丸焼き焼肉ハンバーグー
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今回始めは、会話の内容からお察しください。
「『捨て駒』の準備は整っているか?」
「ああ、どれも数日以内に運用可能だ」
「黒竜は?」
「魔王様の指示で魔竜大陸にてレベリングを行なっており、おそらく一週間と経たずに進化するだろう」
「……もう充分バケモノじみた強さだろうに、まだ強化するのか。些か過剰戦力のような気もするが」
「魔王様のお言葉に疑問でも?」
「いや、ない。あの御方は歴代の魔王様とは違い、明確な意志と理念を持って人類を滅ぼそうとしておられる。魔王様が必要だと思ったのであれば、それは正しいことなのだろう」
「分かっているのならいい。では、予定通りに事を進めようか」
~~~~~カジカワ視点~~~~~
さて、ようやく一段落ついたな。
白いドラゴン、略して白竜は魔力で作った腕でちょっとキュッとしたら気絶しちまったし、結果として喧嘩に入りこんで終わらせてしまう結果となった。
ジュウロウさんの邪魔をしたみたいで申し訳ないが、本人は大して怒ってないようだ。よかった。
そのかわり、戦争が終わったら一回喧嘩相手になれと約束させられてしまった。……まあ、鬼先生よかマシか。
この白竜の処遇は一旦保留。
誰か一人でも殺していたのなら即屠殺して美味しくいただいていたところだが、どうもこいつ指示出すばっかで直接人間を殺したことは無いようだ。
でも間接的に虐殺をしていたことには変わりないので、命を奪うことまではしないという結論に至ったとしても、馬車馬の如く働いてもらうとするか。
今回の騒動でやっぱドラゴンってクソだわと再認識。あ、ダンジョンで倒したラーヴァ・ドラゴンは除く。
住民全員に食事をさせたことだし、ひとまず俺たちも飯を食うことに。
住民たちの手前、俺たちだけ他の飯を食うのも気がひけるので同じ雑炊だけど。
ヒヨ子が文句を言うように唸っていたが、クジラ肉は晩御飯に出してやるから我慢しなさい。
飯を食いながら、ひとまず情報の整理をすることに。
これまで起こったことなんかを箇条書きにしてまとめてみた。
・魔族により転移魔法が妨害されて、孤立した状態に陥った。
さすがにあそこまで大規模な工作をしているとは予想外だったな。
第3大陸はこれまで足を運んだことがなかったから、メニューの情報検索にも引っかからなかったし。
これだけでも結構な被害が出てしまった。中級職以下の人間が生き残るのは難しいだろう。
『燃料』として生贄にされていた住民たちは解放したが、この街以外にも似たような施設があるかもしれないし、他の大陸からの大規模な戦力投入はしばらく期待できないか……。
・魔獣を飼育する施設があり、強力な魔獣たちの質と数による蹂躙。
そもそも第3大陸自体、魔族の従えた魔獣たちによって滅ぼされたらしいので予測範囲内。
俺や特級職の人間にしか対処困難な相手だが、テイムスキルを取得している魔獣使いがいれば逆にこちら側の戦力として有効活用できる。ソウマみたいに。
他の大陸から魔獣使いたちをファストトラベルで転移させてくる必要があるな。後で急募の要請をしておくか。
そういやソウマは今も魔獣たちを従えて戦っているんだろうか。ガンバレー。
・こちら側の人員を洗脳して引率し、より深く洗脳するためにアジトまで誘導している魔族を確認。
あの紫ロング女隊長も洗脳されてたな。
多分、同士討ちをさせるための工作なんだろうけど、逆にこれを利用してアジトの位置を突き止めることができそうだ。
……問題は、洗脳されて誘導されている人間の中にアイザワ君も混じっていることだ。なにしとんの君は。
ヒューラさんとガナンさんが尾行しているみたいだけど、あまり深追いせずに他の戦場へ向かってほしいんだがなぁ。
・黒竜の現状について。
……ぶっちゃけ、コイツが一番ヤバい。
マーキングしておいた黒竜の傷は既に癒えていて、多少貧血気味だが問題なく活動しているようだ。
その証拠に、どんどん経験値を取得している。このペースだと、恐らく日に2、3はレベルが上がるだろう。
もしもこれ以上進化した場合、その強さは未知数だ。俺一人では対処できなくなる危険性がある。
ジュリアンと婆さんに依頼したモノが間に合うかどうか、それにかかっているな。頼む、再び黒竜がくるまでに完成させてくれ。
・手練れのマーキングについて。
特級職はもとより、高レベルの上級職も随時マーキング中。
戦争中じゃなくて、戦争が終わった後に起こる事態に対処するには、最低でも上級職以上じゃないと力不足だ。
というか、下手したら特級職以外は足手纏いになりかねん。まさか今世代の魔族のレベルがあんなに高いとは。幹部並やん。
ふー、とりあえずはこんなところかな。いやー、はっはっは。
ヤバくね?
