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初の依頼受注

新規の評価、ブックマークありがとうございます。

お読み下さっている方々に感謝を。

いつも通りドアをキコキコ鳴らしながらギルドに入る。

いつもならそのまま受付に一直線だが、今日は依頼用の掲示板を先に確認しておく。

ランクとジャンルごとに綺麗に整頓して貼られている依頼書に目を通していくと、やっぱり工場での仕事を思い出して気が滅入る反面、わずかに懐かしさもこみ上げてこないこともない。

…正直、向こうにも工場にもあまり未練はないんだがな。


で、現状ランクの一つ上のDランク以下の依頼を確認してめぼしい依頼が無いか探していくと、いくつか稼ぐのに丁度良さそうな依頼があった。




遺跡探索

ギルド判定ランク:E

依頼元:ダイジェル在住の考古学者ヘビーメイター氏


ダイジェル北東を二日程歩いたところに比較的大きな遺跡がある。

場所や形式からして古代王国ミルカのものと推測できるが、他の国のものと思われる建造物跡も残っており、この遺跡の役割を外観だけでは判断できない。

本当なら自ら調査したいところだが、内部にはスケルトンなどのアンデッド系の魔獣が徘徊しているので無理だ。

写像機を支給するので、最深部の祭壇の情報をそれに映してきてほしい。

映す場所は会って詳細を話す。



遺跡調査ねぇ。

街から二日って。結構な距離やないの。

写像機ってのはなんだ? なんとなくカメラっぽいイメージがあるが。


≪写像機:光の魔石を内蔵した魔道具。中に紙をセットし、その紙に写像機で撮った対象を写しとることができる、インクの不要なフルカラープリンター付きカメラのような物≫


なにそれすごい。

インク無しでどうやって映してるんだか。普通に欲しいわ。

でも移動に二日かぁ…。飛べば一気に行けるだろうが、移動するのがあんまり早くても不自然だしなぁ。まぁ適当に誤魔化せば問題ないか。

他の依頼を見て、特に急ぎの依頼がなければやってみてもいいかな。次。



魔石採掘

ギルド判定ランク:F

依頼元:マルダニアの魔具屋


拳大サイズくらいの地属性の魔石を20個納品お願いします!

在庫が切れかかっていて、普段購入しているところも品切れで現在非常に困っています!

街の近くの鉱山跡に行けば手に入るかもしれませんが、店員たちは力仕事ができない者ばかりなので、体力に自信がある方は是非!



他の依頼に比べてやたらグイグイきてるな。

その勢いで自分で掘れと言いたいが、装飾品なんかの細かいものづくり系の生産職は腕力も体力も低そうだしなぁ。

装備屋のおっちゃんは鍛冶もやってるからか、生産職なのに腕力がやたら高かったが。

まぁ、急ぎっちゃ急ぎだけど、その気になれば自分で解決できないこともなさそうだし、優先度は低めだな。次ー



魔獣討伐

ギルド判定ランク:D

依頼元:ケルナ村のジェインウェイク氏


最近、畑の農作物を荒らす魔獣が出現して困っているので討伐してほしい。

ラッシュボアと呼ばれるイノシシ型の魔獣で、さほど強くはないが逃げ足が速い。

今までは村の戦闘職の者たちで対処してきたが、今年は異常なまでに数が多い。

平時は多くても5匹もいないくらいだったが、今年は確認できただけでも50匹はいる。

このままでは収穫前の作物に甚大な被害が出る恐れがある。早めの対処を望む。



魔獣の異常発生か。うーむ、これはいかん。

ラッシュボアって、なんかラッシュピッグっていう豚肉に近い食材があったけど、あれの仲間かなんかかな? あるいはそのラッシュボアが品種改良されたのがラッシュピッグなのかね。

