だからアンタ来るなって言って(ry
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ここのところ出張やら残業やらで時間がとれなくて、更新遅れて申し訳ありません(;´Д`)
今回始めは日本人たちのチャットです。
≪あーあー、テステス、聞こえるー?≫
≪うわ、ビックリした! え、なに今の声。誰だ? ……まさか、梶川さん?≫
≪オゥイエス。レベルが上がってなんかチャット機能も進化したみたいで、音声も送れるようになったっぽい≫
≪いきなり話しかけられて心臓飛び出るかと思った……。なんか用?≫
≪メンゴメンゴ。いや、そっちの状況はどうかなーって思ってね。レイナは無事かい?≫
≪ああ。影潜りで人員を回収しながら避難してるみたいだ。……いや、街の地下でなんかやってる?≫
≪んー、どうやら元々その街に住んでた住人が捕らえられているみたいで、その人たちを助けようとしてるっぽいね≫
≪あ、ホントだ。……って、住民全員虫の息じゃねーか!? しかも現在進行形でどんどんHPMPSPが減っていってる、どうなってんだ……?≫
≪……転移魔法妨害魔法の、エネルギー源にされているみたいだな。こっちの活動を妨害したうえで、住民の始末もできて一石二鳥ってか、ははっ。……魔族ども一匹残らずブチ殺す≫
≪同感だ。ドラゴンどもの掃討が済んだら、オレも地下へ潜って住民の救助に向かうとするかな≫
≪ん、俺も行ったほうがいいかな? 生命力譲渡で衰弱した住民を回復できるだろうし、ドラゴン肉欲しいし≫
≪ああ、そうしてもらえると助かr……ちょっと待て、アンタ今なにやってんだ?≫
≪大きなヘビと追っかけっこの真っ最中ですが≫
≪マップ確認してみたけど、アンタの近くに『ヨルムンガンド』って魔獣が表示されてるんだが、コレのことか? ……なんだこれデカすぎだろ、ってかそいつの周りの表示が危険信号で真っ赤なんだけど!?≫
≪あー、コイツ致死性の超強力な猛毒を撒き散らしてるからな。並の人間の体に一滴でもかかったら即死するレベルらしい≫
≪やっぱアンタこっちくんな! さっさとそいつ倒してアイテム画面にでも放り込まないと、大陸中が汚染されちまうぞ!≫
≪えードラゴン肉欲しいのにー≫
≪そいつぶっ倒してからにしろっつってんだろーが! 絶対に連れてくんなよ! オレもレイナも住民もみんな死んじまうからマジでくんな!!≫
≪アイアイ、ヒーロー。まあネオラ君がいるなら大丈夫か。ドラゴンは経験値もおいしいし、たとえ降伏しようとしても聞き入れず皆殺しでヨロ≫
≪そのつもりだよ。こいつら楽しみながら人間も魔族も見境なく殺してやがったからな。まだ魔族のほうが魔王のために戦ってる分マシに思えてくるわ≫
≪ならそっちは任せるわ。あと戦いが終わったらドラゴン肉分けてくれ。買取も可≫
≪カップ麺とかこっちで買えないモノと交換なら応じよう≫
≪よし、交渉成立。じゃあまた後でー。……おい、いつまで逃げてんだ! さっさと観念しろこのクソヘビが蒲焼にして食うぞゴルァ!!≫
≪……チャット切り忘れてんぞー。脅し文句が怖すぎんだろ≫
~~~~~勇者視点~~~~~
あービックリした。いきなりチャットで凸してくんのやめろや梶川さん。
これまで文字しか送れなかったチャット機能に音声まで追加されるとはな。隠し機能なのに進化する意味が分からん。
『わ、矮小な人間風情が、これほどの力を持っているだとぉ……!!』
『やはりこやつは勇者だ! まさか雌だとは思わなかったが』
『ま、待て! 我らの負けだ、降伏する! どうか命だけは助けてくれ……!』
は? なに言ってんだ? さっきお前ら『助けなどこない』とか言いながら虐殺してたくせに、自分たちは助かりたいってか?
