愛しい人との再会
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「なんでこんなことになったんだせっかくジョブチェンジしてめっちゃ強い刀とか手に入れてオレTUEEEの始まりかと思ったのに肝心の対魔王用決戦スキルがまさかの合体でしかも性別が多数決で決まるとかありえないマジありえないんですけど罰かハーレムなんかつくろうとした罰なのかそれにしてもこの仕打ちはないだろていうか今まで見たことある女の子の中でこの状態のオレが一番可愛いっていうのがなんていうかもう絶妙にやるせないんだよぉぉ………」
「……いい加減立ち直りなよ……」
部屋の隅っこで体育座りしながらブツブツと呪詛にも似た愚痴を延々と漏らし続ける勇者君。いや勇者ちゃん?
スカートで体育座りはやめなさい。見えとるぞ。
「大体なんだよこのフリフリした服は! 元の装備はどこいったんだよ!?」
「あー、その服の媒介に使われてるみたいだね。その服、どうやら三人分の装備の補正値が足し算されてるみたいだから、下手すりゃこの世界で一番頑丈な装備かもしれないぞ、よかったな」
「よくねぇ! なにもよくねぇぇええ!!」
可愛らしい顔できたない叫び声を上げつつ、フリルがこれでもかというほど縫い込まれているこれまた可愛らしい衣装に包まれているのを嘆きながら、服を引き裂く勢いで引っ張る勇者ちゃん。ここで裸にでもなるつもりか。
だが見た目とは裏腹に凄まじく頑丈な服を破るには至らず、結局諦めてまた座り込んでしまった。
「はぁ、はぁ……くそぅ、あの神様、真面目そうなイメージだったけど絶対楽しんでやってるよぉ……。最初のキャラメイクも勝手にされてたみたいだし……」
「男性中心のパーティだったら女の子になったりはしなかっただろうけどね。……というか、ハーレムなんか築こうとしてる勇者は歴代でネオラ君ぐらいなもんみたいだけど」
「これまでの勇者は草食系だったのか……」
「あるいは、心に決めた女性以外には興味が無かったか、だな」
スパーダも、去り際に誰かの名前を呼んでいたな。
……もしかしたら、パラレシアで転生しようと思ったのはこれまでの知識や経験といったアドバンテージがほしかったんじゃなくて、ただ単に……。
だとしたらなんて途方もなく、なんて望みの薄い、なんて慎ましくいじらしい願いだろうか。
そしてそのせいで世界が滅びかかってるなんて、なんて救いのない話だろう。
「でもオレはあきらめません。なんとしても女の子に囲まれて毎日イチャイチャできる生活を目指します。そのためならこの程度の恥辱、なんとも、……ゲホァッ……!!」
欲望の決意表明の途中、精神的ダメージからか吐血する勇者ちゃん。大丈夫か、HP減っとるぞ。
……そしてこの今代の勇者である。可愛らしい外見からは想像もつかないほどの肉食系。ある意味尊敬するわ。
「ネオラ君は日本でもそんな感じだったのかい? 毎日女の子と遊んでるリア充なのか? リア爆」
「いや、むしろ女の子と会話したことすら数えるくらいしかなかったよ。基本男所帯だったし、学校も男子校ばっかだったし」
「女の子と触れ合う機会に飢えてるのはその反動だったり?」
「かもな。あと、異世界モノのラノベとか読んでると大体ハーレムになってイチャコラしてるし、そういうのに憧れてたんだと思う」
ああ、うん。その手の小説って大体半分近くが最終的にハーレム築いてるよね。
いや、普通に嫁一筋な作品も多いけどさ。
「……言っちゃ悪いが、割と最低な動機だね」
「オレもそう思う。……でも、今は自分がどんだけ浅薄な考えだったか身に染みてるよ」
「複数の女の子と付き合うのがこんなに大変だとは思わなかった、って感じかな?」
「違う。……レヴィアもオリヴィエも『ハーレムの一員』なんかじゃなくて、それぞれが一人の女の子なんだよ。オレなんかが気分で選り好みしたり好き勝手していいわけがない」
指を組んで、神妙な顔で言葉を続ける勇者ちゃん。
