16階層最深部にて
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15階層のボスはスケルトン。動く骨格標本みたいな魔獣が剣を杖のように地面に突き刺し、王座に座っていた。
見た目は貧弱そうだがステータスを確認してみるとLv85で筋力は、……筋力? はなんと2400を超える怪力っぷりだった。
まあ言ってしまえば気力強化していない今の俺と大差ないんだけどね。
武器や防具の補正値をプラスしても、アルマパパにはまるで及ばない。
戦闘スタイル千変万化の稽古台として有意義に使わせてもらったが、特に身の危険を覚えるような相手じゃなかった。
せめてLv90以上なら、【真獣解放】が使えるからアルマパパに迫る力を発揮できただろうに。
……ところで、こいつって元々骨型の魔獣なの? こういう生き物なの?
それとも死んだ人間の骨を誰かが死霊術かなんかで操ってたとか?
≪ゴーレム等と同様、通常の生物とは異なる器官を使って動いている。生殖能力はなく、どこから発生しているのかも不明≫
うーん謎だ。割とどうでもいいけど謎だ。
悩んでも仕方ないし、つーか別に悩むようなことでもないし、さっさと先進も。
16階層は、なんとマグマの海だった。
いや、ホント、マグマがフロア全体に満ちていてクッソ暑い。ていうか熱い。
……なにこれ。足場がポツポツと見えるけど、アレを足場にして進めってか? ここはいつから魔〇村のステージになったんだ。おかしいやろ。
並の装備だったらそのうち自然に燃えるんじゃないかコレ。つーか直接触らなくても火傷するわこんなん。
まあ、能力値が高いおかげかダメージは受けていないが、暑い。
……魔力で全身を覆って、冷気に変換。この程度ならさほど魔力消費も激しくないし、しばらくはこのままでいこう。
ん、待てよ、マグマ?
そうだ、魔力操作でマグマを持ち上げて、アイテム画面に入れられるだけ収納しておこう。
こないだ戦った中級精霊たちのマグマは王都防衛戦でメテオもどきの材料に使っちまったし、補給できるのはありがたい。……マグマの補給ってなんだよ。
……で、調子に乗って収納しまくってたら10フロア分くらいのマグマがアイテム画面に納まり、この一帯だけやたら涼しい状態になってしまった。
この階層の魔獣たちはマグマからエネルギーを供給しているらしく、マグマが尽きたフロアには近寄れないようで、セーフゾーンとして活用できそうだ。
え、マグマを収納したフロアの魔獣? 全滅させましたがなにか。おかげでレベル上げのノルマも達成して、現在Lv69。次の新機能が気になるな。
15階層からここまで攻略するのに結構な時間活動してるし、今日はもう休もう。
……この階層の魔獣たちは食えそうにないな。
生きた火の玉だの炎を纏ったゴーレムだの、どいつもこいつも血の代わりにマグマが流れてるんじゃないかってくらい熱くて無機質なやつばっかだし。
そうだ、マグマをコンロ代わりに使えたりしないかな。……焦げるだけか。やめとこ。
半日近くマグマの上を魔力飛行で移動しながら、やっと辿り着いた16階層の最深部。
そのフロアはこれまでとは一線を画する広さで、例えるなら東京ドームくらいの広さだろうか。
その中心には、次の階層への入り口を守る翼の生えたデカいトカゲ。
そう、ドラゴンが鎮座していた。
竜族:ラーヴァ・ドラゴン
Lv62
状態:正常
【能力値】
HP(生命力) :3478/3478
MP(魔力) :2410/2410
SP(スタミナ):2998/2998
STR(筋力) :2714
ATK(攻撃力):2714
DEF(防御力):2548
AGI(素早さ):2239
INT(知能) :1748
DEX(器用さ):918
PER(感知) :2703
RES(抵抗値):2847
LUK(幸運値):357
【スキル】
竜族Lv7 体術Lv10 極体術Lv7 牙術Lv10 貫牙術Lv7 爪術Lv10 鋭爪術Lv7
【マスタースキル】
オーラ・オーバーロード
爆咬牙
激電爪搔
……強いな。あのクソ黒龍ほどじゃないが、それでも相当強い。
レベルこそLv62程度だが、能力値を見る限りさっきのスケルトンより明らかに強そうだ。
んー、種族の違いによってもレベルの強さの目安も変わってくるのかね?
