今なんつったお前
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アルマたちのところへ帰ろうとしたら、みんな第4大陸王都の王宮跡地で第3大陸攻略のための戦力編成の真っ最中だった。
アルマの御両親の下で修業していたメンバーを含めて、大陸中から腕利きの戦闘職たちが集められているそうな。
アルマたちもそこで班分け中のようで、ひとまずファストトラベルで勇者君と一緒に王宮跡地まで転移。
着いた時に様子を見てみると、なにやらもめているようだった。
多分、一応パーティリーダーを務めている俺が居ないから手続きで不備が発生してるのかな? またメンドクサイことになってんなー。
さっさとトラブルを解決させるために、とりま平謝り。そしてようやく帰ってこれたことの報告。ただいまー。
アルマに泣きながら抱き着かれたけど、3回目となるとさすがに慣れたのか平気、……じゃない、心臓の音が滅茶苦茶うるさい。今、魔王に心臓抉り取られたらその振動で魔王殺れそう。
……一月近くも会っていなかったし、相当心配させてしまったみたいだな。ごめん、みんな。
「えーと、カジカワ君だっけ? おひさぁ」
「? ……。! ああ、お久しぶりです、ジャングラジマーさん。工業都市以来ですね」
「『……誰だっけ?』って感じでちょっとオレのこと忘れてたでしょ。いや別にいいけどさぁ」
挨拶をしてきた金髪ロン毛青年ことジャングラジマーが、苦笑いしながら頭を掻いている。
数ヶ月前に一度会っただけだし、むしろ覚えているほうがすごいだろ。いやほとんど忘れてたし名前もメニューを通して確認したんだけどね。
「あの時よりも、さらに何倍も強くなってそうだねぇ。なぜかステータスが見えないけど、鑑定妨害効果のある装備でも着けてる?」
「ええまあ、諸事情ありまして、今はちょっとステータスを隠しているところなんですよ」
勝手にこっちのステータスを鑑定しようとしおったな。この人ギフトスキルに『鑑定』を選んでるし、やっぱ割とベターな選択なのかねぇ。
『アナライズ・フィルター』のおかげで、その手のスキルや他のメニュー機能の情報検索の目から逃れられているから問題ないけどな。
「ウチの前隊長みたいに、また誰か面倒くさそうなのに目ぇつけられてるとか?」
「そんなところです。ああ、別にどこかで罪を犯して逃亡中というわけではないのでご安心を」
「あはは、もしそうだったとしても誰も君を捕まえられないだろうけどねぇ。……肌で相手の強さを感じることなんざ、特級職相手ぐらいにしかないはずなのにねぇ。どんな地獄を見てきたのやら、くわばらくわばら」
うん、ダイジェルのダンジョンは21階層までの道中も相当ヤバかったし、おかげで今の俺のレベルは79まで上がってたりする。
あと、他の世界で狐面や狐BBAなんかを倒した分の経験値、というか『リソース』とかいう『譲渡可能な経験値』が有り余ってて、これをレベル上げに使えばさらに上がること請け合い。
他の世界のリソースは俺じゃなくてアルマたちに譲渡する予定だけどね。どういう仕様なのか分からないけど、そんなこともできるのかメニューさん。マジ有能。
班分けがほぼ終わって、三日後には第3大陸現地に転移魔法で向かう予定らしい。
随分早急な話だが、こうでもしないとまた魔王テロで各大陸の王様の身が危なくなるかもしれないから、可能な限り迅速に魔族を撃退する必要があるからだとか。
魔王のフットワークの軽さよ。ファストトラベルって敵が使えるとなるとホントに厄介だなー……。
班分けが済んでないのはアルマの御両親の稽古を受けていたメンバー、即ち俺のパーティや勇者君一行とか。
誰もがどの班からも引っ張りだこで、特に勇者君への勧誘が熱い。
「勇者様、是非うちの班に!」
「なに言ってる! 我が班に決まってるだろう!」
「いえ! 勇者様、どうかうちの嫁に!」
「いやいや、ここは一番戦闘の激しいであろうウチの班に、……おいお前今なんつった?」
「勇者様、他の班は男どもの目があって危険です。ここは女性のみの我が班へどうぞ」
「いや、だから、オレは男だってばぁ……」
肩をガックリと落としながら切なげに呟く勇者君。
とっくに融合解除して元の性別に戻ってるのに、男嫌いの隊長含めて誰にも男として認識されてねぇ……。
