張り巡らされる策謀 そして例外のヤベーやつら
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今回始めはレイナ視点です。
転移魔法っていうので第3大陸に飛ばされたかと思ったら、いきなり魔族に囲まれてたんすけど。
しかもぼっちの状態で。いったいどういうことっすかまったく。
とりあえず周りを囲んでいた魔族たちの首を一つ残らず刎ねてから、他の人たちと合流することにした。
「な、なにが起きたんだ……? ここは、まさか影の中か……? いったい、私は……?」
「はいはい、今は黙って運ばれててほしいっす。ある程度数が揃ったら一旦影から出すっすから」
魔族に襲われていた銀髪のおじさんを、魔族の攻撃が当たる既のところで【影潜り】に引きずり込んで回収。
魔族たちもこのおじさんも、なにがなんだか分からないといった様子で狼狽えている。
魔力の最大値や忍術スキルのレベルが上がった影響で、【影潜り】も大分持続時間が延びてきた。
最初は発動中に魔力が一秒に1ずつ減っていたけれど、今では七秒に1ずつで、しかも移動速度も飛躍的に上昇していたりする。
他の人たちも自分と似たような状況みたいなので、手が届く範囲で人員を回収することにした。
並の冒険者や兵士じゃあんな多勢相手に単騎で戦うのは無茶だし、とにかく数を揃えないと話にならない。
さっき助けたこの銀髪のおじさんは、どうやら高ランクの冒険者パーティのリーダーっぽい。確か狩猟祭で赤色エリアのトップだったと記憶してる。
この人なら、適当にかき集めた人たちでもうまい具合に指示を出してくれそうだ。
「……誰かは分からないが、君が助けてくれたんだね。ありがとう」
「どーも。怪我してるみたいっすけど、ポーション飲むために影から出るのはもう少し待ってほしいっす」
「ああ、なに、命に別状はないよ。魔族相手に慣れない啖呵を張るくらいの元気は残っているさ。結局こうやって助けてもらって、少し格好がつかないけれどね」
「命があるだけ上等っすよ、死んだら終わりっす」
「そうかもしれないね。でも仮に私が死んだとしても、もう夢を託せる子たちはいるんだけどね。……おっと、助けてもらったのにこんなことを言っては失礼だね、済まない」
「んー、別に託さなくても、一緒に夢を追いかけるくらいの気概を持てばいいじゃないっすか」
「……歳をとるとね、少し走っただけでもすぐに息が切れてしまって、追いかけるのが難しくなってしまうんだ。若い子たちは、どれだけ走ってもピンピンしながら走り続けているのにね」
あー、この人、燃え尽きてるというか枯れているというか、挫折して夢を諦めた大人って感じの雰囲気っすねー。
さっきの魔族相手の口上を聞く限りじゃ、悪い人じゃなさそうっすけど。
「そっすかー……年相応に落ち着いているように見えるのは、単に動くと疲れちゃうからなんすねー」
「うん、情けない話だけどね」
「でも、落ち着いてる姿は絵になるっすよー、渋い大人って感じで。……ウチのリーダーなんか、いい歳して小さな子供みたいに頭悪い目標のために暴れまわってるっす」
「そうか、君の言うリーダーがどんな人なのかは知らないが、きっとどれだけ歳をとっても折れないでいられるくらい、芯の強い人なんだろうね」
「まあ、好きな女の人の前じゃダメダメっすけどねー。基本、尻に敷かれてるっす」
「ははは、いつの時代も女性は強いものだからね」
なにがダメかって、いまだにあと一歩を踏み出せてないところなんすよねー。ヘタレー。
アルマさんの態度を見れば、もういつでもバッチこいって思ってるって分かるでしょうに。
それを歳の差がどうとかアルマさんみたいな美人に自分は釣り合わないんじゃないかとかバカみたいなこと思ってそれなのに他の男性がアルマさんにちょっかい出そうものなら鬼の形相で(略)
「ちなみに、君のところのリーダーの目標というのは?」
「んー、『色んなところに足を運んで、美味しいもの食べたりしながら楽しく生きる』ことっすねー。もう現在進行形で叶えているようなもんだけど」
「……ははっ……あはははっ。……いや、失礼。うん、それも立派な目標だと思うよ。魔族によって荒れ放題なこんな御時世でも、夢を諦めないでいられるのは、簡単なことじゃない」
「そうそう、リーダーが今回の戦争に参加したのも、こんな戦いさっさと終わらせて気兼ねなく旅を続けるためだって言ってたっす」
「ははっ、慎ましい夢を掲げているわりには、随分と行動のスケールが大きいね。……どんな御仁なのか、一度会って話をしてみたいものだ」
いや、もう会ってるっす。アンタんところの荷物運びを手伝ったって言ってたっすよ。
でも黙っとくっす。そのほうが会った時に面白いリアクションが見られそうっすからねー。ふふふ。
おっと、談笑してるうちに次の保護対象発見っすー。
とりあえず、10人以上集まったら一旦外に出すとしますか。あんまり長い間大人数で影に潜ってると移動するのも一苦労だし。
それにしても、カジカワさんはともかくアルマさんとヒヨコちゃんは大丈夫っすかねー?
妙な気配もいくつか感じるし、早めに合流しないと危ないかもしれないっす。
……てか、保護対象をよく見てみたら、ムキムキのオッサンが魔族に囲まれながらなぜかパンツ一丁でポージングを決めてるんすけど。
魔族たちも物凄く訝しげな顔で『うわぁ……』って言ってるっす…………放っておいて次に行っちゃダメっすかね……。
~~~~~ビジカランナ隊長視点~~~~~
「先ほどの黒髪の男は、まさかあのカジカワとかいうバケモノか……?」
だとしたら、やはりあの時見せた実力は本物だったということか……!?