そうかそうか。はっはっは。
「助ける理由なんぞ無い。一匹残らずここで死ねクズども」
『ぐ……! き、貴様! 白旗を揚げた者を手にかけるなど、それでも勇者か!』
『我ら崇高なる竜族を、なんと心得る!』
「いきなり召喚されたことに腹立てて、ガキみたいに暴れまわってるクソトカゲどもだろ? いいから死ね」
『く、そぉぉおおおっ!!』
激高しながら飛び掛かってきたドラゴンの首を、刀剣術と次元刃のコンボで刎ね飛ばした。
クソはお前らだろ。焼き殺した人たちにあの世で土下座しろ。
まあ、手に入る経験値はなかなかのもんだし肉は美味いらしいし、ぶっ倒した後に有効活用させてもらうとしよう。
戦争中でこの大陸の食料も足りないだろうし、せいぜい美味しく調理されてろ。
雑魚はあらかた片付けたし、あとはリーダーっぽいあの白い竜をぶちのめせばケリがつくかな。
何百匹も討伐したおかげで一気にLv85まで上がった。あの白いのを殺ればさらにレベルアップできそうだ。
「どうした? 世界最強の崇高なる竜族サマよ、そんなもんかぁ?」
『ぐぅ……! よもや勇者以外にも、ここまでの手練れがいようとは……!!』
あ、その白い竜がなんか筋肉ムキムキのライオンっぽい髪形の人にボコボコにされてる。
強いなあの人。Lv95って、教官たちと同格じゃねーか。
……勇天融合状態じゃなけりゃ、オレでも勝てないかもな。
『こうなれば、奥の手よぉ!!』
「おお? なんだ、隠し玉持ってるならさっさと出せよぉ。このまま終わっちまうんじゃないかって早とちりするトコだったぜ」
『ぬかせぇっ!!』
白竜が吠えるのと同時に、その身体がどんどん膨らんでいく。
いや、というか身体そのものがデカくなってる? なんだあれ?
≪竜族スキルの【真竜化】ですねー。全ての能力値が2~3倍まで強化されるうえに、竜族スキル技能の並列使用が可能になるというチートスキルです。……あのライオンみたいな人にはちょーっと荷が重い相手かもしれませんねー≫
あの白魔族が使っていた真魔解放みたいな技能ってか?
あー、確かに結構強いな。主要な能力値が10000超えてるし。大丈夫かあの人。
『くたばれぃっ!!』
「おおっ!? な、かなかイイじゃねぇかっ……!!」
巨大化した白竜の振るう爪を、肘と膝で挟んで受け止めている。
能力値に倍近い差があるのに、まるで絶望した様子がない。むしろ楽しんでいるようにすら見える。
……助けに入らないほうがいいやつかこれは?
「手ぇ出すなよお嬢ちゃん! こいつぁ俺の獲物だぁ!」
『ふははっ、馬鹿めが! 貴様のか細く貧弱な身体で、我が真の力に抗えると思うなぁ!!』
「いいねぇ、じゃあ試してみるかぁ!!」
『死ねぇい!!』
……大丈夫そうだな。
なんか無駄に暑苦しいノリになってるし、もうほっといてオレも地下に囚われてる住民たちを助けに行きますかね。
~~~~~レイナ視点~~~~~
「うぅ……」
「あぁ……」
薄暗い牢の中で、か細い呻き声が微かに聞こえる。
地下で見たものは、一人残らずガリガリに痩せてしまっている住民たちの姿。
まるで何か月も食べていないかのように、萎びてしまった身体は見ているだけで痛々しい。
「……ひどいね、これは」
「魔族たちの仕業っす。……妨害魔法の燃料に、この人たちを使ってるんすよ……!」
あまりにひどい光景に、思わず歯軋りしてしまう。
キョウクハルトさんも、珍しく厳しい表情をしながら辺りを見回している。
「今はまだ死人は出ていないみたいだけど、このままじゃいずれ皆衰弱死してしまうだろうね」
「早くポーションやご飯でも食べさせて回復させないと。……でも、その前にっ!!」
部屋の隅に向かって、シュリケンを投げる。
そこにいたモノは、素早い動きで難なく避けてみせた。
「まずはこの人たちが弱っている原因を叩くのが先っす」
「……ほう、気付いていたか」
「こそこそしてないで出てきたらどうっすか」
まあ、自分が言えた義理じゃないっすけど。
むしろなんでこんなに堂々と行動してるのか、自分でも分かんないっす。
姿を見せた黒い魔族は、第5大陸の王都で見た白い魔族とほぼ同等の力を感じられる。
まさか、コイツがこの大陸の幹部っすか……!?
「ふむ、地上の同胞たちを殺し回っている影が見えたと報告があったが、まさかこのような小娘とはな。驚嘆を禁じ得ぬ」
「どーも。アンタ、やたら強そうっすけどこの大陸に配属された幹部っすか?」
「否。ただの雑兵に過ぎぬさ。もっとも、前世代ではなく今世代の、だがな」
「は? なに言ってんすか?」
「知る必要はない。貴様らはここで死ぬ」
「アンタ一人くらいなら、自分でも充分仕留められるっすよ」
「ほう、自信に満ちているな」
第5大陸の時は、まだ地力も弱くてとてもじゃないけど対抗できるような相手じゃなかっただろう。
でも、今の自分なら目の前の魔族を倒せるという確信がある。
「ならば、これはどうだ」
「え……?」
魔族が、筒状の何かを紐解いて地面に広げた。
あれは、スクロール? いったい、なにを……?