「レヴィア! やっと見つけたわよ! アンタ、なんで勇者なんかと一緒にいるのよ!?」
「あ、あわわわわ……! フ、フィフ姉……! ええと、……これには、深い訳があってね……?」
「お黙り! いいからちょっとこっちにきなさいっ!!」
「ご、ごめんなさいぃ! 謝るから許してぇぇ……!」
「れ、レヴィアちゃん、大丈夫かな……」
「あー……フィフラー、ほどほどにしてやれよー」
融合解除した時に出てきたレヴィアリアに、三人娘こと『カラフルフラワーズ』のリーダー・フィフライラが怒鳴っている。
勝手に家を出て勇者君に同行してたことがバレたとかなんとか。なにしとんのこの子は。
三人娘の他二人に見送られながら、半泣きで外へ引きずられていく。お説教の始まりですね分かります。合掌。
「さーて、他の人員の配置は済んだけど、勇者様やそちらのメンバーはどうするのかな?」
「彼らは第3大陸攻略の先駆けとして、少数精鋭の部隊扱いで独自に動いてもらう。緒戦以降は遊撃隊に近い運用をすることになるだろうな」
金髪ロン毛の問いに、対魔族軍の総隊長らしい隻眼で顔中に古傷のある初老の男性が答えた。
ステータスを確認してみると、なんと驚異のLv83。槍使い系列の特級職【貫穿槍師】という職業だった。
このおじじスゲーな。人類の中じゃアルマの御両親の次くらいに強い。名前は『モリッツゲイト』というらしい。
「精鋭って、たったの10人強ほどではありませんか。どれだけ腕に覚えがあるといっても、さすがに少人数すぎる気が……」
「10人強どころではない。この人員をさらに半分に分ける予定だ」
「なっ……!? 総隊長、それではあまりにも……!」
「さらに半分だなんて、まるで斥候の人数のようではありませんか! これでは戦力以前の問題です、彼らを犬死にさせるおつもりですか!?」
「いいや、半分で丁度いい。そこの全員が同じ班として行動するのは、過剰戦力と言っていい」
「どういうことですか?」
不可思議な、なんとも言えない笑みを浮かべながら、総隊長のおじじが言葉を続けた。
「仮にその者たちが全員同じ班に集まった場合、この大陸の対魔族軍全てを凌ぐほどの戦力である、と言えば納得するか?」
「……は?」
「特に勇者殿とそこの黒髪の青年は、明らかに俺よりも強い。特級職以上の力をもった人間が同じ班に二人もいたら過剰戦力と言わざるを得んだろう。手を分けて行動させたほうがよほどスムーズに第3大陸を攻略できるはずだ」
総隊長のおじじ、……長いから今後は総おじで。
総おじが余計なこと言ったせいで、勇者君と俺に周りの視線が集まる。
勇者君はともかく俺に向けられる視線がめっちゃトゲトゲしとる。
この人たちからしたらぽっと出の俺なんか『誰だてめぇ』って思うだろうし当然だけど。
あと、アルマがいまだに俺の腕を掴んで離さないのも視線が痛い要因の一つだと思う。もうどこにも行かないからいったん離しなさいって。
とか思ってるそばから、さっきの紫ロングの隊長さんが総おじに向かってなにか言いたげにしてるし。
絶対俺に対するクレームやろ。もうこのパターン飽きたわ。帰っていい?
「……勇者様は納得できますが、そちらの者はいったい何者なのですか?」
「自己紹介を聞いていなかったのか? つい先日Sランク冒険者に昇格した、カジカワヒカルだ」
「「え?」」
俺と紫ロングの声がハモる。
待て、Sランクってどういうことだ。確か最後に確認した時にはまだBランクだったはずだぞ。
どういうことだ、誰かと間違えてないか、てか絶対なにかの間違いでしょこれは。ありえん。
≪冒険者ギルドにおいてSランクへの昇格は、一定以上の実績の他に3人以上のギルドマスターの推薦および現Sランク冒険者の推薦が必要。それらをグランドギルドマスターが承認し、初めてSランクに昇格できる≫
≪……なお、本人の意思に関わらず勝手に昇格されるケースも多く、今回の場合はヴェルガランド、イヴランミィ、ライザカレンのギルドマスター3名およびデュークリス・ルナティアラによる推薦により昇格した模様≫
なにしてくれてんだあの人たちは。俺に相談も無しにそんな手の込んだことを進めていやがったのですか?
てか昇格させるのに本人の意志を無視できるとか意味分からんのですが! おかしいやろ! 責任者出てこい!
