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脱出直前に見つけた最後のピース そして再会

新規の評価、ブックマーク、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。




何百回も扉を開けて、ようやくパラレシアへの扉を見つけた。それも、二つ。



一つは現在の時間に沿ってリアルタイムで進行している、極々普通の出口。

例の時計だらけの部屋で624年分ほど過ごして時間の帳尻を合わせてここから出ていけば、また元の世界へ帰ることができる。


ちょっと早めにここから脱出することも考えたけど、メニューからなにが起こるか分からなくなるからやめたほうがいいと警告されたので、ダンジョン攻略開始してから十日後くらいで脱出することにした。

出口の内部は、なんというか石造りの遺跡みたいな場所だったけど、どこだったんだろうか。



……問題はもう一つの出口のほうだ。

数万年、いや数十万年? 数百万年? 最早どれくらいの時が経ったのかも分からないほど、未来のパラレシア。

そこは、地平線の果てまでなにもない荒野が広がる、既に死んだ星の末路だった。



生命反応はほぼ皆無。かと思ったら数人分ほど反応があって、メニューに解析させるとまさかの『あの子たち』だった。

……なんであんなところに居たんだろうか、と思いつつもとりあえず合流し、話をすることに。




彼らの事情を聞いたところで、ここでようやく魔王攻略のピースがほぼ揃ったのだと確信した。




この扉を見つけることができて幸運だった。見つけられなかったら、詰んでいた。

ご都合主義というか、俺の幸運値って本当にここぞという時に役に立つんだなぁと。呆れ交じりに感心してしまうほどの運の良さ。ある意味一番のチートかもしれない。


……さて、時間の帳尻を合わせるとしますかね。

『彼ら』も案内してあげないとな。





例の部屋で、『彼ら』とともに隠れ蓑を被って部屋の奥へ移動し、『外の一年が一秒で経過』する地点で620秒、それ以降は『一ヶ月が一秒』の地点で、さらに次は『一日が一秒』といった具合に徐々に小刻みに経過させつつ待機。

奥のほうで1秒でも遅れてしまったら大惨事は避けられないからな。慎重に(時間)を進めなければ。

あ、誰か入ってきて速攻で出ていった。てか、俺やん。ようやく元の時間に戻ってきたみたいだな。

彼らを置いてお先に脱出。頑張れよ君たち。





で、『リアルタイムのパラレシア』へ繋がっている扉から脱出し、晴れて21階層から生還。

お疲れ俺。お疲れメニューさん。で、この遺跡ってどこ?



