戦争前の入浴 女湯
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今回は爆乳賢者ことオリヴィエール視点です。
「でかいっす……」
「うん、デカいね」
「もはや兵器ね。……ぐぬぬ」
「あ、あの、そんなに凝視されると、恥ずかしいです……」
「……あまりジロジロ見ないでほしい」
レベリングが終わり、汗を流そうと皆で宿の浴場に入ってみたら、他の修業メンバーの方々とはち会わせました。
そのまま一緒に湯船に浸かっているのですが、その、視線が私とアルマティナさんの胸のほうへ向いているのです。……湯船に浮いているので、目立つのも無理はないのですが。
同性相手とはいえ、こうまで注目されるとちょっと……。
「ところで、勇者はどこ行ったの? まさかまだレベリング中?」
内心困っていると、レヴィアさんのお姉さん、フィフライラさんが声をかけてきました。
恥ずかしそうにしている私たちを見かねて、話題をふってくれたのでしょうか。
「ネオラは男湯だけど?」
「は、はぁ!? なに、あいつ痴女かなんかなの!?」
「いやフィフ姉、アイツ男よ?」
「えっ!?」
「マジ!?」
「嘘ぉっ!?」
……フィフライラさんのパーティのお三方が、全員目を見開いて驚いてます。
無理もありません。私も、初めて会った時には女性だと勘違いしていましたから。
ネオラさんとの出会いは、私の病気を治してくれる薬を持ってきてくれる依頼を、彼とレヴィアさんが受けてくれたことから始まりました。
『慢性型魔力欠乏症』という常に魔力が減少していく珍しい病気で、場合によっては死に至ることもあるらしいです。
この病気にかかるまではとあるパーティとともに冒険者をしていたのですが、病に倒れて治療が困難と分かった途端に見限られてしまいました。
仕方のないことです。この病気を治すには、最上級の状態異常回復薬か専用の薬が必要で、前者はとてつもなく高価、後者は材料となる魔獣の生息地までの道が険しすぎて、並の冒険者では生きて帰ってこられないほどの危険地帯。
私一人の身を治すのに、あまりにも代償やリスクが高すぎるのですから、もうほとんど諦めかけていました。
……いいえ、本当は、死にたくない、死にたくない、と毎日泣いていました。
誰か助けて、と姿も見えない誰かに心の中で縋りながら。
そんなことを願っていても、なにも状況は変わらないというのに。
そう思っていたのですが、ある日いつものようにベッドで横になっていると、お父さんが慌てたような様子で私のもとに駆け込んできました。
依頼を受けて、薬を持ってきてくれた方々がいたと、泣いて喜びながら。
その方々が、ネオラさんとレヴィアさんでした。
おそらく死ぬ思いをしながら、……というか、実際に何度も死んでいたらしいのですが、薬の材料を手に入れるために危険を冒して魔獣の生息域に足を運んでくれたらしいのです。
お父さんの出した報酬は決して安くはないのですが、それでもこの薬を手に入れるリスクを考えると、割には合わないでしょう。
どうにか恩返しをさせてほしいと言おうとしたところで、ネオラさんから自分たちのパーティに入ってほしいと言われました。
実は自分は勇者で、魔王討伐のために頼りになる人を探しているところだったと。
私の職業は『賢者』。
魔法使いの上位互換ともいうべき職業で、成人前に回復魔法・補助魔法を含めた4つ以上の魔法系スキルを取得することが条件の、とても珍しい職業です。
たしかに、私の職業であれば、あるいは勇者様の支えになることができるのかもしれません。
たとえ、私の職業が目当てで助けてくださったとしても、命の恩人には変わりません。
私の力が目的であるとおっしゃるのであれば、駒になりきり働きましょう。
滅私の覚悟で、同行することを決めました。
……実際はそんな悲壮な覚悟など、する必要もなかったのですが。
たとえば勇者様、いえ、ネオラさんが男性だと知った時には驚きました。
……時々視線が胸のほうへいっていますし、もしかしたら慰み者にされることもあるのかもしれないと、とても失礼なことを考えてしまったこともあります。
実際は、自分から手を繋ぐことすら躊躇するほど奥手な人だというのに。
英雄と言うには、気さくで小市民的な考えで、なのに困っている人がいたら愚痴を漏らしつつも助けようとする。
