戦争開始 黒い疾風
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さて、いよいよ戦争である。あー怖いわー緊張するわー帰りたいわー。
……でも、逃げ続けても何も解決しないから我慢我慢。
「では、まず第一陣! これより第3大陸に残っているレジスタンスの拠点まで転移する!」
「その後の行動は、レジスタンスと協力しつつ各地にある魔族の小拠点に攻め込み、各都市を奪還していく。詳しい指示は現地にて行うので、転移した後はしばらく待機せよ」
「他の大陸からも続々転移していっている! 我々だけで戦っているわけではないということを忘れないでほしい!」
「では、転移!」
王宮御付きの魔術士や魔導師が、次々と攻略班を転移させていく。
転移するたびに魔力回復ポーションを何本も飲んでいる。水中毒にならないか心配だなー。
「では次の班、転移スペースへ」
「い、いよいよっすね……!」
「転移していきなり戦いが始まるわけじゃないだろうけど、緊張する」
「いや、そうとも限らない。念のため、いつでも武器を抜けるようにしておいてくれ」
アルマの言葉に、ちょっと指摘と準備の催促をしておく。
なーんかやな予感がするんだよなー。
「転移先で、魔族がすぐにちょっかい出してくるかもしれねぇってことか?」
「分からないけど、可能性はあるとみてる」
「気ぃ張りすぎじゃないかい? まあむしろすぐに戦いになったほうが分かりやすくていいけどねぇ」
そりゃアンタはそうでしょうけど、普通の人はそんな不意打ちに即座に対応できるか怪しいんですよヒューラさん。
そう言ってる後ろで、アイザワ君も割とノリノリで剣の鯉口をチキチキ鳴らしているし。この班、血の気が多すぎやろ。
……ん? あの剣、なーんかピリピリくるな。
≪アイザワ家の宝剣『瞬華』 ATK+1200 過去の勇者『相沢 瞬』が自ら作り上げた剣で、高い攻撃力に加え自己再生機能、さらにはアタッチメントに応じた追加効果を発揮できる≫
まさか過去の勇者のお手製の剣とは。つーか攻撃力高ぇな、アルマたちの持ってる武器の軽く2~3倍かよ。
うーむ、アルマたちの武器も例の飴玉を使って進化させておくべきか? でもメニューさんは進化した直後が望ましいって言ってたし、どうしようかなー。
「では、転移!」
あ、ちょっとまだもう少し話をしておきたかったんですが、あ、ダメですかそうですか。
~~~~~転移先にて、アルマ視点~~~~~
転移魔法の青白い光が消えると、見覚えのない場所に立っていた。
ボロボロの家屋に、ところどころ陥没した地面。
どこかの街中のようだけど、大きな災害でも過ぎた後のように破壊されている。
ここが、第3大陸。
両親と一緒に旅をしていた時に足を運んだことがあったけど、そのころはどの街も活気に満ちていた記憶がある。
それが、今はこの有様。……魔族の、仕業だろう。
とりあえず、ヒカルに辺りを確認してもらってからこれからのことを考えよう。
……あれ?
ヒカルは、どこ?
「っ!」
風を切る音。
それとともに、なにかが私に飛んでくるのが分かった。どうやら、誰かが矢かなにかを飛ばしてきたみたいだ。
【縮地】で避けつつ、矢が飛んできたほうへファイアーボールと魔刃・遠当てを放った。
「ぐぁああっ!!?」
「くっ……人間のくせに、剣と魔法の両方を扱うか……!」
魔法の着弾点には、炎上しながら叫び声を上げる人型のなにかと、片腕が無くなっている全身赤色の人、いや魔族がいた。
転移先に、潜んでいた? そもそもどこに飛んだんだろうか。
辺りを見回すと、私以外には誰もいないみたいだ。
ヒカルも、レイナも、ヒヨコもいない。
……まさか、転移先を結界魔法かなにかでずらされて、分断された?
