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それぞれの戦場にて

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。




≪第4部隊隊長『ビジカランナ』が、魔族の洗脳スキルにより捕獲された模様≫


……なにしとんのあの紫ロングは。

せっかく助けてやったのに、次から次へと面倒事に巻き込まれおって。


≪内心嫉妬と敵対心が入り混じった状態で、その原因である梶川光流に助けられたことにより、精神的に大きな負担がかかったところをつけこまれた模様≫


え、なにその俺のせいで洗脳されたみたいな言いかたは。

そんなこと言われても困るんですけどー。むしろ助けてあげたんだから感謝してほしいくらいなんですけどー。いややっぱいいや。憤怒の表情で『ありがとう』とか言われても反応に困るだけだし。


……助けたことをちょっと後悔してる自分がいる。

でも見捨てたらそれはそれで後味が悪いし、決して悪い選択じゃなかったと思うんだがなぁ。

これが後々どう響いてくるのやら。あーヤダヤダ。


≪……洗脳スキルをレベルが高い相手に施すには、時間をかけて何度も洗脳し直す必要があり、そのためには妨害の心配のない場所へ移動する必要がある≫


え、どゆこと?


≪つまり――――≫



・・・






よくやった紫ロング隊長! 戦力としてはあまり期待してなかったけどグッジョブ!

