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最終決戦へ

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


勇者君が魔王に拉致されて、少し経ってから反応が消失。

時間移動ってことは、予定通りに事が進んでいるようでなにより。


もしも勇者君が消える前に黒竜を倒せなかったら、ちと面倒なことになってたかもな。

あんなもん、多分アルマの御両親でも無理だ。

気力強化すれば倒せないこともなさそうだけど。


んー、俺たち以外の戦場もほぼ戦闘が終わったことを確認。順調順調。

マーキングした人たちをファストトラベルで移動しても、置き去りにした人たちが魔獣に蹂躙されるような事態にはならないだろう。


はい、というわけでさっさとファストトラベル。行先は第4大陸の王宮跡。

大槌と黒竜の死体は回収済みなので心配無用。GO。


黒竜との戦闘でクレーターやらマグマやら焼け野原というかもう終末みたいな景色から、なにもない殺風景な王宮跡のそれへと瞬時に変わる。

俺たちの他に、マーキングしていた人たちも一緒に合流した。



「……あれ?」


「お お……? ……は?」


「え、なにこれ? なにここ、どこ? え?」



ほぼ全員が呆けた顔で困惑していらっしゃる。無理もない。

さっきまでバケモンみたいな魔獣と死ぬ思いで戦っていて、ようやく倒したかと思って一息ついてたらこれだもんな。


マーキングしておいた人たちが全員いるのを確認したところで、対魔族軍の総隊長こと総おじとアルマの御両親が話しかけてきた。



「……事前に話は聞いていたが、いきなり第4大陸に戻されたってことは、まさか今から本当に最後の戦いってやつなのか?」


「はい。思ったよりも早く、勇者ネオライフ君が連れ去られてしまったので」


「はぁ、息つく暇も無しか……」


「相手は三万もの魔族の軍勢、しかもそのどれもが幹部並という話だったかしら。……うふふ、魔王に比べれば可愛いものねー」



総おじが顔を引き攣らせながら、アルマパパが溜息交じりに、アルマママが軽口をのたまいながら、覚悟を決めた面持ちを見せた。

それを見ていた他の特級職をはじめとした手練れたちが俺に詰め寄ってくる。



「ちょ、ちょっと待てよ! どういうことだ!?」


「……説明を要求します」


「幹部級の魔族が三万って、なんの話だ!?」



はい、こうなりますよね。当たり前だ、皆が混乱してる中で俺たちだけ事情を知ってるのはおかしいもんね。

このままじゃ説明しようにも遮られるだけだし、一回黙らせるか。



すぅぅぅぅ…………。

気力を籠めて、深く吸い込んだ空気を声として放った。





「落ち着けぇぇぇぇぇええええいっ!!!」




鼓膜を破らない程度に抑えた一喝。




「いぃっ!?」


「ひぎゃっ!?」



詰め寄ってきていた人たちが耳を押さえて目を見開いている。



「……失敬。皆さん、各々聞きたいことがあるのは理解していますが、まずは落ち着いてください。これからのことを順を追って説明いたしますので」



そう言うと、耳を痛そうにしながらもなんとか聞いてもらえる態勢になってくれた。




今、なにが起きているのか。


まず勇者君が魔王に拉致されて、現在行方不明になっている。

本当はどこに飛ばされたか分かってるけど、詳しく話すとかえって混乱させるだけなのであえて誤魔化しておく。


次に魔王が発動した魔法によって、第3大陸が現在空間的に断絶されてしまっているということ。

断絶される前に、これからの戦いのために予め手練れの人間だけこの大陸に避難させた、というのが今の状況だ。



「どうやって転移させたんだ? 離れた複数の対象を同時に、それも問答無用に転移させる魔法なんて存在するのか?」


「該当するものといえば、勇者の使う『ファストトラベル』くらいでしょうか。……まさか、あなたが本当の勇者だったというわけですか?」



赤髪の特級職キャラノンノさんが俺に問いかけてくる。顔近いです。あと怖い。

三人娘フィフライラと勇者パーティの一人レヴィアリアのお姉さんらしいが、この人だけ迫力ありすぎじゃない? コワマスかと。

勇者の能力も把握しているあたり、なかなか情報に強い人みたいだな。



「勇者ではありませんが、諸事情により俺は勇者の能力の一部を使用可能なんですよ。詳しいことを話していると長くなるので省略させていただきたいのですが」


「……色々と納得しかねるところはありますが、まあいいでしょう」


「これまでの経緯を早足で説明しましたが、重要なのはここからです」



そして、これから俺たちがしなければならないことは、二つ。



一つは幹部クラスの魔族三万体から世界を防衛すること。

そして、二つ目は魔王の討伐。


どちらがしくじっても世界中の人類が死ぬことになる。

なんともスケールがデカすぎて現実味のない話だが、事実だ。



「なぜそんなことが分かるのですか? まるで、予め魔族たちの計画が分かっていたかのような口ぶりですが」


「はい、知っていました。とある筋からの情報でして」


「その情報が信用できるという確証は?」



キャラノンノさんがそう言った直後、黒電話のようなベルの音が鳴り響いた。

うわビックリした! だから電話の着信音とかの音は苦手なんだってば!

キャラノンノさんがポーチから通信用の魔具を取り出した。コレの音か。



「失礼、通信が入りましたので。……もしもし、今大事な話をしているところなので、……っ!?」



後でかけ直します、とでも言おうとしたところで、通信魔具から大声が聞こえてきた。



『魔族の軍勢が! 一体一体が信じられないくらい強い魔族たちが押し寄せてきています! 我々だけで抵抗することは困難、早急に戻って対処をお願いしま……う、うわぁあああ!!』



