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魔王襲来後の王宮にて

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


今回始めはアルマパパ視点です。




フィリエ王国宮殿・謁見の間にて、私とルナティ、そして剣王スパディア様が王の前で跪いている。

魔王による襲撃を退けた後に、我々と話すことがあると陛下が仰られた。



「剣王デュークリス、大魔導師ルナティアラ。貴殿らの働きに謝辞を述べよう。……跪く必要はない、頭を上げてくれ。貴殿らは、余の恩人なのだから」


「恐縮にございます、陛下」


「そしてスパディアよ、よくぞ戻ってきてくれた。お前がいなければ、今ごろ余もそちらの二人もこうして言葉を交わすこともできなかったであろう」


「……いえ、この二人が間に合わなければ、おそらく陛下の御命は天に召されていたことでしょう。自らの無能ぶりに、生き恥を感じずにはいられませぬ……!」


「よい。お前に出奔したと見せかけて、密かに活動を続けるように指示を出したのは余だ。お前が気に病む理由などない」


「しかし、一月前の魔族騒ぎのみならず、あろうことか魔王襲来の迎撃に遅れるなど、許しがたき怠慢に他なりませぬ! 最早、この場で腹を切って御詫びするしか―――」


「やめんか! その忠義は認めるが、お前はどうしてそう極端なのだ!」



短剣を取り出し、勢いよく腹に突き刺そうとするスパディア様を、フィリエ王が慌てて止める。

普段は粗暴が服を着て歩いているような御方なのに、仕える王の前では騎士の鑑というべき振る舞いだ。少し、いやかなり極端だが。


取り繕っているわけではなく、本当に陛下には忠を尽くしているのだと、親しい人間ならば分かるだろう。この方の愛国心と忠誠心は本物だ。

……まあ、公私の温度差が極端すぎてどう付き合えば良いのか分からないという人も多いみたいだが。



「はぁ……責任を感じておるのであれば、こんなところで無為に死ぬな。魔族の脅威を打ち払い、安息の日を迎えてからでなければ勝手にその命を散らすことは余が許さぬ」


「陛下……! 私めには、勿体なき御慈悲でございます……!」


「分かった分かった。……お前と話していると色々しんどいわい」



気を落ち着かせるためにか、傍仕えに淹れさせた茶を啜り溜息を吐いている。

心臓を潰されて後遺症が残ったりしていないか心配だったが、間を置かず上級回復魔法で治療した甲斐あって特に御身体に支障はなさそうだ。



「して、スパディアよ。首尾は?」


「はっ。この一月の間、第一、第二大陸の対魔族軍と連携し既に両方の幹部を撃破致しました」


「「!」」



思わずスパディア様のほうをルナティと一緒に見てしまった。

これまでどこでなにをしていたのか気になっていたが、まさか他の大陸の幹部を討伐しに向かっていたというのか。



「最初はこの第五大陸にいる魔族の幹部を討伐する予定であったが、予想以上に巧妙な隠蔽工作がされていたようで、遂に拠点を発見することは叶わなかった」


「結局、向こうから乗り込んできて、その肝心な時に私だけいないという醜態を晒してしまったことは、今でもただただ恥じるばかりでありまする……」


「それも余の命に従った結果であろう。責めるべき者は余だ」



どういう経緯でそのような任務を賜っていたのだろうか。



「陛下、発言のお許しをいただきたく存じます」


「む、申すがいい」


「はっ。……恐縮ながら、スパディア様の賜った命とはどのようなものなのか、伺っても?」


「うむ、そのことも含めて貴殿らと話しておきたくてな」





陛下が言うには、半年ほど前に王国軍に入ったものの中で魔族軍に寝返った者がおり、その者が魔族に流した情報により大きな損害をこうむることになったらしい。

その後も作戦の内容が漏れているとしか思えないような致命的なミスや、肝心なところで勝手に独断で動いて作戦を進めることが困難な状況の発生などが頻発しており、軍内に魔族軍の間者がいる可能性があると陛下は睨んだ。