いやーやっぱ人助けって大事だわー多少悪態吐かれても仲間なんだし助けてあげるのは当然だよねーははははは。

……我ながら掌返しがひどいな。



さて、嬉しい誤算はあったが、もう一つのほうの誤算はちと厄介だ。


アルマのもとへ黒竜が向かっている。

それ自体は想定内だ。アルマは大会の時よりも格段に強くなったし、以前見た黒竜程度の実力ならばなんとか凌ぎきれるだろう。


問題は、黒竜も以前とは比較にならないくらい強くなっているということだ。

魔力も生命力も、能力値もアホみたいにはね上がってやがる。

レベリングでもしたのか? いや、それにしちゃいくらなんでも強くなりすぎている。軽く倍くらい強くなってるわコレ。



≪魔王にテイムを上書きされた結果、その能力値の一部が黒竜に上乗せされている模様。現在、平均能力値6000~7000程度≫


……まずいな。強くなったとはいえ、アルマ一人じゃ手に余る。

もう既に戦闘が始まっているようだが、このままじゃヤバそう。


俺がアルマのもとへ辿り着くには、全速力で飛んでもあと10分はかかる。

よりによってなんで大陸の端から端まで離れているのやら。ホンマ腹立つわー。

せめてレイナとヒヨ子が近くにいれば連携して倒すこともできるだろうが、あの子たちも忙しそうだし。



……お、アルマの近くに誰か来た。

援軍か? いったい誰が………。










~~~~~アルマ視点~~~~~












『ヴァォォォオオオアアアアアッ!!』


「くっ……!」



黒竜が吐いてきたブレスを、強化した縮地を使ってスレスレで躱す。

あと半秒でも反応が遅れていたら、私は消し炭になっていただろう。


黒竜が魔王にさらわれたという話は、どうやら本当だったらしい。

魔王の前世は勇者『リョータ・ソウマ』。黒竜の、最初の主。

その主の生まれ変わりである魔王に味方することを選んだみたいだ。


……黒竜にとっては、人類よりも魔王(リョータ)のほうが大事なのかな。

こんなにも簡単に裏切るなんて、彼にとって勇者と別れた後の世界はそんなに魅力のないものだったのかな。



それにしても、強い。

魔獣草原や大会の後に見た時よりも、ずっと強くなっている。

初めて見た時ですら震え上がるほどの力を感じたけど、今の黒竜は比較にならない。


一人じゃ、勝てない……!



『シャァァァァアアアアッ!!』


「せいっ!!」



黒竜の翼から放たれた斬撃を、大地剣と遠当ての合わせ技で迎撃。

常に気力・魔力操作で強化しながらスキルをフルに使わなければ、とても対抗できない。


このままじゃすぐに力尽きてしまう。逃げようにも、黒竜の機動力から逃げ切れる気がしない。

つまり、生き残るには黒竜を倒すしかないということだけど、無理。


ヒカルが物凄いスピードでこっちに向かっているみたいだけど、間に合わないかもしれない。

ヒカルとはいつも一緒にいたいのに、なんで、こうやって離ればなれになってしまうんだろう。



……次のブレスがくる。

早く避けないと――――――







「黒竜、やめろっ!!」





誰かの声が、あたりに響いた。

声のするほうを向くと、大きな鳥型の魔獣に乗った壮年の男性が苦虫を噛み潰したような顔で黒竜を睨みつけていた。

あの人は、確か……。


黒竜の、今の飼い主……?



「自分がなにをしているのか、分かっているのか! なぜ、こんな……!」


『グゥゥ……!! ガァァァアアアアッ!!』


「ぐっ……!?」



標的を黒竜の飼い主『ラーナイア・ソウマ』に変更したらしく、ソウマに向かって容赦なくブレスを放った。

鳥型の魔獣に避けるよう指示を出して、辛うじて回避した。



「お前は、勇者リョータから守ってほしいと約束されたから、我が国を守っていただけなのか!? 勇者の生まれ変わりが、滅ぼせと言えばあっさり滅ぼすのか! お前にとって、私たちはその程度のものでしかなかったのか……!?」


『ヴァァァァッ……!!』


「答えろ、黒竜っ!!」



唸るばかりの黒竜に、ソウマが怒号を飛ばす。

その目がわずかに潤んでいるのが遠目からでも分かる。

……これまで、相棒として一緒に戦ってきた相手に裏切られたんだから、無理もない。




「アルマティナ殿っ!!」


「っ!」



ソウマが、叫ぶ。

私の名前を、知っていたの?



「ここは私が抑えます! 貴女は、遠くまで退かれよ!」


「でも、それじゃあなたが……!」


「心配は御無用。あいつの戦いかたは、私が誰よりも知っておりますゆえ。あいつのことは私に任せていただきたい」


「あなた一人じゃ無理。でも二人でなら、戦えるかもしれない。協力して戦うべき」


「御厚情、感謝します。……ですが、それには及びませぬ」


「……なに?」


「ランドライナムの狩猟祭では、本当に申し訳ございませんでした。あいつのワガママに巻き込んでしまったばっかりに、貴女を危険に晒してしまったのは、私のせいなのです」



私に向かって頭を下げて、謝罪をしてきた。

……そんなこと、今言うことじゃないだろうに。



「私など、貴女が助けるに値する者ではありません。どうか、今は御自身の身を案じていただきたい」



そう言ってから、さらに魔獣を呼び出して黒竜に立ち向かっていった。

いけない、あれではみすみす死ににいくようなものだ。援護しないと……!




「行け!」



っ!?




ソウマの呼び出した鳥型魔獣の一羽が、私の肩を掴んで持ち上げて、そのまま空へ飛んだ。

どんどん黒竜から離されていく。まさか、無理やりにでも私を逃がすつもりなの……!?



「降ろして! あのままじゃ……!」


「いくぞ黒竜! これがお前の主である、私のけじめだ!!」



8体もの魔獣を従えて、黒竜に向かっていく。

ダメだ、どれも決して弱い魔獣じゃないけれど、黒竜と戦うにはあまりにも頼りない。




ソウマが突進していった直後、か細く、しかしはっきりと、黒竜から声が聞こえた。







『……殺してくれ、ラーナ』












