第3大陸攻略前準備
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装備品の大半はゲンさんやジュリアンに頼んでいるが、例の『重力水晶のコア』を使ったアクセサリはダイジェルにある素材屋の婆さんに依頼しておいた。
あの婆さん、店に展開してあるセキュリティの術式を一人で刻めるくらい魔具作成スキルが高い。確認してみたらまさかのLv10。カンストである。
つまり、この婆さんも鑑定師の爺さんと同じく国宝級の腕を持った職人というわけだ。……それがなんで細々と素材屋なんかやってるのやら。
「老後の道楽さね。のんびりと日銭を稼ぎながら生活するのも乙なもんさ。……目まぐるしい日々は、若い時だけで腹いっぱいだよ。ヒヒヒ」
「アンタくらい腕のいい魔具士、いや魔具師ならどこからも引っ張りダコだろうしな。仕事の喧騒から逃げてのんびりしたい気持ちはよく分かるよ」
「ヒッヒ、アンタも若いのに、随分苦労してきてるみたいだねぇ。しっかし、まさかこんな素材を持ってくるとは驚きだよ」
「加工は難しそうか?」
「普通の魔具士ならねぇ。あたしならまあ、さほど時間はかからないよ。費用は高くつくけどねぇ、これが見積もりだよぉ」
「どれどれ……ちょっと待て婆さん、ゼロが二つばかり多くないか?」
1の後にゼロが7つ。……一千万エンって、これまでの買い物のなかでもぶっちぎりで高いんですがそれは。
「ヒッヒ! こんな珍妙希少奇天烈な素材を加工できる奴なんざ、あたしくらいなもんだからねぇ。まず技術料、そして加工に必要な材料なんかを考えるとこれくらいが妥当だって、アンタほどの目利きなら分かるだろぉ?」
「……確かに妥当みたいだけどな。世界の危機だし、もうちょっとまからないか?」
「ダメだねぇ。ババアに金が支払えないくらいで詰むような世界なら滅びちまいなぁ。ヒヒッ!」
「……分かった。なんとか都合をつけてくるから、頼んだぞ婆さん」
「まいどありぃ。……最高の出来に仕上げてやっから、楽しみにしときな。ヒッヒッヒ」
コアを渡すと、すぐに連絡用の魔具を取り出して材料の取り寄せやらなんやらしながら魔具作成のための準備に取り掛かる婆さん。仕事早いな。
アクセサリが出来上がるまではおよそ五日かかるらしい。……早いか遅いか、微妙なところだな。
資金繰りの当ては一応ある。
ダイジェルのダンジョン深層で手に入れた、ヒヒイロカネやらオリハルコンやらの高級装備を全部売っ払えば、恐らく足りる。
対魔族軍あたりに売りつければ戦力アップと金策両方こなせて一石二鳥ではあるんだが、非常時だからまけろとか譲れとか言われたらすぐに別の装備屋とかに売るとしよう。
はい、というわけで対魔族軍相手に大量の装備品を売りつけて、なんとか資金の捻出に成功。
ゲンさんやジュリアンたちの分のお金もギリギリ足りた。
本当ならもっとふっかけてやりたいところだったが、ただでさえあの女隊長に不信感持たれてるのにあんまりぼったくるのも遺恨を残す可能性があったので大体平均くらいの値段で売りつけた。
ぼったくりはしないが、非常時だからってまけたりもしない。俺なんかに金が支払えないくらいで詰むような世界なら(ry
さて、装備品関連の雑務は大体済んだかな。
あとは、俺たちに同行するメンバーの強化だな。
第3大陸攻略開始まであと二日。それまでに魔力操作と気力操作を実戦で使えるくらいまで精度を上げてもらわなきゃ話にならん。
同行するメンバーには悪いが地獄を見てもらおう。あー心が痛むわーホントホント。
俺たちと一緒の班として同行することになったのは、ヒューラさんとガザンギナンドさん、そしてアイザワ君。
勇者君のジョブチェンジに伴って戦力が大幅強化されたから、こちらにレベルの高い人たちがまわされたらしい。
ヒューラさんはともかく他二人はあんまり接点が無いからちょっと気まずい気もするが、あと二日しかない状況でそんなこと言ってられん
特にヒューラさんとガザンギナンドさんはまだ魔力・気力操作の基礎すら危ういらしいので、スパルタでいかせてもらおう。
第4大陸の王都修練場で、殺し合いめいた組手の開始である。
ここには怪我や魔力とスタミナを回復させる設備があるので、HPMPSPをガンガン消費しても問題ない。
ただ、うっかり殺さないように注意は必要だけどね。
三人ともレベルが高いだけあって、戦いかた自体はかなり洗練されている。
ヒューラさんとガナンさんなんか既にLv70を超えていて、特級職の仲間入りを果たしているしな。
さすがにアルマパパとかに比べるとちょっと見劣りするが、比較対象がおかしいだけで十二分に一流と言える腕だ。
