アポをとれ
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「でぇりゃぁぁぁあああっ!!」
吉良さんがどこからともなく黒い槍を取り出し投げると、狐面たちが次々と串刺しになっていく。
そういう技なのか、それとも槍の能力なのかよく分からないが、まるで槍が意志を持っているかのように狐面たちに向かって軌道を変えて突き進んでいく様は正直不気味ですらある。
この人、普通に強いじゃないか。
この狐面たち一体一体がAランク魔獣に引けをとらないくらい強いのに一撃で何体も仕留めている。
これなら数十体相手でも余裕で対応できるだろうに。
「貴様ァァァ! 死ネェェッ!!」
「ギャー!! ごめんなさいごめんなさい! この技連発できないんです助けてヘルプヘルプミー!!」
……仲間を次々と殺されたことに憤る狐面たちから全力で逃げ回る吉良さん。さっきまでの勇姿が嘘のようだ。やっぱこの人ダメかもしれない。
いや、それとも弱いふりをしているだけか? でも、結構本気で逃げ回っているように見えるし、ううむ……分からん。
「ガッ!?」
「カハッ…!」
「ゴビャァッ!!」
「どうしたどうしたァ! この老いぼれの首一つとれんのか駄狐どもがァ!」
スパーダのジジイが、剣を振るうたびに狐面たちを両断していく。
動きが老人のそれじゃない。というか、下手したらアルマパパを超えているかもしれない。
例の白魔族が襲ってきた時にこのジジイがいたのなら、楽に討伐できていただろうに。
肝心な時に頼りになる味方がいない謎の法則。マーフィーだっけ。
「クソォ! セメテ一匹ダケデモ生贄ニィィイ!!」
「コノ男ハ無手ダ! ヤッテシマエェェェエ!!」
「おい! 梶川君、群れがきてるぞ!」
「若いの、なんとか凌げ!」
おっと、武器を持ってないから弱そうに見えたのかな。狐面たちが20体くらい一斉に飛び掛かってきた。
好都合だ。まとめて潰してやる。
ああ、無手だって言ってたけどそんなことないぞ。武器ならいっぱいいるじゃないか。
「ウワァッ!?」
「ヒギィッ!?」
飛び掛かってきた狐面のうち2体ほどを魔力の遠隔操作で引き寄せて
「オラオラオラァァアアッ!!」
「「ギャブバベバガバババッ!!!」」
武器代わりに振り回して狐面どもを迎撃! これぞ狐面二刀流!
まあぶっちゃけいつもの『武器が無ければ敵を武器代わりに振り回せばいいじゃない』戦法である。
振り回している2体には薄く魔力装甲を纏わせて、そう簡単に壊れないように保護してある。
敵に思いっきり叩きつけても即死は免れるだろうが、いかんせん装甲が薄いもんだから結構痛いだろうな。
「ギャアア!! コイツガ一番ヤバイィ!!」
「逃ゲロォ! コノママジャ全滅 ガブァッ!!?」
「逃がさん。全員死ね」
「ヒ、ヒイイィイイッ!!」
「あーあー……狐どもー、俺ならあんな目に遭わせず楽に殺してやるぞー?」
「……なにあのホームランバッター。こわい」
逃げようとする狐面たちを魔力の遠隔操作で引き寄せて、狐面バット(仮)で次々と打ち飛ばしていく。やきうの時間です。
それを引き気味に見物するジジイたち。こっち見てないで手伝えよ。
その後も、何度か襲撃してきた狐面どもを全滅させているが、まるで途絶える気配が無い。
多少のインターバルはあるが、それでもしつこくこちらの命を狙ってきやがる。
「ふぅ……ちと飽きてきたのぉ」
「というか、キリが無いな。いったいどっから湧いて出てきてるのやら」
「オレ氏、もう過労死しそうなんですがそれは……」
ぐったりした状態で地面に突っ伏している吉良さん。泥がつくからはよ立て。
だが、確かにこんなペースでいつまでも戦っていたら、いずれ限界がくる。
その前になにか対策を考えなくては。
「オレとしては大本を叩くことを提案します」
「確かにこやつらの本拠地へ殴り込みにでもいけば、襲撃に向かうように指示を出しとる奴をぶった斬って解決できるんじゃが、いかんせん場所が分からんことにはなぁ」
俺もそう思って、それっぽい魔力や生命力がないか探知してみているけど、どうにも上手く感知できない。
うむむ、なんというか魔力感知をジャミングされているような、いや、なにかに周りの魔力がかき乱されているような……?