前半3つは結構な被害が出てはいるがまだ対処可能。ここまではどうとでもなる。
しかし、黒竜は俺か勇者君じゃないと対処できないくらい強くなっている。しかも現在進行形で。
というかコンビで挑んだとしても勝てるか分からん。
さらにそれよりも困難なのは『今世代の魔族』たちへの対処だ。
魔族は魔王の手によって生み出されている存在で、その力は魔王の強さに比例しているらしい。
並の魔王なら、生み出されるのはせいぜいLv20~50程度、幹部はLv80以上くらい。
これまで遭遇してきた魔族たちがこれにあたる。要は前の世代の魔族たちの生き残りだな。
今世代の幹部は前世代で最もレベルが高く成長していた者たちの中から選ばれるとかなんとか。
で、今世代の魔王が魔族を生み出した結果、軽くLv80以上の魔族が生み出されてしまっているという事態に。
もしも、これらが本格的に人類に対して侵攻を開始したら?
もしも、その時になって手練れの戦闘職が戦闘に参加できない状態に陥っていたら?
……結果は言うまでもないだろう。あっという間に人類滅亡である。あぼーん。
今はまだ数を揃えている最中なのか、それとも機を窺っているだけなのか分からないがそれほど大規模な活動はしていないが、対策をしておかないと魔王を滅ぼす前に世界が滅ぶ。
だから、手練れと接触しておく必要があったんですね。
「カジカワさん、なんか難しい顔してるみたいっすけど、どうしたんすか?」
「なにか、不安なの?」
アルマとレイナが心配そうにこちらに話しかけてきた。
いかん、無い頭をフル回転して考え事してたら暗い表情してたっぽいな。俺がこの子たち心配させてどうすんだ。
「ええと、あの黒竜をどうしようかなって」
「ああ、うん。すごく強くなってたね」
「カジカワさんと黒竜さんが喧嘩してるのが、すっごい離れた場所からもビンビン伝わってきたくらいっすからねー。……カジカワさんでも、倒せないんすか?」
「いや、どう調理したものかと。ステーキはこないだ作ったし今度はハンバーグにでも、いや揚げ物にしても美味そうだなー。ううむ、悩む」
「ちょっとアンタもう倒した後に食べることしか考えてないんすか!?」
「……心配して損した。ヒカルらしいけど」
「ヒヨ子はどうやって食べたい?」
『ピピッ!』
「……さすがに丸焼きは無理かなー」
強気なことを言っている自覚はあるが、こうでも言わないと無駄に不安な思いをさせてしまう。
ここは無理にでも気丈にふるまわなければ。
……まあ、進化した黒竜がどんな味に仕上がっているのか楽しみなのは本当だが。不安感2割、期待感8割くらい。
「ただ、真面目な話俺一人じゃ手に余る。危険だが皆にも手を貸してもらわないと、ヤツを生姜焼きにするのは難しいと思う」
「うん。もちろん、いくらでも力になる。ヒカル一人で抱え込まないでいい」
「じ、自分も頑張るっすよ。……カジカワさんでも倒せない相手となると正直怖いっすけど」
『ピィ!』
「ありがとう。一応、作戦を考えてはいるんだが、準備が間に合うかどうかは正直微妙なところなんだよな。どちらにしてもヤツをつくね団子にするためには、全員が死ぬ気で立ち向かう必要があるということだけ分かっていただきたい」
「でも、無茶はやめてほしい。特にヒカルは大きな戦いの時に、いつも危険な状態になってる気がするから」
「もちろんだ。誰も死なせないし、俺も死ぬ気はない。必ず全員でケバブを食おう」
「いやもう早く調理したいのは分かったっすから、料理の名前をコロコロ変えるのはやめてほしいっす……」
さてさて、今後の相談もしたし、食休みが済んだら今やるべきことを片付けていきますか。
レジスタンスのリーダーがラディア君の兄貴に左手足をもがれたから治療してほしいとか、その兄貴を倒したラディア君のメンタルケアとかもしておかないと。
ラディア君はレイナに任せるか。つーか、俺が言うまでもなくラディア君のところに真っ先に向かってるみたいだけど。
……これが娘に彼氏ができた父親の気持ちか。前にも似たようなこと言ってた気がするけど、なんとも複雑な心境だ。
お読みいただきありがとうございます。
>戦争が終わったら、やるのかよ。
はい、やる気満々ですね。
多分、その後に鬼先生辺りを喧嘩相手として紹介でもするんじゃないですかね。
>あとがき 食材の熟成や発行→発酵または醗酵
あとがきの誤字報告ありがとうございます。
あとがき部分は報告機能が使えませんからねー(;´Д`) お手数おかけしました。




