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準備完了

ヒカル「タッピングマシン、溶接機、タレパン、塗装機、うーむ、こうしてみると応用がきく機器って意外と少ないな」

アルマ「なにいってんだこいつ」


魔刃の再現だが、ひとまず実用のレベルには達したと思う。

剣を媒介にするのも、魔力消費が少し多いができなくはない。

まあ生身に纏わせた方が消費も少なく安定した運用ができるけど。


魔力の刃を振動させるのではなく、チェーンソーのように高速で刃を動かすイメージで的を斬ってみたところ、スパッと一瞬で斬れたりはしなかったが、普通に剣で斬るよりは格段に攻撃力が上がっているのが実感できた。

というか、スキルの魔刃に比べて物を斬るのに若干ラグがあるが、より肉厚な物を斬るのには俺の魔刃もどきの方が適しているようだ。

魔刃もどきというより、もはや魔刃改と言ってもいい完成度だな。ふふふ。やっとまともな攻撃手段が手に入った。



「…まとも……?」


「…なんだねその反応は……?」



魔刃改で的を斬って満足そうな俺を、若干顔を引きつらせながら見ているアルマ。そんな顔せんでも。

魔刃改の刃はスキルと違って不可視なので、見た目俺が剣でゆっくり的を斬ったように見えたんだろう。

…うん、はたから見てるとやっぱこれもおかしいか…。


他にも、調子に乗って手の先にドリル状に変えた魔力を纏って高速回転させて貫通力を上げた貫手とか、

杭打機の要領で、掌底を当てた瞬間に魔力で作った杭を勢いよく突き出して、さながらパイルバンカーのように貫く技とか開発してみた。

ドリルとパイルバンカーって男の子だよな。…何言ってんだ俺?



「それ、人に向かって使わないほうがいい。多分死んじゃう…」


「いや、さすがにそんなことはしないよ。多分」


「多分…!?」



相手が悪くて、こっちに命の危険がある時は使ってしまうかもしれない。

使うにしてもなるべく殺傷力は抑えるつもりだが、使う機会がこないほうがいいなぁ。

俺の魔刃再現その他はとりあえず一区切りだ。下手したらいくらでも新しい技を開発できそうだけど、キリがないし。


で、今度はアルマの方の新技の習得訓練。

と言っても、ぶっちゃけスキルを魔力操作で強化、改造するのが主だ。

今回は攻撃魔法のアレンジを試してみるようだ。


攻撃魔法はポピュラーだが少し特殊なスキルで、同じLv1のスキルでも個人によって習得する技能が違うらしい。

アルマのように火属性のファイヤーボールを習得する者もいれば、ストーンバレットという地属性の尖った石を飛ばす魔法を習得する者もいるらしい。

人によって使える属性の数も違って、例えば火属性しか使えない代わりに、火属性ならではの様々な魔法を使える人もいる。

ファイヤーボールはもちろん、炎の壁を造ったり、三方向に向けて炎の槍を放ったり、高速で遠距離まで届く炎の弾丸を放ったり、火属性しか覚えられない分レベルが上がるごとに様々な形態の魔法が使えて、一点特化ならではの強みがあるとか。

まあ、その分火属性が効かない敵には滅法弱いらしいが、そこは仲間のフォローでどうとでもなる。

逆に使える属性の数は多いが、その分一つの属性ごとに単純な運用しかできず、器用貧乏な魔法使いになってしまう人もいるんだとか。

因みにアルマは後者。攻撃魔法Lv4の時点で火、風、水、雷の属性が使えて、今後さらに属性が増える可能性があるらしい。神様はこの子をどんだけ器用貧乏にしたいんだか。

まあ、魔力操作ができるならそんな弱点無視できるんですけどね。ざまぁ。マイゴッドざまぁ。

いやむしろアルマが色んな属性が使えることに感謝しておくべきか。アリガトウゴザイマス。俺にはスキルを一切くれなかったけどな!


魔力操作による魔法のアレンジだが、例えばゴブリン相手に使ってた火球、ファイヤーボール。

単純に消費する魔力を上乗せすれば、そのまま大きく、高威力の火球へと強化することができる。

形状もかなり自由に変えられるみたいで、3方向どころか8方向、つまり自分を中心にあらゆる方向に同時に火球を放つことも可能だ。…あれ?もうこれ上位の魔法習得する必要なくね?

