荒む幼女と勇むニワトリ
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>今回始めは首刈り幼女もといレイナ視点です。
「か、ヒュッ……?」
「ガハッ……」
「ギャッ……!」
首をかっ斬り、心臓を貫いて捻じり、脳天に刃を突き刺して、魔族たちを殺していく。
ほんの数十体殺すごとにガンガンレベルアップしていくあたり、やっぱり魔族は討伐時の経験値が高いっすねー。
「さ、さっきからなんなんだっ!? 腕が出てきたと思ったら、首が……!!」
「影から離れろォ! 敵は影に溶け込み移動しながら暗殺するスキルを持っているようだ!」
「建物の中になんか居たら格好の餌食だ! 日向へ、外へ出て避難しろ!」
んー、そろそろ影潜り頼みの暗殺だけじゃ限界っぽいっすかねー。
始めは建物の中でくつろいでる魔族をサクッと殺るだけの楽なお仕事だったっすけど、何度かその現場を見られていたみたいで影から離れていくっす。
ま、元からこんなセコい手だけでどうにかできるとは思ってないっすけどね。
大体の魔族は外に出たみたいっすね。そろそろ頃合いかな。
では、ポチっとな。
魔道具の起動ボタンを押したのと同時に、街のあちこちで爆発音が鳴り響いた。
ジュリアンさん特製の、遠隔操作魔石爆弾。カジカワさんのリクエストを聞いて、急ピッチで作られたトンデモ兵器の一つっす。
自分の取得している【罠】スキル技能の効果も相まって、非常にえげつない威力で広範囲を破壊していく。
そしてその爆発は、建物の外へ逃げ出した魔族たちを容赦なく肉塊に変えていく。
運よく、いや運悪く即死を免れた魔族たちもあちこち欠けてしまったりして、とても酷い有様だ。
「うがぁぁっぁあああ!!」
「ひぎゃああ!! 腕が、う、うあぁぁあ……!!」
「な、なにが起こったというのだ……!?」
……あんまり苦しめるのも可哀想だ。さっさと楽にしてあげよう。
ものすごーく残酷なことやっている自覚はあるけれど、魔族たちもこの街の地下で『あんなこと』やってるし同情する気はない。全員死ねばいいっす。
我ながら段々心が荒んでいくのが分かる。こんな戦争、さっさと終わらせたいっす。
あ、そういえばあの筋肉ハゲも街の中を走り回ってたっすけど、もしかして巻き込まれてたり……
「おおっ!? う、うはははははぁっ! なんだぁ、俺様のビューティフルかつダイナミックな走りに花火でも上げてくれてんのかぁ!? 嬉しいぜぇぇぇははははぁい!!」
……無事だったみたいっす。
なんかもう、なにしても死にそうにないっすねあの人。まるでゴキブリっす。
カジカワさんとはまた違った不死身っぷりっすねー……。
「合図を確認! 進めぇぇぇえ!!」
「速やかに魔族を排除し、街を奪還せよ!」
「相手は武器も魔法も使いこなす厄介な相手だ! 基本、前衛・後衛を含めたフォーマンセルで行動してくれ!」
罠を起動したらこれまで助けてかき集めてきた人たちが街の中に進軍して、散り散りになった魔族たちを殲滅していく手筈になっているっす。
影の中からの暗殺と爆発による甚大な被害によって、魔族たちはもうボロボロの状態。
寄せ集めの急造軍でも、なんとか街を奪還することくらいはできるだろう。
……このまま、何事もなければの話っすけど。
「……こうなったら、『アレ』を解放するべきか……!」
「できれば頼りたくなかったが、こうなればやむを得んな」
「し、しかし、下手をすれば我らまで全滅しかねないぞ……?」
「このままではどの道そうなる。ならば、せめて奴らを道連れにしてやるべきだろう!」
「……そうだな、覚悟を決めるか……!」
なーんか不穏な会話をしている魔族たちがいるっすねー。
面倒事を起こされる前に殺しとくか。
いつものように影潜りで接近しつつ、首を―――
!?
