地味すぎる活動開始初日
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はい、待ち望んだ明日、つまり今日という日がやってまいりました。明日って今さ。
今日からパーティとしての活動を始めていくわけですが、ここでいきなり問題発生。
魔獣森林でゴブリンなんかの雑魚を討伐して訓練しつつ依頼報酬を受け取る手筈だったが、受付でネイアさんに依頼を受けようとすると、恐らく今は無理とのこと。
何故かと聞いてみると、スタンピードが済んでからしばらくの間は魔獣の数が激減しており、エンカウントすることはほぼ無いらしい。
その間に魔獣のテリトリーに入って貴重な素材なんかを採取する人もいるそうだが、魔獣森林で手に入るのは薬味くらいで、高価なものはほとんどないんだとか。
…まあ、確かに薬味ばっかだったけどさ。
現にスタンピード以来、魔獣森林に入る人間は皆無だそうだ。
だが、考え方によってはチャンスだ。
踏み込む人間がいないということは、あの森の中で高級なエフィの実があることを知っている人があまりいないということだろう。
エフィの実は、熟してから2ケ月程度で腐り落ちてしまうそうだから、無駄にしてしまうよりは俺たちで採取した方がいいだろう。
そうと決まれば今のうちに手に入るだけ手に入れておこう。
で、現在森の中に来ているわけですが、やっぱ薬味ばっかり生ってるなこの森。
まあ、森生姜は肉なんかを料理するうえで結構重要なものだからいいけどさ。
お前も随分出世したもんだな森生姜。初めて採取した時はなんだこれと思ったもんだが。
採取した薬味類はアイテム画面に収納。荷物がかさばらないって素晴らしい。
この機能をアルマに見せた時に『もう慣れた』とか呆れ気味に言われた。慣れたって、何に?
そしてその機能のことを人にばれると絶対面倒なことになるから人前で使う時には上手く誤魔化すようにとも言われた。メニュー関連の機能こんなんばっかや。
似たような機能を持つ入れ物に【アイテムバッグ】というものがあり、そいつも見た目よりずっと多くの品物を入れることができるが、容量は有限だし時間経過や外の環境の影響も普通に受けるらしい。
まあ、この機能を誤魔化すのには便利な存在だし、人前で物を出し入れする時はカバンをアイテムバッグに見立てて手を突っ込みながらにしよう。
肝心のエフィの実だが、見つけるのにさほど苦労はしなかった。
エフィの実そのものが魔力を秘めているため、魔力感知によってある程度の位置が特定できるからだ。
魔獣の数が多い普段の状態だと、魔獣の魔力に気を取られてエフィを見つけるのは難しかっただろう。そう考えると今回は本当に恵まれた条件で、エフィの採取ができる数少ないチャンスだ。
広い森を数時間も探索して見つけることができたエフィの木はたったの3本。天然物のエフィの木は見つけるのが難しいと言われるらしいが、ここまで希少なものなのかよ。よく初日に見つけられたもんだ。
さすがに根こそぎ持っていくのは気が引けたので、2割くらい残して収穫した。
それでも数十個ものエフィを手に入れられたので、しばらくお金には困らないだろう。
アイテム画面に入れておけば劣化しないし、好きなタイミングで売ったり食べたりできるからホント便利だわー。
帰りはアルマを抱えて森の上空に移動し、街の方向を確認してからひとっ飛び。
前に飛び方を教えるのを遠慮された時に、高い所が怖いのかと思っていたけど案外平気そうだ。自分で飛ぶのが怖いのかな? まあ魔力が尽きたら落下するし、体外の魔力操作に慣れないうちは無理もない。
森の出口付近で降下して、歩いて森から出てきたように見せかけておく。飛んでるのを見られたら飛行士の正体ばれかねないし。
街に戻って、エフィをギルドに納品。
薬草と違って、常に需要があるわけでもないし、劣化させずに長期間の保存ができない果物なので、10個しか納品できなかったが、それでも100000エンものお金が手に入った。