まあLvが上がって属性が増えればさらに幅広い運用が可能になるだろうが、攻撃魔法スキルのLvアップはあまり重要じゃなくなってしまいそうだな。

まぁ、アルマはすごく機嫌良さそうに高威力のアレンジ魔法使いまくってるからいいけどさ。…低威力の魔法しか使ってこなかったからストレス溜まってたのかな…。

あ、魔力切れた。そのまま倒れそうになったアルマを大慌てで支える。危ない危ない。

…普通に魔法を使うより魔力消費が激しいから、使いどころを考えるのが今後の課題か。魔力供給したら、今日はもう宿に戻ろう。


こんな数日程度の修業モドキなんか実戦で通用するか分からないけど、始めは雑魚魔獣相手に戦ってみて、実戦経験を積んでいきながら改善点を見つけていくとしよう。




装備の注文から3日経ったし、そろそろアルマの新装備が出来上がったと思うので装備屋へ行ってみるか。

すっぽかしたりしたらあのおっちゃん怖そうだし、朝から受け取りに行ってみた。

店はもう開店してるらしく、カーテンも全開で窓から中の様子がよく見える。

というわけでお邪魔します。


店の中に入ると、鉄や革の匂いなのか独特の空気が漂っている。

これで入るのは3度目だが、並んでいる剣や鎧なんかを見ていると年甲斐もなくワクワクしてくる。…俺ってまだ心の中が子供のままなのかな。



「装備を受け取りに来た」


「ああ、嬢ちゃんか。もう出来上がっているから早速装備してみてくれ。しっくりこないところがあったら調整するから遠慮なく言うといい」


「分かった」



そう言ってカチャカチャと胴当てやらブーツやら脱いで…っておい!



「いや、ここでじゃなくて! 着替え用のスペースが奥にあるからそっちで着替えな!」


「…? 別に服まで脱ぐわけじゃないから大丈夫だけど」


「いや、そうだが、そういうことじゃなくて。いいから奥で着替えなさい」



この場で着替えようとするアルマを慌てて止めるおっちゃん。

注意されて怪訝そうな表情のまま、奥のカーテンで隠れた着替え用のスペースに移動した。



「…あんたのツレか? もうちっとああいうところ注意してやれよ」


「すみません。ちょっと無防備すぎるところがありまして…」



いやね? アルマの言う通り別に裸になるわけじゃないんだけどね?

でも女子の着替えって言うものは、それでも大っぴらに見せていいモノじゃないと思うんだ。うん。

アルマみたいにかわいい子ならなおさらだ。現に店の外から野郎共の残念そうな顔がいくつか見えてるし。お前らマジで許さんぞコラ。

アルマのご両親が親バカになった理由はこういうところにも一因があるんじゃなかろうか。…いやあの二人ならそうじゃなくても親バカだろうけど。


そんなこと思っているうちに、着替え終わったアルマが奥から出てきた。

ふむふむ、新しい胴当てとブーツも黒が基本の色彩で、髪の色とマッチしていてなかなか似合っているじゃないか。



「着ていてどっか違和感があったりしねぇか?」


「全然ない。自由に動く」


「そりゃよかった。よく似合ってるよ」



外見はいい感じだが、性能はどうかな? ちょっとチェック。



人狼革の胴当て

DEF+50


疾風のブーツ

DEF+15 AGI+30



…人狼革? これもしかしてウェアウルフの素材から作られてるのか? こないだやりあったばかりだし、ちょっと複雑な気分だ。

疾風のブーツは俺が変装していた時に装備してたのと同性能みたいだな。見た目とサイズはアルマ用にカスタマイズされてるが。おっちゃんなかなかいい仕事するやん。



「それと、これが新しい剣だ。大事に使いな」


「うん、ありがとう」



おっちゃんが手渡した新しい剣を見てみると、これまで使っていた鉄剣とはもう見た目からしてレベルが違うのが分かる。ピッカピカやないの。

…お値段いくらだっけ? ちょっと性能チェックがてら確認。



鋼鉄の剣(ミスリル刃)

ATK+80 INT+10


値段:70000エン



…ミスリル刃? ベースは鋼鉄だけど、刃の部分はミスリル使ってるのこれ? てかこの世界ミスリルあるんだ。オリハルコンとかもあるのかな。

値段が俺の使ってる鉄剣の7倍もするんですけど。



「合計で120000エンだ。今すぐ払えないなら分割払いでもいいぞ」


「大丈夫、払える」



…まあ、必要経費だ。150000エンくらいまでなら何買ってもいいと言っておいたし、これぐらいなら妥当だろう。

命を預けるものだし、むしろ安いくらいだ。



「そっちのアンちゃんは何か買わねぇのか?」


「いやー、この間買ったばかりですし、しばらくは弱めの魔獣と戦う予定なので、今はいいです」


「そうか。まあ、こっちの嬢ちゃんの装備はガタがきてたし、購入する装備の時期と性能がずれるのは仕方ねぇか。でも必要な時に装備にかける費用をケチると碌なことにならねぇから無理するんじゃねぇぞ」


「お気遣い、ありがとうございます」



さてさて、装備も新調したし、魔獣討伐にでも行きたいところですが、魔獣森林はまだ魔獣たちがいないままだ。

どうしたもんかね。



「一応、魔獣森林以外にも魔獣が討伐できる場所がある」


「え? どこに?」


「街の南側に小さな洞窟があって、そこがダンジョンの入り口になってる。魔獣を狩らなくてもスタンピードが起きたりはしないから、討伐報酬はもらえないけど、魔獣の素材なんかは結構いいのが手に入る」



ほほう。ダンジョンとな。

ちょっと詳細を聞いてみようか。

お読み頂きありがとうございます。

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