……ハーレム語りになんでこんなに真面目な顔してんのこの子は。
「ハーレムの人数分だけ愛も分割するんじゃなくて、一人一人に全力で向き合って付き合っていくべきなんだって、一緒に過ごしているうちに気付いたんだ」
「お、おう?」
「だから、残り二人分のパーティ枠に入る子たちにも、オレにできる限り最大限誠心誠意お付き合いしていこうと思ってます。Q.E.D」
「以上証明終わり、じゃないよ。結局なにが言いたかったんだよ君は……」
熱い自分語りを終えて満足したのか、幾分か持ち直したようにすっきりした顔をしている。なんかちょっとイラっとしてきた。
……もういいや。立ち直ったのなら、さっさとアルマたちのところへ戻ろうか。
「ああ、ところで、もちろん今からでもアルマやレイナをウチのパーティに入れてくれるって言うなら大歓迎―――」
「ブチ殺すぞ」
「びゃあああああっ!!? 冗談ですっ! 冗談ですってば! マジごめんなさいっ!!」
「よろしい。……そうそう、その残りの枠についてなんだがね――――」
~~~~~アルマティナ視点~~~~~
「では、これより第3大陸攻略の班分けを行う。部隊あるいはパーティごとに戦力を振り分けるので、呼ばれたら代表者は返事をするように」
気の強そうな、紫の長髪でつり目の女性が班分けの段取りを進めている。
第4大陸王都王宮跡地で、第3大陸をほぼ支配下においた魔族たちを撃退するための戦力編成を急遽することになった。
第4大陸でも腕利きの冒険者や傭兵に対魔族軍、中には暗殺者ギルドの人たちまでいる。
かなり急な話だったけれど、集まりは悪くない。
本来緊急時だけに使える、各地に設置されている王都直行用魔法陣の使用許可が下りたことと、参加者への莫大な報酬、そしてこの戦いさえ終わればあとは魔王を倒すだけという『戦いの終わり』を期待しての意識が要因だと思う。
魔族による各地の破壊活動なんかの対処で、皆疲弊しきっている。いつまでもこんな状況でいるよりも、ここでもう少し頑張って大本を叩くことに望みをかけているみたいだ。
それに、モタモタしているとこの大陸の王様のように、他の大陸の王の身も危ない。
実際、つい先日第5大陸に魔王が現れて王様が殺されかかったらしいし、お父さんとお母さんも危なかったらしい。
最終的に誰も死なずに済んだけれど、魔王に黒竜を連れていかれてしまったらしい。
……あの竜とも、そのうち戦うことになってしまうんだろうか。
「『天への階梯』、『天空の竜』、『ラウナクェス』は第2部隊とともに行動してくれ。次、『夢の懸け橋』と『ヘブン』、あと……『イエス・マッスル』? は第3部隊と―――」
次々とパーティや冒険者たちの名前が呼ばれていく。
……ウチはリーダーが不在なんだけど、どうすればいいんだろうか。
「次、『ウォーズ・ローズ』『カラフルフラワーズ』『希望の明日』だが、いずれも女性のみのパーティか。ならば我が第4部隊とともに行動するといい。ここも女性だけの精鋭が揃っているから、行動しやすいだろう」
「いや、ウチのリーダーは男っすよ?」
「ん? そのリーダーはどこへ行ったというのだ」
「ちょっと野暮用で、席を外してる。そろそろ帰ってきてもいいころだけど、まだ不在」
「……尻尾を巻いて逃げたのではないだろうな」
「違う。彼にも事情がある」
「お前たちのレベルの高さを見ると、おおかたヒモかなにかではないか? 【魔法剣】や【忍術】といった強力なスキルも取得しているようだし、もしかして都合よく利用されていたりするのではないか?」
「失礼っすね! カジカワさんはそんなんじゃないっす!」
『ピピッ!』
……この人、私たちのことは高く評価しているみたいだけど、どうにも男の人を見下しているような印象を受ける。
男嫌いなのは本人の勝手だけど、それを仕事にまで出してくるのはやめてほしい。
それを見かねたのか、金の長髪を靡かせている他の部隊の青年隊長が割り込んできた。
この人、どこかで見たような……?