~~~~~第5部隊隊長・ジャングラジマー視点~~~~~












街の様子を物陰から眺めているが、魔族が我がもの顔で歩いてやがる。

隣でナクラムが歯噛みしながら街を魔族たちを睨んでいる。落ち着け、今出ていったりしたら袋叩きだぞ。

街自体は俺の故郷そのものなのに、懐かしさと禍々しさが同居している光景に、吐き気を覚える。



「……思ったより、街はまともに残っているな。ほら、あの店なんかほぼ無傷だぞ、ははっ……」


「……っ」


「ウヨウヨいやがるな。まるで魔族の街だ」



第3大陸へ転移したと思ったら、孤立した状態で魔族の集団に囲まれていた。

あのままじゃすぐにやられていたかもしれないが、運よく第1大陸から転移してきた極拳闘師『ジュウロウ』氏に助けられた。

ナクラムも同様。他の皆も同じような状況だとすると、下手したら全滅してる可能性もあるかもな……。


ひとまず、ジュウロウ氏とともに行動させてもらうことにした。

情けない話だが、他の皆の救助をするには俺とナクラムだけじゃどうしようもないからな。



「魔族のくせに、商売なんかもやってるみたいだな。武器屋や服屋、食料品店まであるぞ」


「どの店も、ここに住んでいた人々から奪ったものだろうが……! ふざけるなよ、魔族どもっ……!!」


「落ち着けって。……住民の生き残りは、いないのか?」


「多分、いねぇだろ。捕虜として生きていたとしても、ロクな扱いは受けてねぇだろうなぁ」



ジュウロウ氏が、逆立った赤髪のうえからクシャクシャと頭を掻きながら呟く。

……だろうな。相手は魔族だし、人間を生かしておく理由はない。


いや、待て。本当にそうか?

労働力として、奴隷として生かしておくことも、考えられるんじゃないか?

……もしそうなら、早く助けてやらないとな。


だが、そのためには人手がいる。

もう少しだけ待っていてくれ、俺の故郷と、そこに住んでいた皆よ。

必ず、取り戻してみせるから―――――




「……えっ?」


「ん、どうした?」


「あ、あの、武器屋にいた魔族の首が……」


「……え?」



ナクラムが指さすほうを千里眼で見てみると、首が落ちて血を噴き出している魔族の姿があった。

その周辺にいる魔族たちの首も、次々と、音もなく切断されていく。




影の中から伸びた、短剣を握った小さな腕によって。




お読みいただきありがとうございます。



>あーあー、ちゃんと殺っとかないから面倒の種が…


一応、仲間ですから。殺っちゃダメですから。

でもアルマやレイナに手を出そうものなら仲間だろうが殺すと思われ。


>紫ロングに精神分析(拳)まだですか?


あ、もうちょっとお待ちください。

……今の主人公が殴ろうもんなら、それだけで死にそう。


>クソトカゲをステーキにする理由?―――


実際、レベルが高いので美味だったり。

尻尾はアロゼステーキにして食べてましたが、他はどんな調理されるのやら……。

というか、黒竜関連のコメントが毎回どなたも『どう戦った』とかよりも『どう食べるか』っていう内容ばかりなんですがそれは(;´Д`)


>はーい一方的な憎悪によって魔族に女が取り込まれました―――


なお、主人公的には嬉しい誤算でもあった模様。

正確にはドラゴンブレスではないのですが、あまりの威力にそう見えたようで。……こいつホントにニワトリか?


>あっはっは操られた強化程度でどうにかなると思うなよ―――


ほ、他の人間相手には効果あるから(震え声

でも憎悪の対象が主人公に向いているから結局ダメそう。紫ロングの明日はどっちだ。


>久しぶりに感想ぽい感想を書けた気がする


なお今回のコメント。

ウチのコメ欄は日記帳かな?


>ファンタジー定番の強い変た…変人の登場ですね


あ、コイツ勇者君をストーキングしてた例の筋肉ハゲです(;´Д`)

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[気になる点] なるほど、金払ったしワガママですませられるんだな
[一言] 影から短剣出たとおもったら首スパーとか軽くホラーやん
[一言] えっ今知りました?
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