ブツンッ と悲鳴の後になにかが途切れるような音がして、通信魔具が沈黙した。

……もう侵攻を開始してるみたいだなこりゃ。魔族のフットワーク軽すぎやろ。



「……あなたの言うことを鵜呑みにするわけではありませんが、確かにモタモタと議論を続けている場合ではなさそうですね」


「ご理解いただきなによりです。一応、各大陸の国王様には今回の侵攻について事前に連絡をしてありますので、戦力編成などは比較的スムーズに進められるかと」


「そのような話、聞いておりませんが」


「魔族側へ情報を漏らさないために、極秘裏に情報伝達と準備を進めるように申し上げましたので」



ヤベー魔族が大量に押し寄せてくるから今すぐ準備しろって言っても、さすがに限界あるからね。

アルマの御両親を通して、各大陸の国王様にこの時のための準備を進めるように進言しておいてもらった。


魔族に情報が漏れないように、国王様には細心の注意を払ったうえで進めてもらった。

さらに、各国軍部に混じってた魔族は事前に皆殺しにしておいたからまず大丈夫だろう。

戦争しながらこんな裏工作やら鬼先生の相手やら忙しすぎてハゲるかと思ったわー……。



「ややこしい話は後にしな! まずはこれだけ教えろ! 俺たちは、どこで、どいつをぶっ飛ばせばいい!」



ジュウロウさんが痺れを切らした様子で声を上げた。

いいね、それくらいシンプルに聞いてくれたほうがこっちも話しやすい。




キャラノンノさんやジュウロウさん、その他特級職の人たちは各大陸に侵攻してきた魔族たちと戦ってもらう。

各大陸の国軍や対魔族軍も今回に備えてある程度数が残っているので、連携しながら戦えば今日一日くらいはもつだろう。

各国にジュリアン謹製の魔石地雷やらのサンプルも事前に渡してあるから、少しは量産して使用することもできるだろう。



魔王城に行くのは俺のパーティに加え、ラディア君にアイザワ君、バレドにラスフィーンだ。

思った以上に各国の戦況が悪そうなので、ヒューラさんとガナンさんは侵攻してきた魔族との戦いに向かってもらう。



「あなたたちだけで魔王と戦うと? 勇者も不在の今、勝算はあるのですか?」


「俺たちだけではありませんが、まあこの中じゃ一番勝てる見込みがあるかなと」



俺の言い分を聞いたキャラノンノさんの眉がピクリと不機嫌そうに動いた。怖ひ。



「……随分と腕に覚えがあるようですが、過剰な自信は身を滅ぼしますよ。ここはこの場の全員で魔王を手早く撃破するべきでは?」


「あ、大丈夫です。というか必要以上に一緒にきても意味無いです。多分すぐに殺されるだけなので」


「あなたは違うとでも?」



……ああもう、メンドクサイなー。

確かに俺の言い分は、はたから聞いてたら身の程知らずの未熟者がイキってるだけに見えるだろうし、まあ間違ってない。

だが、強化されたアルマの御両親を軽く一蹴するような相手に魔力も気力も操れないこの人たちが役に立つとは思えん。

でも侵攻してきてる魔族相手なら心強い戦力になってくれるだろうし、ここは適材適所ということで納得してもらおう。



一瞬、ほんの一瞬だけ気力で能力値を強化。

今の俺なら5倍まで強化しただけで2万を超える能力値にまではね上がる。

弱そうに見えるのは分かるけど、イチャモンつけられるたびにこのパターンになるのそろそろマンネリ化してきてる気がするわ。


気力強化された俺の力を察したのか、声こそ出さなかったものの反射的に身体をのけぞらせた。



「……っ!?」


「納得しかねるというのなら、今すぐ叩きのめして差し上げますのでかかってきてください」



