魔族に剥く牙
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はいどうもこんにちは。
ただいま空の旅の真っ最中。
え、黒竜との戦いはどうしたって?
戦いの途中でモロにブレスをくらって、現在ぶっ飛ばされた直後ですがなにか。
いや、あのね、あのクソトカゲ思った以上に強いのよ。
なんか俺、強敵と当たるたびに思った以上に強いって言ってる気がするけど、今回はマジでキツい。
17000もの攻撃力と防御力に加え、何百年、下手したら何千年もの間使いこなしてきたスキルの数々に、さらに7つものマスタースキル。
気功纏を使えばさらに20000近くまで上昇するというバケモノっぷり。俺も他人のこと言えた義理じゃないが、向こうのほうが燃費がいい分有利みたいだ。ぐぬぬ。
攻防力に比べて素早さが低いのが唯一の救いかと思ったが、甘かった。
ドラゴン・ウィングっていう風を起こすスキル技能を自分の身体に使って機動力を大幅に上げつつ、こちらの飛行能力を減退させてくるもんだからまるで弱点になってねぇ。
つーかむしろ機動力が一番ヤバいまである。空中戦じゃちと不利だ。
でも大人しく地上戦に持ち込めるかというと無理。上からブレス撃ちまくられて的にされるだけだ。
思わず『21階層でもこんな化け物いなかったぞクソトカゲが!』って怒鳴っちまったわ。
アイツからすりゃなんのことか分からんだろうな。
……せめて、決め手になるような武器があって、仲間のサポートがあればなんとか倒せそうなんだが、一人じゃ厳しそうだ。
まあいい、戦争はまだ始まったばかりだ。時間が経てば、良くも悪くも状況は変わってくる。
焦らず、機をうかがいつつヤツをブチ殺す算段を立てるとしますかねフフフフフ。
俺をぶっ飛ばしてから、ヤツも退いたようだな。
ブレスを浴びた瞬間、カウンター気味に巨大な魔刃改で腹を斬ってやったから、多分その治療のために魔王あたりが『ハウス!』って呼び戻したんだろうな。
俺が生きてることが魔王にバレたりしないだろうか。ここで黒竜を仕留めそこなったのはちとまずかったかもなー。
……ところで、そろそろ地面に落ちそうなんですが、ここどこ?
≪魔族の運営している、魔獣牧場の模様≫
魔獣牧場て。農業の真似事でもやってんのか? 魔族たちの日常が牧歌的すぎる件について。
≪家畜としてではなく、対人類用の戦力として飼育している模様。飼育されている魔獣はB~Sランク下位程度でテイムこそされていないが、これらが人類に対して解き放たれた場合、甚大な被害をもたらす危険性あり≫
テイム無しでどうやって飼育してるんだ?
≪魔獣と簡易的な会話をする魔具を使用している模様。メニューの翻訳機能に近い程度の精度でしかないが、食料の提供と引き換えに人類に対して敵対行動をとるように契約をしている模様≫
ほう。ほほう。なるほどナルホドー。
……いいこと思いついたかもしれん。いや、悪いことかな?
震えて眠れ、魔族ども。そして魔獣たちもな。
~~~~~黒竜視点~~~~~
「手ひどくやられたな、黒竜」
『グゥゥ……!』
目の前にいる、長い黒髪の男を睨みつける。
今すぐその頭を噛み砕いてやりたいと思っても敵わぬ状況に、歯噛みする思いだ。
この、魔王さえ殺してしまえば全てが解決するというのに、何故儂の身体は動かぬのだっ……!!