影潜りで接近しようとしたら、魔族たちの周りに閃光が走った。
この光は、スパークウルフの角?
「影の中から例の暗殺者が覗いているかもしれん! 常に影を照らしつつ解放を急げ!」
「アレを解放するまでの間、私たちが盾になる! お前は封印を解くことに集中しろ!」
「俺たちのことは気にするな! たとえ死んでも守り抜く!」
「……すまん!」
……なんすかあれ。なんだか無駄に熱いシーンを展開してるっすけど、絶対ロクでもないことやろうとしてるっすよね。
でも、なかなか厄介な状態だ。ナニカを起こそうとしている魔族をその仲間が盾になるように取り囲んでいる。
「っ! なにか飛んでくるぞ!」
「撃ち落とせ! 絶対に中断させるな!」
とりあえずシュリケンやクナイを投げて巨大化させて、周りにいる仲間から排除しようとしてるけど、粘る。
このままじゃまずい、仕方ない、切り札を出しましょうか!
「くそ! しつこく攻撃してきやがる! 姿を見せやがれ!」
「おい、まだ封印は解けないのか!?」
「ああ、もう……かっ――――!?」
「……え?」
ナニカを解放しようとしていた魔族の喉をかき斬った。
影潜りや縮地を使うでもなく、自分の身体は魔族の肉盾たちを素通りして攻撃した。
首をかき切った魔族の足元に投げた『金色のクナイ』を回収しつつ、周りにいる魔族たちに『銀色のシュリケン』を投げた。
「ぐぅっ!?」
「た、短剣か!? だが、この程度の傷で……!」
「……あ?」
シュリケンが刺さった魔族の一人が、間抜け面を晒したままの頭を地面に落とした。
「なっ、いつのま、……に……?」
「はい、おしまい。やれやれ、魔力を補給する手間がかかるからあんまり使いたくないんすけどねー」
残りの魔族たちも、頭と心臓を短剣で貫いて即殺。
影潜りも使わずに瞬間的に移動できたのは、『金銀狼の忍具』の効果によるものだ。
魔獣草原でカジカワさんたちが仕留めた固有魔獣たちの素材から作られた、シュリケンとクナイの特殊能力。
その効果は、『投げたクナイの位置と、対になるシュリケンを持っている者の位置を入れ替える』というものだ。
よーするに、20m先に投げたシュリケンのところまで、クナイを持っている人間はワープすることができるってことっす。
あんまり距離が離れていると効果を発動できないっすけど、目が届く範囲であればワープ可能。
この街一つくらいなら充分カバーできる。……一回使うと、魔力を補給するまで再使用は不可能なんすけど。
残りは3対分しか残ってないけど、まあそもそも使う機会が少ないから大した痛手でもないか。
おかげで悪だくみを未然に阻止できたみたいだし、まあ良しとして―――――
「…………あら?」
な、なんか、街の中央から妙な魔力を感じるっす。
……これは、なにかを、呼んでいるような……?
てか、空になにかが集まってきてる……?
「……嘘っしょ?」
空にドラゴンが何百という群れを成しているのが見える。
一体一体が、Sランクくらいの強さを感じるっす。
……まさか、さっきの魔族たちがしようとしていたことは、ドラゴンたちをおびき寄せる魔法かなにかを発動させることだったんすか……!?
これは、自分にはちと荷が重いっす……!