そんなネオラさんの姿を見て、いつしか恩返しではなく私の意志でこの人の力になりたいと思うようになりました。
あ、ネオラさんばかりでなくて、もちろんレヴィアさんにも感謝しています。
……でも、ネオラさんに対しては、どういうことなのか見ているだけで胸が苦しくなるような、それでいて温かく幸せな気持ちになることがあります、
……私は……ネオラさんが……。
「しっかし、ホントにデカいねぇ」
「……なにを食ったらそんなに立派に……」
……思考に耽っていたら、またこちらに話題が戻ってしまいました。
ヒュームラッサさんとラスフィーンさんがこちらを見ながら声を漏らしています。……勘弁してください。
「勇者の作る飯じゃないかい? あー、いや、そうでもないか?」
「ちょっとヒューラあんたどこ見ながら言ってんのよ喧嘩を売ってるのなら今すぐ表出なさい」
レヴィアさんのほうを向きながら言うヒュームラッサさんに怒った様子で詰め寄っています。
レヴィアさんも、決してそんなに小さいわけではないと思うのですが。
「お、おう、悪かったから落ち着きな。でも喧嘩がしたいなら、上がったあとにいくらでも付き合うよ。アンタたちも相当強くなってるみたいだしねぇ」
「風呂から上がってまたすぐ汗をかく気か? 戦闘狂め」
「アンタも一緒にどうだい? ラスフィ」
「明日に響くから遠慮しておく」
「じゃあ、自分が相手になるっすよー。まだまだ余裕っすから」
「お、いいね。じゃあ早速上がってやり合うとするか!」
「おわわっ!? ちょ、ちょっとヒューラさん、もうちょっとゆっくり浸かってからでも、あの、聞いてるっすか……?」
そう言いながら、レイナさんを抱えてヒュームラッサさんが一足早く湯船から上がっていきました。
もう少しゆっくりしていってもいいと思うのですが……。
「それにしても、レヴィアもアルマも少し見ないうちに信じられないくらい強くなっちゃったわねぇ」
「……つーか、多分普通にあたしらよりもレベル高いよな。お前の妹、生き急ぎすぎだろ」
「ふ、二人とも今レベルいくつなの?」
「60よ」
「61」
「ろっ……!?」
「も、もう上級職の半ばなのかよ……!?」
レヴィアさんとアルマティナさんのレベルを聞いて驚くのも無理はありません。
お二人はまだ成人して1~2年ほどだというのに、明らかに異常なほど成長速度が早いのですから。
「れ、レヴィア、アンタこれまでどんな旅をしてきたの?」
「勇者とその仲間には死んでも蘇る加護がついてるから、大方何度も死にながら強敵相手にレベリングでもしてたんだろ」
「死んでも蘇るって……!? まさかアンタ!」
「……うん。これまで数えきれないくらい死んでる」
「ちょっと今からあの女顔勇者殴ってくるわ。他人の妹になんて無茶させてんのアイツは……!」
「や、やめてよ! ネオラについていきたいって言ったのは私だし、危険な旅になるってことも承知のうえで一緒にいるんだから!」
「そういう問題じゃない! まさかアンタにばかり死ぬ思いさせて、アイツは安全なところから見物でもしてるんじゃないでしょうね!?」
「いや、むしろネオラが一番死んでるんだけど! 私たちはまだマシなほうよ!?」
「アイナさんの修業や剣王様と大魔導師様との組手、あと試練の遺跡も含めると、軽く何千回か死んでますよね……」
「え、えええ……」
「あ、アイツもものすごい苦労人なのね……」
ネオラさんに敵意を向けたフィフライラさんをなだめると、顔を引きつらせながらも納得してくれました。
……彼は、誰よりも(身体的に)つらい痛みに耐えてきているのに、その素振りを人前ではあまり見せないようにしているから、無理もないのですが。
「で、そんな死ぬ思いをしてるような勇者一行よりも、アルマたちのレベルが高いのはなんでだろうな」
「ホントにね。不遇職なんて言われてたころの面影なんて、もうどこにも残ってないわよねぇ……」
「ヒカルが、色々よくしてくれるから、せめて足手まといにならないように頑張ろうとしてたらいつの間にかここまで上がってた」
「あー、あのヤバいオッサンかぁ。……ちなみに、あのオッサンのレベルは?」
「79」
「「「なっ!?」」」
その場にいた全員の驚きの声が重なって、浴場に響きました。
79って、それはもうとっくに特級職になっているということでしょうか。……20代半ばで特級職に至るというのは、最早異常という他ありません。
