表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

304/584

攻略開始

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。



気力を消費して、能力値を6000程度まで強化。

高重力の影響か、普段よりも気力の消耗が激しい。実戦で使えるのは2~3倍が限界、それも5分程度しか保たないだろう。



「う、ぐうぅぅ……!!」



身体が軋む。痛みこそないが、相当な負担が全身にかかっているのが分かる。

魔力パワードアーマーの補助と気力強化の両方を使ってようやく素の身体能力といったところか。


ひとまず動かなきゃどうにもならん。とりあえずあの水晶に接近してパイルをぶち込むとしよう。

身体が重すぎて魔力飛行すらままならない。自分の脚で進むしかないか。



「ふんっ……! ふぬっ……! うんん゛ん゛……!!」



歩を進めるたびに思わず野太い声が漏れる。

身体がどんどん重く、歩幅が徐々に小さくなっていく。

こいつ、近付けば近づくほど重力が強くなっていきやがる……!


だめだ、至近距離まで近付こうにもその前に潰されちまう。

魔力の遠隔操作で攻撃するべきか、……っ!?


な、なんだ、これまで水平な地面を歩いていたと思っていたのに、いつの間にか坂道になってる。

いや、だんだんと地面がせり上がって、ひっくり返ってる? 



違う、こいつ、部屋の重力の向きを操ってやがる!

こんなことまでできるのかよ!? 遊園地のアトラクションとかに使えそうだなオイ!


たった数秒でさっきまで床だった面が壁になり、水晶の鎮座する部屋の最深部は真上に位置する状態になった。

おいおい、これじゃ近付くどころの騒ぎじゃないぞ。遠距離攻撃で倒そうにも、届くか?




『【ストーンバレット】』




っ!!


機械音声のように無機質な声が水晶から発せられるとともに、岩の弾丸が放たれた。

は、はっや!? 高重力の影響もあってか、マッハ近いんじゃないかってくらいの猛スピードでヒトの頭くらいの弾丸が地面に降り注いでいく。


ただのストーンバレットでこの威力かよ! アルマの強化ストーンバレットよりもずっと凶悪だ。

一発でも当たればHPが何割かもっていかれる、そんな魔法を連射してきやがって。このままじゃそのうちハチの巣、いやミンチよりひでぇ状態になりかねん。

いつまでも避け切れるような攻撃じゃない。なんとか防がないと!



魔力を硬質化した盾を作って上方に展開。大きさは直径3mくらいにしておこう。

さらに盾の下側に魔力クッションを広げて、衝撃を緩和。



……あ、あれ、クッションが上手く展開できない……!?

魔力を広げようにも、なにか別のものに押し込まれているかのように抵抗を感じる。

なにくそ、無理やり広げてやるわ! まず全身をクッションで覆って、それを盾の下に―――――



ってあれ、身体が壁に引き寄せられる?


最初に床だった面に向かって落ちていくような感覚。重力の方向を元に戻しやがったのか。

いや、違う。俺だけが床だった面に引き寄せられていて、あの水晶が放ってきた石なんかは壁に張り付いたまんまだ。



てか、身体が、軽い?



無理やりひり出すように魔力を放出し、全身を魔力クッションで覆うとさっきまで身体にのしかかっていた重量感が嘘のように消えた。

魔力装甲じゃなくて、魔力クッションで全身をくまなく覆ったのが原因なのか?


≪【重力魔法】は範囲内の空間全てに魔力を染み渡らせるように展開し、任意の方向・出力で負荷をかけることによって重力を操っているように見せかけているスキル≫


≪梶川光流が重力魔法の影響から脱したのは、『重力魔法の媒介となる魔力』を『梶川光流の魔力』で押し出し、身体とその周囲から完全に排除したためであると推測≫



よ、よく分からんが、要は俺に纏わりついていた重力魔法の魔力が無くなったから自由になったってことか。

うーむ、とにかく身体が軽い。まるでこれまで全身に鉛でも纏ってたんじゃないかってくらい重かったのが、今なら魔力無しで空飛べそうなくらい軽い。



盾とクッションで魔法を防ぎつつ、これまで負荷がかかりっぱなしで強張っていた全身を捻って、コキコキと音を鳴らしながらほぐす。

ストレッチが終わったころには、全身に力が漲っているかのようにすら感じられた。



「ふぅー…………さて、やるとしますか」


『……【ロックブレイク】』



今度は中級魔法、いや、コイツの能力値だと上級魔法並みの威力になるようで、直径5m近い大岩がいくつも降り注いできた。

さっきまでなら対応するので精一杯だったが、身体への負荷が無くなればこんなもんへでもない。


よし、高重力の影響が無くなったから、気力強化も普段と変わらない消耗率に戻ってるな。なら……!