ただし、それはあくまで普通の範疇の話。
アルマパパたちのように『おかしい』領域に達しなければ、魔王相手の戦力としては心もとない。
「ガナンさんとヒューラさんはまず気力操作を覚えてください。渾身の一撃で素の状態の俺にダメージを与えられない今の状態じゃ明らかに膂力不足です」
「は、はは、まさか腕っぷしが貧弱なんて言われる日がくるなんてねぇ……!」
「上等だ! これを受けても同じことが言えるかぁ!?」
ガナンさんが、マスタースキルを発動して巨大な魔力の剣を振り回してくる。
武術大会でも同じ技を使ってたっけ。並の相手なら充分決め手になるだろうけど、それでも魔族の幹部クラスには通じないだろう。
イヤミったらしく思われるかもしれないけど、あえて気力を集中させたデコピンで弾いた。
今のままじゃまだ弱すぎるということを、分かってもらうために。
「今のを、指で弾いただけで……!」
「気力操作が使えるのと使えないのとじゃ、これくらいの差があるってことです。もう俺との組手中はスキル技能のことなんか忘れてください。使っても意味無いです」
「……ジジイとの稽古でも、似たようなこと言われたっけか。基礎ができてないのに技能なんか使うなってか」
「その通り。アイザワ君は気力操作の基礎はできているみたいなので、次は部分的な強化をスムーズにできるようになりましょうか」
「わーったよ。にしても、いいのか? 最初にも言ったが、俺はアルマを狙ってんだぞ? そんな奴を助けるような真似して―――」
「ご安心を。たかだか魔力操作と気力操作を教えたくらいなら、全く問題ありませんので」
「はっ、そうかい。ならすぐに後悔させてやるよ! てか敬語はやめろ、気持ち悪ぃ!」
気力操作で能力値を大幅に強化し、こちらに斬りかかってきた。
素の俺と大体同じくらいかな。アルマパパに肉薄するくらいの膂力はありそうだ。
基礎はできあがっている。後は部分強化を習得してもらえば、アルマたちに匹敵するくらいの戦闘能力を身につけられるだろう。
剣をいなしつつ、気力強化デコピンでアイザワ君の頭を弾いてぶっ飛ばした。
「っっがぁぁあああ!!?」
「はい、手加減しなきゃ今ので死んでたぞー。避けられないなら部分強化で耐えるようにしろー」
「アラン、大丈夫か!? 頭から血ぃ出てるぞ!」
「きゅ、急に部分的に強化しろとか言われても、できっかよ……!」
「できなきゃ今みたいにぶっ飛ばされるだけだ。全身強化ばっか使ってると、あっという間に気力が尽きるから部分強化は必須だ。難しいのは分かるが頑張れー」
「……アルマたちにも、こんな訓練させてたのかい?」
「いや、あの子たちは基礎だけ教えたら、いつの間にか自分たちで工夫して使うようになってました」
「そ、そうかい。……アタシらも、せめて基礎くらいは使えるようにならないとねぇ」
ヒューラさんとガナンさんはいまだに直接操作が上手く使えないらしい。アイザワ君は基礎程度ならなんとか使えるくらいのレベルだとか。
どういうことなのか分からないが、年齢とレベルが上がるにつれて魔力・気力操作の習得が難しくなっていくらしい。
スキルや能力値が強大になりすぎると、直接操作するのに邪魔になるってことなのかな。
アルマやレイナはレベルが上がっても特に不便そうじゃないし、レベルの低い時に訓練してれば問題ないってことか。
年齢も関係しているのは、……若いほうが覚えがいいからとか? 分からぬ。
しばらく組手を続けていたが、アイザワ君はともかくヒューラさんとガナンさんはいまだに直接操作を扱えないでいる。
このままじゃ時間を無駄にするだけだ。……仕方ない、荒っぽい方法だがさっさと習得してもらうとしよう。
「ヒューラさん、ガナンさん、ちょっと手を出してください」
「ぜぇ、ぜぇ、な、なんだって?……手……?」
「こ、これで、いいのか……?」
体力自慢の二人も、数時間ぶっ続けに全力で動くのはキツかったらしく、息も絶え絶えといった様子だ。
もう好きにしてくれと言わんばかりに、力なく手を差し出してきた。
許せ、二人とも。
「はいどうも、まずお二人の身体に気力を注ぎ込みます」
「お、おお、確かになんか流れてきてるのが分かるな」
「アルマたちにも同じことをされたけど、ここから自分のスタミナを自覚するってのがどうにも上手くいかなくてねぇ……」
「では、気力と一緒に魔力も混ぜこんで流し込みます」
「うおぉ!? なんか別のモンが混ざってんだが! てか気持ち悪い!」
「か、身体の内側に流し込まれるとなんだか気味が悪いねぇ」
「はい、では流し込んだ魔力を弱めの雷気エネルギーに変換します」
「え?」
「は?」
さあ、直接操作を習得するのだ、この電撃でー!