……ん? 誰かこちらに向かってきてるような……。









「うわぁぁぁぁああああぎゃあぁぁぁああああ!!」


「いやぁぁぁぁああああ!!」


「わぁぁぁぁぁぁあああんっ!! もういやですぅぅううう!!」















~~~~~勇者視点~~~~~












はいどうもこんにちは!

試練の遺跡攻略も大詰めの勇者です!

お化け屋敷攻略に思った以上にてこずって、それでも昨日ようやく攻略できましてね!

次の部屋は大型の迷路でとにかく広い! テーマパークのアトラクションなんか目じゃないくらいとにかく広い!

しかも例にもれず殺意満点なトラップ満載で、実にエキサイティング! むしろエキセントリック! 設計者はホント一回死ね!


で、ただいま鉄球、いやアダマン球に追い掛け回されてる真っ最中です!

もう硬いわ重いわデカいわ、おまけに通路が狭いから避けることもできねぇ! 破壊? 無理無理、硬すぎ。

助けて! 誰かタスケテ! また死んで入り口からやり直すことになったらこれまでの時間が無駄になるぅぅううう!!



「走れぇぇぇえええっ!! 死なないために死ぬ気で走れみんなぁぁぁあああ!!」


「歴代の勇者ってやつはどいつもこいつもホントいい性格してるわね! アンタの故郷の人間って外道多すぎでしょ!」


「ひぃ、ひぃ、ひぃ……! アイナさんの特訓を思い出しますぅ……!!」



アイナさんの特訓で体力と持続力を鍛えていなければ、とっくにガス欠でペシャンコになっていただろう。

だが、しつこく追いかけてくる金属球から逃げるためにもうずっと走りっぱなしで、既に限界が近い。

潰される前に打開策を、あるいは利用できそうなギミックを、ていうかもういっそのこと出口から脱出したい。


弱音交じりに思考を巡らせていると、俺たちの前に誰かの人影が見えた。

……アレは? って、え? まさか……!?



「梶川さんっ!!?」


「ん、あれ? ネオラ君じゃん。どしたの……ってなんか転がってきてるんだけど!?」


「言ってる場合じゃないでしょ! どうしてこんなトコにいるのか知らないけど、潰されたくなかったらアンタも走んなさいっ!!」


「も、もうダメ……! 限界です……!!」



互いに唖然としたような顔をしながら、梶川さんとまさかの邂逅。

どっかのダンジョンの深部を攻略してるって話だったけど、ホントになんでこんな所に居るんだこの人は? 相変わらずわけ分からん。

って、おい! なんで突っ立ったまま動かないんだ!?



「か、梶川さん、なにやってんだ! 逃げないと潰されるぞ!」


「それ、鉄じゃなくてアダマン製なのよ!? 壊そうとしてもこっちの武器が壊れ―――」




「邪魔」




梶川さんが足の裏でゲシッ と蹴ると、アダマンでできた大玉が砕け散った。

まるで発泡スチロールでも蹴破るように、容易く破壊してしまった。




「あ、あ、え……?」


「か、軽く蹴っただけで、アダマンの大玉が……!?」


「んー、確かに鉄球より大分硬いな。それよりおひさ、ネオラ君」


「お、おう、おひさ?」



まるで何事もなかったかのように、軽いノリで挨拶してきた。

……相変わらずわけ分からん、とか思ったばかりだったが訂正しとこう。


この人、さらにヤバくなってる。相変わらずなんてもんじゃない。ほんの半月前よりもはるかに強くなっていると、肌でビンビン感じる。

多分、素の状態であの白い魔族の幹部以上の強さだと思う。……もしも、これに魔力・気力操作が加わったら……。




「で、ところでここってどこ? 21階層の扉を開けて、こっちの世界に脱出してきた先がここだったんだけど……」


「よ、よく分かんないけど、ここは試練の遺跡の途中だよ。いま、攻略してる真っ最中ってわけ」


「あー、まだ攻略してなかったのか。なかなか苦戦してるみたいだな」


「面目ない……」


「仕方ないでしょ! ここの仕掛けがどれもこれも性格の悪さが滲み出てるような、とんでもないトラップばっかりなのよ!?」


「もう何度死んだのか、覚えていません……ネオラさんなんか、もしかしたら4ケタ超えてるかも……」


「お、おう。悪かったな」



半ギレで詰め寄ってくるレヴィアとオリヴィエにたじたじの様子。

いくら強くなっても怒る女性は怖いよね仕方無いね。



「でも、ネオラ君もそろそろジョブチェンジしないとまずそうだぞ。今、メニューから第3大陸以外の幹部が既に討伐されたって報告がきた」


「え、早いな!? てか、梶川さんはメニュー使えるの? この遺跡、オレはメニューが使えなくなってるんだけど……」