こんな生意気なこと言いたくないけど、今は時間が惜しい。

魔王は自分の作り上げた全ての魔族を強化するスキル技能をもっているが、それは戦闘中には使えないらしいので誰かが魔王の相手をしている間は魔族の侵攻の手が緩むはずだ。

だから早く魔王のところへ行かないと、強化されたままの魔族の侵攻に歯止めが利かなくなる。



「……よく分かりました。我々もできる限りの抵抗はしますが、あまり長くは保ちそうにないので、なるべく早急に魔王の討伐を」



簡単に言ってくれるなー。相手魔王やぞ。

しかも魔王のステータスはある程度分かってはいるんだが、その全部を把握してるわけじゃないんだよな。

魔王のメニューが変な不具合抱えてる分、ステータス表示も一部バグってるみたいで上手く入手できなかったとかなんとか。

ちなみに内容はこんな感じ。






魔王(相馬竜太)


Lv201


状態:正常


【能力値】


HP(生命力) :53411/53411

MP(魔力)  :■■/■■

SP(スタミナ):■■/■■


STR(筋力) :30100

ATK(攻撃力):30100

DEF(防御力):29800

AGI(素早さ):29978

INT(知能) :29991

DEX(器用さ):28736

PER(感知) :26890

RES(抵抗値):23788

LUK(幸運値):0


【スキル】

魔族Lv10 ■ ■ ■ ■ ■ ……






こんぐらいの情報しか分からなかったけど、分かってる情報だけで既に絶望しかねぇ……。

随分とデタラメなレベルだが、多分例の転生の手鏡の影響で、前世のレベルがそのまま魔王のレベルに加算されてるんだと思う。


魔族スキルがLv10になれるのは魔王だけらしく、その技能に魔族たちの強化効果があるというわけだ。

戦闘になれば真魔解放を使うだろうし、そうなれば魔族たちの強化もストップされるはずだ。



……この能力がさらに倍化された魔王と戦わなきゃならんのか。俺、今度こそ死ぬかも……。


お読みいただきありがとうございます。



>カジカワ、今どんな顔してるんダロウナー―――


多分、例の顔そのまんまじゃないでしょうか。

AAでも貼ってやろうかとも思いましたが自重。当たり前ですが(;´Д`)


>裏で削除、削除!削除!!!!って言ってる仲間いません?


アニメ版のあのシーン、ただ名前書いてるだけなのになんだこの無駄にスタイリッシュな動きはとか思いながら見てました。


>主人公らしからぬ顔芸が見える…いや、元ネタの方も主人公なんだけどさ…


ダークヒーローというか、むしろ主人公が黒幕の作品って割と少ない気がします。

悪役なのに読んでいると主人公が正体ばれないように立ち回っているのを見てハラハラしてしまう不思議。ほんまプロは話作りも描写も絵も上手いわぁ……。


>わー、デ〇ノのあの笑顔が見える見えるw―――


もはやあのシーンは一種のミームですよね。すぐに思い浮かべることができますし。

あと誤用の御指摘ありがとうございます。すぐに修正させていただきました。オハズカシイ……(;;´Д`)


>俺が他の作品でクソ貴族とかが出る度に常ね送り出したい場所じゃねーか。


スッパリ楽に殺すよりも、絶望の中じわじわと死なせたいという気持ちは分かります。

いざ自分がその立場になったりしたらと思うともう怖い怖ひ(;´Д`)

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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