ビリビリ
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やれやれ、ようやく三人娘を見つけたかと思ったら、魔獣に囲まれていてどう見ても大ピンチじゃないですか。
魔獣の構成は、雑兵にゴブリンが数体、ちょっと強い奴にホブゴブリンとハイコボルトが一体ずつ、そしてボスに豚の頭を持つ人型の魔獣、オーク。
魔獣:オーク
Lv24
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :460/460
MP(魔力) :90/90
SP(スタミナ):310/341
STR(筋力) :271
ATK(攻撃力):271(+50)
DEF(防御力):187(+30)
AGI(素早さ):116
INT(知能) :70
DEX(器用さ):71
PER(感知) :148
RES(抵抗値):97
LUK(幸運値):53
【スキル】
魔獣Lv3 斧術Lv4 体術Lv4
装備
鋼鉄の斧
ATK+50
鋼鉄の兜
DEF+30
オークは初めて見る魔獣だな。Lvは24。ウェアウルフに比べて素早さが大分低いが、HPと腕力がかなり高い。パワー型の魔獣みたいだな。
装備も含めると攻撃力が300超えてる。まともに攻撃をくらったらやばいな。
赤髪の子は気を失っているし、青髪と銀髪の子たちは後衛の職業だから接近されたらそれだけでほとんど打つ手がなくなる。
このパーティ、せめてもう一人前衛が居れば安定度がグッと上がると思うんだがなぁ。いや、あくまでゲームなんかのイメージでモノを言ってるから実際のところは分からんけど。
それを言ったら俺たちなんか二人のパーティだし、人のこと言えんな。
とりあえず俺たちが前衛を務めて、あの二人に後ろから支援してもらおう。見た感じ、充分戦えるコンディションみたいだし。
って、ホブゴブリンが俺に向かって棍棒振り下ろそうとしてるな。そんな鈍い動きじゃ避けるか受けるかしてくれって言ってるようなもんだぞ?
「お、おじさん、危ない!」
…君たちに言っておきたいことがある。
「だから、おじさんじゃないって、言ってるだろっ!!」
悲しい叫びを発しながらホブゴブリンの攻撃を魔力装甲を纏った左手で受け止めつつ、右手で魔力パイルバンカー発動!
25歳はおっさんじゃない! 断じてない! 百歩譲ってもおっさん予備軍だ!…こんなこと思ってる時点でおっさんに片足突っ込んでるのは分かっとるわい。ちくせう。
ダァンッ!と派手な音を立てて魔力の杭がホブゴブリンの腹にぶち当たり、その衝撃により体を壁に激突させた。
ありゃ、杭の先細めるの忘れてた。貫通させるつもりだったのに吹っ飛ばしちゃったよ。
あ、でも今の衝撃で死んだっぽいな。…人に向かって使う時が来たらもう少し威力を抑えよう。
「お、おっさん、今何やったんだ!?」
「ああ、もうおっさんでいいよくそっ。そんなことより、前衛は俺とアルマに任せて、後ろから弓と魔法で魔獣を狙ってくれ!」
「質問に答えろよおっさん! あんたのステータスであんなことできるわけが――」
「うるせぇっ!! 無駄口叩いてる暇があるならさっさと手ぇ動かせっ!! あとおっさんおっさんうるさいわ!」
思わず半ギレ。半分は状況の速やかな打開のために、もう半分は余計な詮索されるのを避けるためだ。ちょっぴり私情も入ってるけど。
「は、はい…」
「ま、魔獣よりおじさんの方が怖いよぅ…」
青髪と銀髪の子が涙目になって返事を返してきた。ちょっときつく言い過ぎたかな、ごめんね。
「ヒカルって、時々言葉遣いがすごく荒っぽくなるよね…」
「状況によって使い分けてるだけだよ。喧嘩売ってくるアホや魔獣と戦ってる時にいちいち敬語なんか喋ってられるか」
「まあ、正直その口調も嫌いじゃないけど」
およ? アルマってワイルドな口調が好みなのか? ちょっと意外だ。
「ハイコボルトは私に任せて。ウェアウルフほどじゃないけど、素早そうで魔法剣の練習に丁度良さそうだから」
「一応Lv15もあるから油断するなよ。じゃあ俺は雑魚の相手をしつつ、オークを抑え込みますか」
「え? 同時に相手できるの? オークは二人に後ろから攻撃してもらって、その間にゴブリンたちを倒した方が…」
「できる。こうやってな!」
そう言って、近くにいた手ごろなゴブリンを、…手ごろなゴブリンってのもおかしいが、とにかくそいつの頭を魔力装甲で覆った手で掴んで、
『ギッ!? ギギャアァ!!?』
「でりゃあっ!」
『ギャアアアアアァァァァッッ!!』
オークに向かって、思いっきりぶん投げる!
