どこもかしこも異常ばかりだ
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ガチャリ ギイィ……
少し建付けの悪い扉を開くと、空一面に何万人いるかも分からない大勢の人々が直立しながら浮いていた。
……いや。違う。空に浮いているんじゃなくて、上から釣り上げられている。
釣り上げられている人たち全てに、空から首に縄がかけられていて――――――
バタン
ここアカンやつや。次。
ガラガラと引き戸を横にスライドさせて、次の場所を覗いてみる。
そこには、貧し気な和室で身体の半分近く羽根が毟られた鶴の姿があった。
どうやら、自分の羽根を使って古臭い機織りで反物をこしらえているようだ。
「ああ、覗かないでと言ったのに。姿を見られたからにはもうここにはいられまs――」
ガラガラ ピシャッ!
人違いだバカヤロウ! 次!
観音扉を引き開けると、中から暴風が噴き出してきた。
わっ、ぷ!? な、なんだここは? すげぇ風だ……!
『……モォ……ォ………』
中を覗いてみると、竜巻に吹き飛ばされている牛の姿が見えた。
助けてほしそうにこちらを見ているが、こんな中に飛び込んでったらこっちが危ない。
可哀想に思いながらも、暴風で押し返してくる扉を力ずくで閉じ直した。
……今まで開けた扉の先でまともな場所が一つもないんですがそれは。
文字通り門前払いである。というか、あんなカオスな空間に進みたくない。
進む扉を慎重に吟味しながら探索していて、今のところ収穫はランダム攻撃力変動効果付きの肉断ち包丁のみ。
なんだこのムラッけのある武器は。某ヒゲRPGのハンマーじゃあるまいし。
一応、進めそうなところもあるにはあるが、どこもかしこも異常ばかりだ。
あんな場所を進んでいたら、いずれは俺もそうなりそうで怖いわー。
≪……地球でもパラレシアでも、梶川光流の存在は充分に異常の範疇にあると推測≫
やかましいわ! ……てか『パラレシア』ってなに?
≪アルマティナたちがいる世界、即ち梶川光流が『異世界』と呼ぶ世界の名称≫
へー、今初めて知った。あの世界ってそんな名前なのか。
そういえば、さっきボスがお袋に変身する直前のノイズでもパラレシアがどうとか聞こえたような……。
まあいいか、それより次の扉だ。
取っ手やドアノブはなく、押して開けるタイプの両開き扉か。純白でなかなか綺麗だな。
ではお邪魔しまーす。
建付けがいいのかとてもスムーズに開いたな。いい扉してんねぇ。
扉を開けた先には、……黒のストレートロングヘアーで眼鏡をかけた美女がお怒り顔で、10歳くらいの金髪碧眼美少年の胸ぐらを掴んで持ち上げていた。
持ち上げられながらも、少年は美女の様子を見てヘラヘラと笑っている。
な、なんだこの状況は。DVか、DVなのか? それともリョナ混じりのおねショタ的な? 業が深いなオイ。
「なんのつもりですかっ……! 過度な干渉はせずに見守っているくらいがいいと言っていたのはあなたでしょうが!」
「あー、いやね? 基本的にはそう考えているんだけどさ、今回の場合はあのほうが面白そうかなーって思ったらつい、ね? 実際なかなか感動的だったと思うよ、うん」
「うん、じゃありません! 無理やり人格情報を送信したせいで、時空間に綻びが生じてしまっているではありませんか! 今すぐ直してください!」
「えー? 別にあのままでもよくない? よっぽど変な所にでも行かない限り誰も綻びに飲み込まれたりしないでしょ」
「今、まさにあの人がその『変な所』に足を踏み入れている真っ最中でしょうが! 万が一ここと繋がりでもしたらどうするのですか!」
「あっはっは、ないない。仮に繋がったとしても、ここへの扉を開く確率は天文学的に低いし大丈夫大丈夫」
「いいから早く!」
……なんか要領を得ない会話してるな。
言い争いに巻き込まれたりしたら面倒くさそうだし、そっ閉じしとくか。次いこ次。
≪……………。≫
次はシャッターのように上へ持ち上げるタイプの扉。
ガシャン と少し大きな音を立てながら開くと、真っ白な通路があった。
無機質で一定間隔で継ぎ目があり、壁の継ぎ目ごとに時計が等間隔で設置してある。
時計を観察してみると、手前側の時計はカチカチと秒針を刻む音が聞こえるが、2個目以降は動いていないしどれも表示されている時間がバラバラだ。
なんの意味があるんだろうか。ちょっと進んでみよう。
壁の時計を見ながら進んで2個目の時計の前に立ってみる。
すると不思議なことに2個目の時計が動き出して、カチカチと秒針を刻み始めた。
その時、妙な音が1個目の時計から鳴り始めた。
チチチチチチチチチチチチチチ、と遠くで小鳥の大群が鳴いているかのような音を鳴らしながら、秒針が1秒ごとに一周している。
……? 先へ進んだら、加速する仕掛けにでもなっているのか?