カジカワさんも、なんだか大きな気配とドンパチやってるみたいで救援は期待できそうにないっすね。……どうしよ。
~~~~~ヒヨ子視点~~~~~
もうダメだ。死ぬんだぁ。
クジラの腹の中は臭くて汚くてべとべとしてて、こんなところ一秒でも早く出たい。
どうせ死ぬのなら、最後にお腹いっぱいお母さんの作るご飯を食べたかったなぁ……。
お母さんなら、クジラに食べられたりしたら、どうするんだろうか。
……ダメだ、血塗れになりながらバリバリと腹を食い破って出てくるところしか想像できない。怖すぎワロタ。
私にはそんな芸当は無理。ここまでサイズ差があると、たとえ内側からでも破るのは難しい。
【イート・ビーク】の魔力砲なら、あるいはなんとかできるかもしれないけど……。
「うぉぉおおお!! 出せぇぇぇぇええ!!」
「お、落ち着け! 遠当ては撃つな、跳ね返されるぞぉ!!」
しかも、この魔獣の胃はどうやら魔法や魔力による攻撃を跳ね返す特性があるらしく、並の攻撃じゃ意味がない。
うかつに半端な攻撃を加えると、跳ね返った攻撃で自滅しかねない。
「うわああ! は、跳ね返って……!?」
「バカ! だから言っただろうが! 乱反射して、なにかに当たるまで止まらないぞ!」
言ってるそばから他の人間たちが魔法や遠当てに当たりそうになってるし。
……仕方ない、ここは私が吸収してやるか。
『コォォオオオ……!』
「に、ニワトリが魔法や遠当てを吸い込んでる……?」
「ま、待て! そんなもんを吐き出したりしたら!」
あ、ヤベ。
よく考えたら、これも反射されるじゃん。
でも、もう止められないんだけど。
『コケェェェエエエエ!!』
放たれた魔力弾が、胃壁に命中する。
しかし、やはりこちらに向かって跳ね返ってくる。
なら、もう一回!
『コォォオオオオオ……!!』
「は、跳ね返った魔力弾を、また吸い込んだ!?」
「さっきよりもデカくなってるぞ!」
『コケェェェェエエエエッ!!!』
跳ね返された魔力砲を、さっきの倍ほどの威力で撃ち返してやった。
【イート・ビーク】は、吸い込んだ魔力攻撃に自分の魔力をプラスして撃ち返すスキルだから、回数を重ねるたびにその威力はどんどん増していく。
これを何度も繰り返せば、あるいは……!
胃壁に亀裂が入ったけど、また跳ね返された。
なんの、もう一発!
『コォォオオオオオオオッッ……!!!』
「う、うわあ……まるで風船みたいに膨らんでやがる」
「や、ヤバいぞ、皆下がれぇっ!!」
『コッケェェェェェエエエエエエエエエッッッ!!!!』
これまでで、最大級の魔力砲。
もうこれ以上威力を上げられない。
これで駄目なら、もう、終わりだ……!
放たれた魔力砲はクジラの胃を突き破り、その胴体に大穴を空けた。
「や、やった、ここから脱出できるぞ!」
「よくやったぞニワトリ! お前スゲーよ!」
「あとで豆でも食わせてやるか」
いらんわ。普通のメシ寄越せ。
あ、クジラ死んだっぽい。やれやれ、どうにかクジラのフンにはならすに済んだようだ。
クジラを仕留めたことで一気にLv62までレベルアップして、次の進化先が頭の中に表示されてる。
とりあえず、次の進化先は無難に『ミスリルコッコ』にでも、……おや?
なんか、名前の横に★のついた進化先があるけど、コレ、なに?
お読みいただきありがとうございます。
>Qお母さんなら、こんな時、どうするんだろうか。
>A内側からブチ破る―――
大体合ってる。まるでエ〇リアンみたいな。
サンショウウオで食べられるのはクロサンショウウオくらいしか知らないですねー。某黄金伝〇の節約生活で食べてたっけ。
>ぱっと見はピノキオ、やる(だろう)ことは一寸法師
こんなグロい一寸法師嫌だ(;´Д`)
まあ、そもそもこんな描写にするのが悪いのですが……。
>まって、ひよ子ちゃん、まって...貴方は参考にしてはいけない人を―――
というか、飲み込まれた時点で大体の人はぶち破って脱出すると思う。
あるいは吐き出させるとか。……どっちにしてもきたねぇですね。