「ちょいちょい、ビジカランナ隊長殿。あんま聞こえの悪いこと言うとトラブルの元だからやめなって」
「ジャングラジマー、お前には関係のないことだろう。下がっていろ」
「いやいや、この子たちとは以前にちょーっと面識があってねぇ。その時にリーダーっぽい人とも会ったことがあるんだけど、相当な実力者みたいだったよぉ。少なくとも、この子たちを利用して名を上げてるような小物じゃあないと思うよ」
「それがどうした、現に集まっているのは彼女たちだけだろう。この場にいない腰抜けのことなど放っておけ」
「んー、ビランナちゃんの言うその『腰抜け』が、案外今回の戦いを左右する重要人物だったりするかもよ? とにかく、女性だけの部隊にそのリーダーを一人置くわけにもいかんでしょ。ここは、ウチの部隊に預けようよ」
「却下だ。仮にこの場にいたとしても、それ相応の実力があると証明できなければ足手纏いだ。そいつを除いて我が部隊に引き入れるのが無難であろう」
「……それ、私情入ってない? いい加減男嫌いを治そうよぉ」
「黙れ。いいからこちらにくるといい、悪いようにはしないから」
少し強めにこちらの腕を引きつつ、強引に班を分けようとする。
……自分の意見ばかり通そうとしないで、少しは話を聞いてほしい。
腕を振り払って、抗議しようとすると―――
「あ、どうも。遅れてすみません」
誰かが、軽く謝るような声が耳元で聞こえた。
耳に馴染む、聞いているだけで安心するような、優しい男性の声。
ずっとずっと、ずっと待っていた、愛しい人の声。
「なんだ、お前は。いつからそこにいた……?」
「パーティ『希望の明日』のリーダーを務めている、梶川光流と申します。諸事情により席を外しておりました、御迷惑をおかけしてしまったのであれば、申し訳ありません」
「あ、か、カジカワ、さん……!」
『ピピッ……!』
「ただいま、遅くなってごめんな―――」
気が付いたら、また、ヒカルに抱き着いていた。
泣き顔を見られないように、顔を彼の胸に押し付けて、ただただヒカルの体温を感じようとした。
あったかい。たしかに、ここに、いるのが分かる。
「ヒカ、ル、ヒカル、ヒカルっ……!!」
「……アルマ、長いこと留守にしててごめんな。もうどっかに行ったりしないから、安心してくれ」
申し訳なさそうに呟く声も、頭を撫でる手の感触も、なにもかもが切ないほど愛しい。
……無事で、よかった。また、帰ってきてくれて、よかった……。
「この男が、リーダーだと?」
「そうだよぉ。……信用できないかい?」
「……ひとまず他の班分けが終わった後に、この男の実力を確かめる」
「必要あるぅ? つーか、こんなに懐いてるのにそれを無理やり引き裂くことになったりしたら可哀想じゃなぁい? それともいまだに自分にはお相手がいないからって嫉妬 グホァッ!?」
「やかましい!」
顔をうずめている間に近くで誰かが殴られるような音と怒鳴るような声が聞こえたけど、それすらどうでもいい。
今は一秒でも、この時が続けばいい。
「うぉぉぉぉおお!? なんだあの超美少女は!?」
「前髪と後ろ髪の色が違うのに、見事に調和している……そしてなんてアンバランスかつ魅力的なプロポーションなんだ……!!」
「め、女神だ……! 女神がおるでぇ……!!」
「誰が女神だコラァッ! オレは男だってば!!」
「いやいや、そのおっぱいで男っていうのは無理があるでしょ」
「お付き合いを前提に結婚してください!」
「うるせぇぇぇぁぁぁあああ゛あ゛あ゛あ゛!! 融合解除するの忘れてたわクソァ!!」
……どこかで聞いたような、女の子の怒鳴り声もどうでもいい。
いや、やっぱりちょっと気になるかも……。
お読みいただきありがとうございます。
>おっぱいがたゆんたゆんでおしりばるるんばるるんなのかな?(目逸らし)
え? あ、アッハイそうですおしりですけっしてしたのほうにあれがはえてたr(ry
>生きろ、そなたは美しい。
ネオラ君がそう言われたらそのまま首かっ切りそう。
……ジブリの映画、最後に見たのいつだったかなー。
>強くなって直ぐに笑いのオチになるとはww―――
彼は、いや彼女? は基本ギャグ要員なので。
この分だと魔王戦もどうなるか分からんねコレは……。
>梶川、今のうちに写真撮っとけ。―――
鬼 か 。やめて差し上げろ。
そういう亜人が居たのなら、多分そうなると思います。なんてマニアックな……。
あと、アイテム画面に収納できないということは、魔王はそれを前世から受け継げないということです。あと戦闘中に奪われてアイテム画面に放り込まれる心配もないですので、マイナス効果ながら今代の魔王相手には必須の効果ですね。
>玉無し勇者が本当に玉無しになっちゃった
勇者ちゃん「下着の中がめっちゃスースーする……」
>フュージョンとか懐かしい!!でも、ステータスがあがるのはいいけど―――
神様は至って真面目にこの能力を考えてます。
スキルなんかの使用感を損ねないために身体的特徴も融合させているようですが、オリヴィエの体型のせいでかえって……。
>俺とお前を超融合!ハーレムにすると女化確定だし―――
ま、まあ、元ネタでもオッサン同士の融合だし(震え声)
ちなみに主人公を混ぜると融合解除するまで【スキル】の項目が全滅します。アカン。
>ネタが思い付かなかったです。
な に の ?
TSならむしろ思い浮かびそうなものですが、ここまで露骨なお題だとかえって思いつきにくいのでしょうか……(;´Д`)