さすがはネオラさんの同郷の方というべきでしょうか。……ニホンという世界は、いったいどんな人外魔境なのでしょうか。
「だ、ダイジェルで初めて会った時はまだLv2だったのに、いくらなんでもおかしいと思うんだけど……」
「いや、あのオッサンの強さを考えると、多分ステータスを誤魔化してたんじゃねぇのか? 素手でホブゴブリンを殴り殺したりしてたし」
「そんな怪物じみたのと一緒に行動してたら、そりゃ嫌でも強くなるわよねぇ。ところで、あのオッサンとの仲はどうなの?」
「? 仲はいいけど」
「いや、進展があったのかって話なんだけど」
「……」
顔を逸らして、黙り込んでいます、
この話題には、あまり触れてほしくないようですね。
「それがねぇ、子作りどころかまだ接吻もしていないみたいなのよぉ」
「っ!?」
急に後ろから誰かが話に入りこんできました。
大魔導師様こと、ルナティアラ教官。アルマティナさんのお母さんです。……この方も、大きいですね。
湯船に立派なものを浮かばせながら溜め息をついているのを、アルマティナさんが睨んでいます。
「あまり変なことを勝手に言いふらさないでほしい」
「あらあらごめんなさいね。でもぉ、ヒカルさんと出会ってもう1年近くじゃない? いい加減、自分の気持ちを伝えてあげてもいいんじゃないかしら?」
「……先に上がる」
逃げるように、湯船から上がって浴場から出ていくアルマティナさん。
長湯にのぼせたのか、それとも大魔導師様の言葉に上気したのか、その顔は赤く染まっています。
「あらら、逃げられちゃったわうふふ」
「……教官、今のは少し直球すぎると思うが」
「いやね? ちょっとコイバナを盛り上げてあげようと思っただけなんだけど、ここまで免疫ないとは思わなかったわぁ」
「……ホント、なんであんなオッサンを選んだのかしら」
「と、年上好きだったとか……?」
「つーか、まだ手ぇ出してないとかあのオッサンの理性スゲーな。……いや、単にヘタレなだけか?」
「あの様子だったら、もう時間の問題な気もするけどねぇ」
多分、ネオラさんと同じで奥手なんだと思います。
それもニホンの人たちの特徴なのでしょうか。
……アルマさんの気持ちは、正直私も分かる気がします。
こちらとしては、いつでもいいと思っているのに。
プロポーズは男性から、という原則がなければ、とっくに深い仲になれているのでしょう。
……こんなルールを残した人を、少し恨めしく思います。
「ところで、フィフ姉たちも戦争に参加するなら、気を付けてね」
「こっちは大丈夫よ。……キャノ姉と合流することになってるのが、怖いけど」
「あー……ご愁傷様」
レヴィアさんの一番上のお姉さんは『キャラノンノ』さんというお人らしく、この方も上級職だそうです。
……レヴィアさんとフィフライラさんが震えているのを見る限り、相当怖いお方のようですね。
他にも、世界中にいる特級職の方々も今回の戦争に参加されるそうです。
一人一人が教官に肉薄するほどの強さと考えると、この戦争に負ける気がしません。
でも、どうしてか、嫌な予感がするのです。
手練れの方々が集結するからこそ、なにか大きな見落としがあるように思えてならないのです。
それがなんなのか察しがついているのは、おそらくあのカジカワさんという人ぐらいでしょう。
……あの人は、本当に信用してもいい方なのでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。
>後日談や番外編が本編の倍か同じくらい続いてくれたらいいな〜と―――
さすがにそこまで長くはならないかと(;´Д`)
でもひとまずは本編の完結を目標に執筆しています。途中でエタることだけはなんとしても避けたいので。
>ここの感想に、感想を書かないで全く別の事を書く人が―――
ダレナンデショウネーケントウモツキマセンネー。
>決戦前なのに悲壮感が無く、わりあいほのぼのしてるのが―――
なお決戦は割と血みどろの戦いになる模様。悲しいけどこれって戦争なのよね仕方無いね。
あと女湯なのに大して色っぽい描写もないという。申し訳ない(;´Д`)
まあ魔王の膂力なら適当に暴れてるだけでもそこそこ収納できそうな気もしますが。海ではしゃぐ魔王様を想像するとシュールですが。