「気を付けろ、こいつは手練れのようだ!」
「結界を張れ! 補助魔法で弱体化させてから一気に叩け!」
……! よく見ると魔族に囲まれてる。
全部で20体近い。一体一体は大したことないけど、多い。
私の周り半径10mくらいの範囲に結界魔法が張られていく。
これは、たしか相手の攻撃は防ぐけど自分の攻撃は素通りする厄介な魔法だったと思う。
しかも身体の動きが鈍く、うまく力が入らない。
どうやらステータスダウン系の補助魔法を重ね掛けされたみたいだ。
こっちが強化系の補助魔法で相殺してもイタチごっこになるだけ。魔力の無駄だろう。
連携がスムーズすぎる。まるでこの状況をつくるために訓練を繰り返してきたかのようだ。
やっぱり分断されたのは、魔族たちの仕業とみて間違いなさそう。
「結界展開および弱体化完了!」
「よし、総員一斉攻撃!!」
私に向かって、あらゆる方向から魔法や遠当てが放たれる。
いくらレベル差があるとはいえ、弱体化してる状態でこれをまともにくらったらただじゃ済まないだろう。
着弾した魔法が派手に爆発して、土煙を巻き上げていく。
何発も、何十発も容赦なく撃ち込まれていく。
これを受けて耐えられるのは、私の両親かヒカルかネオラくらいなものだと思う。
「撃ちかたやめい!」
「ははっ、いくら手練れといえども、対抗する策は充分過ぎるほどに練ってきているんだよ」
「よし、他にも転移してきている奴らがいるはずだ。各個撃破を続け……え?」
「あ、熱っ、あ、ああぁぁぁあああっ!!?」
「あ、足が、燃え、溶け、う、うわぁぁぁあああ゛!!!」
「な、なにが起きたんだぁ!? ひ、ひぃぃいい!! いやだぁぁあああ!!」
話している魔族たちの足元が、赤く染まりボコボコと沸騰していく。
全員、マグマと化した地面に飲み込まれて溶けていった。
なにをしたのかは至極単純。
いつものように、精霊魔法で足元に穴を掘って下方向へ脱出した後に、結界の外側にイフリートとリトルノームを召喚して魔族の足元をマグマ化させただけだ。
随分と手の込んだ作戦で連携をしてきたけど、甘い。
そちらが想定しているのは、あくまで自分たちに有利な状況をつくりだしてこちらを確実に仕留めること。
こちらは常に、不測の事態を想定して訓練してきている。
予測不可能な状況にいつでも対応できるように。
これならヒカルとの組手のほうがよっぽど危険だ。……それもどうかと思うけど。
この程度なら、ヒカルたちも大丈夫かな。
大丈夫だとは思うけど、無事でいてほしい。
……っ!?
なにか、くる……!
~~~~~男嫌いの第4部隊隊長・ビジカランナ視点~~~~~
「ハッハー! また哀れな獲物が飛んできたぜぇ!」
「油断するな! 一匹一匹確実に潰せぇ!!」
……くそっ、いったいどうなっている!
第3大陸へ転移したと思ったら、孤立した状況で敵に囲まれてしまっているだと!?
まさか、魔族どもは大陸全土に転移の座標をずらす結界でも張っているというのか?
ありえない。禁忌魔法でも使わない限りそんな規模の結界を展開することなど不可能なはずだ。
魔族軍は同胞を禁忌魔法の生贄に使い潰すことを厭わないというのか。それとも、まさかっ……!
「タダでやられると思うな、魔族ども! この命に代えても、貴様らはここで討つ!!」
「ひゃははっ! テメェ一人になにができるってんだよぉ!」
「簡易鑑定レンズ発動……ほほう、Lv62か。装備と強さから、こいつは軍の隊長クラスとみた」
「おおー、大物じゃねぇか。こりゃアタリみてぇだな、大手柄だぜぇハハハッ!」
「舐めるなぁっ!!」
遠当てを放ちつつ、距離をとる。
囲まれている状況のままでは袋叩きに遭うだけだ。なんとか状況の打開を……!
!?
身体が、重い……!!
「ぐぅっ……!?」
「逃げても無駄だ。補助魔法による弱体化の重ね掛けを受ければ、数段下相当の能力しか発揮できぬであろう」
「つーまーり、今のテメェはオレたち一人分と大差ねぇ力しか出せねぇってこった! 質も量も負けちまっちゃあどうしようもねぇだろぉ!」
「卑怯なっ!」
「はぁ? ギャハハっ! 馬鹿かテメェは! 戦争なんてのはな、勝ちゃいいんだよ勝ちゃ! だったら騎士道精神ってやつを振りかざして、誇り高く死んでろや!」
ああ、死んでやるとも!
貴様らも道連れだ! 下衆な暴漢以下の畜生どもが!!
……!?
「どけやゴルァァァァァァアアアアアッ!!!」
雷でも落ちたかのような、爆声。
あまりの爆音に耳が痛み、全員に鳥肌が立つのが感じられた。
「な、なんだ今の声 ガボヴァッ!!?」
「ゲビャっ!!」
「な、なんだてめ ゴギャバッ!!」
「うるせぇ!! テメェらにかまってる暇ねぇわ死ねボケ!!」
「ギャアアアアア!!!」
なにかが、まるで疾風の如き速さで通り抜けていった。
それと同時に、周りにいる魔族どもの身体が次々と弾け飛んでいく。
ほんの数秒の間に、周りにいた数十体もの魔族どもは物言わぬ肉塊に、いや挽き肉になり辺り一面に撒き散らされてしまった。
……なにが、起こった?
速すぎてよく見えなかったが、今、通り過ぎていった黒髪は、誰だ? というか、なんだったんだ……?
お読みいただきありがとうございます。
>さらっと流されるヒロインの重要な場面
お前そこはシラフの時に言っとけよと(ry
……でも決戦前の告白は死亡フラグになりかねないので、これでよかったのかも(よくない
>1人カラオケで―――
アッハイ。
ボッチではない。分かっておりますよ、ええ(目逸らし