俺も子供の頃に何度か実家の畑仕事をやったことがあるが、もうすぐ収穫というところでイノシシに食い荒らされてがっくりきたことがあったっけ。

あの悲しさと悔しさはトラウマもんだったな。それと同じ状況がこの村で起きてるわけか。

Dランクの依頼だが、一つ上の依頼の難度を受けるのも経験だ。今の自分がどれだけ通用するか試すのにもいい機会かもしれない。

…これは決定かな。個人的な感情を優先してるようでアルマにちょっと悪いが。



「アルマ、この魔獣の討伐依頼受けてもいいか?」


「ん、いいよ。…なんだか、他の依頼見てる時より真剣な顔してる」


「ちょっと目についてな。それに作物を育ててる村なら、畑を借りることができればアレの栽培もできるかもしれないし」


「アレ?」


「アイスクリーム作る時に使ったバニラの豆。今のままじゃ数に限りがあるし、栽培に成功すれば安定して定期的にバニラの風味のある美味しいお菓子が食べられるぞ」


「うん、すぐ行こう。早く」



即答ですか。そんなにあのアイス気に入ったのか? まあすっごく美味かったけど。

こうまで分かりやすいリアクションされると、ちょっと笑いそうになってしまう。


受付のネイアさんに依頼書を渡し、報酬や依頼の達成条件等の確認をし、村までの簡易の地図を受け取り出発。

村までは基本街道を看板を頼りに進めばたどり着けるので、地図はいらなかったんじゃないかと思ったが、まあ念のため受け取っておくか。




ダイジェルを出て街道を進んでいるが、今のところ魔獣とエンカウントすることはない。

魔獣のテリトリー以外じゃ、遭遇しないのが普通なのかな?



≪テリトリー以外の範囲でも魔獣は生息しているが、街や村、またそれらを繋ぐ街道はそういった魔獣と遭遇しづらい条件が揃った場所を開拓したものなので、遭遇する確率は極めて低い≫



ふーむ、なるほど。

今回は餌場、つまり村の畑の作物が異常発生したラッシュボアたちにとって貴重なごちそうだから狙われることになったわけで、普段は今みたいに襲われることはないわけか。

異常発生した原因は例の魔王とやらの影響かな。はよ、勇者召喚はよ。



村が見えてきたところで、村の外側がなにやら騒がしいことに気付いた。

槍や斧を持った村人が、イノシシのような魔獣を追いかけ回しているようだ。

…あれがラッシュボアか?灰色の体毛に大きな牙、少し短い四足の割に随分素早く走ってる。

サイズは普通のイノシシより少しでかいくらいか。食いでがありそうだな。



「逃がすな! 追ええぇ!!」


「この野郎! よくも収穫前の野菜を台無しにしやがったなっ!」


「肉鍋にしてやるぁっ!!」



…村人さんたちめっちゃ怒っとる。気持ちはすごく分かるけど、ちょっと怖い。

って、まずい。追い掛け回すのはいいけど、逃げた先に群れがいるぞ。

全部で10匹くらいか? それに対して村人は5、6人。全員戦闘職だけどステータスが冒険者たちに比べてちと低い。

ラッシュボアたちもそんなに強い魔獣じゃないみたいだが、こりゃちょっと対応できそうにないな。



「や、やばい! 逃げた先に群れがいる! 全員村に戻れ!」


「こ、こっちに突進してきた! 早く逃げるんだ!」


「駄目だ追い付かれる! こいつら、俺たちを誘い込んでたのか!?」



思ったよりこのイノシシモドキたち、頭がいいみたいだな。

一匹を囮にして村人たちに追わせて、釣られた村人たちに向かって倍近い数で突進して殲滅する気のようだ。

このままじゃ村人たちが危険だ。早く助けないと。




「アルマ、魔法で魔獣を攻撃できるか?」


「うん。あれだけ大きな魔獣相手で、これぐらいの距離なら、当てられる」


「じゃあ、アルマはここから魔獣を狙撃。俺は村人に近づいてきたのを相手する」




イノシシモドキの平均ステータスは、確認してみたところ100前後。

素早さは150くらいあるが、充分対処可能だ。

まずは十匹。どんなもんか試してみますか。


お読み頂きありがとうございます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
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[一言] ポラロイドカメラじゃないの?
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