さぁて、反撃開始だ。覚悟しろクリスタルクソ野郎。




気力操作で、能力値を10000まで強化っ!!














~~~~~ホラゲー実況者と化した勇者一行視点~~~~~











あの能面野郎からなんとか逃げ切った。

いま思うと、あれも魔獣かなんかだったんだろうし普通に倒せばよかったかもな。



「くっそ、生活魔法の指輪を使おうとしたら、すぐにぶっ壊れちまった。こんな仕掛けまであるなんて、なんて意地の悪いフロアだ……!」


「【灯り(ライト)】が使えれば、精神的にまだ少しは楽だったのにね……」


「あうぅ、ね、ネオラさん、手を離さないでくださいぃぃ……!」


「だ、大丈夫よオリヴィエ、落ち着きなさい。……あと、さっきからアンタが握りながら胸に押し付けてるの私の手だから。……やわらかいわね、ぐぬぬ……!」



レヴィア、そこ代われ。代わってください。あ、ダメ? ですよね。


生活魔法の指輪には【灯り】や【着火】といった、こういう状況で光源にできそうな魔法がある。

それを使えないとなると、ちょっと困ったことになる。


松明代わりになるものを作ろうにも、アイテム画面が使えないこの状況じゃ手持ちのアイテムにも限界がある。

フロアを攻略するたびに休憩所があって、魔法コンロなんかも完備されているもんだから野営に使う薪なんかも持ち合わせがない。


……コンロを引っぺがして持ってこようかとも考えたけど、そういう反則に厳しい試練だってことはこれまで嫌というほど理解している。

どんなペナルティがあるか分からないし、ここはおとなしく真っ暗な校舎を進んでいくとしますかね。



「【シャインボール】とか【ファイアーボール】みたいな攻撃魔法を光源代わりにできないかしら」


「一瞬ならできるだろうけど、持続するのは無理だな。()()そこまで細かい制御できないし」


「周囲の木材などを燃やして松明代わりにしようとしても、うまく燃えませんでした……」


「燃えにくい素材を使っているのか、なんというかまるで石にでも火を点けようとしてるみたいに全然燃えないんだよなぁ」



視覚が暗闇により制限されている状況というのはかなり厄介だ。

ただでさえこの世界にとって異質なこの校舎の不気味さに拍車をかけている。



「照明用のスイッチを押しても全然点かねぇし、ホント性格悪いな設計者」


「またいつさっきの変な顔が襲いかかってくるとも分からないし、早く次のフロアへの道を探しましょ」


「ううぅ……ここ、夢に出そうです……」



メガネをかけ直しながらオリヴィエが半泣きで呟く。

こんな恐怖体験してたら無理もないわ。なんだこのリアルお化け屋敷は。


あの能面顔野郎は撒いたけど、またいつエンカウントするか分かったもんじゃないし気が抜けねぇ。

集中して気配を探ろうにも、まだ慣れてないせいか()()()()()()()()()()()()()()長続きしないし。




先に進むための扉らしきものは見つけた。学校にあるまじき石造りの重厚な扉が廊下の端っこにあって、多分コレを開けた先に次のフロアへの道があるんだと思う。

でもカギがかかってるみたいで開かねぇ。あれか、校内を探索して探せってか。地味に広いから面倒そうだなオイ。


本当は手分けして探したほうが効率いいんだろうけど、全員が一人になるのは嫌だということで結局3人で探索することに。

この状況で一人になるのは死亡フラグでしかない。死んでも生き返るけど、そういう問題じゃない。


地道に教室を一つ一つ調べていくしかないか、メンドクサ。

心の中で愚痴を呟きながら教室のドアを開けると――――










『ウボァ』


『ウ、ボァ』


『ボァボァボぁぼァボァぼぁボァ』


『ボアははハはハハハははははハハハハハハハハ!!』


『ヒひひひフェヘヘヘヘははああぁぁぁあアあああァ!!!!』





能面野郎を始めとした、化け物のバラダイスだった。


動くリアル人体模型がいた。


顔中の穴という穴からウジがはみ出ている男がいた。


こめかみまで口の端が裂けている女がいた。


包帯が全身に巻かれているミイラが日本刀を振り回しながら自転車に乗っているのが見えた。




ギョロリ、と水槽の中にいた金魚がこちらを睨み、見る見る大きくなって飛び出してきた。




『ヘヘヘッヘベベベびャがだヴぁァァァア!!』



「キャァァァァアアア!!!」


「いやぁぁっぁああああああああ!!!」