「ふむ、真竜化した今のお前にここまでの傷を残すか。相当な、いや、もはや人という枠を超えた手練れのようだな」
『……っ』
「問おう、お前が戦っていたのは誰だ。勇者か、それとも他の者か?」
いかん、ここであやつのことを口にしてはならん。
前回の喧嘩の際に乱入してきた剣王の言葉から察するに、恐らくあやつこそが『カジカワヒカル』であろう。
魔王の最も恐れる脅威。もう殺害し排除したと言っていた、全てを引っ繰り返す要因となり得る者。
あやつが生きていると知れれば、メニュー機能とやらが復活した時点であやつを殺しに向かうに違いない。
「『答えよ』」
『グッ……!』
テイムスキルによる強制服従。
今の儂は、魔王の言葉には、逆らえぬ。
虚偽の言葉は、発せられぬ。
ならば……!
「黒髪の、男、であった……」
「他に特徴は? 戦闘中に、なにか手がかりになるようなことを言っていなかったか?」
「に、『21階層でもこんな化け物いなかったぞ』と……」
「21階層、か。なるほど、第5大陸の王宮でやり合ったあの剣王か。ならばその鋭く深い切り傷も納得だな」
嘘は言っておらん。『黒髪で、21階層に行ったことのある男』には変わりないからのぉ。
あの剣王には悪いが、隠れ蓑になってもらうぞ。
「順調のようでなによりだ。このまま第3大陸に世界中の手練れが集まっていけば、全て上手くいく」
『お主、は、なんの、ために、人類、を……! あれほど、人の世を、愛しておったお主が、何故……!?』
「……今は眠れ黒竜。魔法で傷は治せても、失った血を補給するのには時間がかかるだろう」
魔王の言葉を受けた途端に、目蓋が重くなっていく。くそ、睡眠すら強制されるのか。
ここまで強力に使役させられるとは、いったいこやつのレベルはいくつあるというのだ……!
「暴れ足りないだろうが、案ずるな。次は、命果てるまで戦わせてやる」
……。
………応。応ともさ。
その後、お前がくるのを楽しみにしておるぞ、魔王。
覚悟せよ。
儂の牙は届かずとも、あやつは大口を開き、いずれ貴様の喉元に喰らい付くであろう。
……
……リョータ……
~~~~~バレドライ視点~~~~~
「くっそぉぉおお!! ラスフィ! まだ動けるかぁ!?」
「む、無論だ。しかし、この戦力差はキツいな……!」
俺たちは運がよかった。
転移魔法で飛ばされた先がたまたま近くだったおかげで、比較的早く合流することができた。
だが、それでも余裕がない状況には変わりない。
周りには魔族だらけ。まともに戦えそうなのは俺とラスフィくらいなもんだ。
他にも何人かいるにはいるが、魔族の補助魔法による弱体化のせいでロクな戦力にならねぇ。
俺とラスフィも気力操作が使えなかったら、似たようなもんだっただろうがな。
「キヒヒ、死になぁ!」
「うわあああ! た、助けてくれぇ!」
「くそ、足手纏いだらけで戦いにくいったらありゃしねぇ!」
「弱体化が解除されれば、こいつらもまともに戦えるようになるはずだ! なんとしてでも守り抜くぞ!」
「キヒヒ! 軽い、軽いねぇお嬢ちゃ ゴベヘァっ!!?」
そう言いながら、ラスフィが魔族に向かって双剣を振るう。
剣を受けた魔族が、急に爆発してぶっ飛ばされた。
アレが、カジカワとかいう奴から受け取った新しい武器か。命中した瞬間に爆発する剣とか、下手したら巻き込まれてお陀仏だろうによく使う気になるもんだ。
双剣のかち合わせかたに応じた効果が発動するらしいが、他にどんな機能があるのやら。……なんつー物騒でヘンテコな武器だ。
……まあ、俺の新しい槍も似たようなもんだけどな。
その新しい槍を、魔族たちに向かって投げた。
「おぉらぁっ!!」
「へっ、どこに向かって投げてやがんだ!」
「弾けっ!!」
投げた槍に向かって手を翳し、『魔力操作』で内蔵機構を作動させる。
すると、槍から魔力の光弾が辺りにばら撒かれていった。
「うわああああっ!?」
「槍からなにかが飛んでくるぞぉ!?」
「い、一発一発がとんでもない威力だ! 当たればただじゃ済まな ガハァッ!!」
……光弾が命中した魔族たちが、次々とミンチになっていく。
えげつねぇなこの槍!? いやもう槍の形してる意味ないだろコレ!