少々突拍子もない話のようにも思えるが、事実一月前に武術大会の際、軍部の対応が一部の者の情報伝達の遅れにより初動が著しく遅れており、その者たちを含めて【真偽判定】による尋問を行なった結果、魔族の間者が何人もいることが判明した。

それも末端の一兵卒ならまだしも、将官クラスの者たちもいたのだからいかに魔族が深部まで侵食していたのか分かる。



そんな状況で下手に魔族の拠点に向かって軍を動かそうとしたら、その隙に逆に無防備な王都が狙われる危険性がある。

しかし放置していれば、魔族の侵攻を止められない。


そこで、信頼がおけてなおかつ単騎で非常に高い戦闘能力を持つスパディア様に極秘任務を言い渡した。

『魔族の拠点を探し出し、軍部に悟られぬように少数精鋭で打ち崩せ』と。



……まあ、第5大陸は広いし結局拠点は見つけられず、魔族のほうから攻め込まれてしまって任務は失敗に終わってしまったみたいだが。

その後は、この大陸以外の拠点を探し出して幹部の撃破を目指していたようだが、まさかここまで迅速に事を進めていたとは。



「自衛のためにスパディア様を傍に置かず、他の大陸に戦力として送ってしまって良かったのですか?」


「私もそう思っていたのだが、陛下は一日でも早く魔族の脅威を取り除きたいとお考えなのだ」


「余が死のうとも、跡継ぎはおる。代わりの利く者を守ることより、魔族を手早く打ち倒すことにその力を振るうべきであろう」


「陛下の代わりなどおりませぬ!」


「それを言うならば無辜の民の代わりもおらぬ。王も、民も、役割としての代わりはおるが命の価値は変わらぬ。ならば一人でも多くの者が死なずに済むようにすべきであろう」


「陛下……」



……第4大陸の国王陛下も、同じ考えであったのだろうか。

王宮にいる自分以外の者を凶悪犯の犯罪奴隷にすり替えて身代わりし、自らの命を囮に国の中枢を担う者たちを守ったらしいが。

どこの国も自分の身よりも国を案じる方ばかりで、まさに頭が下がる思いだ。



「……ふ、口ではこう言っているが、いざ魔王が目の前に現れた時は恐怖に震え、あまりの強さに絶望してしまったがな。情けない話だ」


「無理もありませぬ。あやつは、私が今まで見たどの存在よりも強く悍ましい者でありました」


「戦っている最中、何度死ぬかと思ったか分かりません……」


「今代の魔王は歴代でも群を抜いて強いという話であったが、まさかあそこまでとは……」



単に強いというだけではない。今代の魔王は、勇者の転生体だ。

前世で培った戦闘経験やスキルに、恐らく能力値も上乗せされている。

さらに極めつけは、『メニュー機能』の存在だ。あれがある限り、この世界のどこにも安全な場所などない。



「元勇者の魔王、か。……あの魔王の前世は、恐らく……」


「黒竜様の名前を知っていたということは、フィリエ王国の英雄、『リョータ・ソウマ』でしょうな。……嘆かわしい」


「黒竜は勇者が天寿を全うした時に名を捨てて、その名はあらゆる記録から失伝しており余も知らなんだ。『バハムート』という名前も、魔王の口から聞いたのが初めてだった」


「ラーナイアに、どう伝えるべきか……」



その黒竜、ブラックドラゴンが魔王に連れ去られたことで、フィリエ王国の戦力は大幅に低下してしまった。

魔王は黒竜をどうするつもりなのだろうか。『リョータ・ソウマ』の生まれ変わりということを利用して懐柔でもしようとしているのか?