となると、こいつはさっきのスケルトンに換算すると大体Lv90以上くらいになるのかな。
『………む、客人か』
こちらに気付いたのか、低い声で呟いたのが聞こえた。
喋れんのかよ。いやあのクソ黒龍も喋ってたけどさ。
「あ、どうもこんにちは」
『うむ、こんにちは』
……いや、なに普通に挨拶してんだ俺は。
そしてなんで礼儀正しく挨拶返してくれてんだこの竜は。
こっから殺し合いになるのに、なんかやりづらくなるだろうが。
『よくぞ、よくぞここまで辿り着いてくれた。ありがとう、ありがとうっ……!』
しかもなんか泣き出しながらこっちにお礼を言ってきてるし。
なんなのこの竜。情緒不安定なの?
「えーと、……なに泣いてるんだ……?」
『いや、あのな? こんなマグマだらけで退屈な場所に閉じ込められて、楽しみなんかあると思うか? いっそのこと他の階層のボスみたいに意志なんか持たずに生まれてくればどれだけ幸せだったか』
「閉じ込められたって、誰に?」
『知らぬ。多分、『神』というやつではなかろうか。力と知識と、この扉を守るという使命のみを与えられて、産まれてきたことを呪わぬ時などなかった。クソ神が! 死ね! F〇CK!』
……中指立てながらFワードまで言いおったよこの竜。もうストレス溜まってるとかそういうレベルじゃない。
ノリが軽いというか、悲壮感というものがまるで感じられないが、なんか可哀そうだな。
メニューさん、この竜をファストトラベルで脱出させてやったりとかは……。
≪不可能。仕様上、ダンジョンのフロアボスはファストトラベルの対象にできない。また、テイムも不可。先へ進むには、このドラゴンを倒す以外に方法はない≫
……そうか。
『だが、お主が辿り着いてくれたのであれば、それももう終わるであろう。いざ、参るがいい、強き者よ』
「……アンタはそれでいいのか?」
『応。数年前に前任のボスが倒されてから、ずっとこんな場所で誰とも会わずに過ごしておったのだ。……もう、終わらせてくれ』
懇願するように、しかし強い眼差しをこちらに向けながら、竜が呟く。
もう、このダンジョンのボスとして以外の生き方が自分にはないということを理解しているようだ。
殺すのは可哀そうだが、このままにしておくほうがよっぽど哀れだろう。……俺も先へ進む必要があるし、戦うしかないか。
「分かった。……いざ」
『言っておくが、死にたいからと言って手加減なぞしてやれんぞ。神から与えられた使命なんぞどうでもよいが、無抵抗で首を差し出してやるほど腑抜けてもおらぬ。お主も生きて先へ進みたくば、決死の覚悟で挑むがよいっ!!』
咆哮。雄叫びを上げると、火山が噴火したかのようにフロアに満ちたマグマが吹き上がった。
それとともに、ドラゴンの身体を輝く鱗が覆い、包んでいく。
≪竜族スキルLv4【ドラゴン・スケイル】 自身の身体に魔力の鱗を纏わせ、防御力を大幅に上昇させるスキル。現在の防御力およそ4500、否、【気功纏】を重ねて使用したことにより5500程度まで上昇≫
うひゃー、またガッチガチに守りを固めてきやがったな。
ここまで防御力が上がると素の状態じゃ歯が立たん。気力強化すれば普通にダメージ通りそうだけど。
っ!
『ガァァアアアッ!!』
ドラゴンの口から炎のブレスが放たれ、こちらを焼き尽くそうとしてくる。
魔力飛行で回避したが、さっきまで乗っていた足場が熱でドロドロに溶けていき、マグマと同化していく。
ミニマム・ヨルムンガンドとは段違いの攻撃力。当たってたら、HPも溶けていたかもな。
「楽になりたいのなら、もうちょっと手を抜けよ!」
『それはできぬ! 最後の、最期の死闘で手を抜こうものならば、悔いが残るであろう!』
「ああそうかい! なら、さっさとぶちのめすっ!!」
気力強化で、ステータスを大体倍くらいまで引き上げる。
今の俺のステータスは素の状態で2400を超える。倍化すれば5000程度まで上がるだろう。
さらに上げられなくもないけど、ゴリ押しで叩き潰すのはなんか違う。
『ほほぉ! なにをしたのか知らぬが、なぜか今のお主はとてつもなくデカく見えるぞ!』
「アンタほどじゃねぇよ!」
そう言いながら魔力飛行で攻撃をかわし、竜目がけて急接近。
竜の眉間目がけてパイルを叩きこむ!