末端価格が一個10000エンなのにこの値段だとギルドに得がないんじゃないかと思ったが、たまたま新鮮なエフィを相場より高くてもいいから早急に欲しいという客がいたから問題ないらしい。
今後エフィを売るのはそういった需要がある時か、もっとエフィの値段が高い地方で売るのがいいかもしれない。
で、そのお金でアルマの装備品を買うことに。
俺は魔力の装甲とか外付けのHPがあるからそうそう傷付くことは無いけど、まだ魔力操作に慣れてないアルマにはもう少し良質の装備品を用意させたい。
あと、使っている剣がそろそろ寿命らしいのでそちらもより良いものに買い替えることにした。
1年近く使ってきたうえに魔力を上乗せした魔法剣なんか使ってウェアウルフとやりあってたぐらいだし、ボロボロになるのも当然か。むしろ良くもった方だろう。
「私ばかり装備を買い替えて、ヒカルの分はいいの?」
「うん、俺はこないだ買ったばかりだし、魔力が尽きないうちは装備無しでもそこそこ戦えるから」
というか魔力切れを考慮しなかった場合、防具はともかく武器の方はむしろ無くてもほとんど問題ない。
魔刃もどきも武器を媒介にするより生身に纏わせた方が魔力消費も少なく手早く作れるし、よっぽど強い武器でもない限りは武器はいらないかな。まあ魔力が切れた時の護身用には必要だが。
「でも、なんだか悪い気が…」
「いや、Eランクに達したからにはホブゴブリンくらいの魔獣と戦う機会が増えてくるし、装備品に妥協してると痛い目を見るかもしれない。これは必要な出費だよ」
「そう言うなら…」
前に鉄剣と胸当てを買った武具屋に到着。
店主のおっちゃんに採寸してもらって、新たな装備を作ってもらうことに。
三日後には出来上がるから忘れずに来い、と鋭い眼で言われた。ギルマスほどじゃないけどこのおっちゃんも目つきが怖い…。
装備が出来上がるまでの期間は、討伐や採取は一旦控えてちょっとした訓練をすることに。
シャワー浴びて寝る前に、体力作りに走り込みや筋トレをするのはもう習慣化してるが、日中に行う訓練はまた別だ。
いい加減に魔刃をまともに再現しようと、使っている時の魔力の動きを確認するためにアルマに手本を見せてもらっている。
「実際、魔刃を使って斬るといつもより切れ味が良かったりするのか? 俺が再現してもほとんど変わらなかったんだが」
「初歩の技能だけど、使うのと使わないのとでは大分違う。上手く使えばゴブリンの使ってる武器くらいなら壊せるようになるし」
「んー…使ってる時に剣に纏ってる魔力が微妙に動いてるのは分かるんだけどなぁ」
魔力で刃を作るだけでなく、その刃を動かさなくてはならない。
実際どんな風に動いてるのあれ? 剣を振っている間しか発生してないからイマイチどう動いてるかワカラン。
俺の魔刃もどきと違って発動中に剣がピカピカ光ってるけど、あれにも意味があるのか?
ん? あ、待てよ? 別に俺が無理に確認する必要なくね?
メニュー、魔刃を発動してる間、どんな動きしてるか解析できるか?
≪魔力で再現した刃を、高速で微振動させている。光は単なるエフェクトで戦闘における意味はない模様≫
いわゆる高周波ブレードみたいな感じか? ファンタジーというよりSFじみた技なんだな。
ってあの光意味ないのかよ! なんのためにあんなもん発してんだよ! 魔力の無駄だろ!
つーかあっさり解析できたな。最初っからこうしときゃよかった。
いや、今思うとむしろ副産物の方が重要だったけど。魔法剣とか魔力飛行とか。
うーん、となるとやっぱりそのまま再現するのは難しそうだなぁ。
切れ味が増すほどの振動を上手くイメージして再現できる気がしないし。俺が再現できる振動と言ったら精々ケータイのバイブぐらいのレベルが限界だ。
振動させる以外で、魔力の刃を動かして物を切断するとなると、どうしたらいいかな。
工場で使ってた設備や道具にヒントがないか、思い出してみるか。
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