく摺り合う音が響く。
で、何度かかち合わせている最中、極悪な戦術を思いついてしまった。
……コレ、やっちゃっていいかなー。
「【魔刃・絶刑】」
「ういぃっ!?」
魔王の姿が三体に増え、それぞれが全く違う角度・速度で襲いかかってきた。
スパーダのジジイもこの技使ってたっけ。急に手数が三倍になるとか相手にしてみたら笑えないくらいエグいわー。
まあそんなもんこっちも真似できるけどな!
「ふ、うぉらぁぁあっ!!」
「ぬ……?」
気力・生命力をブレンドした魔力を身体から二つほど切り離し、片方には大槌を、もう片方には例のバーガーショップの生首店員が持ってた肉断ち包丁を持たせて、魔王の分身に応戦させる。
……大槌はともかく、肉断ち包丁のほうは攻撃力ランダムだから一抹の不安が。
「……そんなことまでできるのか。つくづく非常識な……」
「先にやってきたのはそっちだろうが!」
「大槌を操りながら、身のこなしも申し分ない。なるほど脅威だ。……しかし、包丁などでどうにかできるとでも?」
「ちっ……!」
くっそ、さっきから包丁の出目が悪い。ファンブルばっかじゃねーか。
魔王の分身が包丁を弾くたびに遠くまで飛ばされてやがる。まるで攻撃力が足りてない証拠だ。
ってやばい、こっちに向かって包丁を弾き飛ばしてきやがった!
もしも俺に当たった時に攻撃力が高かったりしたら……!
「くぅっ!」
「もらった」
「させっかい!!」
包丁を辛うじて掴んだが、その隙に魔王が斬りかかってくる。
もう少しで胴体真っ二つにされるところだったが、ギリギリのところで包丁で魔王の剣を受け止めた。
その時
「なっ」
「にぃっ!?」
魔王の剣と包丁が接触した瞬間、魔王の手からとんでもない勢いで剣がすっ飛んでいった。
魔王も俺も予想外の事態に目を見開いて驚く。……え、なにが起きたの?
≪先ほどの『肉断ち包丁』の攻撃力、およそ4万≫
いや高すぎだろ!? さっきまでペチペチ弾かれてただけだったのに、ほんまこのバグ包丁の攻撃力ムラが激しいなオイ!
でもナイス! おかげで魔王の手から剣が離れた!
そのおかげか、魔王の分身が消えた。剣術由来のマスタースキルだから、剣を装備していないと使えないってことか。
この機は逃さん。
魔力を可燃性にして、液体化するほど高密度に濃縮。
そして、着火!!
ズダァンッ!! と爆発音が広間に響き渡る。
「かはっ……!」
火力特化パイルバンカーを魔王の胴体にクリーンヒットさせた。
魔王の身体はしっかり原形を留めているし、貫通もしなかったが無傷とはいかないはずだ。
「ちっ……」
手傷を負ったことに舌打ちしつつ、反撃のために床に転がった剣を回収しようと剣に向かって駆けだしたが、もう遅い。
「! ……消えた……?」
ふふふ、ふはーっはっはっは!
バカめ! 剣を手放した時点ですでに手遅れよ!
何度も俺の魔刃改と接触するたびに、魔力をこびり付かせておいた。
魔王の手から離れた後にその魔力を使って剣を持ち上げて、アイテム画面に放り込んでしまえば御覧の通り。丸腰魔王の出来上がりである。
ねえねえ今どんな気持ち? 愛用の剣パクられて今どんな気持ち? ねえ?
「……やれやれ、なんとも戦いにくい。決まった型のない戦闘スタイル故に、相馬竜太の戦闘経験が今一つはたらかぬ」
そりゃこっちの最大の強みがそれだからね。
スパーダ、相馬竜太は剣の達人だった。剣でコイツに敵う奴なんかそういない。
アルマパパやスパディアさんが魔王に歯が立たなかったのは、能力値の差だけじゃなくて『剣術』に頼っているのも大きな要因だったんだと思う。
で、その剣を奪ってしまえばこっちのものだ。
武器の攻撃力補正はもちろん、扱いなれた得物を失ったことでかなりのパワーダウンになるはず。
そう思っていた時期が、俺にもありました。
「……げっ」
魔王の左頬に、黒い花のような模様が浮かび上がってきた。
それと同時に、魔王の能力値が倍化したことを確認。
第二形態、つまり真魔解放を発動したようだ。
おいおい、真魔解放は一日に一回だけじゃなかったのかよ。え、これも魔王の称号の効果だって? 特権の乱用ヨクナイヨー。
素手だというのに、さっきまでに比べてより強い威圧感を放ちながら口を開いた。
「死ぬ覚悟はできたか、梶川光流」
「……死なない覚悟だったらな」
内心、いや実際に冷や汗をかきながら、冗談半分におどけてみる。
死なない気でいるってのは、半分どころか丸々本気のつもりだが。
「では」
「っ!?」
握っていた肉断ち包丁が手に走った衝撃とともに弾き飛ばされた。
魔王が片脚を上げているのが見える。……蹴り飛ばしたのか? 動きがまるで見えなかった……!
「今度は脳でも引き抜くか」
そう言いながら、魔王が俺の頭に手を伸ばした。
今の俺でも、まるで追いつけないほどの速さで、俺の頭に指がめり込んで―――
お読みいただきありがとうございます。
>師匠!!―――
「次から飯の量10倍な」「おお……もう……」
鬼先生の活躍の場はどっかで出したいと思ってましたが、結局終盤に一回だけという。
やっぱ強すぎるキャラは使いかたに困るわー(;´Д`)
>鬼さんこちら――――
むしろ鬼さんが手で頭を弾き飛ばして鳴らすんだよなぁ。こうパァンって。
>今回の脳内BGM>旧劇エ○ァの劇中歌………って思ってたら―――
逆に言えば、飯の報酬がなければ絶対に動かないのが鬼先生クオリティ。
基本、人間も魔族も踏めば潰れるアリ程度の認識でしかないので。
コワマスを助けたのも鬼先生です。ワンシャンは鬼先生が魔族を一掃してしまったので活躍できなかった模様。
>鬼先生自身が飯を「餌」とは呼称しないと思います。―――
修正しておきました。
一応野生の魔獣ではあるのですが、それなりに知性が発達してますのでそちらの解釈を採用させていただきます。感謝。
>魔族の大群があらわれた!!―――
さすがに他の大陸まで行くことは、……できなくもないけど面倒だから第4大陸だけ皆殺しにする模様。
>鬼先生は師弟の認識あったんですね!―――
というか主人公が先生呼ばわりしてるからそれにのっかってノリで言ってるだけですね。
メニューさんの翻訳機能の万能さよ。