≪警告:先へ進むのを中断し、早急な撤退を推奨≫
え、なんかあった?
≪この階層は、奥へ進むほど時間の流れが遅くなっている模様。現在の位置では1秒経過すると、扉の外では1分経過している≫
はい早く帰りましょう! 浦島太郎にはなりたくないでござる!
あぶねー! 勢いあまって奥に進んでたらとりかえしのつかないことになってたわ!
……一見大した変化のない場所でも、分かりづらい異常が起こってることもあるんだな。気を付けよう。こわぁ……。
なんかもう、扉の種類が多すぎて表現するのが面倒になってきたな。
次、木の扉。たまにはノックでもしてみるか?
コンコン
「入ってます」
「アッハイ、すみません」
はい次。………誰が? てか、どこに繋がってんだ?
……気を取り直して、隣のドアへ足を進めると自動で開いた。
ふむ、センサー式の自動ドアか。自分から開くドアはなんかちとヤバそうだが、一応入ってみるか。
さっきのバーガーショップといい、ドアの動力どこからとってるんだろうか……。
ドアの先には、SFを思わせる機械的な通路があった。
壁や床一面に回路やらランプやら埋め込み型の機器やらがビッシリと敷き詰められている。
……やっとまともに探索できそうなところに着いたな。
メニュー、さっきみたいに時間に異常があったりとかは?
≪時間の流れは一定の模様。毒物、空間の異常等は現状確認できず≫
うむ、では進んでみるかな。
この場所はなんの施設なんだろうか。
現時点では通路ばかりで部屋なんかは見当たらないが、結構広そうだな。
メニュー、マッピングはできそうか?
≪可能。元の世界とは別に新規データを作成。マップ画面によるマッピング継続中≫
ふむ、元の世界のマップは確認できないが、この場所のマップは新たに作成可能というわけか。
人の気配は今のところ感じられないが、俺以外の存在が接触してきた時の対処も考えておかないとな。
……ホラーゲームみたいに怖い反面、ちょっとワクワクしている自分がいるのに驚きだ。
お読みいただきありがとうございます。
>今回のはなんかよくわかんなかったけど、何故かすごく怖かったな〜〜―――
ちょっと収容違反起きてんよー。
というか、元ネタ様知っている方が多くてちょっとびっくり。やっぱ有名なんですねぇ。
>SCPー444ーjp―――
収容違反その2。元ネタ様を始めて見た時は鳥肌が立ちました。色んな意味で。怖すぎ&凄すぎィ。
あくまでオマージュの一種ですので元ネタ様ほどヤバい存在じゃないです。多分。
>攻撃のたびにランダムで攻撃力が変動する包丁。ついに幸運に出番が?―――
幸運補正はあるでしょうねー。必然的に主人公が使うのが一番有効活用できそう。
でもなんだかんだ言って誰かに押し付けもとい譲りそうな気も。
>今はあかしけ だけどそのうちおいしさやばげ になるんだろうな...
むしろ喰われるのはこっちなんですがねー……。
さすがにアレは食欲湧かないようです。でもどんな味なんでしょうね?
>あんなドマイナーな都市伝説「バーガーヘッドの悪夢」を知ってるなんて!?―――
あ、初耳です。なにそれ知らん……こわい……(伝並感
異常な場所や存在も元ネタがあったりなかったりです。
勇者君が攻略中のお化け屋敷の自転車包帯男も元ネタがあるんですが、ちょっと古すぎたかなー……。