「では、スタートー」
「ちょ、まっ、ギャアアアアアアア!!?」
「あ゛いだだだだだだだだだだ!!?」
「俺の魔力は気力と混ざってるので、自分の気力を操作してこっちに向かって押し出してください」
「いでででででで!! い、いきなりんなこと、言われたって、できっかよぉぉおお!!?」
「あでででで!! 待って待って! カジカワマジで待ちな! いくらなんでも荒っぽすぎるだろぉ!!?」
「あと、モタモタしてるとどんどん電撃の範囲が広がっていきますので、早めに押し出してくださいねー。俺も地味に感電してて痛いのでお願いしますよホントに」
「「無茶言うな!!」」
顔を強張らせながら電撃に耐えてツッコミを入れるお二人さん。こんだけ余裕があるなら大丈夫そうかな。
その様子を苦笑いしながらアイザワ君が眺めている。
なにを他人事のように見ているのかな?
「基礎だけでも習得しといてよかったぜ……」
「ああ、アイザワ君は気力操作はなんとか使えるみたいだけど、魔力操作はイマイチだよね」
「それが、どうした……?」
「後で、君にも同じ方法で習得してもらうから、そのつもりで」
「悪い、急用を思い出した」
「言っとくが、逃げても無駄だ。他の大陸に逃げようが地の果てまで追っていくからそう思え」
「……マジかよ……!」
「ぐがががががががっ……!! あ、アランてめぇ、一人でどこ行く気だぁ……!!」
「うぐぐぐぐぐぅ……!! あ、アンタもせいぜいこの地獄を見ていくんだねっ……!! はははっ、あいだだだだだっ!!!」
逃げようとしたのを止められて、顔を押さえながら嘆くアイザワ君。マップ画面と魔力感知でどこへ逃げようともバレバレやぞ。
それを見て亡者の形相で自分たちの沼へと引きずり込もうとする二人。怖すぎワロタ。
知らなかったのか? 俺の修業からは逃げられない……!!
その後、ヒューラさんとガナンさんは辛うじて気力操作の、アイザワ君は魔力操作の基礎を習得できた。
修業が終わった後に、三人から睨み殺されそうな視線で串刺しにされたけどスルー。これも必要なことなんですよー分かってー……。
さーて、後は第3大陸攻略の段取りですかね。
……念のため、こっからの行動をもう一回整理しておくか。
なんせ、第3大陸の幹部が死んだ時点で、そのままラスボス戦だからな。
お読みいただきありがとうございます。
>自分も小説を書いていますが―――
私もどうしたら面白く書けるのか知りたいです。それ以前にそもそも基礎がなってないけど。
今は自分の書きたいもの好き勝手に書き殴ってるだけなので、それが面白いかどうかは別の問題だとは分かってはいるんですけどねー(;´Д`)
>ついに桁称号コンプ?全部つなげると完全にポエムだ(笑)―――
特に何も考えずに書いた文章ですので深い意味は無いです。
万以降は設定されてないか、あるいは隠し称号的な要素として存在するのか、ワシにも分からぬ……。
>アルマのを見た感想後『おまいう』―――
せやな。
……主人公が一番アレなステータスしてるせいで、他のメンバーのステータスがショボく見えるという。
これでも全員、世界最強クラスの実力ではあるんですけどねー。
>セーフティ・イヤリングの件がなかってけど、イヤリングは―――
主人公が一回洗脳されてから対策として購入したものです。第300話『設計者出てこい』でチラッとそのことについて書かれていたり。
つぎはぎの胸当ては魔王に壊されてから、仕留めた魔獣の意素材を合成画面で無理やり合成したものです。性能は上がってるけど、ちょっと不格好。
あのわけ分からん扉の数々は、……深く考えないほうが吉かと(;´Д`)
>食い物ばかりと言うレイナさんとピヨは飯ボッシュートになります(あのSE)
テレテレッテー。
ちなみにあの後、結局全員でカップ麺を食べた模様。太るぞ。
>なろうのお勧めを教えて、って感想に対して、―――
それ一番進めちゃダメなヤツです。なんせ筆者が土曜日の更新サボってグースカ寝てるような(ry
あと財団世界じゃ異世界住民は全員SCiP扱いだと思うんですがそれは。