だとしたら、下手をすればいずれ黒竜と戦うことになるかもしれないな。

……今まで何度か見逃したこともあったが、魔王側に寝返り人類に牙を剥くというのであれば、今度こそ仕留めることになるだろう。



「さて、第1、第2大陸の幹部を撃破したとなれば、残るは第3大陸、そして魔王を倒すのみとなりました。……と、楽観もできませんな」


「口で言うは易いが、正直言ってあの魔王を倒す手段が余には想像できぬ。……奴は、強すぎる」


「……情けない話ではありますが、この二人と共闘してなお勝ち目が見えませんでした」


「さらに、あやつは魔王城の外では力を大幅に制限されていたようだな。……十全の力を振るった時には、いったいどれほどの……」


「デュークよ、お前の鍛えていた勇者は、果たして魔王を倒せるほどの力があるのか?」


「ジョブチェンジをして、勇者のみが使える特殊能力を獲得したとしても、……正直、まだ魔王には及ばないでしょう」


「どうしたものか……」




……恐らく、ネオラ君はジョブチェンジした後ならば私以上の力を手に入れることだろう。

だが、それでは足りない。それだけでは、まるで足りない。魔王は強すぎる。

その圧倒的な力の差を埋めるには、さらに別の要素が必要になるだろう。

……『彼』が、戻ってきた時にどれだけ『持ち帰って』いるか、それに期待する他ないか。







「そういえば、スパディア様。急に行方をくらましたことにアラン君がカンカンに怒っていましたよ」


「うぐっ、……後で顔を出してやるとするかのぉ……」













~~~~~『彼』視点~~~~~












ガラッ



「あっついぜ~! あつくてしぬぜ~!」



ピシャッ



ギィィ……



「マァァァフ!! オレを行かせるな! マァァァァァフ!!!」



バタンッ



ウィィン……



「コレカラ皆様ヲ、スリ潰シマスー」



ウィィン……ズンッ




……開けど開けどわけの分からん扉ばっかでそろそろキレそう。

ホントこの中にパラレシアに繋がる扉があるのかね……。




お読みいただきありがとうございます。



>ヒカルのおじいさん達のくだりのところ、「再会」が「再開」になってましたよ。―――

>ふと思い出したんですけど、魔王兼過去の勇者の名前の「相馬 竜太」って


あがががが(;´Д`) 修正させていただきました。御報告ありがとうございます。

日本へいつでも行けるようにしたのは我ながらやり過ぎた感がひどい気もしますが、まああんま重要な要素でもないので別にいいか(よくない)

あと黒歴史ノート朗読会はきっちりやる予定な模様。鬼か。


>いつかカジカワさんとアルマで日本観光する気がする。―――


「俺、魔王倒したらアルマと一緒に日本で旅行するんだ―――」「あ、地球側は例の問題あるんで外出自粛してください」「(´・ω・`)」


>いや、黒竜は手足と翼を切り落として束縛して―――

>あれ?待てよ?そのまま前勇者こと相馬が―――


なにその拷問怖すぎワロタ。

梅干し云々の話は某200巻連載してたマンガで見たことあります。一粒5万円とか立派なお宝ですよね。

相馬が飛んだのはまた別の21階層の部屋で、そこから近くのパラレシアに繋がる扉に入り直して帰還してます。

魔王のメニューが過去のカジカワだと気付かなかったのは……確かに不自然ですねー(;´Д`)

アレだ、不完全な転生によるメニューの不具合とかきっとそんなんだよ(暴論


>ある程度魔王のターン終わるまで歴史偉人シリーズでお茶を濁す流れじゃな?―――


ガラッ  「あばばばば」  ピシャッ!

この流れだけで軽く2、3話くらい稼げそう。やんないけど。


>糞兄貴の弟の短剣使いと、忍者の女の子の―――

>主人公とアルマが日本を観光するとき急に雨が降りだして―――


ラディア君て呼んであげてくださいな(;´Д`) なにその某タダクニの妹の兄みたいな。あとやっぱ気が早ぁい!

もうそのまましっぽりしてもええんやで。そして通報。ここ日本。アルマ16歳。アカン。



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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] 〉「あっついぜ~! あつくてしぬぜ~!」 ス○キュ○ル!うぉーっアッチー
[一言] >スリ潰シマスー メタルクウ○なら魔王に勝てるだろうか···?
[良い点] 現在読み進め中。なにこれおもろい。 [一言] おい最後!ビ◯◯ゲ◯◯ターじゃねーか!なつかしーなオイ
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