私を囲んでいた魔族どもは、決して弱くはなかった。
おそらくLv30~50程度はあったであろう魔族の集団を、まるで小虫を潰すかのように一瞬で蹴散らしていった。
なんて、なんて理不尽な……!
こんなもの、ヤツ一人居ればどうとでもなるということではないか。
集団で辛うじて魔族に抗う私たちを、嘲笑うかのような振舞いだ。
私たちが、これまでどれだけの研鑽を積んできたと思っている。
女だからと侮られないために、どれだけ必死にもがいてきたと……!
それを、あの男はまるで無価値と断ずるかのように、颯爽と現れ全てを終わらせていった。
所詮、お前たちはそんなものだと言いたげに、いやそもそも我らに興味などないといった様子で。
認め、られるか。
認められるものかっ……!
「貴様如きに、私を、舐められてたまるかっ……!!」
「あら、いい憎悪の臭いがするわぁ。これは、嫉妬ね? うふふ、ふふふふふ、いい臭い。まるでドブ川のような、濁った臭いよぉ」
……!?
「なんっ――――――」
「はい、ストップ。あはは、隙だらけよお嬢さん。もう、動けないわよぉ?」
いつの間にか、私の後ろに誰かが立っていた。
全く、なんの気配もなく、突然現れた。
身体が、動かない……!?
「【傀儡乃糸】って知ってる? 自分よりもレベルの低い相手を一時的に意のままに操るテイムスキル技能なんだけど、あなたくらいレベルが高いとすぐに抵抗されて解除されちゃうのよねー」
唇が触れそうなほど顔を寄せながら、青い肌の女魔族が私の目を覗き込んでいる。
なんて、禍々しく赤い瞳だ。悍ましく、反吐が出そうだ。
「でも、そのわずかな時間だけは完全に無抵抗になるのよ。言っている意味が分かるかしら」
「な………に………!?」
「ほら、私の目をよく見て。そうそう、逸らしちゃダメよ、ふふ、いい子ね」
そう言っている魔族の瞳は、赤く、ただあかく、思考がどんどん赤く塗り潰されていくようで―――――
「もう、我慢しなくていいのよ。ただ、自分の欲望に従いなさい。さぁ、あなたは誰を、どうしたいの?」
「わた、しは―――――――」
~~~~~とある、別の戦場~~~~~
「……妨害した転移魔法の座標はここで合ってるんだよな?」
「ああ、そのはずだが……」
『ピ?』
「ヒヨコが一羽いるだけなんだが、人間のペットかなにかか?」
「転移に巻き込まれて飛ばされてきたようだな、驚かせやがって」
「まあいい、他の人間が転移してくるまでまた待機だ。やれやれ、肩透かしをくらった気分だ」
「このヒヨコはどうする?」
「放っておけ。食いでもなさそうだし、テイムしようにも弱すぎるだろう」
『ピピッ!』
「ああもう、向こうへ行っていろ鬱陶しい……ゴパッ!?」
「ん? ……ど、どうした!?」
「奇襲!? いったい誰が、どこから!?」
『コケェッ!』
「ひ、ヒヨコがニワトリに、いや、まさかこれは『プラチナムコッコ』か!?」
「幼生擬態か! 気を付けろ、プラチナムコッコはLv50台の強力な魔獣だ!」
「テイムを使える者はいないか! 上手く手懐ければ、なかなか使えそうだ……!」
「よし、私がテイムを ブゲパバァッ!!?」
『コケッ!!』
「だ、ダメだ! 凶暴すぎて手に負えん! 駆除するしかない!」
「魔法だ! 距離をとって、弾幕を張れ!」
「くたばれ、この畜生めがぁっ!!」
「撃てぇいっ! 撃って撃って撃ちまくれぇっ!!」
『コォォォ……!!』
「な、なに……?」
「魔法を、吸い込んでいる……!?」
「な、なにかヤバそうだぞ、そ、総員退避ぃぃいい!!」
『コケェェェッェエエエエェェェエエエエエッッ!!!』
「ど、ドラゴンの、ブレスだと……?」
「あ、駄目だ、死ぬ――――」
お読みいただきありがとうございます。
>木っ端微塵にされるか、生かされて一生ドラゴンステーキ生成器にされるか
なにそれエグイ。
ていうか黒竜が出てくるたびに感想欄が調理法やら処刑法やらでごった返すのはどうしてなんですかね……。
>なんか、「魔を断つ剣」を振るう旧神夫婦を――――
それ下手したら魔王よりもヤバい奴じゃないですかーやだー。
地球ちゃんは悪気はないから許したげて。ただなにもしてないだけだから。
>傷つけなくても食べるじゃないですかやだー
アルマを傷つけたら殺す。傷つけてなくても殺す。ていうかもう殺すみたいな。
……黒竜が生き延びられるかどうかは、また後のお話にて。
>次回 クソ蜥蜴死す
デュエルスタンバイ!
なお、黒竜がどうなっているかは例によって後のお話にて(ry
>なぜみんなクソトカゲをステーキにしたがるのかが分からない。――――
ですよねー筆者も感想欄を見るたびにホントどうしてこうなったのかと首を傾げながら拝見させていただいておりまsどうしてこうなった。