「もうやだぁぁぁぁああああ!!!」




チキン肌全開で全力疾走で離脱。

大した力は感じないのに、戦おうとする前に身体が反射的に逃げを選ぼうとする。

無理。ありえない。なにこれ。もうやだ。




「こ、ここ、こっちは行き止まりよ!? どうするの!」


「このままじゃあいつらに追いつかれちま―――」


「やぁぁあっ!!」


「ちょ、オリヴィエ!?」



なにを思ったのか、オリヴィエが急に方向転換して思いっきり飛び跳ねた。

その先には、ガラス窓。廊下から外の景色が見える。


ガシャン とガラスが割れる音がした。




恐怖のあまり、ガラスをぶち破って校庭に避難しようとしたようだ。ここ、3階だぞ?

あ、着地直前でエアステップを使って勢いを殺した。す、すごい判断力と身体能力だな。



「ネオラ! このままじゃ追いつかれるわ! 私たちも行くわよ!」


「お、おう!」



少し遅れて、レヴィアと一緒にオレも窓から緊急脱出。最後のガラスをぶち破れ。

オリヴィエ同様、着地前にエアステップで落下の勢いを殺して着地。



「し、死ぬかと思ったわ……!」


「死んでも生き返りますけど、ここのフロアでは死にたくないです……」


「わかる」



ここで死んだら、なんかさっきの化け物どもの仲間入りしそうな恐怖があるしな。いや多分大丈夫だろうけど。

さて、こうなったら一階から調べていくとするかな。さっきの部屋はヤバいからもう近付かないようにしよう。


地道にマッピングしながら、避けるべき部屋とか気になる部屋とかを一つずつコツコツ探索しよう。

メニューが使えればわざわざ手書きで地図を描くことなんかしなくていいのに。……やっぱアイツの助けって必要だわマジで。


お読みいただきありがとうございます。



>これはホラー系が苦手なのか…でしたら、――――


このフロアじゃ、むしろ死は救いだっていうね。

むしろ死に至るまでのシチュエーションのほうが重要な要素でして、こういった意見はとても参考になります。ちょっと殺意が強すぎますが(;´Д`)


>いきなり出てくるビックリ系ってなれないんですよね。――――


つよい(確信) 通り魔とかに不意に襲われても即座に対応できそうですねー。私なら殺されたことにも気づかないうちに死んでそう。

20階層は、見てのお楽しみということで。


>勇者君達、魔法使える人2人いるはずだけど―――


ライトは生活魔法枠ですね。攻撃魔法で代用しようにも一瞬しか明るくならない模様。

アンデッドはまだ登場してませんが、一応存在します。多分近いうちに出る。

気力操作が実質界〇拳みたいなもんですねー。さすがに金色に光って戦闘力50倍になったりはしませんが。


>20階層の予想―――


無さそう枠全部採用しても面白そ(ry

ありそう枠は、まあ、見てのおたのしm(ry


>コープス○ーティーと思ったらゆめ○っきだったでござる。―――


元ネタ分かっていただけると地味に嬉しいです。

蓮コラは、多分21階層枠かと。……上手く描写できるかな(;´Д`)


>クリア者が罠追加してる…ってことはクリアしたら自爆装置起動か


爆発オチなんてサイテー!

一応、編集できるのは1フロア限定で、遺跡そのものが壊れるような仕掛けは無理です。

でないと多分2、3回はこの遺跡爆発してる。


>そんなに娘が大事で過保護にしたいなら、―――


14話のご感想、ありがとうございます。

冒険者というのは常に危険がつきものですので、それを目指す娘の気持ちを尊重して渋々独り立ちを許可したようで。縛り付けるばかりが親ではないと判断してのことですね。

でもやっぱり危険な目に遭ったりしてないか心配なのも親心というジレンマ。


>面白過ぎて一気読みしてしまいました!


ありがとうございます。自分にはもったいないお言葉で思わずニヤニヤしてしまいます。

よろしければ今後も気が向かれた時にでもお暇つぶしに読んでいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] こんなホラゲーあったら絶対にやらないけど友達にやらせよ
[一言] 【ドッキリ】コスプレ集団を死ぬほど怖い お化け屋敷に閉じ込めてみた。 チャンネル名:異世界TV 動画作成者:梶川光流 再生回数:1300万回再生 武器案 ①このクリスタルを使って、叩…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