「オラァッ!!」
『ふんっ!!』
パイルが竜の頭を捉えた瞬間、全身を覆っていた魔力の鱗が頭部に集まっていき、パイルを弾いた。
パイルを受けた鱗が何十枚も砕けキラキラと破片を舞い上げていくが、竜の身体そのものは無傷だ。
おいおい、あの鱗って動かせるのかよ。思った以上に厄介だな。
『よもや一発でここまでスケイルを削るとはな! やはり、お主は我が最期の相手に相応しい! ……カァッ!!』
「うぬぁっ!?」
パイルを弾かれて若干体勢を崩した俺に、速射性に優れた【クイックドラゴン・ブレス】を放ってきた。
体勢が崩れようが、魔力飛行なら関係なく回避でき―――
なっ
ブレスの陰に、【魔牙・遠当て】を【魔牙分閃】で範囲を広げた攻撃を……っ!!
「って、そんなもん何度も見たことあるわい!」
魔力で巨大な腕を模り、牙の斬撃をキャッチ。
そのまま投げ返してやろうかと思ったが
≪魔力の腕を切り離し、離脱!≫
っ!?
メニューさんが警告表示を出してきたので、言われるがままロケットパンチのように腕を切り離して、魔力の牙から離れた。
その数瞬後、腕に掴まれていた魔力の牙が大爆発を起こしたのが見えた。
え、なにアレ。なにが起きた!?
≪マスタースキル【爆咬牙】 牙術・貫牙術スキル由来の攻撃を受けた相手に爆発による追加ダメージを与える技能。本来、自らもダメージを負う欠陥スキルだが、遠当てに付与することにより欠点を克服している模様≫
こっわ! なにその噛んだやつ絶対殺す技は! 殺意が強すぎる!
『ヴァハハッ!! よくぞ見抜いた! そうでなくてはな!』
「うるせぇ! 死ぬかと思ったわ!」
くっそ、楽しそうだなコイツ。なにわろてんねん。
見てろ、すぐにそんな軽口叩けないようにしてやる!
あー、でも、正直俺もちょっと楽しいかもしれない。
戦いなんか、俺にとっては生き残るための手段に過ぎないし、普段のレベリングなんかも怖いばっかで、アルマたちがいなかったら全然楽しくない。
でも、こんなに嬉しそうに戦ってるところを見たら、ねぇ?
お読みいただきありがとうございます。
>大槌ですが、勇者君、壊れてたけど見つけたんなら――――
返信漏れてて申し訳ないです(´ヘ`;)
勇者くんが拾った壊れた大槌を修復しても、それより強い武器でなければまた壊されてしまうので、新たに作ることのほうへシフトしたようで。
まあ間に合わせの武器としてならまだまだ使えるかもしれませんが。
鬼先輩は、・・・イキロとしか。
>八つ当たりの破壊が3割で済んだのか―――
>気まぐれな種けっこう強いですね―――
山岳の面積は、大体北海道と同じくらいの面積でして、その3割が半月で壊されたと言えばどれだけ暴れたか分かるでしょうか。おかげで魔獣山岳の魔獣討伐ノルマが一気に進み、当分の間はスタンピードの心配が無くなってしまいました。
ん? いまなんでも(ry
木の実の味は、緑色なら抹茶チョコ味かなぁ(適当
>迷宮内で、勇者くんに材料送ってもらって、―――
なお、勇者君は勇者君で用事があるので鬼先生に届けるどころじゃないという。山岳の明日はどっちだ。
カジカワ的には、自分の力ぐらいで壊せるような素材じゃまた魔王に壊されるだけだという認識なようで、かといって壊せないくらい硬い壁だとアイテム画面に入れられないというジレンマ。
>魔王の前に世界がヤバいんだが魔王止めれるのかコレ…―――
魔王「ファストトラベルできないし暇だわーなんか地響きが聞こえるけど暇だわー」
>半月で山岳の三割が削られたということは―――
そうなったら、真っ先に狙われるのは工業都市ですかね。
でも無益な殺生はしない、というか弱い相手には興味が無いので料理だけ食べたらさっさと帰りそうですが。……鬼先生せこいなオイ。