そのせいで襲撃してくる狐面たちの気配くらいはなんとか感知できても、ある程度距離が離れるとまるで分からない。
「お困りですかな? ふふふ、そこでコレですよコレ。じゃーん!」
なんかウザいノリで、吉良さんがいきなり『羅針盤』を取り出した。
いや、さっきの黒い槍といいマジでどこから出してんだ? アイテム画面かなんかでも使えんのかこの人は。
≪メニューの『アイテム画面』とは別起源の能力の模様。詳細は不明≫
うむむ、ステータスが確認できんからどんな能力なのか分からんようだ。
他人のこと言えた義理じゃないが、ちと得体が知れないなこの人は。要警戒。
「なんじゃそりゃ、羅針盤かえ? 海にでも行くつもりかお主は」
「違うっつの。こいつは東西南北じゃなくて『目的地の方向』を示してくれる便利で不思議なアイテムなんですよー。……まあホントに方向しか示さないから行き止まりにぶち当たることがほとんどだし、異なる世界までは示してくれないけどな」
「下手したら数千km歩くことになったりせんかソレ」
「大丈夫。指定範囲を絞れば目的地までの距離も大体分かる」
便利だなー。これがあれば魔族の拠点の位置なんかも一発で発見できそうだな。
できれば譲ってくれると嬉しいが……まあ無理だろうなー。
「じゃあ、手始めに『半径1km以内にこの狐面たちの本拠地』があったらその方向を示せ! ……まあ、そんな近くにあるほど甘くはないだろうけども」
吉良さんが羅針盤に触れながら目的地を指定する。
最初は近場に本拠地が無いかを確認して、徐々に範囲を広げていくつもりのようだが、どれだけ離れた場所にあるのやら……。
とか思いながら羅針盤を眺めていたら、赤い針の先からレーザーポインターのような光が発せられた。
……これは、まさか。
「……意外と近かったみたいだな。はっ、マジチョロいわー」
「この光の先に狐面どもの本拠地があるというわけか。ならばさっさと殴り込みに行くとするかのぉ。吉良、案内頼むぞ」
「あ、ごめんこの羅針盤使い続けてるとすごく疲れるから一旦切るわ。あー疲れたーだるいわー。……いや、ホント疲れて割とマジできついんですが」
確かに、羅針盤が光を放ち始めた時から吉良さんの顔色がみるみる悪くなっていく。
たまらずといった様子で羅針盤から手を離す吉良さん。お疲れ様です。
「しかし、この景色の変化が分かりづらい竹林の中じゃ真っ直ぐ進むだけでも難しそうだな」
「問題ないわい。『真っ直ぐの道』を作ればいいんじゃろ?」
そう言いながら、ジジイが目的地の方向へ剣を構えて、振り下ろした。
「いぃっ!?」
「うわ……!」
一振り、ほんの一振りで竹林が斬り裂かれ、大地が割れた。
いや、それどころじゃない。おそらく狐面どもの本拠地があるであろう山までが、真っ二つになってしまっている。
……やっぱこのジジイ、強い。おそらく、アルマパパよりも強い……!
「さて、行くとするかのぉ」
「……向こうからも完全にオレらが向かうことバレただろコレ。スパーダ爺さんヤンチャしすぎだっつの」
「ははは、挨拶は大事じゃろ? 『これからそちらに向かいます』とアポくらいはとってやらんと迷惑じゃろ」
アジトを真っ二つにされるほうがよっぽど迷惑だと思うんですがそれは。
まあ、これからぶっ潰しにいくところだし別にいいか。
さて、本拠地にはなにがあるんだろうか。
有用そうなアイテムでもあったら持ち帰りたいところだが、この二人に持っていかれる可能性もあるしなぁ。
モノによっては譲ってもらえるように交渉の必要もあるかもしれないな。……はぁ、打算で手を組む関係がこんなに息苦しいものだとは。早く皆のところへ帰りたいなー。
~~~~~第五大陸 フィリエ王国 国王視点~~~~~
「ふむ、逃げ回りもせず平然と王座に居座るとは、さすがは国王と言うべきか」
「……そなたが、魔王か」
「いかにも。あとほんの少しの付き合いだろうが、以後お見知り置きを」
天啓通りに目の前に現れた、黒い長髪の男。こやつが、魔王か。
外見こそ人間に酷似しているが、違う。目の前の生物は、断じてヒトではない。
怪物、化物、悪魔、……どれもコレを表現するには、あまりにも拙い言葉に感じてしまう。
「その魔王が、何用かな? 謁見前に事前連絡くらいはしておいてほしいものだが」
「愚問であろうに。疾く、死ね」
魔王の口から死刑宣告が下される。何度か下す側に立ったことはあるが、下されるのは初めてだな。
第4大陸の国王を殺害した次は余の番というわけか。
……これは、どうにもならぬな。
パリン とガラスが砕けるような音が鳴り響いた。
「カ、ハッ……」
魔王の手が、余の胸を貫いているのが分かる。
防御力1万相当の障壁を発生させる【フォース・プロテクト】を何重にも張り巡らせた防衛機構もまるで意味をなさずに突破され、余の心臓を潰したようだ。
「人間の心臓を握り潰すのはこれで二回目だな。……なんとも不快な感触だ」
無表情のままで淡々と語る魔王の目は、酷く虚ろに見えた。
こやつは、いったい、なんのために、人間を………
意識が薄れていき、途切れる直前に鋭い金属音が耳を劈いた。
それと同じくして、消えかかった意識が徐々に鮮明さを取り戻していく。
「見事な奇襲。そして見事な腕だ」
「ちぃっ……!!」
「お前は、今代の剣王か。……凄まじい力だな。いったい何をした」
意識が戻り、再び目に映ったのは手を血に染めた魔王と、それに剣を押し付けている『剣王』デュークリス。
そして余の傍には『大魔導師』ルナティアラの姿があった。余を癒したのは、この者か。
「その力、人の身では決して辿りつけぬ領域のはずだ。少なくとも、たかがLv90台のものではない」
「……なぁに、これでも『21階層』の攻略者でね」
「! ……ほう、あの無秩序から生還したというのか。なるほど、ならばその力も頷ける。よもや1万を超える能力値とは、驚嘆に値するぞ」
「いざ、参る!」
剣王の剣が、魔王に向けられる。
なぜ、立ち向かえるのだ。なぜ、余を助けようとするのだ。
あんなものに、勝てるわけがないというのに。
お読みいただきありがとうございます。
>非シリアスパートの会話等が漫才やコントじみてて面白い。―――
174話からの感想、ありがとうございます。
ジュリアンはウザいのが売りみたいなキャラなので、不快に感じられる方も少なくないでしょうねー(;´Д`)
無聊の慰めの一助となれたのであれば幸いです。こちらからも感謝を。