「多分、勇者じゃないからか、あるいは入り口にメニューのON/OFFを切り替える機能でもついてるんじゃないか? 知らんけど」



そう、この遺跡のなにが厄介かって、メニューが使えなくなることなんですよ。

おかげでトラップの位置は分からないし、襲ってくる魔獣の特性もまるで分からなくて大苦戦。

このままだと、デュークリス教官に『あと数日で終わると言っていたのになんでこんなに遅れたのかね』とか言われかねない。



「しゃーない、こうなったらちょっとズルしてさっさと攻略しようか」


「え、ズルって、なにを……?」




「ふぅぅぅっ…………!」




「うっ!?」


「ひぃっ!?」



梶川さんが長く深い息を吐くと、周りの空気がピリピリしだした。

徐々に存在感が増していく。大会の時にアルマやレイナがしていたように、気力を消費して能力値を強化しているんだ。


だが、感じられる力があの二人とは比べ物にならない。

同じ空間にいるだけで息をするのもつらいくらい、凄まじい威圧感。


それに間近で晒されたレヴィアたちが、たまらずか細い悲鳴を上げるのと同時に遺跡内部に轟音が鳴り響いた。

ズガガガガガガガァァァアン!! と、まるで近くに絨毯爆撃でもされたかのような、派手な音だ。




「わぁあっ!?」


「きゃぁああっ!! ちょ、ちょっと! アンタなにし……て……?」


「……か、壁が……!?」




ガラガラとなにかが崩れる音とともに、あたりに土煙が充満していく。

煙が晴れたころに梶川さんのいたところを見てみると、迷路の壁が崩れて隣の通路へと繋がっていた。

いや、隣の部屋どころじゃない。いくつもの壁をぶち抜いて、次の部屋までの道を無理やり切り開いたんだ。


……おかしいな。この迷路の壁、俺が全力で攻撃してもまるで歯が立たないくらい頑丈なはずだったんですけど。

それを容易くぶち抜いていきおった。……もうやだこの人。


一分くらい経つと、梶川さんが猛スピードで帰ってきた。



「ただいまー。なんか最深部っぽいところまで道ができてるから、さっさと進んでジョブチェンジしようか」



次の部屋までどころじゃなかった! 遺跡そのものをぶち抜いてたよこの人!



「は、ははは……これまでの苦労はいったい……」


「言わないで……このオッサンがおかしいだけよ……」



ハイライトの消えた瞳で、orzの体勢になって落ち込む二人。

……うん。もうこれ以上苦しまずに済んだと割り切るとしようそうしよう。






お読みいただきありがとうございます。



>未だにまともな出番のない魔導ブーツ―――


心臓マッサージに使われたくらいで、戦闘には使われていない悲しさ。しかも後にまた変な使われかたされる模様。

某ウィルスは、そ、そうだったのかー! なら安心ですね(錯乱


>しっぽりヤっても、バレなきゃ犯罪じゃないですよ


犯罪だよ。少なくとも日本じゃ犯罪ですよ(;´Д`)

そんなどっかの美少女オタク神話生物みたいなこと言ってもダメです。

まぁパラレシア側なら問題な(ry


>マーフって誰!?そして、「マーフ!行くな!」じゃなくて、「マーフ!俺を行かせるな!」って――


とある映画のパロディなのですが、『俺を行かせるな』で合ってます。最後の数十分間に怒涛の伏線回収するのホント凄いわ。

藤吉郎どんと瓜泥棒だけでも分かるヒデヒデの知名度。作品によってキャラが全然違うけど、個人的にはへうげものの秀吉が好きです。残酷な努力をしつつ人間性を残しているのがなんとも。


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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[気になる点] いや「あの子たち」って誰やねん!? こいつがあの子なんて言うのはだいたい年下だし、ヒロインたちか孤児院の子供たちか三人娘あたりか?? 三人娘が強くなったあとに21回層に迷い込んだとか?…
2024/02/01 01:44 退会済み
管理
[一言] 書き忘れて居ました、入るとまずは、一分半ぐらいの少女達が学校で暮らしてる映像が流れます
[一言] ネオラ君がつくるダンジョンは、『学校で暮らそう』と言うダンジョンで、スキルとステータスが封印された状態でゾンビが蔓延る学校で1ヶ月、生活するだけのダンジョン、 ゾンビに噛まれるとゾンビになり…
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