『フゴォッ!?』
オークは面食らいながらも、飛んできたゴブリンをなんとかかわしたようだ。
「えええ…」
アルマが信じられないと言いたげな目でこちらを見ている。なんだねその目は。
ふむ、素早さが低いと言っても、あくまでウェアウルフに比べたら、だしな。これぐらいは回避できるか。
なら、連発だ! 下手な鉄砲もなんとやら!
「オラァッ!」
『ギギイイィィィッ!』
「そりゃっ!!」」
『ヒイイギイイイィィィッッ!!』
「うおりゃああっ!!!」
『ギョエアアアァァァァァッッ!!!』
『フ、フゴオオオォォォッッ!!?』
次々と近くにいるゴブリンたちをオークに向かって投擲!
ほれほれ、だんだん逃げ場がなくなってくぞー!
「ひ、ひでぇ…」
「ふえぇ…」
そこの二人、ドン引きしてないで手伝ってくれよ!
「そこっ!」
ゴスッ!!
『ガギャギャギャガアアアアッッ!!?』
アルマの方を見てみると、まーた例の急所攻撃をハイコボルトにお見舞いしてるよ。見てるだけで痛いから正直控えてほしいんだけど…。
「はぁっ!」
ザクッ!
で、間髪を容れず首を切り落として決着。もうLv10台の魔獣ならソロでも倒せるみたいだな。
魔力もまだ大分余裕がある。無駄打ちせず、必要に応じて的確にスキルを使っている証拠だ。練習台には本当に丁度いい相手だったみたいだな。
さーて、残弾もといゴブリンも全滅させちまったし、あとはオークだけだな。
前と同じように、俺が拘束してるうちにとどめを刺してもらうか。
ギュンッと縮地モドキこと超低空高速飛行でオークに接近。
ガシッと武器ごとオークの両手を拘束した。
だが
「ぐうぅっ…!?」
『フッ…フゴオオォォッ……!!』
こ、こいつ、高い腕力の数値は伊達じゃないな…!
ウェアウルフよりずっと強い力で拘束を振りほどこうとしてやがる。
このままじゃ、とどめを刺すまでもたない…!
なら、奥の手だ!
バリバリバリバリッ!!
「あばばばばっ!! あああああぁぁぁぁっっ!!」
『フ、フグギギギギギイイィィィッッ!!?』
「ふ、ふえぇぇ!?」
「お、おっさん大丈夫かあっ!?」
なんか二人が心配してる声を上げてるけど、いいからコイツに攻撃してくれよ!
拘束している魔力を、【電気エネルギー】に変換!
スマホを充電するために何度も感電しながら編み出した新技だ! 正直使いたくなかった! 痺れるもん!
魔力のエネルギー化は、ずっと前から使っている技だ。俺が空を飛んでいるのも固めた魔力を運動エネルギーに変えた魔力で操っている技だし。
他にも熱エネルギーに変えてご飯を温めたり、光エネルギーに変えてライトの代わりになったりする便利な技だ。使い方がちょっと家庭向き過ぎる気がするけど…。
俺も感電するけど、HPが残っている限りダメージはない! すごいビリビリするけど!
「は、早くとどめを刺してくれえ!! ビリビリするから! 割と本気できついから!!」
「わ、分かった。はあぁっ!」
ウェアウルフの時と同じように、胴体を白い炎を纏った魔法剣で貫き、さらにグリッと剣を捻って一気に絶命させた。
あ、あがが…!
この技、問答無用で相手の動きを封じられるけど、使ってるこっちも相当やばい。
HPがある限り傷付きはしないけど、しばらく体に痺れが残るから多用したくないな…。
お、レベル上がった。やっぱLv20以上の魔獣は経験値が多いな。
そのおかげかちょっと体調が楽になった。
とりあえず、一旦休憩しよう。話はその後だ。
あー疲れた。こっちに来てから戦うたびにそう言ってる気がするよ。
お読み頂きありがとうございます。