≪Sランク冒険者は最上級の危険区域などにもフリーパスで入場可能なので、今後の行動範囲を広められるようにする措置であると推測≫
それにしたってせめて一言くらい、……これ以上ウダウダ言っても仕方ないか。やめやめ。
紫ロングは少しの間驚いたような顔で固まっていたが、すぐ我に返りこちらを睨みながら口を開いた。
「そちらのアルマティナとレイナミウレの2名はステータスを確認したところ、非常に高い戦闘能力を有していました。しかし、こちらのカジカワ氏はステータスを公開しておらず、その実力を証明できておりません」
なんでこの人俺に対してこんな敵意剝き出しなの? 俺、なんかした?
……なんか第5大陸の老害軍人どもを思い出すシチュエーションだなー。また睨んで黙らせるか?
「まずステータスの開示、そのうえで本当にSランクに相応しい実力を持っているかどうかを証明していただくべきではないでしょうか」
「冒険者ギルドのグランドマスターによる、厳しい審査の結果を信用できないと?」
「いえ、他の方々はステータスを開示したうえで、適材適所その実力に相応しい班へ振り分けられているのです。彼だけ特別扱いというのは皆の不平不満のタネになりかねません」
「グランドマスターいわく、彼には少々複雑な事情があるらしくステータスの開示は基本的に厳禁だそうだ。実力の証明というのであれば、彼は第5大陸にて魔族の幹部をほぼ単騎で撃破した実績があるらしいが、それでも足りないというのか?」
総おじの言葉に目を見開きつつ、こちらを一瞬睨んでからなお食って掛かる紫ロング。
……ホントにもう帰っていい? とか思いながら内心ウンザリしていると、聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「それほどの実力があるというのなら、お一人でも充分な戦果が期待できるでしょう。ならば、アルマティナおよびレイナミウレの両名をこちらの班に寄越していただきたい」
「は?」
今なんつったお前。
「ビジカランナ、お前の班は特に人手不足というわけではないだろう。各地の冒険者や傭兵が加入し、むしろ十二分な戦力があるはずだ」
「彼女たちのスキルは非常に有用です。討伐履歴を確認してみましたが、単騎でSランク下位から中位の魔獣を討伐した実績があります。先ほどの総隊長のお言葉の通り、より効率よくその力を運用するにはこちらの班に戦力を振り分ければ―――」
「それは断固として承認しかねる」
紫ロングの言葉の途中、低い声で提案を食い気味に拒否した。
当たり前だ。
なにヒトんとこのパーティメンバーの配置を勝手に決めようとしてんだてめぇは。
お読みいただきありがとうございます。
>ハーレムメンバー全員と合体した勇者くん……―――
3(ピー)ですね分かります(伏字の意味無
果たして魔王討伐までにハーレムを揃えることはできるのか。……まあ無理なんですけどね。
>勇者よ…融合を解くのを忘れるとは情けない…ブハッ!!゜( ゜∀゜)・∵.
そのせいでますます『勇者は美少女』というイメージが根付いていく模様。合掌。
>次の戦いにて―――
…まあ、味方男性陣の士気は爆上がりするでしょうが、勇者君が羞恥心で戦闘不能になりそうですねー(;´Д`)
あと御両親以前に主人公がキレそうな件。ビランナの明日はどっちだ。
>そういえば、カジカワさんとアルマが21階層に行く場合――――
多分、どっちも互いのニセモノが出てくるのでそうなりますねー。
レイナやヒヨ子は、……マジで誰が出てくるんでしょうか。ワシにも分からぬ。
>そーいやネオラ合成したメンバーに考えダダもれになってんじゃ…―――
一応、知られるのは表面的な思考だけで、内心深いところまでは探られません。
ただ、カジカワに語った自身のハーレム観なんかはバッチリ聞かれてて呆れられたりはしてますが。
>「俺がお前でお前が俺で二人は合体融合体」―――
なおそいつらの仲の悪さよ。
そういえば近いうちに1と2のリメイクが出るらしいですね。買おうかなーでもやる時間がなー。
>露骨なお題だとネタが被りそうだったのと単純に良いネタが思い付かなかったです。
気付けばこの小説がお題箱みたいになってて草。
>ほーん?男嫌いねぇ…でそれを理由にアルマ達をねぇ…ほーん?―――
一応、味方ですので自分から手出しするのは控えるようです。
向こうからなんかやらかした時は、まあ、デコピンくらいなら、いやそれでも死ぬか……?
>凄く面白くて、読みやすい―――
208話からの感想、誠にありがとうございます。
この感想返しを読まれる頃にはもう出会ってるのでご安心をば。
初の小説なだけあって、今見返すと最初のほうとかとにかくひどい。いや今も大概ですが(;;´Д`)