なっ、ちょっと、ええ……!?
「鼠は釣れたかね?」
「周到に準備を進めた甲斐があったというものか」
「やはり、魔王様の策はえげつなく、効果的」
え、えーと、これはさすがに予想外っす……。
開かれたスクロールから、この黒い魔族と同格っぽい魔族が3体も出てきたんすけど。
……まずい、さすがに複数相手じゃ勝ち目は薄いっす。
キョウクハルトさん以外の人は街外れに避難させちゃったから、戦力差は歴然。ていうか居ても多分相手にならないっす。
ここは、一旦退くしか……。
「ああ、逃げようなどと思わないことだ。もしもこの場から消えようものならば、ここの人間どもは皆殺しにさせてもらう」
「なっ……!」
「もう燃料も残りわずかだ。間引く頃合いでもあるし丁度いい。……止めたければ、止めてみるがいい」
この、クソ外道が!
人質とってまで自分をこの場で仕留めたいんすか!? 大人げないっす!
「ほら、急がなくていいのか?」
「うぁぁっ……!」
倒れている住民の一人に、ナイフを突き刺そうとしているのが見えた。
たまらず駆け出そうとしたところで、傍にいた魔族たちが自分に向かって魔法を放ってきた。
あ、ヤバい、短剣で吸収、いや、間に合わない!
頭が弾け飛んで、辺り一面に脳漿が飛び散った。
「っ! ……?」
自分のじゃない。
自分を狙って魔法を放ってきた、魔族たちの頭が弾けたんだ。
「な、なに!?」
「貴様、いつからそこに……!?」
「お前たちも使ってる手だろうが。この子のところまで転移しただけだ、ゴミども」
聞き慣れた声が聞こえる。
安心感に、胸が満たされていくのが分かる。
「悪い悪い、遅くなったな、レイナ。あのヘビ公仕留めるのに手こずっちまった」
恐る恐る声が聞こえるほうを向くと
血塗れで、優しい笑顔を浮かべてるカジカワさんの姿があった。
「ぎに゛ゃあああああああっっ!!?」
「え、なんで叫んでんの!? あ、いや、違う! これ俺の血じゃないから! 大丈夫だから!」
「そっちのほうが怖いっすよ!!」
助けてもらってなんなんすけど、地下の薄暗さも相まって絵面がホラーすぎるっす!
ピンチに駆け付けてきたヒーローというよりも、さらにヤバい怪物がエントリーしてきたようにしか見えないっす……。
お読みいただきありがとうございます。
>勇者が活躍したことがあったと思うやつ挙手
ち、ちゃんと活躍してるから…(震え声
本人めっちゃ頑張ってるから。あんま描写されてないけど。
>え、これ、ラディア君のセリフですよね?――――
多分、全部あり得るんじゃないかと。「そんなもんあるわけない」「でもカジカワさんならありえるかも」「なら胡麻化したほうが、……意味あるか?」みたいな。
仮面を着けていないのは、魔力操作なんかのことをツッコまれた時に力ずくで誤魔化すことができるようになったから、正体を隠すのをやめたんですねー。
……まあ、魔王相手に万全を期すなら着けたままのほうがいいかもしれませんが。
>梶川さんは今回って飛行士としての参加じゃないっけ?―――
↑でも書かれていますが今回は『Sランク冒険者カジカワヒカル』として参戦しています。
パーティ単位で参加する戦争なので、アルマたちだけに参加させると色々問題あるので。
なお、アルマはアルマで後に暴れまわる模様。はよ、合流はよ。
>ヒヨ子、レイナ、ライアーナ、カジカワさん、今はアルマ視点で・・・あれ?―――
あ、単に書かれていないだけで普通に報告上がってます。異常な状況を伝えるのを優先されているので、決して勇者の活躍が割愛されたわけでは(ry
>性善説をベースに、それを変えること無く貫くところ。―――
最新話までの御感想、ありがとうございます( ̄人 ̄)
どうしようもない悪者もいるにはいるのですが、そういうのにはそれ相応の目に遭ってもらってます。現実はそうはいかないでしょうが、まあ創作の中でくらいはね?
魔王を討伐するのは一つの大きな区切りとなります。一応、ほんのちょっと続いた後に、後日談や本編でできなかった番外編とか書けたらいいなぁとか考えてたり。
次回作の執筆も半話くらい書き始めてたりもしますが(死