さすがあのバケモン御用達の武器と言ったところか。……他の機能を試すのが怖くなってきた……。
「バレド、間違っても味方が近くにいる時にその槍を使うなよ! 巻き込まれたらまず助からん!」
「分かってるっての! ……ん? な、なんか、地面が揺れてねぇか?」
「……あ、ああ、確かに揺れているようだが、なんだ……?」
地面が、小刻みに揺れている。地震じゃないみたいだが、なんだ……?
この振動、どこかで体験したことがあるような……?
あ、そうだ、スタンピードの時に、魔物の群れが突っ込んできた震動によく似てるんだ。
って待て。後ろのほうから、なにか近付いてきてねぇか……!?
「な、なんだアレは!?」
「魔獣の、群れ……!?」
狼狽える俺たちを、魔族たちが嗤いながら口を開いた。
「ふ、ふははっ! 魔獣牧場の魔獣たちが、こちらへ向かっているようだな!」
「魔獣、牧場?」
「人類を襲うように特殊な飼育をされた魔獣たちだ! 一つの牧場で100は下らん数の、強力な魔獣の群れよ!」
「奴らの猛攻を受ければ、通り過ぎた後には骨すら残るまい! はっはっは!! もう貴様らは終わりだぁ!」
ま、マジかよ……!
よく感じとってみると、一体一体がB~Aランク、いやSランクまで混じってやがる。
まずい、この数と質相手に戦うのは無理だ!
逃げねぇと、いや、逃げれば他の奴らが死んじまう。
やり合うしか、ねぇのか……!?
………って、あれ?
俺たちを通り過ぎて、魔族のほうへ向かってる……?
「な、なぜ奴らを無視して ギャアアアア!!」
「き、貴様らぁぁあ!? なぜ人類を襲わん! 我らは貴様らの飼い主だぞ!」
「だ、ダメだ、抑えきれん! どうなっているんだぁぁあああっ!!?」
魔獣たちが、人類じゃなくて魔族を襲っている……?
な、なにが起きてんだ?
「はいそこー、草むらに隠れてるぞー見逃さず喰い殺せー。あー、あっちに逃げようとしてるヤツ絶対に逃がすなー!」
「……私はなにをさせられているのだ……?」
「おいゴルァ! なにチンタラやってんだ! 真面目にやらねぇと喰い殺すぞテメェ!!」
『ぴ、ピギャアアアッ!!』
ひと際大きい、象型魔獣の頭に二人分の人影が見える。
一人は、困惑したような表情で象型魔獣を操って魔族を次々と踏み潰していっている。
もう一人は、様々な魔獣たちを怒鳴り散らしながら脅迫じみた文句を言いつつ指示を出している、黒髪のバケモンだった。
……アイツ、なにやってんだ……?
お読みいただきありがとうございます。
>真竜形態って、てっきり人型になるかと思ったわ・・―――
人化はその効果のあるマスタースキルを習得しないとできません。黒竜はまた違ったマスタースキルを持っています。変身ではないのですが、ある意味チート。戦闘面じゃ役に立たないけど。
>やっぱりクソトカゲを殺すのはカジカワさんですよね〜。―――
なお、今回も引き分けに終わった模様。
次はお互い強化した状態で戦うようですが、さて。
>鷲が主人公に襲いかかって焼き鳥になる夢を見た気がする――――
「……鷹って美味いのかな?」『!?』
>この戦いでアルマ?の剣も進化してほしい!
それはまた後のお話にて。武器完成はあとちょっとです。




